2002年 11月の作品たち

君色 2002年11月4日


君を思うたびに
嬉しくなる
幼くなる
昔の僕に戻りたくなる

なんておかしい僕

君を思うたびに
出来やしない夢を見る
ありもしない希望を抱く
昔の自分になった気がする

なんておかしい僕

君を思うたび
そう君を思うたび
君のことが好きになる
好きな僕が好きになる

なんておかしい僕
だけど幸せな僕

君を想っていていいよね?





新しい朝に投げ受けた言葉 2002年11月6日


哀しいほど美しかったあなたの声に
聞いてしまった一言が
今もあなたを傷つけている

出せない答えに
今もこだわるあなたに
期待ばかりが膨らむ私は
恋する資格もない愚か者だろうか

今はあなたの姿を見て
胸の痛みを抑えている
出来ることなら聞かせて欲しい
あなたの口から

私の投げた言葉の答えを





移ろい  2002年11月6日


悲しむだけ悲しんで
泣きたいだけ泣けば
楽になれるのかなあ?
また夢を見れるのかなあ?
情けないほど弱い僕を
「好きだ」っていってくれたあの子忘れて
暮らせるのかなあ?

不安だらけの毎日にため息
疑問符だらけに出ないやる気

「いつか」なんて時を信じて
空を仰いで夢を見る日々……





 2002年11月6日

冷たい想いが心の透き間を満たしていく
止められない暗闇の思考
あらがうほどに目の前は汚くて
いつも「意味」を見つけられずにいる

誰か教えてくれればいいのに
悲しむことの虚しさを
悩むことのくだらなさを

それが分からないから今も
通り抜ける冷たい風に
身を震わせながら動けずにいる





悲しみの救い方 2002年11月6日


道の途中に落ちていたのは
鉛色のため息でした
色づけされた悲しみは
誰にも拾われないままに
冷たく転がっていました

かがみ込んで
指を伸ばして
僕は悲しみを拾ってみました

君はどこへ行きたいの?
何でそんなに冷たいの?

手の中で転がして
僕の暖かさで暖めたなら
ふっと
軽くなりました
ため息は
やがて空へと溶けていったのです

悲しみはきっとそういうもの
暖めれば溶けていく
だからあなたが冷たく涙を流すなら
僕はいつだって暖めに行くよ
この手で





恋見つけました 2002年11月8日


心の中に現れた
淡いこの膨らみは
一体何と名付ければいいのでしょう?

揺れ動くたびにくすぐられて
可笑しいような
哀しいような
けれど決して消えはしない

初めてではないはずなのに
いつだってドキリとしてしまう
心の中に
まるで誰かが住み着いたような
そんな気さえするのです

住み着いた誰かに
つけられる名前は一つだけ
照れくさいけれど
そっと
暖めながら育てたい
――恋
また見つけてしまいました





夕焼け 2002年11月8日


教室から見た空は闇と光が分離していた
赤い道が暗闇との境目を作っている
徐々に今日は追い立てられるように細くなっていく

時折空に響く笑い声
帰り支度を済ませた子供達の歓喜

終わりという意味を知らない彼らは
一日を長く続いていくだろう一コマとして目に納める

寒さに震えるようにカラスが鳴く
また明日も彼らは餌場を求めさまようのだろう

流れ流れていく
緩やかにけれど止まらず
今を押し流していく

移ろう時間
黄昏の明日への一時





晴れた空に 楽静 2002/11/09(土) 08:24:57


青い空に気持ちを漂わせた
浮かび上がったままなかなか動かなくて
何度も形を変えながら
気がついたら
君の形をしていた

ああそうか
そんな改めて気づかされる君への想い
例え僕がここで雨になっても
君には決して届かないけれど
君に降りたい
この気持ちが君へと染みていったらいいのに

願い事を空へと飛ばして
ぼんやりと見る
今日の晴れ空





潰されながら 2002年11月9日


重くのしかかってくる重圧に
僕は潰されかけている
両手はすでに感覚を失い
踏ん張っているはずの足は
すでに地へと沈んでいる

なぜこんなに頑張っているんだろう?
自分に問いかけたけど答えは見つからなかった
「大丈夫だよ」
なんて言葉を笑顔で繰り返して
重くなっていく重圧に
潰されていく
ひしゃげていく

ああ僕に何が残っている?
いや僕は一体
何がしたかったんだろう?





