あなたの呼び名が変わるとしても
作 楽静


登場人物
男1 女3

キョウタ  高校二年生 召使い 領主 ロレンス神父。マーキューシオ ジュリ父 野暮ったい格好。スマフォ好き
イマリ  高校一年生 ジュリエット 女性的な格好
ナウミ  高校二年生 ジュリ母 語り部① ロミオ  男性よりの格好 映画好き
トキエ  高校二年生 乳母 語り部② ベンヴァリオ 中性な格好 声優好き


01 とある演劇部の台本決定の日。

    演劇部の活動場所。黒板(もしくはホワイトボード)机と椅子があり、生徒四人が話し合うようにいる。
    黒板には「地区大会(もしくは文化祭、校内公演)まであと〇〇日(現実的な数字)」と書かれている。
    観客にイマリが向く。イマリだけが浮かび上がる。紙(参加承諾書)を手に持っている。

イマリ (と、観客席に)高校生になったら演劇部に入ると決めていた! 

    と、どこかにキョウタが現れる。

キョウタ ようこそ演劇部へ。俺は部長のキョウゴクキョウタ。気安く、キョウタ先輩と呼んでくれ!

    と、どこかにナウミと、トキエが現れる。

ナウミ ナウミ。2年ね。そんでこっちがトッキー。
トキエ トッキー呼ぶな。トキエね。よろしく。それで、えっと、
イマリ イマリです。イマリって呼んでください。(と、観客席に)高校生になったら演劇部に入ると決めていた! 演劇部に入って役者をやる。どうしてもやりたい舞台があったから。早ければ一年生のうちに。無理でも来年までには。演劇部に入るからには絶対演じたい舞台。私は――

    全体が明るくなる。キョウタが黒板前で部員に告げる。

キョウタ というわけで、今日は次回の演劇部の公演について話してみたいと思う。
イマリ はい!
キョウタ お、イマリ。何かやりたいのある?
イマリ 演劇部入ったよって友達に言うと「ロミオとジュリエット」やるの?ってよく言われるんです。
キョウタ ああ。あるね。
ナウミ あたし題名しか知らないけどね。
キョウタ うそだろ!?
トキエ こんな話だよってのは知ってる。
イマリ 私も実は本で読んだくらいですけど。
キョウタ いや、映画あるだろ。有名なの。
ナウミ 誰出てるの?
キョウタ ディカプリオとか。
ナウミ あー、ケイトの相手役か。タイタニックは見たんだけど。
キョウタ ケイト?
ナウミ 知らない?ハムレットの映画でオフィーリアやってた人。
キョウタ なんでハムレット知っててロミジュリ知らないんだ。
トキエ ナウミって興味ある役者で映画見るタイプだもんね。
ナウミ ま~ねぇ。で、どんな話?
トキエ 男と女が出会って~、恋に落ちて~、死ぬ。
イマリ そんな感じですね。
キョウタ もうちょっと言い方あるよな?
トキエ じゃあ、「ああ、ロミオ。あなたはどうしてロミオなの?」ってやつ。
ナウミ そんなの、親に聞けって話だし。
キョウタ いや、そういう意味じゃないからな?
トキエ あたしだって、自分で決められるなら、自分の名前を「トキエ」なんてつけなかったわ。
ナウミ トッキーはまだいいじゃん。
トキエ やだよ。てか、トッキー言うな。
イマリ かわいいじゃないですか、トッキー先輩
トキエ トッポなのか、ポッキーなのかわかんないお菓子みたいだし。
ナウミ 美味しそうでいいじゃん。あたしなんて「ナウミ」よ?
トキエ それは、まあ、ごめん。
ナウミ フォローしてよ! もしくは可愛いあだ名を考えて!
キョウタ ナウミはなんか、ナウミって感じだからな。
ナウミ 黙れキョンキョン。
キョウタ キョンキョン呼ぶな!
ナウミ キョウゴクキョウタをキョンキョン以外どう呼べと?
イマリ かわいいじゃないですか、キョンキョン先輩。
キョウタ 俺は落語家でも、80年代アイドルでもない!

    と、三人とも首をかしげる。

キョウタ ごめん。伝わらなかったならいい。
ナウミ え? 今のどういう意味?
トキエ 落語家?
イマリ アイドル?
キョウタ それで、イマリ。ロミジュリがやりたいってことか?
イマリ はい。でも、うち、ジュリエットやれたとしても、ロミオがいないじゃないですか。
キョウタ ……ん?
ナウミ ロミオってどっち? 男? 女?
トキエ 男。
ナウミ いないね。
トキエ いない。
イマリ いないですよね。
キョウタ (イラッとして)そうだな。いないな! じゃあ、ロミジュリは無理だな!
イマリ でも、短い場面だったら、女性がロミオ演じてもそこまで違和感ないかなとは思ってて。
キョウタ ロミオの出てる場面のほうが多いんじゃないか?
イマリ だから、ジュリエット目線でやれないかなって。
ナウミ ジュリエットは、女だよね?
トキエ そう。
キョウタ 女性目線ってことか。
イマリ 元々長い脚本ですし。うまいこと切り取ったら、丁度いい時間になるんじゃないかって。実は、ちょっと、書いてみたりしてるんです。
トキエ どうしよう。一年生が優秀すぎる。
ナウミ それな。
イマリ いや、そんな大変なあれじゃないんで。
キョウタ 脚本書いてくれるのは正直助かる。でも、四人で出来るものなのか?
イマリ 中心となりそうな女性は、三人で出来ると思うんです。ジュリエットと、その乳母と、ジュリエットのお母さん。
キョウタ それ、俺は何をやるんだ?
イマリ それ以外の男ですかね。神父様とか、領主様とか。召使いとか、下男とか。
キョウタ せめて、パリス役くらいはやらせてくれよ。
ナウミ 誰?
トキエ 知らん。
イマリ ジュリエットと結婚予定だった人です。
トキエ え。ロミジュリって略奪愛だったの?
ナウミ フラれる男か。まあそれなら、(いいかも)
イマリ パリス伯爵ってすごいイケメンなんですよ?
ナウミ ないね!
トキエ ない!
キョウタ (自棄になって)そうだな! ないな!
イマリ マーキューシオとか、ティバルトなら?
キョウタ それ、どっちも死ぬ役じゃないか……。
イマリ パリス伯爵だって死んじゃうじゃないですか。
トキエ 乳母っておばあちゃんでしょ? いくつくらい?
イマリ 50歳くらいですけど、今だと90歳くらいのイメージですかね。
トキエ 結構よぼよぼしてる感じ?
イマリ でも、かわいいんですよ。
トキエ なら、あたし乳母がいい。
ナウミ 母親かヒロインかって言ったら母親一択だけど……(と、大丈夫?という目でイマリを見る)
イマリ はい。……ジュリエットは、あたしがやります!

