愛 カタリ 楽静 2002/07/03(水) 22:07:18 「好き」としかいえない僕を 見つめたままに君は微笑む 僕の頬を両手で包んで 「わかってる」 言う君に僕は瞳を奪われる 「愛している」って言えない僕を 自分の鼓動に近づけ君はささやく 「わかっている」 優しすぎる微笑に 僕はしなだれかかって朝を迎える 幸せな日々 君の笑顔の裏にある寂しさ 気づかないふりする僕のエゴ―― どうして 好きな相手に「好きだ」と言う簡単なことが難しいんだろう? 君を見つめたまま僕は言葉をなくす 「わかっている」 何度も繰り返す君へ いつか届けたい言葉を胸の中で繰り返して 許されなくてもいい 今だけはこの温もりの中で眠らせて 拾った哀しみ 楽静 2002/07/05(金) 00:17:12 銀色の哀しみを拾った 長く細身のお前 お前の冷たさには暴力的な自信があった 電灯の光を反射させる私を 冷たい視線が通り過ぎていく このままお前を投げ捨てようか? それとも 赤を流して私の願いをかなえようか? お前は何も語らない 語るのは お前を使ったものばかり 家に帰ったらお前で赤を流す代わりに 熟れたりんごの皮をむこう 流し場へと垂れていく赤い筋は きっと お前の冷たさを暖かく包む ツナガリ 楽静 2002年7月14日 つながりが欲しくて僕は君を抱いているわけじゃないし 愛を繋ぎとめたくて君は僕に抱かれているんじゃない そう信じてもいいかな? あっけないくらいに簡単に僕らの間は断ち切られてしまう あまりにも細い糸に頼って僕らは繋ぎとめられている だけどそれでも 君を愛しているからこそ 僕は君の体を抱くのであって 僕を愛しているからこそ 君は僕に抱かれるのだろう そう信じてもいいかな? なんに対しても自信の無い僕のために いつも瞳を閉じて待つ君のために 僕はささやく 「大好きだよ」 僕らは固く結ばれる ただそんな移ろいやすい感情のために ウラギリ 楽静 2002年7月19日 裏切られたって分かっても 君のことを嫌いになれない あるはずの無い着信 会うわけの無い友人 嘘で抜き出された空白の時間 笑顔で僕に語る君 騙されたフリが簡単すぎて 君のことを嫌いになれない ココロが腐食していく 君色が醜く染まっていく なのに僕は君を待つ 君のことが嫌いになれない 今日も僕は言う 「大好きだよ」 当たり前すぎる僕自身の心を正直に でもきっと君はもう僕を見ない―― 君のことが嫌いになれない そんな僕が嫌いな日々 無題 楽静 2002年7月19日 夕日が沈むたびに見上げるように目で追っていく老人を 私は名づけることが出来ずにじっと見ていた 両手を広げて沈んでいく太陽を 掴むように大きく伸びをした後で老人は 静かに身体を動かしてく 流れる腕の先に皺と骨だけで出来た手の花が咲く 老人の顔は荘厳で近づくことは出来ない ゆっくりと吐き出される息に圧倒されたまま 私はいつのまにか老人を近くに感じ 息遣いは緩やかな動きとともになる 赤がゆっくりと闇に飲まれていく 老人は身体を動かし続ける 私はただ黙って息をする 人々は暗闇の中を帰り始める 時の流れの中でちっぽけなはずの老人は 時なんてものに見向きもせずただゆっくりと 身体を動かし続ける 呼吸をし続ける 私は見とれたまま 明日の朝も老人は きっと同じように身体を動かしているのだろうと思った オワリとハジマリ 楽静 2002年7月25日 終わりと 始まりの歌を歌いたい すべてが終わるのならば納得は出来るから すべてが始まりであるのなら目をつぶって泣けるから 君が来ない日 君と会話が続かない日 何度も意識する終わり だけど始まり 泣いたばかりの瞳で夕日を見たら 今日の終わりよりも明日の始まりを感じられたら いいな 空を見ていた 楽静 2002年7月25日 何も出来ない 一日が過ぎ去っていくそんなときに 僕たちは何もできないでいる 何かしなければいけないと思い込みながら 結局動き出せずに道端でうずくまってら 情けない 言葉だけは簡単に吐くことが出来る だけど あきらめないでいることは難しくて 一日が過ぎ去っていくそんなときに 僕たちはただ 黙って空を見ている 君をなくして 楽静 2002年7月27日 君がいなくても 心痛まない僕がいる 僕の声が届かなくても 平気で笑える君がいる 心が互いに離れていく 言葉では繋ぎ止めれなくて 裸で向き合っていたはずの僕らは いつのまにかブロンズの鎧を身にまとってた もう僕には君が見えない もう君には僕が見えない 寂しささえ忘れた二人はいつのまにか 今まで作り上げてきたすべて砂に戻して他人に還る 君がいなくても 僕がいなくても そんな「言葉」さえ交わさなくなる 背中あわせの君と僕 孤独症 楽静 2002年7月27日 誰かのいない辛さに耐えられなくて 誰かを忘れた人がいた 周りのすべて見ない振りして いないからこそあわないのだと そう思い込んでいるうちに 本当に たった一人になっていた―― 暗がりの中で願うことは 楽静 2002/07/27(土) 00:24:05 間違えだらけの毎日に 簡単に僕らは自信を失っていく 誰かの言葉に傷ついた瞬間は 何度も胸の中で繰り返される 終わらない後悔 いっそ一人だけの世界ならばいいと思う週末 けれど鳴り響く電話のベルに 受話器から聞こえる温かい言葉に 暗がりにいた僕らの心は温められて また 太陽を夢見る朝を迎える 決して強くは無い僕らだけど ともに暖めあいたいと切に願う ……そんな人ばかりならいいのに 自己喪失 楽静 2002年7月29日 冷たくて暗い場所にいた 水底に見えたナイフは錆びついて使えそうも無かった 見上げた空には星が無かった 心から漏れる白い息に気がつかない人々の群れ 僕はどこにいるんだろう? 何かに囲まれていた 見えないだけでなく漠然とした 何か 触れられなくてもがこうにも手は空をかくばかり 僕はどこにいるんだろう? 喉元まで競りあがってくる嘔吐をこらえ しばたいた目から溢れそうなものをじっと抑える いつのまにか何かが始まって いつのまにか僕の中で何かが終わっていた 僕を残して 僕はどこにいるんだろう? 冷たい群 空みたいに暗い今日の一日 懸想 楽静2002年7月29日 君を 想うときが一番幸せ だけど ほんの少しの不安で僕は 何も出来ない奴になる 君を想うだけ それだけで充分だって証拠が欲しい |