2000年7月の作品

始まりの歌  楽静 2000/07/03(月) 06:24:32


虚空に向かって
吼える一匹の獣

私はどこにいるのでしょう
私はどこに行けばいいのでしょう

夢を忘れた人たちは いつか
人である事を忘れ 空へ望みをはせるという

私は誰だったのでしょう
私は誰であればいいのでしょう

泣きつかれた子供
くたびれた顔で歩く女
ちどり足でしか勇ましくなれない男
街角で眠る老人
忘れられた死体

私達はどこから来て
これからどこへ行くのでしょう

交錯した思い 逃れられない鎖
獣が吼える
今日も 夢は眠りについたまま――





存在意義  楽静 2000/07/04(火) 00:12:58


私を思い出してほしくて
小さな祈りを机に刻みました

池に落ちたガラスのコップよりも
私は透明なのでしょうか?
誰一人として 気づかない私の言葉

あの時言われたあの子の言葉が
頭をいつもかき回します
「ダレ」
何でもない一言の方がよほど
人を傷つけるのでしょう

公園に捨てられた空き缶よりも
私は意味なく存在しているのでしょうか?
誰一人見ない私の心

存在する意味 まだつかめなくて
血が通った手を信じられない私は
今日も また
机に言葉を刻むのでしょう
――見つけて――
いつか誰かに消される事を知りながら……





あなたへ――失われた小さな歯車――  楽静2000/07/05(水) 01:26:25

春が終わる前に
あなたは 消えてしまった
皆の中で笑っていたあなた
楽しいこと 悲しいこと ともに歩むはずだったのに

あなたは消えた……

桜が散るころにはもう
誰もあなたの事を話題にしなくなった

皆の中にいることから逃れたあなたは
今一体どこにいるのでしょうか

個人の存在の意味
あなたがいなくても何も変わらない学校という名のシステム

それは
私という歯車がかけても 同じ
やがて この校舎に夏の風は吹き
    秋は寂しさを連れ添い 
    冬はやがて、別れを告げる春へと……

私はなんなのでしょう
あなたはなんだったのでしょう

夏が来ます
抜け落ちた歯車も気にならぬまま
暑い夏が 来ます……





大人  楽静 2000/07/05(水) 23:27:25

空の広さに溺れた子供は
憧れだけで いつか 空を飛べると信じている
見上げた空まぶしくて 目を細める

夢を壊すのは何?
抱いたままでは大人になれない

正しい者は勝ち 悪は負けるのだといい聞かされる子供たち
正しさと悪の違い 教える大人は周りにいなくて
いつか子供達の目は 疑いで細くなる

ならば全てを壊していいと
そう 教えてくれたのだろうか?

何を得れば 僕らは育ち
何を失えば 大人になれるのだろう?
今いる「大人」好きになれないぼくらが
「大人」になること拒んでもそれほど不思議じゃないはずなのに

「大人」は言う その濁りきった瞳で
 現実からの逃避
 夢はやがて崩れる
 そして堕落は罪――

あの時僕が見上げた空と
今の空は確かに違う
そして僕は また「大人」に近づいている





儚い願い  楽静 2000/07/07(金) 00:33:30

流れた涙集めて
笑顔 見せる人がいる
血が出るほどに拳握って
それでも 自分を押さえつけて

なのに 報われない人がいる

この世は決して平等ではない。
富める者 貧しき者
強きもの よわき者
そして
傷つける者 傷つく者

泡より軽い平等なんて言葉探すより
あなたのそばの小さな人を
探して抱きしめて

そして探そう
小さな願いの答えを

それを人は希望と呼ぶ……





一方的な感情の押し付け  楽静 2000/07/08(土) 00:23:11

雨が降る

悲しみの
喜びの
恵みの
破戒の
生命の象徴であり
全てを飲み込む優しき死の
雨が降る……

でも それは 本当に雨?