    音楽(例 剣の舞。激しい争うような音楽)の中、イマリは去る。他の部員は椅子を片し、簡単な着替えを行う。イマリがナイトドレス(もしくは少しおしゃれな部屋着)格好になり、手に入部届をもってどこかに現れる。音楽がゆっくり消える。
    夜の遅い時間。スマフォで時間を時折確認するイマリ。
    ドアの開く音。

イマリ お、おかえり。遅かったね。うん。もう寝るとこだけど。あのねママ、部活なんだけど。そう、演劇部。今度大会があるんだって。それで参加するのに承諾書が(必要で)あ、うん。わかった。テーブルの上に置いておく。あのさ。パパって、今日も帰って(こないの?) ……わかった。仕方ないよね。仕事忙しいんだからね。……うん。勉強もしっかりするから大丈夫。じゃあ、おやすみなさい。……(と、ぽつりと)「本当に仕事かしらね」なんて、聞こえないように言ってほしかったな。

    イマリが去る。音楽大きくなる。

02 ジュリエットを取り巻く環境。

    キョウタが領主っぽい格好で現れる。
    片手には杖を持ち、その杖を強く打ち付ける。音楽止まる。

領主 やめろやめろ! 私の治めるこの地でこれ以上争うのなら、双方に重い罰を与えるぞ! ……(と、お互いに武器をおろした姿にうなずき)キャピュレット、モンタギュー。領主として命じる! 今日より以前の諍いは忘れよ。この日より争いがあった時には、平和を乱した罪により、お前たち双方の命を償いとして申し受けるものとする! ……キャピュレットよ。そなたの家は今日宴(うたげ)を開くのではなかったか? 当主が感情を乱したままでは差し支えよう。先に帰り落ち着く時間を取るがいい。……モンタギューよ。お主の息子はなんと言ったか。そう。ロミオであったな。評判は聞いている。一人息子で可愛いのはわかるが、息子の喧嘩に親がそうすぐ出てくるようでは、(と、相手に反論され)いや、わかっている。キャピュレットにも明日同じ話をするつもりだ。あそこも、甥のティバルトに目がないからな。

    領主はモンタギューに話しながら歩き去る。
    場面が変わる。
    キャピュレット家。ジュリエットの部屋。
    ジュリエットの母とセリアがやってくる。

ジュリ母 セリア、あの子はどこ?
乳母 今お呼びいたします。お嬢様? ジュリエット様?

    と、ジュリエットがやってくる。

ジュリエット どうしたの? 乳母(ばあや)
乳母 奥様がお呼びですよ。
ジュリエット お母様! なんのご用でしょう?
ジュリ母 あのね、実はね……セリア、ちょっと席をはずしておくれ。
乳母 はい、ただいま。(と去ろうとする)
ジュリ母 待って! やっぱりここにいて頂戴。
乳母 はい、ただいま。(と戻ってこようとする)
ジュリ母 待って。やっぱり席を、
乳母 はい、ただいま。(と去ろうとする)
ジュリ母 待って。
乳母 はいただい
ジュリ母 いや待って。
乳母 はいただ
ジュリ母 でも、
乳母 奥様!
ジュリ母 なにセリア。
乳母 あたくしは、今去ろうとしていたんでしょうか? それとも残ろうとしていたんでしょうか?
ジュリ母 ここにいて頂戴。そうよ。おまえにもこの話は聞いておいてもらわないと。ほら、この子もそろそろな年でしょう?
乳母 そうでございますね。お嬢様のお年なら時間まで正確に申しあげられます。
ジュリ母 まだ十四にはならないわね。
乳母 ええ、今度の収穫祭の前夜でちょうどお嬢様は十四におなりです。
ジュリ母 そうね。あのね(と、ジュリエットに話そうとする)
乳母 そうでございますとも、私はようく覚えております。あの地震がございましてからちょうど十一年めでございますからね。覚えておられますか?
ジュリ母 ええ。もちろん。それでね(と、ジュリエットに話そうとする)
乳母 ようく覚えておりますとも! 鳩小屋の壁の下でひなたぼっこをしておりましたんでございますよ。あたくしが二歳になる
お嬢様にお乳を上げていたちょうどその時でございます! 鳩小屋が、ガタガタと音を立てて。ええ、もちろんあたくしはお嬢様を抱いたまま大慌てで逃げ出しましたとも。あの時から数えてちょうど十一年。ですから、
ジュリ母 この子は13歳よね。ようくわかったわ。だからね(と、ジュリエットに話そうとする)
乳母 あのときお嬢様はもうおひとりでお立ちになれましたんですよ! それどころじゃございません、そこらをかけることだっておできになったんです。そして今ではこんなに立派になられて。ええ、忘れておりませんとも。……何の話をしていたんでしたっけ?
ジュリ母 だから年齢の、そうじゃないわ。まだ何の話もしていないのよ。これから話すところだったの。
乳母 あら奥様。でしたらどうぞお話になってくださいませ。
ジュリ母 あなたが黙ってくれればすぐにでも話すのだけれどね。
乳母 はい奥様、もちろん黙っております。
ジュリ母 じつはね、その、ジュリエット。あなたはどう思っているかしら。結婚するってことについて。
ジュリエット とても、夢のように名誉なことだと思います。
乳母 「名誉なこと」でございますって! 聞かれましたか奥様。お嬢様のこの賢いお答え!
ジュリ母 結婚というのは、夢などというあやふやなものではないのよ。考えてみれば、わたし……あなたの年ごろには、もうあなたのお母さんになっていたのよね。
ジュリエット 母に。
ジュリ母 実を言うとね。あのパリス伯爵が、あなたに求婚していらっしゃるのですよ。
ジュリエット え……。
乳母 まあ、お嬢様! あのおかたが!? 世にもりっぱな……なんと申し上げてよいのか、そう、とても美しいお方でございますよね。
ジュリ母 今夜、家の宴会であのかたにお目にかかれるのですよ。
ジュリエット 今夜! お母様、でもそんな急な。(と、不安そうにする)

    と、召使い(キョウタ)がやってくる。

召使い 奥様、お客様がたがお見えになりました。
ジュリ母 もうそんな時間!? この子の気持ちを少し確認するだけのつもりだったのに。
乳母 時が経つのは、ほんに早うございますねぇ。あの、ちいちゃなお嬢様が、ええ、覚えていますとも。
ジュリ母 あなたのそれがなければ、ゆっくりする時間もあったでしょうにね。
召使い 奥様、お食事の用意もできております。あちらで皆様がお待ちかねでございます。
ジュリ母 すぐに行きます。

    と、一礼して召使いは去る。

ジュリ母 さあ、パリス伯爵がお待ちですよ。
乳母 お嬢様。この幸福な日に幸福な夜が続きますよう、あたくしはいつも願っておりますよ。

    母とセリアに促され、ジュリエットは会場へと足を向ける。
    と、ジュリ母はナウミに、セリアはトキエに、ジュリエットはイマリに戻る。

ナウミ ねえ。ジュリエットが13ってってことは、ジュリエットのお母さんって26、7? もうちょい若い?
トキエ ジュリエットの年には母親になっていたって言ってるからそれくらいじゃない?
ナウミ 小中学生で出産で、高校時代は育児か。
トキエ 中世怖いね。
ナウミ 怖い。
イマリ 娘の年齢を乳母に確認するくらいですから、そこまで育児に関わってはいないと思いますけど。
トキエ あたしなんて彼氏もまだなのに。
ナウミ それな。