いつもピエロ 2002年11月9日


「がんばろう」
「頑張らなくちゃ」
「大丈夫だよ」
自分自身に言い聞かせて
道化の衣装を着続ける

音もなく始まるサーカス
少しでも多くの笑顔が見たくて
仮面の中に涙押し込めて踊り続ける

どれだけおどければ
辛いって気づかれずにすむのかな?

ただ嘲笑を与える観衆に
深く頭を下げて一日を終える毎日
真夜中一人衣装を脱いだら
鏡の中の自分が笑ってた

自分自身すらだましたピエロ
一体何時になったら
本当の涙落とせるんだろう?





慣れ 2002年11月11日


求めれば与えられる想いならば
与えられ続けることに慣れる前に
いっそ消してしまいたくなる

面白い事なんて何も無いと
言い続けて何が出来るんだろう?
夢を見ずに生きられるのなら
生きる意味さえ悩まずにすむのに

変わらない毎日なんて無いんだ
疲れた体より精神の眠りを抱いている

このままどこへ行くのかな?

夕暮れにあの時叫んだ熱情
未だ戻らない熱い血潮は
本当に僕に流れていたのだろうか?

冷め切った日常
与えられるばかりの流れる日々





君に知らせたい君のこと 
         2002年11月11日


誰かのために生きているわけでもないのに
君はいつだって何かを背負って生きているね?
声をかけれずにいた僕のことも
下を向いて歩く君じゃ気づけないよね

俯いている顔あげてみてよ
君と一緒に僕はいるから
何も君を縛りはしないよ
空はいつだって空のまま落ちずにある

ほら笑えるよね?
君が生きている意味は君しか示せないこと
もう気づいても良いんじゃない?

君と一緒に歩きたい
けれど
僕は君の重荷にはなりたくないんだ

顔を上げて共に歩こう?
君はいつだって君のためにいる





君への詞 2002年11月11日


もしもあなたが落ち込んでいて
今まで生きていた何年かにため息をつくのなら
素敵な呪文を教えてあげる
吐く吐息に熱がこもって
また明日から
日々を生きれるそんな呪文を

「あなたがいてよかった
 他の誰でもなくって
 あなたが
 あなたとしてここにいて
 本当によかった」

これはお世辞なんかじゃなくて
ましてや同情なんかなじゃない

あなたがもしも落ち込んで
地球が落ちそうなほど不快なため息をつくのなら
僕は行くよ
あなたの元へ

この呪文を
あなたの隣で唱えるために





ポジティブ・シンキング……リアリィ? 
           2002年11月15日


ポジティブに生きよう
前向きに後ろを振り向かずに
後ろ歩きで歩くんじゃなくて
しっかりと進む方向につま先を向けて

落ち込んでいる人がいるなら肩を落として
泣いている人がいたら一緒に少し泣いてあげよう
だけど喋る言葉は前向きに
生きる楽しさを忘れなければきっと
僕らの間には笑顔の花が咲く

ポジティブに生きよう
別に無理して明るく笑ってなんかいないよ
どんな辛いことがあっても
明るく
明るく
引きつった笑みにならないよう時々頬を叩いて

ポジティブに
前向きに
……時折息切れしそうになるかもしれないから
そのときは
誰にも見られないように泣いても良いよね?