空を見上げて
私たちが思うこと そんなの全て
私たちの幻想に過ぎない

思いはいつだって 身勝手でしかなく
だから ほら

雨はただ静かに振りつづけるだけなのに……
雨はただ静かに振りつづけるだけなのに……





暗闇も楽静2000/07/10(月) 03:08:56

コトリ
風が小さく頭を下げた

カタリ
戸棚のネジが小さく弾んで寝そべった

ストン
わたしは一人
窓を見つめて 小さな音に聞き入っている

コトリ カタリ ストン
カタリ ストン コトリ
コトリ ストン カタリ……

目を開けてなければ気づかない事
今目を閉じれば目の前にある

だからほら
また一人を閉じて 闇の中で音に戯れよう






谷楽静 2000/07/14(金) 01:57:36

一人
人間というちっぽけな存在は所詮最後は一人なのだと
いつ私は悟りきった老人のように口にする事になれていたのか

一人

闇の迫る夢の無い場所はとても寒くて
周りに誰もいない孤独感が ビンずめされて海に投げ込まれた
何も見ないで
何も聞かないで
何も話さないで

そうすれば一人も怖くないよ

暗闇の中で惑いながら
一人でいること怖がって でも多くを嫌った私は
今日も
壊れかけたラジオに耳を傾けている






自我崩壊の序曲  楽静 2000/07/16(日) 23:23:11

優しく微笑む月夜に
私は「私」を投げ捨てた
夜の闇よりも透明な私が風に流れるようにゆっくりと
空の彼方へ登って行く そんな気がした

誰だってあるね
今の自分消したいとき

人が逃れるすべはただ一つ
己の身体を失う時 今日改めて気づいたよ

だから
私は「私」を捨てた
透明だった今日までの私を

月の光の中で明日こそ
私は笑える気がする






懸想  楽静 2000/07/18(火) 23:58:46


輝く微笑はいつも
なぜか私を見ることなくて
悲しみの中で
あなたに憧れる私がいる

思い出すだけでつらいこと教えてくれたのはあなただった
思い出すだけで嬉しくなる事教えてくれたのあなただった

もうかえれないあの輝きの中だけど
きっとわたしはいつまでも
あなたの横顔に憧れている






夏の氷像  楽静 2000/07/21(金) 00:45:32

手を伸ばしたままで凍りついた私がいる

笑顔とともに差し出した両手
倒れそうに俯きながら あなたは邪険に払いのけた

「頼れば頼るほど 迷惑をかけてしまうから」

弱く微笑んだ笑み いつか
顔から離れていったね 今はもう
カサカサになった肌で眠気抑えてる

泥に沈むほどに倒れなければ
努力というラベルを貼られないんだろうか
一人でそんなに苦しまなければ
ゴールのテープは切れないんだろうか

あなたに力を貸したいよ
だけど また振り払われるの怖くて
凍りついた私がいる






瞳の力  楽静  2000/07/21(金) 23:49:56

言葉なんて何の役にも立たないよ
君の瞳見つめただけで この思い伝わればいいのに

空流れる雲よりも
川流れる笹の船よりも
言葉に出しすぎた思いほど
軽いものはないんだと知ったんだ

「大好きだよ」

いつもふざけた顔で言っていたから
見つめた瞳よりもきっと力が弱かったんだね?
だから君はいつもみたいに
「ありがとう」
なんて 
そんな余裕の笑みを浮かべれたんだね?