    と、キョウタがやってくる。片手にスマフォを持っている。

キョウタ 今日の部活SNS用に使う写真取るぞ~。はい、ポーズ。

    イマリとトキエ、ナウミはポーズを決める。

キョウタ (と、写真を取りイマリに)よし。7割増しってとこかな。
イマリ 先輩、こういうの本当うまいですよね。
キョウタ だてにスマフォばっかり触ってないからな。
ナウミ スマフォ中毒め。
キョウタ スマフォ中毒で何が悪い。
イマリ こんな写真も無かった時代ですから、家同士の話し合いだけで相手が決まっていたんでしょうね。
ナウミ 何の話? あ、結婚か。
トキエ 写真ですら見たこと無い相手と結婚させられるのか。
ナウミ 最悪だ。
トキエ せめて声が聞こえれば。
ナウミ 声だけ理想でもね。
トキエ 声が好みならほかは許す。
ナウミ 声オタめ。
トキエ むしろ褒め言葉ですよ?
キョウタ 電話のたぐいが出来たのは19世紀頃だから、本人不在の時点で声を聞くのは無理だな。
トキエ 本当に今の時代に生まれてよかった。
ナウミ それな。
キョウタ ジュリエットの家はましな方なんじゃないか? 母親が娘に結婚についてどう思うか問いかけるくらいだから。
ナウミ でも、「結婚なんかしたくない!」ってわけにはいかないんでしょ?
キョウタ そりゃあね。
ナウミ 聞く意味ないね。それ。
トキエ あたしだったら、家飛び出すけど。
キョウタ 13だぞ?
トキエ 年なんて関係ないから。いくつだろうと嫌なものは嫌だし。
キョウタ それでどうやって生きていく? 小学校卒業したばかりのような子供に何ができる? 社会保障だって無い時代なんだ。餓死するだけだぞ。
トキエ 自分が嫌いな声と無理やり結婚させられて心が死ぬくらいなら、いっそ飢えて死ぬ!
ナウミ トッキーかっこいい!
トキエ トッキー言うな。
キョウタ 現実味はないけどな。
トキエ うるさいな。やってみなきゃわかんないし。
イマリ ジュリエットも、似たようなものだったのかもしれません。
キョウタ ……そうか。
イマリ いくら現実味がなくても。心が殺されるより、心のままにいたいと願った。……だから、キャピュレット家の宴で恋に落ちたジュリエットは、
キョウタ 心のままに生きようとしたのか。

03 ジュリエットとロミオの出会い

     宴の中のような音楽。  
     イマリはジュリエットとなる。ジュリエットが浮かび上がる。
     キャピュレット家の宴で、うつむくジュリエット。
     その顔が上がり、ジュリエットはロミオを目にする。時が止まったように音楽が消える。
     ジュリエットがおずおずと手を差し出す。その手に口づけを落とされる。
     トキエが乳母としてやってくる。音楽が又聞こえだす。

乳母 お嬢様。お母様がお呼びでございますよ。(と、ロミオに話しかけられ)えぇ? お母様とはどなたかって? お嬢様のお母様と言ったら、このキャピュレット家の奥様に決まってますでしょう? あら? どうしたんです? そんな青い顔をして。……そのお顔、どこかで……。(と、ロミオが走り去ってしまう)
ジュリエット 乳母(ばあや)、ねえ、今の方はどなたなの?
乳母 (と、とぼけて)さて、一体どこのどなただったのでしょうねぇ。
ジュリエット 知らないなら、誰かに聞いてきて! いいわ。私が聞いてくる。
乳母 あのかたの名はロミオ、モンタギュー家のロミオ様でございます。
ジュリエット ロミオ……。
乳母 お嬢様にとっては憎い敵《かたき》の家のひとり息子でございますよ。まったくどうやってここへ入り込んだのだか。
ジュリエット 初めて知った愛が、私の家の憎しみから生まれるなんて。知らないままにお顔を見すぎ、知るのがあまりに遅すぎた。
乳母 お嬢様? なんでございますか?
ジュリエット ……そんな歌の文句があったような気がしたの。
ジュリ母声 ジュリエット! ばあや、ジュリエットはまだ?
乳母 (と、遠くへ)ただいま参りますよ! さあ、 参りましょう。お客様はもうみなお帰りになりました。

    乳母が去る。音楽。
    ジュリエットは後ろ髪を引かれるような思いをしつつ、乳母について去る。
    語り部①の格好をしたナウミ(男性的)が台本を持ってやってくる。そのナウミが話しかけているのはキョウタ。
    キョウタはスマフォでナウミの写真を撮っている。

ナウミ ロミオのセリフがないと、ここの所わかりにくくない? ジュリエットはどうしてロミオに惚れたの?(と、ポーズ)
キョウタ 元々の本でもそこはいまいちわからないんだよなぁ。(と、写真を取りつつ)ロミオからしたら一目惚れっぽいんだけど。(と、スマフォに台本を入れているのかロミオとして)「僕は今まで本当の恋をしたことがあっただろうか。目は違うと言っている。僕は今日まで本当に美しいとは何かを知らなかったんだ」
ナウミ 一目惚れかぁ。じゃあジュリエットもそうだったのかな?
キョウタ いや、この時のキャピュレット家の宴は仮装パーティだったから、ロミオの顔ははっきりとはわからなかったはずなんだ。(と、と言いつつ写真を見せる)
ナウミ そうなの?(と、言いつつ写真を見て)ちょっと足長く出来ない?
キョウタ できるけど、加工ってバレたら恥ずかしいぞ。
ナウミ じゃあやんない。

    と、イマリと語り部②(男性的)の格好をしたトキエがやってくる。

イマリ 顔を隠してなければ、さすがに仲が悪い家のパーティに忍び込めなかったでしょうからね。
トキエ ってことは、ジュリエットはロミオのどこに惚れたの? やっぱ声? え、ジュリエットも声フェチとか親近感湧くんだけど!
ナウミ トッキーは若干ドルオタ入ってるけどね。
トキエ 違います~。たまたま好きな声の人がアイドルやっていただけです~。
イマリ 多分、運命です。
トキエ そう、運命!
ナウミ 運命?
イマリ 顔でも、声でも、言葉ですら無い。恋に落ちるべくして落ちた二人なんです。
キョウタ たしかに。どんなにお互い仲が悪い家柄だとしても、その因縁が子供にまで受け継がれるとは限らない。これはそういう話だからな。

    トキエとナウミが語り部として客席に向く。
 
語り部① かくして夜更けにロミオは堀を越え。
語り部② 乙女がこぼす己の名前に歓喜する。

04 ロミオとジュリエットの有名場面

    と、あたりは夜更け。キャピュレット家の庭園。
    バルコニーにジュリエットがやってくる。

   第二場 キャピュレット家の庭園。

ジュリエット ロミオ様。……ロミオ。ロミオ! どうしてあなたはロミオなの? あなたが名前を捨ててくれれば。……あたしを愛してくれたなら。あたしは、キャピュレットの名前を捨てるのに。
語り部① ロミオは戸惑う。このまま聞くか。
語り部② 声をかけるか。
ジュリエット 家の名前。そんなの、手でもない。足でもない。腕でも顔でもない。あなたの体のどこでもない。そうでしょう? だから、どうか他の名前になってください。名前なんて、きっと本当は何の意味もない。あたしたちがバラと呼ぶ花だって、他の名前がついても、同じように香るはず。ロミオだってそう。たとえロミオと呼ばれなくても、あなたはあなた。だからロミオ、名前を捨ててください。あなたの一部分でもない名前を捨てて、その代わり、あたしをそっくり全部受け取ってください。

