2001年 3月の作品たち

一人でいる時の私は……    楽静 2001/03/03(土) 01:34:21


ほんの少しのきっかけで
一途人はもっともつまらない生き物になる

誰かの言葉を聞きたく無くて
誰かの顔を見たく無くて
一人っきりでどこかにこもっていたくなる

それは ただの惰性
「めんどくさい」といって逃げる 人間の弱さの現れ

分かっているけど止められない
「思うだけなら罪ではないから……」
そう思って、世界の全てを滅ぼしている

私は小さな殺戮者
つまらない人間になった日はいつも
想像の中で 無意味に残酷な 美しい血を降らす








いなくなった人を塊で迎えた次の日   楽静 2001/03/06(火) 01:12:58


時を忘れたニワトリが 悲しく鳴く 時を求めて
街中に響く細い鳴き声 赤子が敏感に死の臭いを嗅ぎ取る

盲目のカラスが 見えない瞳に 都会の喧騒を移す
街中に漂う諦めの溜息 加護が敏感に死の臭いを嗅ぎ取る


今日 おじさんが死にました


腐食した心の漂う空気の中で
赤子が泣く 

細い煙が天へと伸びる
昨日まであった塊を たったひと筋の煙へ変える


赤子は泣く
何に泣くかも気付かぬままに

今日 おじさんが死にました

赤子の鳴き声の中
細いニワトリの鳴き声を聞き
冷たい盲目のカラスの暗闇に捕らわれぬよう

僕はじっと突っ立っていた

細い煙が 天へとのぼっていく

今日 おじさんが死にました








「夢」すら私を傷つける刃となるのか  楽静 2001/03/10(土) 23:38:24


夢を追うことだけを考えて
いつの間にか
夢だけしか見れなくなっていた

走りつづける私の背には
かなうか分からぬ夢を抱いている恐れだけで冷たい汗が滲む

息が切れても
友達に見向きもせず
日々に暮らしに見向きもせず
ただこの胸にある夢が叶う事を信じて
苦しみを乗り越えていく

翼の無い私は
走る事でしか夢に迎えないから

だけど
時折苦しみの中で私は自身に問い掛ける

「この夢は叶うのだろうか?」
「走りつづける事は正しいのだろうか?」
「私は どこへ向かうのだろうか?」

答えなど無い
問いかけはいつも空しく響いて
私の歩みを鈍らせる

だめだ
私はただその一言で その思いだけで
足を進める 再び苦しみの中へ身をとおじる

夢のために 
夢だけのために

そして
夢を失った自分を恐れるあまりに








雪の中で思い起こして 楽静  2001/03/15(木) 00:59:02


雪の降りしきる中僕は 君の歩く姿を見つけた
後ろ姿がやけに寂しそうで
超えかけようと思わず片手を差し出した

でも そこからもう踏み出せない

ゆっくりと雪が手にかかっていって
一つ また一つ 結晶が水へと還る

君への思い がこの雪のよう
溶ける事を知ったから

もう 僕は君を追う事は出来ない
なのに なぜだろうね?

雪の降りしきる中 形を小さくする君に
今も僕は惹かれている








誰にも確かめられぬ罪を背負って 楽静  2001/03/16(金) 00:33:30


僕から翼をもいでください
両の羽を 二度と 空へ飛べないように

僕は聞いてしまったのです
小さな罪 罰せられることなく十字架を負わされた 僕の罪を

傷ついた翼で目指せる空へは
穢れた翼では望む事さえかなわない

誰か 僕から翼を奪ってくれ
この両の羽から流れる血潮で 僕の罪が洗われるよう

そして僕はヒトになる。
淀んだ海の中で逃れられず彷徨うヒトになる

だから誰か 僕の背からあの忌わしき羽をもいでください
僕が 狂気の扉を開かぬうちに








贖罪のために  楽静  2001/03/20(火) 23:47:27


救われたいのは私自身
だからこそ 私は誰かのために祈るのだろう

汚れた私の祈りでも
誰かが救われるのならば きっと

私はまだ
ここにいていい存在なのだ

だから祈ろう 誰かのために

両手を合わせて
顔は天を見上げ
我々の全てを見下ろす 者への祈り

でも と耳元で何かが囁く
どんなに祈っていても 彼は我々を助けはしない
冷ややかに見下ろす眼をただ悲しそうに閉じるのみ

両手を硬く握ったまま
私はまだ天を見てる
彼の名を呼びはしない
ただ 祈りつづける
私自身が救われるため

無駄な足掻きを 無駄だと思い知るために








君が最後にくれた言葉を今でも覚えてるけど 楽静  2001/03/23(金) 23:12:37


胸の中に徐々に膨らむ思いを まだ信じられずにいる
「あの時」なんて過去形で 昔を振り返れる強さを
僕はいつ手に入れたんだろう?

