2003年 八月の作品たち

Love yourself  2003年8月5日


あなたを誰より好きでいて
鏡に映る姿そのままに
心の中まで一直線に
あなたがあなたでしかないことを
嘆く前に胸を張って

変わりたいって願っても
魔法の杖はどこにもない
いくら自分が嫌だって
姿を変える魔法なんて見つからないから

あなたを誰より好きでいて
鏡の前で背筋延ばして
笑顔浮かべて
今日をただ
めいいっぱい生きればいい

大丈夫
昨日のあなたよりきっと
今日のあなたは素敵だから





眠りに落ちる数秒間  2003年8月6日


熱帯夜に怯えて丸まっている
浮かんでくる汗にいらだつ心抑えて
くだらないことにばかり思い悩んで
無力さばかりを感じてしまう

それでも眠気は意地悪く僕をさいなみ
闇の中へと吸い込まれる
一時の意識の剥離

そんなもの一体どれほどの救いになるというのだ





火曜日の憂鬱  2003年8月11日


朝を迎えて僕は素直に
心のままにただ愉快に
思い描くたび笑えたらいいな
あり得ない でも過ごせたらいいな

願望ばかりが浮かぶ時は
そっと目を閉じ闇を見つめる
思うだけじゃ始まらないから
くだらない望みは一瞬でも忘れたくて

夢想する日々
始まりのない朝





月への願望  2003年8月11日


今日は満月かな? なんて
思い描いてみた夜空に限って
月がいびつであればいい
期待して見上げるたびに落ち込んで
そしていつか空を見ないで
ある日何の気無しに不意と見上げて
見つけてしまう
ただ丸い月を

そんな仄かな望みに苦笑して空を見た
月は出ていなかった





情報過多  2003年8月15日


情報に飲み込まれている
好きなあの子への言葉考えながら
世界の裏側の戦争を身近に感じるほどに
幾千ものドラマに飲まれて
たった一言の「好きです」さえも陳腐になっている

こんな世界を望んだわけじゃないのに

リアルな雨に飲まれながら
天気予報に舌打ちをして
飛び込んでくる携帯のニュースに
不幸な出来事を捜している
一晩かけて考えたあの子への言葉は
ドラマの脇役に先を越されて破り捨てた
破れかぶれの叫びでさえも
怯えている
どこかで聞いたような気がしている

だけどここにいるから

飛び回る情報にうたれて
あの子への話題も操られて
それでも断ち切る勇気はなくて
飲み込まれている
画面で微笑むキャスターにうなずいている

今日あの子になんて言おう?
待ち合わせの場所に行く前に
慌ててコンビニで雑誌を買った





降り続ける雨の下で  2003年8月20日


飲み込めばいいすべてを
この雨が
ありふれた現実を
意味もない日々を
すべて飲み込んで
無くしてしまえばいい
空虚への憧れ
意味のある日々への恐れ
そんなくだらない感情も
わけもなく生まれてしまった言葉さえも
飲み込めばいい
洗い
流してしまえばいい

そんな風にして見上げた空はとても暗くて
僕は結局
傘をたためずにいる





きっとあなたは私より恋をしている  
                2003年8月24日



「恋をしているの?」
そう言って笑ったあなたは嬉しそうで
言われた瞬間に
心の中の期待がすべて
溶けてしまうのを感じました

あなたは恋をしています
私以外の
他の誰かに
あなたはきっと幸せです
だからそんなに素敵に笑えるのです

あなたの笑みを消したくなくて
私は苦笑いなんか浮かべちゃって
首を振って
嘘の言葉をあなたに投げて
両手をそっと握りしめた
あなたへの想い
まっすぐ飛んでいかないように

「嘘。信じられないな」

笑ったあなたはやっぱり素敵で
かなわないほど魅力に溢れて

だから私の掌には
まだ自分の爪跡が残っています





微笑みを恐れすぎて  2003年8月26日


幼い恋心だと笑われる怖さに
あなたへ想いを伝えられずにいる
一時の憧れ
そんな言葉で決めつけられたくなくて
暖め続けている 今も
あなたが目の前にいないときでさえも

知らないからからこそ
見せてくれるあなたの暖かさを
私の想いで消したくなくて

今日も胸を押さえてうずくまる
心配げなあなたの声に
ますます痛む心をこらえて笑みを浮かべる

せめて
私の前ではいつも
あなたが笑えますように





一人の君へ  2003年8月30日


疲れるたびに叱咤して
歩いている足下ばかりただ見つめている
口から出た言葉はみんな言い訳になるから
無言で歩き続けている
目的地さえ見えないから
明日に弱々しい夢を託して

そんなに自分を追いつめないで
あなたはあなたでしかないのだから
一人で持ち上げている荷物は
誰かが増えるたびずっと楽になるから

俯いているだけじゃ周りは見えないから
今日から前を見て歩こう?
あなたを心配する誰かの目を
きっと見つけることが出来るから