2002年 八月の作品たち

真夏の一ページ
         楽静 2002/08/02(金) 20:13:41



日差しに焼かれた心臓が音を立てて崩れ落ちた
呆然と立ち尽くしたまま
僕は陽炎の向こうに立つ君を見ていた

繋がれた手の先にある影
写したくもないのに光景は目に焼き付けられる
楽しそうに微笑む君を
僕は久しぶりに見た気がして
そんな自分に吐き気を覚えた

このまま背を向けてもいいかな?
見てない振りして道を戻っても

君の答えなんて聞きたくないし
君の微笑を消したいとは思わない

地上を焼く太陽の下
体中暑くなりながら
壊れきった心は冷え続ける
ただ
時の止まったように僕は君を見ていた





モウイイヨ   楽静 2002年8月6日


「もういいよ」
なんて言葉を口に出して
結局囚われたままの私がいる

少なくなる電話
返らないメールの返事
違えられる約束
それでも時々あなたが奏でる
「愛している」という幻想曲

「もういいよ」
何度つまらなそうに呟けば
無くなってしまう想いを諦められるのだろう?
徐々に指先から漏れていく嬉しかった記憶一つ一つ
今は私の元にもう戻らない
悲しみさえいつかはきっと流されていく

そして私は一人
「もういいよ」
呟いたまま膝を抱える



飴玉     楽静 2002年8月6日


あなたの想いを口に含んだ
舐め始めた頃には甘酸っぱかった喜びが
今はもう
苦い寂しさへと変わってしまう
徐々に形を変えていくあなたの思い
変わらなければいいのにと想いながらも
捨てきれずに
あなたから受ける苦しみにさえ慣れる私になっている
いっそ
噛み砕ければ楽なのに




縛心   楽静 2002年8月16日

ありきたりの言葉なんかで
君に何か伝えようとは思わない
僕だけの言葉で

そんな思い上がりに悦になって
本当の気持ちオブラートに包みすぎた
君の目すらまともに見れないくせに
言葉ばかりが背伸びしている

言葉よりも抱きしめて
ありきたりの言葉で君を酔わせればいい
僕だけを見ているように
君のすべてを僕へと縛り付ければいい

愛情なんて拘束具
飾り立てたって真実は結局
熱した鉄の匂いがする



恋の行方  楽静 2002年8月16日


裏切られるたびに心は弱くなるね
期待しなければいいのに
淡い思いばかりが宙に割れていって

情けないほど君を想うよ
思いが力になればいいと
弱い心で未来を抱いて

すれ切れすぎた心が泪を流す
ふやけきった僕の肢体
君の一言があればあっという間に乾くのに
太陽はまだ出ない
夜がまた現れた




夏  楽静 2002年8月23日


太陽が照らし出した君の横顔は
天使たちの記念写真 夏の匂いがした
セピアがかった思い出を
消えないうちに二人で抱えあげていくんだね

君は僕にとっては一体なんだろう?
思い浮かべようとしても大きすぎて収まらない
光り続ける太陽に例えようとして
沈むことの無い君の笑顔に否定された

夏の一こま 何気ない一ページの中で
僕らは二人溶け合っていく
二度と戻れない 日々の中でも
ひび割れることのない愛を育てよう 君と





照れ屋の愛情表現 楽静 2002年8月23日


二人で過ごす休日に
幸せを感じたとき日は沈み始める
一日の短さを思いながら
笑顔を浮かべた君にそっとくちづけた

今になってもまだ驚いた顔をするんだね?
恥ずかしそうにはにかんだ君を抱きしめる
心は単純な言葉に変わって
「好きだよ」
なんて耳元で呟いては君を抱く手に力をこめる

僕らの一日は決して長くない
君と出会う日をまた僕は
君のいない部屋で思うのだろう
だから今は一瞬でも長く
君の温もりを感じていたい

これからも共に歩んでいく君へ
僕はいつまでも君の傍に




次ぎ会うまでの小さな別れ  
           楽静 2002年8月25日


君の後ろ姿見送った後
つり革の冷たさに気づいた
走り続ける窓からは君の影すら見えない

暖かかった体が
徐々に外の空気に冷まされていく

君がいれば
君がいれば
口の中で二度呟いた呪文

赤く染まった空の下
また明日会えることを願って僕は
駅までの数分目を閉じる



欲求の律動  楽静 2002年8月25日


欲しいのなら与えてあげる
想いの証拠
決して手に入らないと思っていたんだろう?
だからそんな驚いた顔で僕を見るんだ
もう君は僕のもの
そして僕は君のもの
小さな鎖で繋ぎとめよう
見えない鎖のその先には
小さなリングが光り続ける

さぁ僕にも鎖を頂戴――



ポジティブ    楽静 2002年8月25日


嘆いても
あがいても
戻らない時
だけど今日の君は
昨日の君より少し素敵で
だからこれでいいのかなって
なんて単純な僕の日常