誰かを忘れる怖さよりも 今は
誰かを大切にできる思いが溢れている

やっと捨てれそうだよ 言いながら
「あの時」失った思いの断片 写真の笑顔

僕はゆっくりと破り捨てた


また誰かを大切に思えるから
「あの時」を失敗だなんていいたくないけど
今度は大切に抱いていきたいから

暫くは 忘れても良いよね? 「あの時」を








今日という日に誓いの言葉を 楽静  2001/03/25(日) 00:22:40


「澄み渡った青空」
そんな表現を陳腐だと鼻で笑えるほど
私はすました人間になりたいとは思わない

ぼんやりと感じる花の美しさを
全て言葉で言い尽くせると思うほど
私は傲慢な人間にはなりたいとは思わない

愛しい人に
己の思いを打ち明ける事を恐れるほど
私は弱い人間になりたいとは思わないし
壊れそうな関係を守るために
思いを口に出来ない誰かを
弱い人間だとあざ笑うような人間になりたくは無い


結局私は
色々なものを拒否しながらも
徐々に流れに任せ歳を重ねる

やがて
今吐いた言葉に逆らうような人間にならないように
これからも私は私を見ていこう

そうすればきっと
明日も私は私でいられるだろうから








「永遠」なんて言葉に憧れるほど少女でいないで 楽静 2001/03/25(日) 23:18:15


かわらぬ愛に憧れる君が言う
「永遠ってどこにあるの?」

そうだねきっと僕の答えは
いつだって君を怒らすだけなんだ

だって僕は永遠を知らない
美しい花が翌日に踏みにじられる事を知っている

愛くるしい少女が
母親に殺される現実を知っている

愛を誓った夫婦が
やがて互いに背を向け眠る事を知っている


変わらぬ愛を憧れる君に
僕はいつも怒らす言葉しかいえないけど

でもね、
僕らの思いだって永遠じゃないんだ

だって僕は昨日より、
今日の君がすきだから








密かな敗北と勝利がいつも僕らを廻る 楽静  2001/03/25(日) 23:28:17


たとえば 突然の嵐の中で
とうぜんのように君が 「寄っていく?」っていったなら
遠慮せずに立ち寄るよ だけど雨は降らない

傷まみれになっていたとして
つら過ぎる地上に逃げたくなっても
いつだって強がってる君を
手のぬくもりで暖めたい だけど君は泣かない

もしも 何て言葉 いつだって空回りだね

僕らって関係になるまでに
はじめてから終りまで一体どれほどの「もしも」があるんだろう?

君だから
がんばって僕は強く見せてるんだよ

好き 何て単純な言葉で終わらせたくないけど
き真面目な言葉は余計に空回りするよね
だから君にいうときは だけど君は僕の想いを聞いてくれない

とりあえず
いまはこのままの関係でいるけどね
うっとうしくなったら言って欲しい
「さよなら」って だけど きっと君は僕から離れない――








願い一つだけ叶うならば 楽静  2001/03/27(火) 00:25:34


誰にも言えない言葉を
あなたにだけは言える なんて
そんな人がいれば良いのに


誰にも見せられない涙を
あなたの前でだから流すの なんて
そんな人がいれば良いのに

人はそんな強くないのに
なぜだか強がっちゃって……
結局それが心と心に隙間を作るね

一時でも信じられないと思ったならば
簡単に 想いは離れてしまうのに

誰かの事が大切だって
言わなくても分かってくれるような
そんな人がいれば良いのに

そして

そんな人が私を好きになってくれれば良いのに

願いはいつも虚しく空に還る
無駄だってわかっているくせに
私は願う
だって夢は
叶わないから夢なんだから








僕らがひとつじゃない事は分かりきってるから 楽静  2001/03/29(木) 23:10:09


僕は君と 同じものを見てみたい

同じ空
同じ雲
同じ海

ありとあらゆるものを君の目線で
そして君の感じるままに見たいんだ

だけど
それは無理だってわかってる
だって僕は君じゃないからね

だから今日も僕は君に耳を傾ける

今日の空
今日の雲
今日の海

そんなたわいも無いものが
君に一体
どんな風に見えてたのかを

それが今の僕の楽しみ