2006年 1月の作品たち

奇跡と軌跡  2006年1月1日

歩き続ける君の前には
長く長く続く道があって
時折その長さゆえ
うつむくこともあるだろう?

立ち止まるのもいいよ今日くらいは
奇跡も笑えそうな夜だから
振り向いたその向こうに
君の軌跡が輝いている

人生は甘くない
そんな言葉は聞き飽きている
呆れるくらい毎日は
単純に単調に繰り返す
いつの間にか町の中で
目新しいこと探してでも見つからなくて
ため息ばかり足元に渦を巻く

でも
生きているんだ空も日々も
君が通る何気ない道も
昨日と同じところなんて
一つもないんだ君自身も
自信がないと呟く前に

今日という日に立ち止まろう
歩いてきた道振り返ろう

奇跡はいつも君の歩いた軌跡の中で
ぼんやりとでも確かに輝いている
照りかえる光に
テレながらでも微笑めたなら
また一歩ずつでも歩けるだろう
きっと君の笑顔は
奇跡の似合う君だけの宝になる





時     2006年1月4日

気がついたときには
時は流れていて
ときに傷つきながら
お気に入りを築いていく

生きている辛さに
息継ぎをして
でも耐えられなくて
意思の弱さに吐息ばかりが積みあがる 

この場所に何を求めたの?
足元見ても見当たらないまま
何か出来ないことはないかと
探しながら今日を生きている

そうきっと誰だって
分からないまま生きている
そんな当たり前を慰めに
生きるための一歩を踏みしめる





雪の声  2006年1月24日

全てを覆い隠すよう
死人の爪のような雪が降る
かじかむ手すり合わすうち
真白な腕が誘うように取り囲む
声も出ず
空から届く沈黙の歌を私は聴く

何もかも埋めてしまえ
山も
町も
森も
人も
炎も
水面も
時さえも

横たわる白き肢体は瞳もなく
闇色の口ばかり広がっていく
まるで全てを飲み込むように
色は消え
モノトーンが私の世界を支配する

個々さえ分からず
此処で立ち尽くし
せめて自分だけは無くならぬ様
両手できつく体を抱いた

幾重にも重なり降りる白い爪は
頼りない私の体を笑うよう
何度も何度も撫でていった