2006年 11月の作品たち
昼寝吐息 2006年11月6日

ふわりと
君の髪が揺れる
ささやくような君の寝息に
耳を澄ませる

どんな音よりも
どんな声よりも
今は君の呼吸を聞いていたい


そんな願いと裏腹に
外では今日も道路工事が続いている





「何だろう?」なんて雑草の言葉遊び  
               2006年11月14日



君にとっての僕なんか
なんでもないんだろう
道端に咲いている
花みたいなんだろう
時折立ち止まり眺めては
通り過ぎるんだろう
無責任に「綺麗ね」なんて
呟いたりするんだろう

それなのに僕ときたら
きっと喜ぶんだろう
もしかしてもしかしたらと
期待しちゃうんだろう
君の横顔見るたびに
照れてしまうだろう
話題見つけられずに
がっかりしてるんだよ

なんだだろうこの気持ちは
一体何なんだろう
そう何度も何度と無く繰り返して
本当は気がついているくせ知らん顔して
僕はまた首をかしげる
何だろう何なんだろう





自己矛盾  2006年11月18日

ゆっくりと
時間は流れていて
目に映るもの全てが
変わっていく

そんなにも急がなくてもいいのになんて
思いながら今日も新しい一日を生きる

のんびりと
歩きながらも周り気にして
目立たないスピード
それなりに目指している

自分勝手なんて言葉口にするくせ
自分が一番勝手に生きている

矛盾だらけの日々を生きる
矛盾だらけにため息つく
だけどそんな毎日だから
いとおしいと思う

一番分からないのは誰?
それはきっと自分自身です





言葉いじり 2006年11月24日

例えば愛していると繰り返すたび
人は愛しているの意味を失っていくのだろう
愛を伝えるはずの言葉がいつの間にか
ただの習慣となって年老いていくだろう

例えば嫌いと繰り返すたび
嫌いは少しずつ色あせていくだろう
研ぎ澄ましたはずのナイフはやわらかく鈍り
体を刺すことなく干からびていくだろう

言葉を研ぎ澄ませ
一言への力を込めろ

そう繰り返すことがすでに言葉を殺していく
そしてこんなまやかしを書き連ねるうち
自分の言葉さえ古びていく

書く者とはかくも哀れか
冗談だけを垂れ流し自重する日々か





白紙の原稿を前にして 
              2006年11月30日



君を
思いながらいくつもの言葉を書いた

君を
描けなくていくつもの言葉を消した

君のために生んだ言葉と
君のために消した言葉と
その全てにこもる思いは決して伝わらない

分かっているのに
どうしょうもなく願ってしまう

君を思ういくつもの時間が、
そのまま届けばいいのに