    ロミオの格好をしたキョウタがやってくる。
    シルエット(もしくは観客に背を向ける)セリフは語り部が語る。語りに合わせてキョウタは動く。

語り部①&② その言葉に従います!
語り部① どうか私を「恋人」と呼んでください。
語り部② 瞬間私は生まれ変わり、もうロミオではなくなるでしょう。
ジュリエット ……誰? いつから聞いていたの?
語り部① 誰かと問われても、なんと名乗ればよいのか。
語り部② 私の名前は、私自身にとって憎いものなのです。
語り部① 私の名は、あなたにとっての敵ですから。
語り部② 紙に書かれたものであったなら、破り捨ててしまいたい。
ジュリエット ロミオ様? モンタギュー家のロミオ様なのですか?
語り部① 今はそのどちらでもありたくない男です。
ジュリエット どうしてここへ? なんのために? 庭の堀は高くて登るのは難しかったでしょう?
語り部② 恋の翼が、庭の塀を飛び越えさせてくれました。
ジュリエット それはつまり。あなたは私を? その、私のことを……(思っていると)そういうことですか? 私が思うように?
語り部① 誓わせてもらえるのなら
語り部② あの月にかけて誓います。
語り部①&② 私はあなたを(愛しています)
ジュリエット だめ! 月になんて誓わないで。あんな日毎(ひごと)に形を変える不誠実なものに、あなたの気持ちを重ねないでください。
語り部① では何にかけてこの気持を誓いましょう。
ジュリエット 誓うのなら、あなた自身にかけて誓ってください。あなたの言葉なら、信じます。
語り部① では、私自身にかけて。
語り部①&② 私はあなたを(愛しています)
ジュリエット やっぱりだめ! だって、なんだか急すぎますもの。まるで雷みたいでしょう? 「光った!」という間もなく消えてしまうみたい。ただでさえ今は雲のようにふわふわしているんです。この思いが雨となって土を濡らして、愛の蕾を育むまで、どうかお待ちになってください。ですから、その、おやすみなさいロミオ様。誓いを交わせる時を楽しみにしています。
語り部① それはいつになるのでしょう。
ジュリエット あなたが望んでくれるのなら、いつの日でも。

    と、語り部②は乳母となって

乳母声 お嬢様! ジュリエットお嬢様!
ジュリエット 乳母(ばあや)、いま行きます! ロミオ様、さようなら! いえ、お待ちになって! ……その、もし、あなたのお気持ちが本気なら。明日、あなたのもとへ使いを送りますので、その人にお言付けをください。どこで、いつ、お式をなさるおつもりなのか。そうすれば、私は全てをあなたに差し出して、世界中どこへなりとお供いたします。
乳母声 お嬢様! 奥様がお呼びですよ!
ジュリエット 今すぐ行きます! ……でも、あなたがもし、本気ではなかったのなら、お願いですから……
乳母声 お嬢様! 伯爵様とのお話についてお聞きしたいそうですよ!
ジュリエット すぐに行きます! ……その時はどうか、忘れてください。私は一人で泣くことにします。明日、必ず使いを送りますね。

    ジュリエットが去る。キョウタも去る。

05 名場面考察

   ナウミが台本を持ってやって来る。

ナウミ いや、さすがにこれは早くない? 知り合ったその日の夜だよ? え? 昔ってこういうの当たり前だったの? 会って、その日に愛を誓って翌日結婚? ない。流石にないでしょ。

    と、キョウタがやってくる。

キョウタ そこはほら、運命の出会いだからってことで。
ナウミ 運命って言えば全て解決すると思うなよ。

    と、トキエとイマリがやってくる。

イマリ 昔話でも、きび団子あげただけで鬼退治に命をかける犬とか猿とかいるじゃないですか。
トキエ キジも忘れないで。
ナウミ 動物と一緒にされてもね。
キョウタ シンデレラも白雪姫も王子と一目で恋に落ちるだろ?
ナウミ そうなんだけどさ。
トキエ まあ、物語とは言え急ぎすぎてるってのは気になるよね。
キョウタ 確かにそこはロミオ自身も言われるんだよね。
イマリ ロレンス神父ですね。
キョウタ そう。(と、スマフォを取り出し該当する台詞を見つけ)「ああ、なんという心変わりか! あんなにもお前はローザラインを愛していたというのに、もう忘れてしまったのか! 若者の恋とは、心に宿らず、目に留まるに過ぎないのだな!」
ナウミ&トキエ 待って、待って。
キョウタ こっからがいいところなのに。
トキエ ローザラインって、誰?
ナウミ それ。
キョウタ ロミオが片思いしていた相手だよ。
イマリ その恋を忘れるために、ロミオはキャピュレット家の宴に参加していたんです。
ナウミ じゃあ何? 失恋してすぐに、一目惚れしちゃったってこと?
トキエ なんかなぁ。それは、なんだかなぁ。
ナウミ あたし、ロミオってもっと一途なんだと思ってた。
トキエ それ。
キョウタ まあ。うん。そこは、思わなくも無い、か。
イマリ ロレンス神父のお説教部分はカットしましょう。ローザラインなんていなかったんです。
キョウタ ここ削ったら、ロレンス神父がどれくらい昔からロミオと関わっていたのかわからなくならないか?
イマリ そこは、神父だからってことで。
ナウミ てか、神父? 必要?
キョウタ いるよ! この物語の超重要人物だぞ。
イマリ ロレンス神父はロミオとジュリエットを結ばせる手助けをしてくれるんです。ロミオは神父に結婚の仲立ちを約束させて、ジュリエットの乳母に、落ち合う場所と時間を知らせます。

    と、イマリは去る。
    トキエは乳母となって、

乳母 ええ、ええ、もちろん、お伝えいたしますとも。お嬢様はどんなにかおよろこびになりますでしょう。今日の午後でございますね? ええ、必ずお嬢様をお連れいたします。

    と、トキエは去る。
    ナウミとキョウタはセットを次の場面に変えながら、

ナウミ その日のうちに結婚なんてね。よく神父は許したわ。
キョウタ 一応、争いばかりのモンタギュー、キャピュレット両家の架け橋になればっていう理由はあるんだけどな。
ナウミ でもさ、そんなこと勝手にやっちゃっていいわけ?
キョウタ ……良くないからこそ、悲劇に繋がるんだよ。

    キョウタとナウミが去る。
    イマリがやってくる。練習場所隅。ジュリエットの姿。スマフォを持っている。

イマリ 今度、舞台で劇をやることになりました。(と、消して)……劇をやることになったよ……(と、消して)舞台に立ちます。「ロミオ&ジュリエット」です。……バカみたい。どうせ、送れもしないのに。
トキエ声 イマリ~? 準備できてる?
イマリ 今行きます! ……忘れてください。私は一人で(泣くことにします。)

    振り払うようにイマリは去る。時計の音がする。

06 結婚と悲劇と

    キャピュレット家。ジュリエットの部屋。
    時計の音の中、ジュリエットは不安げにやってくる。

ジュリエット (ふと時計を見て)十二時。……乳母(ばあや)を使いに出したのは、時計が九時を打ったときだった。半時もすれば戻るってちゃんと約束したのに。会えなかったの? いいえ。いいえ。まさか。乳母(ばあや)は足が遅いもの。それなのに見栄を張って半時で戻れるなんて言っただけ。乳母がボールのように早ければ良かったのに。私があの人に投げたら、あの人が受け取って、そしてまた私に投げ返してくれる。そんな速さで思いを伝え合えればいいのに。

    と、乳母がやってくる。

乳母 (と、疲れて)お嬢様、ただいま帰りました。
ジュリエット 乳母! おかえりなさい! ねえ、どうだったの? お目にかかれた? 
乳母 お嬢様、もう少し待ってくださってもいいじゃありませんか。私はこんなに疲れてしまっているんですよ。
ジュリエット ごめんなさい。あたしのために頑張ってくれたのに。だけど、ねえ、大好きな乳母。お願い。あの方がなんておっしゃったのか教えて?
乳母 お嬢様は今日、お出かけになるお許しをもらっていらっしゃいますね?
ジュリエット ええ、それはそうだけど。
乳母 でしたら、大急ぎでロレンス神父様のところへ。そこに、あなたを奥様になさる旦那さまがお待ちですよ。
ジュリエット それは、つまり、そういうこと?
乳母 さあ、急いでおでかけなさいませ。お一人ででございますよ。私は梯子(はしご)を取りに行かなくてはなりませんので。
ジュリエット 梯子を?
乳母 その梯子で、あなたの愛しいお方が今夜登ってこられるようにですよ。
ジュリエット あの方がここに!? でも、梯子なんて重いのではなくて?
乳母 私の大好きなお嬢様。お嬢様がお喜びなることなら、この乳母は何度でも骨を折るのでございますよ。さあ、私は力をつけるために食事に参りますから。お嬢様は早くおでかけなさいませ。
ジュリエット ありがとう! ええ。すぐに行くわ。あの方が待っているんですもの。

    と、乳母とジュリエットが去る。
    どこかに神父の姿をしたキョウタ(ロレンツ)が現れる。
    教会。語り部①の姿をしたナウミがロミオとして客席に背を向け祈っている。

ロレンス 願わくは神よ、この聖なる式に祝福を。後の日に悲しみを持って我らを咎めることがありませんよう。

    と、ジュリエットがやってくる。

ジュリエット 神父様! この度はなんとお礼を申し上げればよいか。
ロレンス お礼ならばロミオから二人分に勝るほどもらっているよ。
ジュリエット ロミオ。あたし、なんて言ったらいいか。あたし、本当こんな気持ちがあるなんて。
ロミオ それは僕も同じだよジュリエット。
ジュリエット ロミオ!
ロミオ ジュリエット!

