2006年 二月の作品たち

引越しの日  2006年2月7日

過ごした日々が嘘のように
この部屋は薄暗くて
用なんてもう無いはずなのに
何度も確かめていた

生活を感じさせていたもの
無くてはならなかったはずのもの
形あるものを取り除いたら
居場所さえ無くなっていた

僕がいた場所は過去になり
いつか僕すら忘れるだろう

終わりの時間が迫ってくる
独りの時間が今終わる
家族の下へと帰る僕を
昔の僕が笑っている気がして
そんな自分を笑ってみた
声だけが泡のように広がって
静かに割れて消えた





重すぎる今を思う夜中の自己嫌悪 2006年2月10日

まとわりつくように
イマが鎖を増やしていく
未来捉えられず囚われたまま
今に見てろなんて
負け惜しみばかりで日々を費やす

一体どこに行きたいのか
生きているだけで息切れて
疲れたって言葉に作り笑い
つまらないふりするポーズばかり
上手くなっていく

こんな自分はいやだって
鏡の前で愚痴をこぼした
これが選んだ道なんだろう?
鏡の中の自分が皮肉に見ていた

自己嫌悪で始まる夜
見えない不安が終わらない日





君に触れたい手の前で  2006年2月13日

当たり前のことで笑う君
瞬間の笑み
くだらない会話の途中見せる微笑み
嬉しくて
でも切なくて
伸ばしかけた手握り締めて
君色の宝石に焦がれている

当たり前のことで泣く君
唐突の涙
何も言えない私を残して見せる涙
指しの場そうにも君は遠くて
ふがいなさを残したまま手を下ろしている

本当はすぐにでも
君に打ち明けて
手にした宝石確かめて
気楽に手を
君だけに手を触れていたいけど

当たり前に君は私を見ないから
思いは天へと虚しく上る
君のいないここで一人手を伸ばして
私は一人
君を掴むことの無い手を握る





踏み出せない君への歌  2006年2月14日

いつまで抱いているの?
届かないって
捕らえたまま胸に抱いた
君の心
君だけの想い
力こめた両手は硬くて
冬の風にかじかんで
痺れるほどに痛いのに
固まったまま動かない

踏みしめた足そのままで
君の瞳が見つめる先には
たった一人が写っている
気楽な挨拶
冗談の言葉
いくらでも口を出るのに
肝心の想いばかりが
両手の間に貯まっていく

どれだけ一人立っているの?
見えない涙は雪になり
君の体をさらに冷やす

いつか真白に覆われ
君の心さえ
無かったことへと変わる前に

一歩踏み出せ君よ
大丈夫
君が素敵なことは
分かっているから





言葉のナイフ   2006年2月17日

ほんの一言で君を傷つけていた
傷つけたことすら気づかずに
君を見た後で
僕は自身を消したくなった

君は怒らずに
泣きそうな顔で笑って見せた
下手くそな作り笑いを浮かべたままで
気にするなって笑って見せた

君の微笑みに突き刺され
咎められず
許されもせず
ただ立ち尽くす僕がいる
いっそ天が裁けと願うのに
空は無神経に青空を広げていた





君とキャンパス  2006年2月20日

君の手には
お好みで揃えた絵の具があって
望むまま希望の色を塗りたくれる
まだ真白なキャンパスを眺めながら
思い思いに絵筆走らせ
君だけの未来
君だけの日々をかきつらねる

その絵の中に入れるかな?
君色に作られた世界の中
僕の世界も混じれるかな?

言葉に出来ず思うまま
君の絵を僕は見ている
未来に溢れたキャンパスは
あまりにも眩しくて
堪えきれず僕はうつむく

そして汚れ始めた自身の絵を
こっそり背中に隠した





特別な景色  2006年2月22日

いつもとは違う君を見つけて
戸惑いながらも喜んでいる
ありきたりな言葉しか浮かばないから
からかうことしか出来ないでいる
怒る君は
景色の中あまりにも鮮明で
君しか見えなくなるのはちょっと困るから
わざと見ないフリをした

君の映らない町並みは
あまりにもモノクロすぎて
すぐに耐えられなくなってしまう
それでも強がって
見慣れようと瞬いてみた
変わらない町
変わらない空
それはあまりにも冷たく無表情で
いつの間にか僕は君を追っていた

そんな僕の弱さにも気づかずに
君は今日も
僕の好きな笑顔を誰かのために浮かべている





自己嫌悪の終わる日  2006年2月24日

見えないと
手探りしていた希望は
届かないと
見ないふりしたもので
気がつくと目の前にあった

手を伸ばして触ってみたら
まだ輝きを持って僕を見ていた
ココから始めればいいんだ
気づいたのは当たり前のことで
嬉しくて僕は何度目かのあくびをした

眠れない夜が終わる日
新しい始まりは今目の前にある





せめて小さな救いになりたい 2006年2月25日

あなたが笑う傍で
泣いている人はいませんか?
あなたが喜ぶその傍で
悔しさに涙する人はいませんか?

この世は気まぐれで残酷すぎて
誰かの流す涙の川を
喜んで渡る人もいる
救いを求める人の手を
振りほどく事でしか
生きられない人がいる

だけどそれじゃあんまりだから
そんな世界じゃ灰色すぎて
未来もくすんでしまうから
せめて僕の想う人だけは
悲しみに
悔しさに
涙する人でいてほしいと願うのです

なんて我侭な
なんて傲慢な
なんて当て付けがましい願いだろう

自己否定に落ち込みながらも
僕は今日も
手をさし延ばすその先を探している