2006年 12月の作品たち

まどろみから  2006年12月3日

まどろむうちに
世界は慌しく変わっていくのに
あなたが傍にいないから
まるで新鮮さを覚えられない

朝が来て夜が来て
毎日は日々作られるのに
あなたのいないこの場所は
なんだかとても単調で
色さえも少ない気がしている

まるで12色の色鉛筆を買ってもらった子供が
無くした一本があなたのように
その色がなんだかも忘れているはずなのに
足りないことだけ忘れられない

まどろむうちに
一日は過ぎ
今日も色の足りない世界が終わる




雪の日の物語 2006年 12月16日


ある雪の降る朝
一つの花が願いをかけた
それは道端に咲く一輪の花
冬の寒さに負けないよう咲いていた花
誰にも見られないその場所で
一つの花が願いをかけた

 お願いどうか
 私の声が聞こえるならば
 私の願いを叶えてほしい
 私を見て「可愛い」と笑んだあの人が
 どうかずっと笑えるように
 来年は咲けない私のために
 どうか誰かが守れるように

たった一度の微笑みのため
一つの花は願いをかけた
聞くはず無い願いを空にかけ
叶うはずの無い夢を見た
誰にも見られないその場所で
一つの花が願いをかけた

時は過ぎ
花が散ったその後に
小さな命が芽を出した
それは春に花咲く命
まだ芽のままの命はもうない命に向かって言った

 ああわかった
 願いは叶えよう




思い出の景色  2006年12月17日

雨が降っていたその日
僕は一人立ち尽くしていた
来るはずだった友を待ち
降らないはずだった雨にただうたれていた

冷たい雨は額を濡らし
髪を濡らし
首筋を流れ
袖を浸し
やがては心までも溺れてしまった

そして僕は気づいたのだ
僕は一人だった
ずっと
ずっと一人だったと




君のための祈り  2006年12月21日

何も出来ないまま
流れていくときの中で
今日も君のことだけを
空に祈っている

あの時涙する君の隣に
座れずに言葉も浮かばないまま
からかいで空回りしたまま
時は過ぎてしまった

一人に慣れた僕が
今君に言える言葉は何も無くて
ただ君が独りでいないようにと
心から
ただ心から今も願っている

君がもっと笑えますように
君が君でいられますように
そして君が誰よりも
そう独りで生きる僕よりも
幸せで
ただ幸せでいますようにと――





忘れ行く日々  2006年12月28日

忘れないで

忘れないよ

忘れないで

忘れないよ

何度も何度も繰り返す君に
何度も何度も繰り返す僕に
いつかの風は優しく吹いて
いつかの時が緩やかに流れていた

忘れないから

忘れないでね

忘れないから

忘れないでね

歌うよう繰り返して
君の手を握り締めた
その感触まで覚えているのに

忘れないよね

忘れない

忘れないよね

忘れない

何度も何度も繰り返していた
君の顔さえ
僕は思い出せない





何千年かの同じ日曜  2006年12月31日

明日になれば
年が変わるか
なんてことない
日曜じゃないか

歯を磨いて
ご飯を食べて
寝転んで休んで
そんな
いつもの日曜じゃないか

テレビを見るとか
ゲームをするとか
家族と話してみるとか
当たり前の日曜じゃないか

もう何度繰り返しているんだ
いい加減新鮮さも無いじゃないか
新しいことなんて何も無い日曜に
バカみたいに騒ぐんじゃないよ

ああでも
日が変われば新しい年の日曜か
日曜なのに
なんだか特別な日みたいだな

なんて思ってみたけどほら
眠ってしまえばなんともない
ただの日曜じゃないか