    と、二人が接近する前に

ロレンス (咳払いをして)二人ともどうやら準備は整っているようだ。ならば、急いで誓いを済ませよう。教会が二人を認めるまでは、二人きりにするわけにはいかないからね。

    幸福な音楽の中、ロミオとジュリエットは二人の世界に入っていたことに気づき、照れる。
    気持ちを落ち着かせ、誓いを交わすためロレンスとともに去る。
    音楽が消え、語り部②の格好をしたトキエがやってくる。暗く語りだす。

語り部② しかしその夜。キャピュレット家へ向かう途中。ロミオは親友マキューシオと、キャピュレット家のティバルトとの諍い(いさかい)に巻き込まれる。

    語り部①がロミオとしてどこかに現れる。ティバルトとマーキューシオを互いに諌めているように動く。

語り部① ティバルト! 僕は君と戦いたくはない! マーキューシオ! 剣を抜くのはやめろ! 街中だぞ! 乱暴なまねはよすんだ! ご領主様の言葉を忘れたのか? あれほど厳しく命じられたじゃないか! やめろ、ティバルト! マーキューシオ!

    と、全てを無駄に感じさせるように剣が体を刺した音がする。
    マーキューシオの格好をした(できれば体を刺された事がわかる格好)キョウタが現れる。剣を落とす。

語り部① マーキューシオ! 大丈夫だ。傷は浅いぞ!
マーキューシオ 何だって間に入ってきたんだ!? お前の体を影にして、あいつは俺を刺しやがったんだぞ!
語り部① 僕は、ただ争いを止めたかっただけだ!
マーキューシオ 争いを止める? お前が? (と、哄笑し)くたばれ! モンタギューも、キャピュレットも、どっちの家も同じようにくたばってしまえ! この俺を、ウジ虫の餌にしやがった貴様ら全員、同じようにくたばってしまえ!

    と、マーキューシオは言いたいだけ言って去る。

語り部① ジュリエット。君の美しさが、僕を弱虫にしてしまったんだろうか。……ごめん、ジュリエット。僕は、友の敵を取らないわけにはいかない。

    と、語り部①がマーキューシオの剣を拾う。そして去る。
    と、全てを無駄に感じさせるように剣が体を刺した音がする。
    剣を引きずった語り部①(ロミオ)がやってくる。剣には血がついている。

語り部①&② ああ、僕は運命にもてあそばれる馬鹿野郎だ。

    と、剣を放り投げ、語り部①は走って逃げた。
    声として「マキューシオを殺した男はどこへ逃げた!?」「人殺しはどこ!?」
    「人殺しならここにいる!」「ここで死んでいる!」「ティバルトが殺されている!」
    「ティバルトが殺された!」「誰に!?」「誰が殺した!?」
    殺人にざわめく街の中。
    領主の格好をしたキョウタがやってくる。

領主 静まれ! 静まれ静まれ! この騒ぎを起こした張本人は誰だ!

    と、語り部②はベンヴァリオとして領主に膝をつく。

ベンヴォリオ 領主様! 私(わたくし)、ベンヴァリオはこの争いの不幸ないきさつをすべて申し上げることができます。あちらに倒れておりますのが、ロミオに殺されたその張本人、勇敢なマーキューシオを殺した男です!

    と、語り部②はそでを指す。そでからジュリ母となったナウミの声がする。

ジュリ母声 ティバルトが! 甥のティバルトが! なんてひどい! 誰がこんなことを!
領主 ベンヴォリオ、では誰がこの血なまぐさいさわぎをはじめた?
ベンヴォリオ ティバルトです、そして彼をロミオが殺しました。
領主 ロミオが、か。
ベンヴァリオ ロミオは言葉も丁重に喧嘩を諌めようとしたのです。けれど、ティバルトはロミオの話に耳を貸さず、マキューシオを殺してしまった。友を殺された復讐のため、ロミオはティバルトを殺しました。

    と、ジュリ母の格好をしたナウミがやってくる。

ジュリ母 領主様、恐れながらこの者はモンタギューの身内。身びいきで嘘をついているに決まっています。
ベンヴァリオ 嘘などついていません!
ジュリ母 領主様、お願いでございます、正しいお裁きを。ロミオはティバルトを殺しました。ロミオは死を持って償うべきです。
領主 ロミオには即刻追放を命じる!
ジュリ母 追放など軽すぎます!
領主 これは温情ではない! 死を持って終わらすのではない。それほど私の怒りは強いのだ。ロミオを即刻この街から追放させよ! 万が一明日にも街にいたのなら、直ちに死刑と処す。いい加減このような争いは終わらせなくてはならないのだ!

    領主たちが去る。
    ジュリエットの部屋。
    事件を知らないジュリエットが一人でソワソワとしている。

ジュリエット 早く夜が来ればいいのに。優しい夜が早くあの方を連れてきてくれれば……。

    と、青い顔をした乳母がやってくる。

ジュリエット 乳母(ばあや)! どうしたの? そんな顔をして。

    と、乳母が口を開く。

ジュリエット ロミオ様が、追放? ……ティバルトを手に掛けた? そんな……。

    ジュリエットは血の気を失い、その場に崩れ落ちる。
    乳母が寄り添う。嘆くジュリエットを乳母が慰めている。

07 悲劇考察

    と、台本を持ったナウミ、スマフォをいじりながらのキョウタがやってくる。

ナウミ 結婚初夜に、夫が殺人で逃亡したと知らされた新妻って解釈でオッケー?
キョウタ まあ、だいたい。(と、スマフォの操作を終え)よし、今日の分のアップは出来たっと。
ナウミ でもこの後、ジュリエットはロミオと会おうとするんだよね?
キョウタ 乳母(ばあや)にロミオを見つけてもらってね。といっても、ロミオはロレンス神父のところに匿われていたんだけど。
ナウミ 出た、ロレンス神父。でも、わかんないなぁ。
キョウタ 何が?
ナウミ 夫が人殺しでも会いたいって思う?

