2001年 四月の作品たち

夜の中での意味の無い歌 楽静 2001/04/10(火) 00:55:25


抑えきれない眠気
まどろみの中で君を思う

君の中に眠る僕 「夢で会えたら」
そんな陳腐な言葉信じていたい

くだらない僕の思い
眠気の消えぬ夜
寝息の響く部屋の隅
……そして君








だから夢見る少年の空 楽静 2001/04/17(火) 00:00:33


黄色い空を見たくて歩いてた
赤く染まった夕焼けは強すぎて
青く澄んだ空は悲しすぎて

だから

柔らかな黄色に包まれた空が見たかった

小さい頃の悲しい記憶
黄色のクレヨン 画用紙に空
「何で空が黄色なの?」
笑顔の似合う先生に
何も答えることができなかった

まだ僕は
あの時の空を探している

赤は強すぎて
青は悲しすぎて

だから 黄色の空を






これが必要かも分からないけど 楽静 2001/04/18(水) 23:50:31


歩き出せぬ君の背を
僕は無情にも押そうと思う

いやそれはきっと君のため

歩き出せぬと嘆く前に
君には前を向いていて欲しい

足が疲れると不平を言う前に
君には道端の花に目をとめて欲しいと思う

どこへ行くのかわからないという前に
君の手を 僕は掴んで歩きたいと思う

だから
怖がらないで欲しい

無情にも僕は君の背中を押す

だけど
それはきっと君のため






小さな指輪に涙こぼした 楽静 2001/04/20(金) 02:21:59


道端で拾った小さな指輪
ふちに書かれたK.Tってイニシャルに泣きそうになる

だってこれはきっとこの人だけの物
作られた時からずっとK.Tさんと一緒にいたはず

なのにこんな所で一人きり

もしかしたらこれは
あまりにも小さな事件なのかもしれない
世界に起こる紛争や
毎日のように起きている事故に比べたら
本当に
あまりにもちっぽけな事なのかもしれない

だけど
小さな指輪に込められた重いのために
僕は ただ立ち止まったまま動けなかった

こんな所で一人きり

それってまるで
今の僕みたいだ






闇の下で 楽静 2001/04/21(土) 01:29:01


だんだんと暗闇になっていく空
赤い光は 威力を無くし闇へ吸い込まれる
街のネオンも 空の闇には届きはしない

そして闇の中 取り残される人々の群れ

あれは帰りを急ぐサラリーマン
あれは遊びつかれた女子高生
あれは恋に破れた若い男
あれは今夜の食事を頭を悩ます主婦

誰もが集まりながら 

この暗闇の下で
この群衆の中で

たった一人歩いている

孤独

周りに人はあまりにも多いのに
周りに光はあまりにも多いのに

この闇のした
全てが無駄であるかのように

誰もがたった一人で歩いている

誰もが
不思議な孤独を感じながら






迷いを振り捨てるまで 楽静 2001/04/22(日) 23:31:49


気がつくと僕は十字路に立っていた
道がどこまでも続いている長い十字路

先に何があるのかわからない
だけど
一体どこから来たのかもわからないで

ただ十字路の真ん中で途方に暮れていた

天からボクを見下ろす太陽は次第に地へと姿を消し
新たに金色の月を呼び覚ます

永久に続くロンド

ただ ボクが立つ十字路だけは変わらずに
とほうに長い道をボクに示すのみ

まずはどこへ行こうか?
踏み出した足を次の一歩の代わりに引いている

どこへ行けば良いのか?

