2006年 三月・四月の作品たち
卒業する君へ 2006年3月3日 いつだってやってくる 始まると共に鳴り始める終わりへのカウント 気づかないうちに月日は足並みを揃えて 休まずに君を運んでいく それでも一つのおしまいは 結局新しい始まりに過ぎないから 信じてその手を振ればいい 昨日への別れと 明日への呼びかけとして 臆病者は今日も懸想し続ける 2006年3月6日 君のこと考えるだけで 言葉が溢れてくる コトバばかりの花束抱いて 会いに行こうかな 君のこと思うだけで 吐く息にも色がつく 君の幻に手を振って 小さくくしゃみをした 会えない時間 すれ違う視線 言葉ばかりじゃ足りなくて 見えないプレゼントは渡せないまま また僕は独りでいる 君は今どこで何をしているのかな? そう考える僕さえも 君は知らないまま 「好き」だとか 「愛してる」だとか いっそ言ってしまえれば楽なのに 冷たくされることが怖くて また幻で慰める 意気地なしにも時はめぐり 想いばかりが溜まっていく 渡せぬ言葉を増やしたまま 今日もため息をつく ガンバッテ 2006年3月20日 頑張っている君に 「がんばって」なんて言えないはずなのに 頑張っている君を知らないまま 僕は笑顔で「がんばって」を押し付けていた 闇を纏う校舎は 昼とは違う顔 汗を拭く君の横顔も 別人のようで焦る 用意していた言葉は まるで色あせて見えて 息遣いだけの二人が 怖くて口を開いた 「がんばって」 僕の前で 「がんばって」 君の顔が歪む 「がんばって」 うつむいた途端 笑顔の変わりに溢れたのは 君に一番似合わない色 頑張っている君に 「がんばって」なんて言えないはずなのに 頑張っている君を知らないまま僕は 「がんばって」を 押し付けていた 君は強いから 僕を見た顔は笑っている だけど 君と僕の距離が 離れるのが分かるから 僕は泣きそうになる サクラ ヒトヒラ 2006年4月20日 ヒラリ ヒラリ 舞い降りる花 ユラリ ユラリ 揺らめき消える 見えなくなった 花一輪を 掴み取ろうと 幾重にも 幾重にも 手が伸びる 叶わない物など一つもないと その手は信じていた 叶うるものなど一つもないと その手はやがて知る 嘲ることも出来ずに 私はただ見ている 跳ねるように 請うように 花を見つめる少女達を |