    と、乳母の演技をやめトキエがナウミに向く。
    ジュリエットもイマリになる。

トキエ 思わない。むしろ引く。
ナウミ それな。
キョウタ それだけ愛が重かったんだろう?
イマリ たとえ人を殺した人だとしても、愛することをやめられなかったんです。それが、愛なんです。
トキエ 愛かぁ。なんだかなぁ。
イマリ なんですか?
トキエ いや、なんかうまくいえないけど、なんかなぁ。
ナウミ ……本当に相手を愛しているんなら、会うべきじゃないよね。
イマリ え。
ナウミ 罪は償わせなきゃ。相手のことを思うならさ。それが、本当の愛なんじゃないの?
キョウタ 相手のことを思う、か。
トキエ 付き合った経験のない女が愛を語る、か。
ナウミ うっさい。なんかさぁ。「愛している」って言葉を言い訳にしすぎじゃない? ロミオはロミオで、ジュリエットのせいで弱虫になったみたいなセリフあるし。
トキエ その前に、喧嘩を止めるのは弱虫だからじゃないしね。
ナウミ それな。そもそも自分のやったことを人のせいにするなよって思う。
イマリ 別にあのセリフは本気で言ったんじゃないと思います。ジュリエットを愛して変わったけれど、及ばなかった自分への皮肉なんじゃないでしょうか。
ナウミ そんでロミオもさ、ジュリエットに会いに来るわけでしょう?
イマリ 人に見つかる危険を覚悟の上で、それでも会いに来るんです。
ナウミ でももしジュリエットと一緒にいるところを見つかったりしたら、相手にも迷惑になるわけでしょう?
キョウタ まあ、騒ぎにならないわけがないな。
トキエ 相手のことを思うんなら、おとなしく追放されとけってこと?
ナウミ そう。なんか、もう最後だから最後にヤルことヤっておこうって感じがして気持ち悪いんだよね。
キョウタ おい、言い方。
トキエ そんなん言われたら、そうとしか見えなくなるじゃん。
ナウミ だからそうとしか見えないんだって。
イマリ でも二人にとっては真剣だったんです! 周りがどんな目で見たって、お互いにはお互いしかいなくって。相手を失うことは世界を失うことのようなもので。だから、相手がたとえ人殺しでも、一夜しか会えなかったとしても、会いたいと思って待つし、会いに行くんです。それが二人の愛なんです!
キョウタ ……まあ、ほら、愛も色々あるから。
トキエ ああ、S(サド)とかM(マゾ)とかロリとかショタとか?
キョウタ その例えがすぐに出てくるのはどうなんだ?
トキエ BなLを例えに出したほうが良かった?
キョウタ 本当愛には色々あるよな! な? だから、ロミオとジュリエットはお互いを求め、乳母(ばあや)の手引で一夜を共にしたわけだ。(と、観客に語るように)そして、お互い別れを惜しみながらも夜明けとともに、ロミオはジュリエットの元を去る。

    と、ナウミはその間にジュリエットの母へ。
    イマリはジュリエットとしてロミオとの別れを惜しみ、ロミオの無事を祈る。そこへナウミがやってきてジュリエットに声をかける。

08 ジュリエットの環境変化

ジュリエット ……うれしいお話?
ジュリ母 ええ。お父様はね、あなたにこのひどい悲しみを忘れさせてやろうと、おめでたい喜びの日をお決めになったの。
ジュリエット 一体どんな喜びなんです?
ジュリ母 今度の木曜日の朝早く、あのりっぱで、若くて、気高い紳士、パリス伯爵と、聖《セント》ペテロ教会であなたは結婚することにきまったのですよ。
ジュリエット 結婚? 私が? 次の、木曜に?
ジュリ母 嬉しいでしょう?
ジュリエット ……いいえ。
ジュリ母 ジュリエット?
ジュリエット パリス様とは結婚したくありません。
ジュリ母 何を言っているの?
ジュリエット 私はあの人と結婚するなんて嫌です。なんでそんな急がなくてはいけないのですか? お願いです。お父様にもおっしゃってください。私はまだ結婚しませんって。今パリス様と結婚するくらいなら、お母様もご存知の、あのロミオとでも結婚しますわ!
ジュリ母 お前はなんてことを言うの! お父様の前でもそんなくだらないことが言えるものなら言ってみればいいわ! 

    と、ジュリ父(キョウタ)と乳母がやってくる。
    ジュリ父は片手に酒瓶を持っている。

ジュリ父 どうだ? ジュリエットに話してくれたか?
ジュリ母 ええ、あなた。でもこの娘《こ》は、嫌だと言うんです。馬鹿な娘。いっそ墓とでも結婚すればいい。

    と、ジュリ母は去る。

ジュリ父 嫌だと? なんてことだ!? 俺はなんて不幸だ。かわいがっていた甥っ子は亡くなって、一人娘は親の苦労も理解しようとしない!
ジュリエット お父様、このとおりです(と、跪く)どうか、結婚はお待ち下さい。
ジュリ父 うるさい! この親不孝者が! 俺が一体どれほど苦労して婿を見つけてきたのかもわからず、好き勝手にわがままを言うな!
乳母 まあ旦那様。そんなにお嬢様をお叱りになってはいけませんよ。
ジュリ父 俺はな。昼も夜も、どんな季節、どんな時でも、働こうが遊ぼうが、一人でいようが、人の中だろうが、いつもいつもいつも、この娘を結婚させる相手が悩みだったんだ。そしてようやくだ。立派な婿が決まった。領地も十分。若い。教育もしっかり受けている。周りの評判だって良い。誰が考えても申し分ない立派な若者だ。ところが、わけのわからない泣き虫のバカ娘だけがこの幸せを理解できず嫌だという。嫌なら構わん! どこへでも勝手に出ていけ! 冗談で言っているんじゃないぞ。俺の娘なら木曜日に結婚をする。それが嫌なら、そんな女は俺の娘ではない。家を出て、乞食になるなり、餓死でも、野垂れ死にでもすればいい!

    と、ジュリ父去る。

ジュリエット どうすればいい? 乳母(ばあや) どうしたらいいの? だって私の夫はこの地で生きていて、私の誓いは天にあるのに。ねえどうしたらいいの?
乳母 ……お嬢様。私はお嬢様のためにも、パリス伯爵と結婚なさるのがいいんじゃないかと思います。
ジュリエット 何を、言っているの乳母。だってあたしは!
乳母 ええ、ええ。パリス様との結婚、それが一番でございますよ。あの方は本当に素晴らしい方なんでございます。ロミオ様なんて、あのパリス様と比べたら……雑巾みたいなものですよ。お嬢様。前のことはお忘れなさいませ。きっと、今度のご結婚でお嬢様は本当に幸せになれます。 前の旦那様はお亡くなりになったのです。そう思いなさいませ。
ジュリエット そう。……わかったわ。お母様に伝えてくれる? 私は、お父様を怒らせたことを反省して、ロレンス神父のもとへ行ったって。懺悔をして、神のお許しを受けに行ったって。そう伝えてくれる?
乳母 はい、はい、かしこまりましたとも。それでこそ、ご立派でございますよ。

    と、乳母が去る。

ジュリエット 昨日私の夫を褒めた舌で、今日はあれほど貶せるなんて。父も母も、乳母(ばあや)も、結局他人。私はこのまま……いいえ。神父様なら何かいい方法を思いつかれるかもしれない。そうよ。それに、何もかもだめになったって、死ぬことだけは残されてる。