誰も答えてくれない
そして昼は夜へと変わり夜は昼となる

幾重にも重なる時に耐え切れず
僕はやっとの事で踏み出した足の向こうへまた足を向けた

西へ

いつだろうと日が照らしつづけ沈む場所

間違いでもいい

ただ
太陽だけはいつもボクを照らしつづける
そう思いたかった


あの時から 何年が過ぎたか
僕はまだ道の終わりを目にしない
でも
太陽だけはいつもボクを照らしつづける







私は時折逃げ出してしまう 楽静 2001/04/22(日) 23:36:57


薄汚れた電灯の光を受けながら
町を歩く
何もかもから離れるように

掴まれぬよう手はポケットにねじ込んで

孤独というものが
人にとって最大の敵であるのならば
街中で時折一人になった瞬間感じる安堵はなんなのだろう

くだらないとはき捨てれば捨てるほど
タバコ臭い町は汚い物に変わっていく
その街に住む人々から離れたくて一人になって

寂しげな電灯の下でほっと
胸をなでおろす自分がいる

孤独というものが
人にとって最大の敵であるならば
今私はきっと
その人すら否定したいだけなのだ






「言葉」に振り回されているうちに 楽静 2001/04/23(月) 23:26:48


なぜ 思いは言葉にならないのだろう
なぜ 見つめるだけで伝わらないのだろう

誰かが生み出した「言葉」って奴を手探りで組み合わせて
また私は
どこかであったような言葉を口にする

「私は あなたのことが 前からずっと……」

これじゃない
こんなんじゃない
私の思いは こんな「言葉」では伝わらない

分かっているのに「言葉」は初めから決められていて
私は「言葉」に悩み始めた時からすでに
「言葉」によって縛られている

逃れられない呪縛に耐えられず
私は言葉もなしに また
あの人を見つめつづける

いつか思いが「言葉」無しに伝わる事を願って







疲れきったその体を 楽静 2001/04/23(月) 23:42:28


疲れた体を 休ませよう

たとえ道の途中だとしても
だって
疲れきった体で先を急いでも きっと
道端の花には気づけない

誰もが何かを探して必死に生きているけど
そのために何かを犠牲にしているけど

それが間違っているなんて僕は言う気は無いんだ

ただ

春には春の花が咲き
夏には海の香りが地表を漂い
秋には山が美しい衣をまとい
冬には白が地表を覆う

この星の美しさをいつでも心に思っていて欲しいだけなんだ

歩きすぎた足を休めた時 次に歩き出す事だけを考えるような寂しい人に
なって欲しくないだけなんだ

疲れたのなら立ち止まって 周りを見てみよう?
この星の美しさに気づいたのなら きっと

歩き出すのも楽しくなるから






いつだって時間なんて物は 楽静 2001/04/25(水) 23:22:32


「あと五分だけ待ってよ」
そう言うときに限って時間は
容赦なく進む そんな気になる

「あと五分しかない」
そう言うときに限って時間は
カメみたいにゆっくりだ そんな気になる

時間は確かにそれぞれに平等なのに

満足する者は いつだって
不満足な者よりも少ない

結局平等なんて物は
人の感情しだいでどうとでも代わる物なんだ






君に囁かれる言葉に頷けない僕がいるのは 楽静 2001/04/27(金) 01:21:16


「愛している」って言葉に
素直に頷くのは難しい

だって

愛 何て 
言葉知っていても意味に届かない

この心にあるものに
ただなんとなく名前をつけて
それが
愛 何て言葉に似ているなんて
ただ思い込んでいるだけなんだ

だから
言われたってぴんと来ないよ
「愛している」
なんて

それより抱きしめられた方が
気持ちは伝わる 言葉よりも感情で

それでもきっと言葉に出すのは
信じたいから

思いは必ず相手に伝わる事を
人の生み出した言葉の可能性を






疲れた体で想う事は。 楽静 2001/04/28(土) 00:52:05


疲れきった体で何を想うのか
動かぬ四肢に願いをはせて

やがて訪れる静寂の前に
抗う事など全て無駄になるのだろうか

何もわからないなんて無知のふりして
背を向ける 少年への決別を恐れて

疲れきった体に何を想うのか
考えられぬ脳に 思考する事を求めて

やがて訪れる静寂までに
一体何度過ちを繰り返すのか

疲れている
投げ出している
あきらめている

そして
また求める
新しい朝を
いつか
疲れたからだ動かせるように






置き忘れた思い探して 楽静 2001/04/29(日) 23:36:35


置き忘れた思い探して
歩き疲れた場所に 見つかる物はあるのでしょうか?

形ないもの
それは確かに 私の中にあったはずのもの

置き忘れたその後で
置き忘れていたことも忘れていた日々を過ごした後で

この胸に取り戻したいと思うもの

一体何処にあるのでしょう?

たとえ見つけられたとしても
その時にはきっと
私はまた 別に何かを置き忘れる

人はきっと
いくつもの「置き忘れ」を繰り返し
ヒトから人へ
子から大人へ
 生から死へ 
進みつづける生き物なのではないでしょうか

置き忘れた思い探して
私はまだ
「ワタシ」という旅の途次でしかないけれど

いつ過去の道の果てで
何か答えを見つけられるよう
今はまだ
置き忘れたものたちを探しています