2003年 9月の作品たち

エール  2003年9月2日


夕日の中声を張り上げる若人に魅入られている
かつて自分にあったエネルギーと
かつて自分にはなかった情熱を
感じられる喜びと
感じてしまう寂しさと
矛盾する気持ちに苦笑しながら魅入られている

ふと夕日が消え
暗がりが彼等を包み込む
蛍光灯が辺りを照らす前の数秒間
彼等の輪郭は闇に解け
そして私は時を超え
見えなかったはずの彼等を私の中に見いだす

ああ 私たちは決して違う存在ではなく
ああ 私たちはいつか重なる存在でもない
それでも
感じる

明かりがつき幻想は消え
私はようやく彼等から離れ一人に戻る

頑張る若人達にエールを送ろう
それはきっと
かつての自分に届くから





君がいて   2003年9月9日


君がいる
嬉しくなる
楽しくなる
それだけで今日も生きていられる
照れくさくてとても口には出せないけれど

君がいて僕がいる

素敵な事実
なんて素晴らしいこの奇跡





恋心を教わらなくても  2003年9月12日


目の前にいるだけで
胸の中がむずかゆくて
声聞くたびに
耳の火照りを感じてしまって
言葉交わせば
もう鼓動は早く体震わし
立っているのも分からなくなる

水の中にいるような
綿に包まれているような
とても緩やかで
だけど不安で

見つめすぎたら消えてしまう
話しかけたら夢になる
触れてしまったのならきっと
壊れてしまうに違いない

そんな風に思うから
そんなことを考えるから
人は教えられなくても
恋を知っているのです





壁の前に立つ君へ   2003年9月15日


あきらめない強さを君に
いつだってきっと
後ろを向くことは簡単だから

努力を笑わない勇気を君に
例え誰もが嘲り笑おうとも
目を背ける理由にはならないから

そして君を信じる愛を君に
君が君だけしかいないことを
忘れないでほしいから

すべてを君が手に入れるまで
僕はいるよ
君のそばに





君でいることが奇跡だから
             2003年9月21日


誰かのために悩むたびに
何もできないって思い知らされてないかい?
君がいなくても彼は彼で
君がいても彼女は彼女で
何も変わらない
何も起こらない
そんな当たり前の事実に打ちのめされてないかい?

だけど思い出して欲しいんだ

君がいるだけで奇跡だって事
「誰かのために」そう君が想うことで
いつも誰かが救われていること
人は誰もが愛されるために生まれたんだから
君の思いは見えないけれど力になって
きっと
小さな奇跡を起こし続けてる





僕以外の誰かのために  2003年9月25日


「がんばれ」って何度自分に繰り返したろう?
いつだって鏡に向かって唱え続けた
ひび割れた私の向こうに見えた明日が
少しでも怖くならないよう声を絞って

誰もが自分のことで精一杯だから
いつからか人に頼るのはやめにした
背負った昨日に押しつぶされないよう一歩踏み出して
きしむ音聞くたびに唱える言葉

がんばれ

頑張れ

ガンバレ

ふと周りを見たらみんながみんなそんな感じで
人にのまれながらひたすら一人を感じている

だから私は刻むのです
せめて誰かが一人じゃないって思えるように
「がんばれ」なんて言葉の代わりに
想いの言葉をただひたすらに





いこう   2003年9月25日


いきましょう?
自然に
そしてあからさまに

生きましょう?
一人でもきっと想いはそばにあるから

行きましょう?

頼りないけど
かすかだけれど
君は確かにここにいるから
君だけの大切を見つけられるよう





去りゆくあなたのための歌  2003年9月29日


笑顔をいつも忘れない
そんなあなたが好きでした
抱えきれない苦しみを
何でもないように笑って見せた
それはあまりにも続きすぎた日常の
哀しき犠牲者でしかないのだけれど

会えない日々が多いから
余計にあなたの微笑が恋しくて
あなたを思い出すだけで
摩耗しきった私の心は
ほんの少し優しくなれた

もう二度と会えないあなたのために
私は今歌うのだけれど
想いが言葉にならなくて
言葉が歌にならなくて

呟くように
囁くように
単純で
あまりにも陳腐だけれど
同じ言葉を繰り返すのです
ありがとう
ありがとう

ありがとう