09 環境考察

    と、ナウミと、トキエ、キョウタが出てくる。

ナウミ 家を出れば良くない?
キョウタ うーん。 
トキエ あたし「お前なんか娘じゃない!」なんて言われたら、即家出するし。帰んないからね。まじで。
ナウミ それな。
イマリ ……箱入り娘ですから頼れる人がいなかったんですよ。
ナウミ でもさ、ロミオも確かロレンス神父のところに匿われて無かったっけ?
トキエ だったらロレンス神父に町の外に逃がしてもらえば良くない?
キョウタ そうなんだよな。ロミオは匿ったのに、ジュリエットには毒薬渡すんだよロレンス神父。
ナウミ あー。それでジュリエットは死ぬのか。
キョウタ いや、死なないよ? 42時間ほど仮死状態になる薬。
ナウミ&トキエ やばっ!
ナウミ え、やばくない? そんな薬ある?
トキエ ないでしょ。あ、睡眠薬的な?
キョウタ 脈も止まるし、呼吸も止まるからな。
ナウミ&トキエ やばっ!!
トキエ 何がやばいって、そんな薬を出せるロレンス神父が一番やばい。
ナウミ それな。
キョウタ だから言っただろう。重要人物だって。
トキエ 薬出すなら逃してやれよロレンス神父。
ナウミ 薬飲ませて何する気だったロレンス神父。
キョウタ 死んだことにして、墓に埋められる前にロミオと会わせて駆け落ちさせるつもりだったんだよ!
イマリ 結婚式前に花嫁が逃亡なんて、キャピュレット家にとっても、パリス伯爵としても完全な醜聞ですから。ただ逃げても、必死に探されるだろうと神父は考えたんだと思います。
キョウタ お貴族様にとっては見栄とか面子もあるからな。
トキエ えー。出てけって言っておいて、本当に出ていったら連れ戻しに来るわけ? うざ。
ナウミ それな。
キョウタ キャピュレット家よりも、たぶんパリス伯爵のほうが必死に探すってことじゃないか?
イマリ だから、ジュリエットは薬を飲むことを選ぶんです。もしかしたら、この薬は毒かもしれない。うまく仮死状態になっても、目覚めるのは土の中かもしれない。墓に運ばれる前に目を覚ましてしまって、全てが無駄になるかもしれない。そんな不安があふれるのを必死に抑え、愛する夫が、きっと迎えに来てくれることを信じて、ジュリエットは薬を飲む。

    ナウミは薬を飲む演技をすると、体をふらつかせる。
    トキエ、キョウタ、イマリが寝台を用意し、ナウミは寝る。

キョウタ ジュリエットの事情はロレンス神父が手紙にして、親友に託し、ロミオへ送る手はずになっていたんだ。その手紙には、ジュリエットが飲んだのは死につながる毒ではなく、仮死状態になる薬なんだって言うことも書かれていた。でも、
トキエ 手紙は届かなかった。
キョウタ (と、頷く)
ナウミ なんで? 親友が裏切ったの?
キョウタ 伝染病だよ。
ナウミ&トキエ 伝染病?
キョウタ 感染力の強い伝染病が流行っていたんだ。病気にかかったものを見舞いに行った疑いを持たれたために、ロレンス神父の親友は、街を出ることを許されなかった。
トキエ PCR検査の結果待ちで自宅待機みたいな?
キョウタ ああ。手紙が届かないまま、噂で、ロミオはジュリエットが死んだことを聞いてしまう。
ナウミ それで戻ってきちゃうのか。(と、ロミオの格好になる)
キョウタ 毒薬を薬屋から買ってね。誰かに見つかれば死刑になることを知りながら。ジュリエットの側で死ぬために、ロミオは夜の墓地へと忍び込む。そしてついにジュリエットの遺体を目にしてしまう。

    寝台に眠るジュリエットにロミオは近づく。
10 ロミオとジュリエットラストシーン

    と、灯りを手にロミオがやってくる。腰には剣を下げている。
    ロミオはジュリエットを見つける。言葉無く、側による。恐る恐るその肌に触れようとする。
    肌から漂う冷気に思わず手を離す。

ロミオ 僕の恋人。僕の妻。死でさえも、君の美しさを殺すことは出来なかった。大丈夫。僕がそばにいる。二度と離れはしない。(と、周りを見て)ティバルト。君もここにいるのかい? 君を手にかけてしまった僕が彼女のそばにいることを、どうか許して欲しい。……さあ、目よ。これが見納めだ。(と、毒薬を出す)愛する妻の元へと、連れて行ってくれ。(と、毒を飲む)ああ、薬屋は正直者だったようだ。これで、君の、側に、(いられる。)

    と、ロミオの体が崩れ落ちる。
    と、僅かな間の後、ジュリエットが目を覚ます。

ジュリエット ここは? 私は、薬を飲んでそれで……(と、ロミオに気づき)誰!? ……ロミオ様? ロミオ様!(と、手の薬に気づいて)これは? 毒? 毒を飲んだの? 手紙は届かなかったの? 私が死んだと思って……それで、私の側で死にに来てくれたの? ……死が二人を別れさせても、側にいたいと思ってくれたの? ずっと一緒にって願ってくれたの?……ひどい人。それなら、毒を私の分まで残してくれればよかったのに。……人の声。誰か来たら、私達は本当に別れさせられてしまう。(と、ロミオの腰の剣に気づき)良かった。まだ、これがある。(と、剣を抜く)これからは、この胸がお前の鞘。私を、ロミオのもとへと連れて行って!

    と、ジュリエットは体を貫き、ロミオの側に倒れる。
    と、ロレンスがやってくる。ロレンスは領主に説明をしている。

ロレンス そうですご領主様。ロミオはジュリエットの夫であり、ジュリエットはロミオの妻でした。私が、このロレンスが二人を結婚させました。二人の愛の強さに負けたというのもありますが、モンタギュー家、キャピュレット家の諍いの歴史が終わるようにとの願いもありました。しかし、争いの炎は消えず、二人は互いを想う愛ゆえに、命の灯火(ともしび)を消すこととなったのです。老い先短い命ではありますが、どうか厳しい法律に照らしまして、存分にご処刑くださるようお願い申し上げます。

    と、語り部②としてトキエがやってくる。

語り部② 領主は神父を罰しなかった。モンタギュー家とキャピュレット家はこの日を境に憎しみを捨て、そして、ヴェローナの街には両家が協力して建てたロミオとジュリエットの像が建てられた。死によっても別れまいとした二人の願いを叶えるかのように、2つの像は寄り添い、立ち続けたという。

    音楽。
    ロミオとジュリエットに光が当たる。
    再び巡り合ったかのように二人は笑いあい、向かい合う。
    二体の銅像のように時を止める。音楽が高まっていく。

11 ジュリエットを演じたかったのは

キョウタ はい。オッケー。

    キョウタの言葉に緩んだ空気になる。

トキエ やれるもんだね。四人でもロミジュリ。
ナウミ 正直、こんな話だったんだって感じだけど。……でも、やっぱりないなぁ。
トキエ なにが?
ナウミ ロミオ。愛した人が亡くなったからって、その側で毒飲むっていうのはさぁ。
トキエ それよりも、ジュリエットのほうがでしょ。剣で胸刺すって。
ナウミ それな。
キョウタ 自分にできるかって言われたらちょっと無理だって思うよな。
イマリ ……それだけお互いを愛していたんです。
トキエ そんななんでも「愛だから」じゃ納得いかない(っていうかさ)
イマリ 愛を誓ったんだから! お互いを愛するって。夫婦になるって誓ったんだから! それくらい思ってもいいじゃないですか!
キョウタ イマリ?
イマリ 離れ離れになりたくないって思ってもいいじゃないですか! ずっと一緒にいたいって思ったって! だから結婚したんじゃないんですか!?
トキエ いや、あたしに言われてもわかんないんだけど。
ナウミ イマリ。何かあったの? 
イマリ いえ。すいません……。

