2003年 10月の作品たち




優しき恐がり者の君のため  2003年10月16日


部屋の中でうずくまって
あなたは今日もメールを送る

携帯のアドレスが増えるたびに嬉しくなるくせに
出会うことを恐れて泣いている
メールでは簡単に送れる「愛している」が
口から出せるのは独りの時だけ
綺麗な字で手紙を書くのは得意なのに
いつだって近状報告
気づいてない
気持ちが書かれていないこと

誰よりも人が好きなあなただから
誰よりも人を恐れているんだね
誰にでも笑顔でいて欲しいあなただから
いつのまにか誰とも話せなくなっている

失望を恐れないで
失敗を心くじけることを
終わりだと囁く声に耳貸さないで

いつだって僕らは失敗ばかりしてたんだから
例えばそう
赤ん坊に泣かれるぎこちない父親のように
頼りないけれど一歩一歩
足を踏み出して歩みを覚えてきたのだから

笑顔作って語りかけて
戸惑いながら出てくるあなたの言葉はきっと不器用で
時に怒りさえ生んでしまうけど
きっと
多くの温もりを手に入れられる





コトバ縛り  2003年10月20日


僕らは言葉に縛られる
「想い」の意味は違うのに
見えないカテゴリーに分けられて
売られている
バーゲンセールでもみくちゃにされている

使える言葉は限られて
言い出せない
大量生産されたおもちゃ箱の中
捜している
他とは違う私だけの宝

周りの誰もが同じなのが許せなくて
空に飛ばした青い風船
蒼の中で見えなくなって

あぁ誰もがもがきながらも
その抗いさえも縛られて
そうして棚に並べられる

言葉にすら出来ないこの胸の内を
「悩み」と一言で括られて





道の途中で  2003年10月25日


このままでいいのかと何度も自分に言い聞かせた
眠りに逃げる日々を終わらすために
何度となく叫び続けた夜もあった夜もあった
どこまで行くのか
何処まで行けるのか
問いは決して混じることなく
あるわけのない答えのために目を開け続ける

そうして手に入れた物は
虚しいだけの自己満足

そうして何処へ行くのだろうか?





退屈だから浮かぶ絶望へ  2003年10月28日


終わる分けないと思っていた
欠伸だらけの昼休み
言葉だらけの終末

始まる分けないと思っていた
赤く彩られた平日
息を止めたままの記憶喪失

頭の中に疑問符が踊り散らかされていく
混乱に手を叩き
いつの間にかまた一つ
違う何かになっていく

そんな
まどろみの中思い浮かべる
あるわけのない非日常