2003年 11月の作品たち

ウサギの歌   2003年11月10日


「好きだよ」なんて言えなくていい
見つめているだけで幸せだから
流れる雲を見て笑う子供みたいに
何でもない
君の笑顔に嬉しくなる

触れられない距離それでいい
話すだけで感じるから
食べずに解けていくかき氷みたいに
遠赤外線のこたつみたいに
柔らかくゆっくりと
胸に染み込んでくる

誰にも知られたくない想いだから
独りになるたび月に叫ぶ
そして
僕は誰かに聞かれた気がして周りを見るんだ

臆病ウサギの
自己完結型片思い





喪失感   2003年11月13日


何かを一つ諦めるたび
諦めた笑顔が得意になる
大切な物を手放すたび何かを得られるのなら
どんなに素敵だろう

失うだけで何も見つけられない
彷徨っている曇り空の街角
寒さに震えながら
君の声を聞きたいだけ
それだけなのに心模様まで虚ろになって

始まりの季節はもう遠いから
中途半端な気持ちばかりを大事に抱いて
何も手放せない
風に溶けていくのさえ今は恐れている

何も考えずに
今一歩踏み出せたなら
そう願いながら
今日も立ち止まる
たった独りで





一瞬の想い  2003年11月13日


想いを言葉に出来ずに 
ただ
あなたを見つめている 
ただ
この胸に生まれる喜びを 
まだ
伝えることができないまま

夕焼けに染まる横顔は 

時を忘れ景色をなくし 

闇へと溶けゆくあなたの顔 
ただ
見とれる私
時を盗まれたまま





単純すぎる懸想歌  2003年11月21日


君が好きだよ
言葉にするだけで胸が痛い
ほらこんなに君が好きだよ
独りの時には簡単に言えるのに

帰り道見た微笑みがまだ胸に咲いてる
初めてあったときなど今はもう覚えてないのに

ゆっくりと芽吹いていく
知らないうちに根付いていく
見ない振りでも気づいている
こんなにも想い溢れている

これは恋なのかな?
本当はまだ分からないだけど
側にいたいそして
君を笑わせていたいよ

ほらこんなに君が好きだよ
言葉にするだけで胸が痛い
君が好きだよ
独りの時でも耳が熱くなる





私のことなど知らないくせに  2003年11月23日


私の想いを決めつけないで
自分でさえも名付ける勇気がないのだから

時間つぶしの世間話で
仲間内のうち明け話で
私の気持ちを決めつけないで

私のことなど知らないクセに
大いなる秘密のように耳を寄せて
空想で語られていく私の懸想

決めつけられてく
知らないうちに

私まで信じるほどに理論立てられ
作られていく私の想いが
もしかしたら
そんな馬鹿な考えを私が抱くほどに

私の想いを作るのは私のはずなのに





臆病者の「もしも」なんて甘い空想  
                2003年11月27日


もしも君が独りなら
僕は側に座ってあげるけど
もしも君が恋に落ちて
幸せな笑みで日々を送るなら
ただ「よかったね」って笑っているよ

もしも君が恋に破れて
愛なんて言葉信じられなくなったとしたら
新しい恋始められるよう
そっと背中を押してあげる

もしも君が僕でいいなら
僕なんかきっと泣いてしまうんだけど
それは無理だから

せめて君の前では決して
君を好きだと気づかれないよう
僕は今日も生きています

臆病者の精一杯の強がりで――





夢を抱いたままで   2003年11月30日


抱いた夢が大きすぎて
巨大な壁は辺りを囲む
泣きたくなるほど夢は遠くて
堅実な現実は直ぐ目の前で手招いている

生きるだけなら
生きてるだけなら泣かずに済むから
いつしか「大人」なんて言葉言い訳にして
脱ぎ去っていく夢のかけら

無機質なオレンジ
洗いそこねたジーンズのよう

まともに目を向けられずに
やがて
夢見ていたこと自分で笑って
醜い皺をその頬に刻むのだろうか

そんな人になりたくなくて
夢を
ただ夢をと思うのだけれど

スーツに身を包んだ友人が
指を指して笑ってくれた
「お前じゃ無理だよ」
そんな無邪気な一言と共に