2001年 五月の作品たち

青い風船を飛ばして 楽静 2001/05/02(水) 02:00:21


青い風船が一つ
蒼へと吸い込まれていく

尻尾のようにたれた紐先に
誰かの『言葉』繋ぎとめ

青い風船が一つ
蒼へと吸い込まれていく

夢や希望なんて重いだけで膨らんだその体は
いつか蒼さに負けてしぼんでいく

だけど

たどり着くだろうどこかの場所で
青は また新たな青へと『言葉』を託す
そして『言葉』は思いを伝え

青は初めて蒼に優る








伝わってしまった痛い『言葉』のために 楽静 2001/05/03(木) 00:48:17


一度口から出した言葉は
訂正できない 本当は
「遺憾であります」
そんな
形式ぶった言葉なんかじゃ


誰かを傷つける言葉は
時々
何気ない日常から突き刺さる
取り払えない 冷たい刃
「いまのなし」
そんな
笑って謝る言葉なんかじゃ


だけど
僕らは言葉を使わないわけにはいかなくて

傷つけながらも
その何倍も 愛せるように
今日も言葉を使ってく

「ごめん」っていう
ほんの小さな言葉と思いが
傷ついた心を癒す事を信じて










僕は汚れる 楽静 2001/05/05(土) 01:58:59


僕は汚れる

歩くたび
話すたび

「僕」という真白な存在は
汚れていく この世界の全てによって

その事実に戸惑いながら
でも と
自分に問い掛ける僕がいる

お前は初めから「僕」だったのか?
汚れる事で初めて
「僕」という存在になったのではないか?

ならばお前はどこにいる?


問いかけに答えられないまま

僕は汚れる
この世界に包まれて







気持ちがわからないからこそ人は愛し合う 楽静 2001/05/08(火) 00:00:23


互いの思いなんてわからないから
僕らは分かったフリをする

好きな歌
好きな映画
好きな俳優
好きな言葉

「ああそうなんだ」なんて言葉吐いて

あまり納得できなくても
あまり賛成できなくても

僕らは分かったフリをする

そうする事で僕らの仲が
いつまでも続きますように 願いながら

「だけど
 だけどほんの時には
 争っちゃうのも楽しいかな?」

なんて考えながら
僕は今日も君に合わせて笑みを浮かべる
君の笑顔が
消えないことを願いながら







瞬間を探しに 楽静 2001/05/09(水) 23:31:52


忘れたなら思い出して
あなたにも大切な瞬間が会った事

色あせたシャツに慣れる前に
またあの時を探しに行こう?

この一瞬だけが大切だって
思えた時があるはず きっと

だけど
時は思い出を流してしまう
持ちつづけようと思った感情は
いつの間にか剥がれ落ちて
人は誰も
色あせたシャツに慣れていく

だからもう一度見つけよう?
大切にできる瞬間

人は誰も瞬間を生きているのだから









「不安」と君を呼ぶのなら 楽静 2001/05/12(土) 00:19:29


不安
幸せをつかんだ瞬間
それは始まる

不安
それは

当たり前の朝の中に
通学途中の電車の中で
授業中窓の景色から
帰り道街灯の明かりに照らされて

徐々に膨らんでいく
形も無く
どれほどの大きさかわからぬままに

心を覆う
体中から「幸せ」を過去形に変えていく

そして
溢れ出す猜疑
呼び込む悲しみ

不安に押しつぶされ

人はまた
涙の雫で朝を迎える

差し込む光を
わずかな それでいて確かな
「希望」だと信じて








思考の露出(スランプ)楽静 2001/05/12(土) 23:04:08


流れていく
思考という言葉によって作られた形無きものが

流れていく
ここではないどこか

ただ分かる
私よりも遠い場所だと

そして
失った思考の代わり新たに増えてくる
絶望

何を言えばいい?
何を書けばいい?
なにをすればいい?

思考という言葉によって作られた形無きものが
流れて行く

果たしてそれは初めから
私の中にあったのか?

それすらもわからずに
握ったペンを使えぬ私がここにいる








本当に悲しいのなら 楽静 2001/05/18(金) 00:17:20



辛い時は 本当に辛い時は
一人夜の公園に出ればいい

月の出ている日ならいい
風は優しく
悲しみに冷たくなった心暖める

公園の数個しかないベンチに座り
ただ
ただ目を閉じればいい

何が聞こえる?

言葉には決してできないもの
悲しみを押し流してしまうもの

辛い時は 本当に辛い時は
一人夜の公園に出ればいい

見上げれば銀色の月
その輝きはいつだって明日のため

気がつけば
君の悲しみも癒えている