2000年9月&10月の作品

「このごろ」 作楽静1999年10月22日

やけに見る夢があります
あの時の私達が
楽しそうに笑っている夢です

不思議ですね
時は決して戻らないのに


このごろやけに悲しくて
このごろやけに寂しくて
そして気づきました
私は一人だったんだって


やけに赤い夕日に一人
あの時の私達を
そっと見ている夢を見ます
可笑しいですね?
私はそこにはいないのに

このごろやけに悲しくて
このごろやけに寂しくて
そして気づきます
みなは大人になったんだって

眠るのが怖くなって私は
あの時の私達に
少し嫉妬しています

寂しいですね?
私は今を生きているのに

このごろやけに悲しくて
このごろやけに寂しくて
そして、気づいています
もう、子供の時は終わりなんだって

このごろやけに悲しいのは
このごろやけに寂しいのは

きっと
まだ子供でいたいだけなんですね?
このごろやっと
分かり始めてきました






光と闇    楽静1999年10月24日


誰もが知っている昔の話
母親に、話してもらったことがありますか?

狼と、子羊達の物語

正しいものが勝ち
悪は滅びる

そんな定番な昔の話を

でもあなたは
子供の質問には答えませんね?

「どうして狼さんを殺すの?」


善と悪はコインなんです
ぴんと指ではじいてしまえば
簡単に裏返る一枚の光るコイン

「狼は悪い奴だから・・・

あなたは子供にそう言ってごまかそうとしますね?
でも、
澄んだ瞳はまた言葉を紡ぐでしょう

「狼さんは可哀相じゃないの?」

悪を滅ぼす正義は
本当に正義なんでしょうか?
何気ない子供の言葉に
答えられる人はいないのでしょう?
そして結局
誰もが言うのです

「そういう話なんだから」

あなたは、応えられますか?

ナゼ、オオカミハシナナクテハイケナイノ?





理由(わけ)  楽静1999年10月24日


あなたのいない理由を、私なりに考えてみたくて
一人外へ出たのに

半歩も道を行かないうちに

寂しい秋の夜風にあたるうちに

私は、理由に気が付きました。

初めからいなかったものを
後から求めても無理なことぐらい
子供でも知ってましたよね?

あなたを作ったのは私

孤独を恐れるあまりに
私はあなたを作り出して
そしていつか、
あなたを完璧にしすぎたことに気づいたんです

私の中のあなたは
私よりも綺麗で
私よりも優しくて

だから、私はあなたと別れたんでしたね?


一人になって
また
私はあなたを求めるのでしょうか?

寂しさに抗わずに
人のぬくもりが欲しくて
でも、人を恐れる私は
いつも、救われぬ場所にいて

だから
あなたを生み出すのですね?





たまには    楽静1999年10月25日

道を歩いていました
ながい ながい道です

人生というなの
いつ終わるのか分からぬ果てしない道

ただ、
前へと歩いていました


のんびりと歩く人たちが
笑いながら言いました


「たまには、のんびりしてみろよ」


あなた達は
のんびりしながら生きているのでしょう?
たまには、急いだらどうですか?

私の常識は、彼らには不思議に移るようで
そう考えたら急に
むなしくなりました。







雨の日は 楽静作1999年10月28日

誰もが笑顔でいられたら
誰もが幸せでいられたら

そう思って
そう考えて毎日生きているのに
自分ひとりさえ笑顔にすることが難しくて
自分ひとりの幸せすら分からなくて

あきらめて
泣きたくなって
でも
でもと

私は明日を目指していく

明日晴れたら
また
幸せを探しにいこう




夢 楽静作1999年10月28日

夢を見ました
誰もが自由で
誰もが笑顔で

悲しむことなど一つもなく
嫌なことも一つもなく

みなが思った事を相手に伝え
誰もが思ったとおりの結果を手に入れている

そんな

"シアワセ"が満ち溢れた

幻の国の夢を・・・

でも
それは虚しいんです
誰もが幸せなら

きっと、誰も幸せではないのですから

そう思った瞬間に
私は目を覚ましました

「夢でよかった」と
私は目覚めた布団な上で
あの悲しい国の結末を考え
少し笑いました





「友情」 楽静作 1999年10月28日

あいつを見つけて、僕は強く腕を振った

「ずいぶん変わったね」

そう言おうと口を開いたのに

「全然変わってないな」

そいつに先に言葉を言われて、
僕はついうなずいて言葉を飲み込んだ

「お前だって、変わってないよ」

嘘 嘘の言葉

言ってしまったときの、相手の反応が怖かったのか
それとも、自分の中にある
あいつの幻影を消したくなかったのか

当たり障りのない話だけが続く
表面上は、あの時と一緒 あの時の二人と
中身は変わってると思っているのは僕だけかい?

君も僕を見て、本当は別の言葉を言いたかったんじゃないのかい?

お互いに、心の中まで見せずに
お互いに、表面だけは親友で

二人は本当に今でも親友なんだろうか?

君に聞きたかったこと
山ほどあったんだよ

「何があったの?」「何を思っているの?」
何も言えなかった 聞きたいことは一つも口からでなかった

戻れない時の中
二人はすでに別々の道を歩いてる
お互いに、全く別の道を
それでも、君とは一緒にいたかった
君と笑っていたかった
ねえ、おねがいだから
今度会うときはお互いに仮面をとろうじゃないか

変わることはおかしくなんかない
それが人なんだよ
そうじゃないと
僕は君を親友とは呼べない

僕は君の
親友には戻れない





おじさん   楽静作1999年10月30日

踏切横の工場からの白い煙
作業場のおじさんたちは、いつも難しい顔で作業をしている

ごつごつとした硬い手で
ゴミは何でも拾っては焼却炉へと放り込む

「ダイオキシン」 「環境問題」

当たり前の問題を前に
おじさん達はそろって顔をしかめる
少しでも煙い顔をしようものなら

「煙いんだったらとっとと失せろ!!」


あなた達の白い毒が
いつか全身へと回るのでしょう?
あなた達の怒鳴り声が
白い毒を町へとあふれさせるのです

学校帰りは毒の道
いつかはここで
いつかは誰かが
毒に倒れてもだえるのでしょう?

でも
おじさんたちには結局いつもの事で
また今日も白い毒が町を覆う




今時 楽静作1999年10月30日

いまどきの言葉で
いまどきの服で
いまどきの生き方で・・・

でも
それってなんか変じゃない?
流れに乗って、そのまま他人と同じになっちゃってない?
おいおい違うぞって、誰か止めないの?

なんで?
あなたのどこが今時なのさ?

しょうがない
しかたない

そんな私たちの放課後は
今日もいつもと同じ
白い毒の道を行く