2004年 五月の作品たち

まどろみの君へ想いを寄せる 2004年5月2日


君のまどろんだ顔が
やけに近くて暖かくなる
小さく握った指に
思わず僕の手を絡ませた

何の夢を見ている?
瞬きもしない彫像
僕も出ていると良いな
せめて夢の中ではヒーローのように

静かに響く寝息さえ愛おしくて
思い切り抱きたくなるけど
今はそっと見つめているよ
目覚めた君がきっと聞く「寂しかった?」の一言に
ぎゅっとその体を抱き寄せるため





君がいない日  2004年5月3日


空がいつもより暗く見えた
笑えるはずの出来事がただうっとうしかった
人混みのざわめきがやけに煩わしかった
君からの電話がない
ただそれだけなのに

こんな時思い知らされるんだね
どんなに大切かって単純な事実
忙しいって分かっているはずなのに
いつの間にか焦りに変わる

君の声が聞きたくて鳴らし続ける携帯に
今日は
無反応な機械音が何度も答えるよ





錯綜する休日出勤  2004年5月4日


休日に彩られた街は
どこかのんびりと時を送り続けていて
焦って走る僕の背中を
なま暖かい風がバカにしたように撫でていく

(どこに行くんだ?)

呆れるくらい単純な問いかけ
駅員が見守る中小銭を数え間違えて赤面する
飛び乗った電車の中で一人
鼓動を早くしている
無関心な彫像がのんびりいびきを立てる密室空間

(何をするんだ?)

すべてを窓から放り投げて
昨日の夕日を見に行こうか
蹴り飛ばされたガムの欠片が
ホームの端に情けないほど張り付いている

(今日も終わりさ)

蒸し暑い陽気の中
疲れ切った人々が行きあう町中
風の声に
どうやら引き始めたくしゃみをした





Nothing  2004年5月7日


何にもないんですか?
何でもないんですか?
何もいらないんですか?

何なら欲しいんですか?

何か見えますか?
何を捜してますか?
何がしたいんですか?

何も見えないんですね?

何もない
だから
ただあなたの側で
泣いていてもいいですか?

何も見えない
だから
ただあなたの側で
あなただけ見ていていいですか?





幸せ作り  2004年5月10日


どれだけ君のために
できることがあるだろう?
「幸せにする」
言葉ではいくらでも言えるけれど
僕の幸せを幾つも束にして
それが君のおかげだって分かったら
君は笑顔をくれるだろうか?

君からしか欲しくない想いたちと
君にしかあげない想いを合わせて
今花束を作るから
笑ってくれますか?

「幸せだよ」って
そんな確信のない一言だけで
僕は救われるから




時には凶器の似合う恋心で  2004年5月11日


はららに
ゆららに
僕はあなたに恋をする

キャンパスに塗り続けられていく空色のように
何度も何度も重ねながら
それでも一瞬前とは違う想いで
僕はあなたに恋をする

不安になりやすいあなただから
何度も繰り返す僕の言葉を
同じように感じるかも知れないけれど
落ち続ける砂時計のように
ゆっくりと想いは重くなりつづける

涙を流すときはいくらでも側にいるから
側にいられないときも思い続けるから
記念日は二人だけで過ごすと誓うから
君の心を時々襲う暗闇すら
愛していると言えるから

我が儘に
甘えん坊に
これからも僕を見ていて下さい

はららに
君が何度も落ち込んでも
ゆららに
僕が何度絶望しても

一瞬の時が二人でいれば輝く限り
はららに
ゆららに
僕はあなたに恋をする





愛しくて  2004年5月14日


愛しくて
愛しくて
愛しくて

抱きしめたなら

愛しくて
愛しくて
愛しくて

息が止まる
君の吐息が二人の生を教えてくれる
「どうしたの?」
君の声だけが間近に響く

愛しくて
愛しくて
愛しくて

声を忘れた僕は
まるで人形のように
君の身体を抱き続ける

君が不安になる前に
この想いを言葉にするけれど
きっと君の想像は
僕の思いに届かない





関係図  2004年5月20日


誰もが「関係」に縛られている
なにげなく生きる社会の中で
電柱から見下ろす毎日の中で

親と子
兄と弟
先生と生徒
私とあなた
恋人と友人

名も付けられぬほど溢れた輪の中で
私だと思っていた体は
いつのまにかラベルに覆われ
見えなくなる
私だけで生きていたはずの「いつか」さえも





ビューティフル ワールド 2004年5月22日


君がいる世界はなんて綺麗なのだろう
どんな曇り空でも
どんな醜い通り道でも
君がいるこの世界は
君を知らなかった頃よりも
遙かに
遙かに輝いている

時々僕は夢想する
君がいない世界を
君がいなくなってしまった世界のことを
体中を襲う絶望に
僕は慌てて想像をうち消す
君の番号に電話をかけて
君がまだ
この世界にいることを確かめたりする

そんな大切な君がいる僕を
僕は実は
この美しい世界の中で
一番幸せなんじゃないかって思ったりしているんだ





可愛い君  2004年5月24日


君を可愛いと言う僕に
君は照れた顔で否定する
本当だよ?
そう何度繰り返したって
君は怒ったように否定する

だから
今は言わずにいるのだけれど

時々君は
世界で一番可愛くなる

時々君は
どんな絵画の少女よりも可愛くなる

そして本当に時々だけど
君は
過去や未来をあわせたって足りないくらい
可愛く輝いてみせる

僕の瞳は
そのたびに記憶へ君の姿を写し取るけど
君に見せて上げられないのが残念で
僕は
カメラでも買おうかなんてこのごろ考えている





幸せ不幸人間  2004年5月27日


大切な人がいるならば
誰もが幸せになれるはずなのに
大切な人がいるせいで
誰より不幸な顔をする人がいる

それはきっと
不幸でも幸福でもなかった人が
幸福になったばかりに
不幸になることを恐れるようで

失うことを恐れるあまりに
震えている

幸せゆえの不安を
満たされてる怖さを
どうしたら人は消せるのだろう?
どうしたら本当に幸せになれるのだろう?

答えのない迷路の中
自己矛盾に覆われる風の日





君へ届け  2004年5月31日


君の想いが暖かいから
僕はいつでも
笑顔を浮かべていられるのです

会えないから
余計に頭の中は君のことだらけ
君の笑顔
君の怒った顔
君の困った顔
君の泣き顔さえも
僕は夢想し
君を感じられない両手や頬を慰めている

せめて僕のこの想いが空を飛び
君に届いたらいいのに
そうしたら少しでも
君の寂しさを救えるのに

離れている僕にできる
ほんの少しの贈り物
君へのメールにありったけの詞を込めた
どうか君は僕よりも
寂しさを感じずにすみますように