たった一つの思いだけが
君に伝わってくれればいいのに

軽くしなければ言葉に出せなくて だけど
軽すぎた言葉じゃ、君の心まで届かないね

ねえ
気づいてくれないかな僕の瞳の力に
そして見せてよ
余裕失った君の顔を――






熱帯夜   楽静 2000/07/23(日) 07:05:48

気だるげな熱の中で君を思う
冷めることの無い熱が
よけい身体を 内から燃やす 

この身はなぜ一つなのだろう
今ここにある体 君へ届けたい
陳腐な言葉で彩られた単純な愛
囁きつづけられるように

風が吹いたら
君の匂いを運んでこれるのに
蒸し暑い夜の闇の中で
僕は不機嫌に寝返りをうった……






道程楽静 2000/07/23(日) 23:15:59

見下ろす太陽に 逆らえないまま歩いている
俯いて 熱せられたアスファルトの咆哮に耐える

家までの道のはずなのに
やけに長く感じた日曜の午後

たぶん
大げさかもしれないけど
恋だってこんなもんだ
内側と外側両方から熱せられて
ぐだぐだになって
結局
別れが来た時がゴールなんだ

ほてった体クーラーで冷やしながら
昨日ケンカしたあのこのこと思い出した





RUN  楽静 2000/07/25(火) 02:18:04

走り始めよう ここから
どうでもいいと空眺めてる自分はたいて

走り始めよう ここから
何も見つからない?
そんな否定的なクールさなんて必要ない

誰だって始めは
弱い 頭の悪いガキだったはずさ
だけど走り始めたから
いつの間にか
他の連中よりもましになっていただけなのさ

走り始めよう
間に合う? 間に合わない?
そんなの走らなければわからないから

走り始めよう
流れ出した汗ぬぐえばきっと
新しい自分に会えるから






傷ついたら思い出して楽静2000/07/27(木) 00:21:00

何を恐れているの?

ここがどこかなんて
あなたが誰かなんて
何をしなければいけないかなんて

そんなの
あなたがここにいることよりも大切じゃないよ

誰もが求めるね
自己の確立 積極的な行動
だけどいつか
無意味な笑い浮かべている事に 気づいていますか?

無理してばかりいて
何を得ているのでしょう

あなたはここにいて
あなたがあなたならばそれでいい
だから
今日ぐらい
涙を流さずにいましょう






七月も終わり近づいて   楽静2000/07/27(木) 23:40:07

両手いっぱいで抱きしめた思い
夢の中で手放して
どこかへ流れていってしまった

あれは一体なんだったのでしょう?

わた雲よりも柔らかくて
あの子の瞳よりすんでいた

夏の日 せみの声に輝いた
冬の日 天からの贈り物 地を駆け回って集めてた
春の日 出会いと分かれ 友にに涙し 
そして
夢の中で 私は思いを手放した きっと
それは誰もがいつかは手放して行く……

子供だった私の心





試されたのはだれ?   楽静 2000/07/29(土) 00:05:07

夏の日差しに置き去りにしていた
知識詰め込みにしすぎた頭から
自然にこぼれた「愛」なんて形のない思い

携帯の番号押す 夜中
不機嫌な声で出た君の言葉は
「ごめん今疲れているの」

何やってんだろ?
自分に問い掛けて 手元のノート破り捨てた
  Bad situation
英語で書いたいびつな文字に 涙あふれる

俺達なんて言葉で表せるほど
二人は何てことない間だった
セロが二つも続かぬうちに
君の番号 携帯から消えた




成長期 モラトリアムの途中で楽静 2000/07/30(日) 00:51:26

高すぎる空
手を伸ばしても届かなくて
届くと思っていた自分に虚しさ覚える

だれもが一度は思うはず
この世の中に、出来ない事などないと

それは若さゆえの幻想?
それとも組み込まれたプロセスなのだろうか?

虹の先へいけないように
空に届く事ないように
夢が消える事を知った少年は

やがて
あきらめるという事を知り
また一つ 
色あせたシャツ着た大人へなって行くのだろうか





時の流れ立ち去れずに……楽静 2000/07/31(月) 23:52:59

書きとめていた言葉 水に流して
泣きながら
過去をすくう私がいる

指先から流れるほどに細かくて
流れ落ちる涙の雫が
また 昔を彩っていく

決して色あせぬ
虹色の過去の流れ
だけどすくえば私の前で透明になり
やがて 指先から流れるだけの思い出になる

私はいつまで
この川から抜け出せずにいるのだろう