書き人 2002年11月19日


例えば歩いているときに見つけた子供の幼さを
自身の昔に重ねたときに感じる違和感
例えば一本道を走ってくるトラックを
ぎりぎりの距離で避けたときの焦燥感

そんな感情が表せたらいいのにと
僕はいつも何かを書いているのですが

人がこれまでに生み出してきた文章は
結局絵空事のように物事を繰り返すばかりで
目新しいことも奥ゆかしさも空想という範疇の中で永眠し
やがて
小難しい理論は
「わからない」という一般論の中に沈んでしまうのです

すべてのことを正直に映し出せる
そんな能力が欲しいと願っては見たけれど
鏡ですら人は対象に写るのだから
それは叶わぬ願いなのかもしれません

なんて事を想いながら
今日も僕はキーボードを打っています





惑わされないで僕に 2002年11月24日


僕が君に向ける感情を
どうか勘違いしないでください
僕は誰も愛しはしないのです
少なくてもここしばらくは
そう心に決めて生きているのです

愛すると言うことは
相手の重りを一緒になって背負うことなんだと思います
僕は今疲れ切った旅人です
重かった荷物をやっと下ろして
息をついているただの旅人にすぎないのです
だから僕にこれ以上重りを背負わせないでください

けれど僕は君が好きで
愚かにも君との時間を楽しんでいます
だから君よ
君は勘違いしないでいてください

僕の重りを背負わなければ
いつだって君は僕に背を向けられるのですから





もう一人の冷めた自分 2002年11月24日


楽しかった時間が過ぎると
いつだって冷めた自分が顔を覗かせる

楽しいって事を否定して
大したことがない日常に僕を沈ませる僕
冷たく光った瞳は
楽しかったはずの思い出を徐々に凍らせていく

「楽しさなんていらない
 結局そんなものは
 心を弱くするだけなんだから」

傷つけられることを極端に畏れる冷めた僕は
楽しさを封じ込めることでようやく現実を生きている
その弱さを見せたくなくて
僕は楽しい日々を送り続ける

楽しいだけの僕
冷めた僕
二人で踊り続ける一人のダンス

この話に次に加わる人は
僕らの熱に耐えられるだろうか?





笑う僕 2002年11月25日

学校からの帰り道夕日を嗤った

可笑しかったわけじゃない
赤はいつだって赤いまま
だから嗤いは口からこぼれた

途端すべてが白けた
僕は驚くよりも呆れて世界を見ていた
なんて陳腐なんだろう

僕の前にある道は
未来へと続く路なんかじゃないんだ
僕が話す言葉には
真実なんて初めから無いんだ

そうすべては虚構だった

一日も
一時間も
一瞬も
すべては塗り固められた思いこみで突き進んでいく
意味もない
悟りもない
空気みたいにまとわりつく現実があるだけ

けれどそれは空虚だ

明日からの生き方が分からなくなって地を見下ろした
水たまりには醜い生き物が目を凝らしていた





 2002年11月26日


体からあふれる醜い感情を封じるために
僕は筺を作っている
愛情
友情
熱情
あらゆる情を込めて以前作った筺は
いつの間にか薄汚くなって
抑えきれない臭気が膿を増やしている

今度は何で筺を作ろうか?
それともいっそ
この醜さを世界に振りまいてしまおうか

壊れそうな筺を囲むように
僕は無気力の棺を作った
真白の板は
内から漏れる感情に触れ黒く焼けていく

やがてまた壊れるだろう棺に座って
僕はしばし休むことにした





空の色 2002年11月29日


空の色を当てられない
雲まで今は霞んでいるから

君に伝えたい言葉をいつか
言おうと心にためていた
ちっぽけな僕の勇気じゃ
詰め込んだ言葉の箱を開けなくて

離れていく君
だんだんと薄れていく言葉
後ろ姿を見ていられなくて
空を見る僕

横を向いたまま開いた箱ら
言葉が流れていった

空の色を当てられない
僕の思いがぶちまけられた空の色