死 に 続 け る 男
飲み干した錠剤は、どこか苦い味がした。
そのままコップに残っている水を飲み干す。どこまでも下へ落ちていってくれるように。早く胃を通過し、腸へと、そして僕を眠りへと、暗闇へと誘ってくれるよう願いを込めて。
インターネットで手に入れた錠剤は、どこかしら怪しげな魅力で、僕をつかのま不思議な幻想の世界へ誘ってくれたのかもしれない。転落死など、僕のような愚か者には相応しくない。何故自分自身を消したい人間が、日々を精一杯生きている人の生活を邪魔しなければならないのか。
結局、僕は僕の生活を作り上げてきたこの部屋の中で、静かに息を引き取るのが性にあっている。
胃が軋む。
痛みを伴わないという噂の薬だったが、結局誰もが死ぬ寸前に感じるものを他人に伝え様がないことに改めて気付かされる。
痛い。
この苦しみのはてに、僕は僕という抜け殻を捨てられるのだろうか?
……なぜか、僕はもう何度もそんな事を考えているような気がした。
僕は、僕は。
いつあの暗闇の場所へいけるのだろうか?