2004年 六月の作品たち
ユア コール 2004年6月3日 朝寝坊した君が 慌てながらも僕にメールを送ってくれた 胸の中に生まれた幸せの花 ほらこんなにも暖かい 学校終わったばかりの君が のんびり寝ていた僕におはようの電話 「起こしてごめんね」って言葉に 花が開く はじけるように ほらこんなにも僕は満たされている バイトへ行く前の君に励ましの電話 「ありがとう」って君の声に たくさんの実が胸の中にたくさん溢れて ほら また君への想いに花が咲く 信頼 2004年6月4日 信じると言葉にした途端に 灰色だった想いは鉛のように重くなる 目の前にあったはずの淡い感情は 言葉に彩られ醜くなっていく そうしてまた私は 信じる先を失い 路頭に迷い 真実さえも いつの間にか見えなくなる いっそ口を閉じて 言葉になんて頼らずに 真実なんて想いもせずに いれたら 楽になれるのだろうか? 幻塔 2004年6月6日 ある日突然 目の前の塔は崩れ落ちていた 砂塵すら起こさずに 吐息よりも静かに まるでなかったことが当たり前のように 塔は姿を消していた 胸の中に吹き込んでくる風を 一体何と呼べばいいのだろう? かつて塔のあった場所を見上げながら その高さすら視界に残せず途方に暮れる ふと誰かが教えてくれた 新たな塔が立っていることを 前より小さくなりながらも その新たな塔は高いだろうと けれど途方に暮れたまま 塔を見られず目を背ける 見てしまったなら塔が 消えるとききっと嘆くだろうから せめて今度は自分の力で 塔を建てられると良いのに 変 2004年6月10日 君が変だと思う君の表情さえも 僕の心を掴んだまま離さない 寝ころんだ横顔が うつむいたうなじが 怒った頬の膨らみが 心の中をミキサーみたいにかき回し 泡だった僕の心を溢れさせていく 素敵だね? 君がこんなに近くにいるって 嬉しいね? いくら愛しても 足りないほどに溢れていて そうやって僕は幸せに浸りながら 今日も 君が変だと想う君の表情を 微笑んで眺めている 君のために 2004年6月14日 君と出会うことが 私の生きてきた意味だと 心から思えるから 力強く抱きしめさせて 君の側にいることが 私の何よりの幸せだと 体中が叫ぶから 飽きるまで側にいて 君の温もりが 私の誇れる宝だと 細胞が 心が 意識が 夢が 詠うから いつまでも いつまでも どうか君のために生きさせて バースディ 2004年6月15日 巡り続けた星の中で 今日君から僕へのバースデイ なんだか生まれて初めてみたいだよ 例えば物心ついたとき 初めてローソクを吹き消したような リボンのついたプレゼントを こわごわ開けていたときのような 重ねるごとに空虚化していた一つの数字が 君との出会いで喜びに戻る 君から僕へのバースデイ 忘れていた喜びの花を胸に きっと 特別に見える一日はすべて 君から僕への贈り物だね ある日突然に2004年6月29日 通り過ぎた道の上で 蟻をいつの間にか踏みつぶしている もしかしたらそれより小さな生き物までも あっけなく取られてしまった命達が 見上げている 次はお前の番とでも言うように 前触れも 理由もなく そうやって死は訪れるのかも知れない 怒りも憂いもなく 踏みつぶしてしまった蟻のように 悲しみも侮蔑もなく 私たちは何かに突然踏みつぶされる そして平然と歩いている人々を見上げ 「危ない!」とも 「気をつけろ!」とも言えないまま ただ生きていることを続けるのだろう そんなことをふと考えた私の隣で 意味もなく踏みつぶされた蟻が 必死に手足を動かそうともがいていた 僕を救う君 2004年6月30日 いつだって僕は君に救われる 子供の頃見たテレビの中の出来事のように 泣きはらした僕の隣りに君がいて 当然のように 「泣いても良いよ」って微笑んでいる 途端に僕の中の不安は溶解し 絶望の闇は希望で照らされ そして空元気を少しは含みながらも 僕は笑顔を浮かべている 君が使う特効薬 なんて名付ければ良いんだろう? それが分からないから今も僕は 君の優しさにただ救われるままでいる 今度は僕が君を救えたら いいな |