2005年 12月の作品たち

 I play the clown  2005年11月8日

泣きそうな君を前にして
出来そうなこと探していた
言葉はすべて裏返って
想いと逆さまに君を傷つけていった

回り見渡せば町は当たり前だけどいつもの夜で
うつむく君にだけ冷たく雨が降っていた
頬を濡らすまいと
無理に笑おうとする君は綺麗で
本音を見せるには冗談が多すぎたと気づかされた

だから今僕は君のため
思い切りぶざまな道化を演じよう
トーキー映画の端役のように
笑いにしかならない衣装を被ろう

そうして君が笑えるのなら
笑顔をもう一度見られるのなら
それだけでいい
例えこれから先
君の想いが向かなくても
君だけの道化ならそれでいいんだ

言い聞かせて君を見た
街頭に照らされた君は泣いていてもとても綺麗で
心の底
生まれた劣情を嫌悪した

まだ何も出来ず
僕は君の道化にすらなれないでいる





ヒトリボッチの泣き虫の歌  2005年11月9日

涙流すたび何を得たの?
失う怖さに頬を濡らして
拭う両手に悲しみばかり溜まっていく
胸の痛みが強すぎて
うつむく顔を上げられない

月が綺麗と誘う声も
頭をなでる暖かい手も
流れる涙止められない
楽しい思いで求められない

いつの間にか
慰めていた人影はなくなり
一人で泣いている自分に気づき
考えてみる

何で泣いていたのだろう
失う怖さに頬を濡らしたはずなのに
いつの間にか
たった一人になっていた

流そうにも涙すら出ず
言葉にならない嗚咽ばかりが
独りの世界を満たしていった





雲  2005年11月10日

雲ひとつ無い青空に
君の笑顔を浮かばせて
会えない時間を紛らわした

届かない場所で
輝く笑みは暖かくて
冬の寒さも優しくなる気がした

起きだした鳥が
幻想を通り過ぎる
つつかれないよう瞳を閉じれば
空に浮かんでいた君の顔は
心の中に閉じ込められる

届かないはずの君をすぐ近くに感じて
私は思わず笑って目を開ける

雲ひとつ無い空を見渡しても
もう君の微笑みはどこにも無かった





別れた男女の他人ゲーム  2005年11月14日

ぎこちない笑みを交わしながら
別れた恋人たちは他人に戻る
愛した事実は無いかのように
想いに気づかなかったときのように

一瞬一瞬に気を使い
なんでもないかのように振舞ってみる
まるで試合(ゲーム)のように

会わなくて済むほど彼らの世界は広くなく
知らずに済ますことも出来なくて
言葉かけあい
笑いあい
怒りあい
でも愛だけはなく
ゴングが鳴る
試合が始まる
気にせぬそぶりの騙しあいが

気にしないといい聞かせすぎたら
楽しかったはずの思い出も悲しみも遠くなるのに
まるで過ごした時間が
すべて無駄だったかのように
恋人だったもの達は勝者のいない試合を続ける

むなしさに立ち止まったなら
そのまま動けなくなる恐怖に負けるから
張り付いた笑みで笑い続ける
いつか
そんな試合さえも遠い記憶になることを願って





遠いあの夏の日  2005年11月15日

君のいないいつもの場所は
初めて入った病院のようで
嗅ぎなれない匂いと
理由の無い戸惑いに満ちている

それはまるで飾られたジグソーパズルの
かけた部分を見つけるような
不安
卒業式に写る友の
名前を思い出せないような
焦燥

あるはずという確信が
あまりにももろく崩れたせいで
不安定な心は波打ち
現を夢と見間違う

私は見慣れぬ景色になれようと
とりあえずゴミ袋を手にとって
何から捨てればいいのか分からず
ただ立ち尽くした





11月の月夜の下で  2005年11月17日

闇夜の夜は明るくて
何もかも見られている気がした
心の底は隠していたくて
必要以上に頭を垂れた
それはまるで
神に祈る姿のようで
無慈悲な空に思わず願う

誰にも知られないように
必死に隠している想いなんです
似合わないと
ふさわしくないと分かっているのに
止められないまま生きているのです
だからどうか
見透かすように光ながら
何も見ずにいてください
いずれ時が来たときに
私が口を開くその日まで
見守るようにいてください

見上げた月は
黄金色に輝いていて
何もかも分かっていると言いたげに
雲の中へと顔を隠した





君の隣で  2005年11月19日

明るい笑い声に冬の寒さは遠のいていく
さっきまで一人で震えていたのに
何故だろう
今は上着もいらないくらいで
頬に当たる風も
心地よく心を通り抜けていく
不思議に思って周りを見た
そして気づく
当たり前の小さな事実に

ああそうか
僕は一人じゃなかったんだ





ゲーム終了その影で  2005年11月26日

輝いているよ
今日に涙する君の姿は
輝いているよ
眩しすぎて
触れたら火傷しそうで僕は一歩引いてみている

始まりを知らせるベルの音は
いつしか終わりを悲しく告げて
喜びに沸く勝者の影で
敗者は忘れ物を拾い始める
当たり前だけど
勝つことを望まなければ涙も無いのに
一瞬の喜びのため君は戦士になっていた
何度傷ついてここまで来ただろう
大丈夫って君の声が胸に痛くて
「頑張って」も言えなくなっていた

どれほど涙を流したとか
どれほど汗を流したとか
そんなことで得られる勝利なら
君は確かに誰にも負けなかったね

輝いているよ
君の頬に街灯が仄かに
輝いているよ
いつだって諦めなかった君の姿は

誰もが勝者を称えようとも
僕は君の涙にだけ
心の奥で拍手するから
今はただ泣いて
いつか笑ってくれればいい

なんて
慰める言葉すら言えない臆病者は
まぶしい君の輝きに
触れることさえ出来ないで立ち尽くしている





想い人へ言葉ためて  2005年11月27日

傷つくことを恐れたら何も始まらないと
昔言われた当たり前の言葉に
身を縮ませている

駅前で人ごみに飲まれながら
始まったばかりの一日にもううんざりしていた
そんな時君によく似た人を見かけ
思わず曲がっていた姿勢を直した
こんな場所に君がいるはず無いのに
自分がおかしくてでも笑えなくて
こんな風に人を想えるなんて
嬉しくてでも寂しくなった

今頃君は
僕のことなんて思いもしないで
今日をまっすぐ生きているだろう
そんな君が
そんな君だから
どれほど想っても足りないくらいなんだけど

この気持ちに決着をつけようか
携帯じゃ簡単すぎて
手紙では重たすぎて
いっそ会って打ち明けようか
君の笑顔が曇るのが怖くて
言葉さえ見当たらない

傷つくことを恐れたら何も始まらないと
昔言ったのは本当は自分だけど
あのころは子供だったのさと自分に言い訳して
聞く人のいないため息をついた





独り者の孤独歌  2005年12月11日

傍にいられない時間埋めるように
生まれてきた歌たちが
たゆたうように散らばって
散らかした思いに埋まるから
疑うことを忘れていたんだ

片思いに慣れすぎて
カッコよくは成れなくて
影から想うだけでいた君の目は
もう遠く誰かを見つめているね

恋をした君は綺麗で
せめてその恋が
素敵であることを願うよ

歌を作るよ
君のために
聞かすことの無い想いの歌を
そうして口ずさんでいる間は
君を傍に感じられるから
そんな僕を臆病者だと
君は笑ってくれるだろうか
きっとその笑顔だけで生きられるけど
それはかなわぬ願いなんだね

君のいない場所で君を想う
そんな日々を過ごしすぎて
二人に成れない代わりに今は
一人きりに慣れている