    少し気まずい空気になる。
    トキエはキョウタを見るが、キョウタは俺に振るなと首を振る。
    イマリは、自分が作った空気に耐えられず帰ろうとする。

ナウミ ……あたし、ロミジュリ全然知らなかったからさ。時代もぜんぜん違うし。正直未だに分かってない所もあるけどさ。なんか、ジュリエットがすごく本気なのはわかるんだよね。本気で、ロミオといたいと思ってるって。
イマリ それは、ロミオを愛しているから。
ナウミ じゃなくてさ。あたしが言ってるのは、イマリの演じるジュリエット、なんだよね。
イマリ あたしの?
ナウミ はじめは、ああ、イマリって自分で台本書くくらいロミジュリ好きだったんだ~。だったんだけどさ。これ、原作と少しと違うよね?
キョウタ まあ、四人で演じてるからな。
ナウミ 台本にない部分もさ、書き足しているでしょ。じゃないと四人劇に出来ないし。あたしだったらさ、楽しい部分を増やそうとすると思うんだよね。でも、これずっと必死でしょ。ジュリエットって。結婚への不安があって。愛への不安があって。別れへの不安があって。……なんでそんなイマリは必死なの? 必死に、ロミオへの愛を貫こうとしてるの?
イマリ ……それは。
ナウミ なんか、あたしはさ。ロミオやってて。思っちゃったんだよね。ロミオ軽いなぁって。あ、自分がね。自分のロミオってジュリエットの気持ちに比べたらなんか勢いだけだなって。いや、でもこれ台詞のせいなのかなって。そう思ったら。なんか、ジュリエットじゃなくて、イマリなのかなって。イマリが、なんかあって、ジュリエットの台詞が重く感じるのかなって。
イマリ ……。
トキエ え、イマリ、なにかあったの?
キョウタ イマリ?
イマリ そんなの、知ってどうするんですか?
ナウミ 力になりたい。
イマリ なんですか、それ。
ナウミ なんかあったんでしょ? そのなんかのためのロミジュリだったんでしょ? でも、イマリはさ、多分それが申し訳ないって思ってるんじゃない?
キョウタ 申し訳ない? 誰に?
ナウミ あたしたちに。
トキエ なにそれ。イマリ、そんなこと思ってたの?
キョウタ なんでそんなことを思うんだ?
ナウミ 利用しているみたいだから? なんか、そんな映画見たことあるんだよね。
キョウタ 映画かよ。
ナウミ 悪い? でも、正直さ、利用されてたって気にしないでしょ?
トキエ うん。
キョウタ むしろ、台本をこうやって俺たちができるようにしてくれたんだ。利用くらいされてやるよ。
トキエ 格好つけちゃって。
キョウタ うるさい。後輩には格好つけるものだろ。
ナウミ ね。だから、気にしないでいいんだよ。
イマリ ……なんで。
ナウミ え?
イマリ なんでですか。なんであたしなんかのために。
ナウミ 何言ってんの! イマリは、あたしたちの大事な後輩でしょ。だったら当然じゃない? 
トキエ やっと出来た、たった一人の後輩だからね。
キョウタ だな。
ナウミ それで? イマリ。何があったの?

    ナウミ、キョウタ、トキエの視線がイマリに向く。
    イマリは一度俯いて、顔を上げる。イマリが話し出すとイマリだけに光が当たる。

イマリ 子どもの頃、よく聞かされたんです。父と母は演劇部で。「ロミオとジュリエット」を演じたんだって。演技の勉強のために、二人して「ロミオ&ジュリエット」の映画のDVDも見たって。でも、それは現代版で全然参考にならなかったって。それからデートは大抵映画館だって。お互いの親に反対されて、そんなところもロミジュリみたいだって。駆け落ちみたいに家を出て。あたしが生まれてから認められたとか。覚えてないことも、たくさん。いつの間にか、それが無くなって。父が……いえ、離婚はまだみたいです。別居中ってやつですかね。それで。でも、父とはずっと連絡取れなくて。連絡先とか母に聞くとか、無理で。でも、高校は知っていると思うので。ロミジュリの舞台をやれば、母も、懐かしいって父に連絡してくれるかなって……って、言って母にもまだ言えてないんですけどね。もうすぐ本番なのに。舞台やるよとしか言えて無くて。何のためかわからなくなって。本当、結婚って、なんのためにするんですかね。病めるときも健やかなるときもとか、嘘ですよね。運命なんてないんですよね。父と母だってロミオとジュリエットじゃないですし。だから……ごめんなさい。何言ってるかわからなくなっちゃいました。すいません。話聞いてもらって、あれなんですけど、今日は、これで失礼します。本当、すいませんでした。

    イマリが去る。

12 私達のジュリエットのため

    ナウミ、キョウタ、トキエがぼんやりと座っている。
    話を聞いたけれど、思った以上に重くてどうしていいかわからないでいる。

ナウミ ……イマリが入部した時にさ、
トキエ うん。
ナウミ 「イマリって呼んでください」って言われて、あたし、正直、ちょっともやっとしたんだよね。でも、ちゃんと理由あったんだね。信じたいんだ。イマリは。まだ、イマリでいられるのをさ。
トキエ ……あたし、イマリの声、結構好きなんだ。
ナウミ うん。
トキエ 明るく話している時のさ、イマリの声、本当、好きなんだよ? 後輩だし。力になりたいし。声好きだし。なのに……何も言えなかった……。
ナウミ うん。

    トキエとナウミが寄り添う。
    キョウタはスマフォを取り出す。おもむろにトキエとナウミの写真を取る。

トキエ ……なんで撮ったし。
キョウタ いや、凹んでる二人って珍しいかなって。
ナウミ それ、ネットに上げたらまじでしめるから。
キョウタ 分かってるよ。……イマリの父親を見つけよう。

    ナウミとトキエがキョウタを見る。

キョウタ 俺だって何も言えなかった。でも、やりたいことは聞いた。だったら、それを手伝おう。
ナウミ 手伝うって?
キョウタ イマリの父親。見つけて、本番にこさせるんだよ。
トキエ そんなの、できんの?
ナウミ イマリは連絡先知らないって。
キョウタ スマフォ中毒舐めるな! 個人の特定くらいな、本気になれば出来るんだよ。
ナウミ え、それは大丈夫なの? 犯罪とかじゃなくて?
キョウタ 結構ギリギリかもしれないけど。ナウミ。
ナウミ なに。
キョウタ 映画ファンっぽいアカウント作れるか? ロミジュリのキャスト周辺使って。
ナウミ 出来なくはないけど。
キョウタ トッキー。
トキエ トッキー呼ぶな。なに。
キョウタ 日本語吹き替えバージョンでのキャスト周辺の(ファンっぽいアカウント)
トキエ 作れるけど、何に使うの?
キョウタ イマリが言ってたろ。両親のデートは映画館だって。映画好きならそれ関係の情報はフォローしているはず。アカウントに鍵をかけている場合、ファンアカウントになりすまして、相手からのフォローを狙う。
ナウミ やばい。ガチだ。
トキエ SNSやってなかったらどうするの?
キョウタ イマリを見る限り、それはないと思う。
トキエ イマリを? なんで?
キョウタ 親に見に来てもらいたいって思うのは、親に愛されていたからだろう? 夫婦関係がうまくいかなくなっても、子供のことは思っているはず。会えないなら、どうにかして情報をと思う。ジュリエットの父親が言っていただろう「昼も夜も、どんな季節、どんな時でも、働こうが遊ぼうが、一人でいようが、人の中だろうが、いつもいつもいつも」……娘のことを考えてしまう。そんな親じゃなきゃ、イマリは舞台を見に来てほしいなんて思わないだろ。
トキエ そう、かな。
ナウミ たしかにね。
キョウタ 教えてやろう! イマリが、俺達の舞台でジュリエットをやるんですって。そうしたら、絶対に、見に来るさ。出来る限りのことをしよう。俺たちの、ジュリエットのために。
ナウミ&トキエ おう!

    ナウミとトキエが頷く。明るい音楽。
    キョウタが客席を向く。

キョウタ ここから先の話は、正直絵面があまりにも地味になるので、演劇的にお届けしようと思う。なんせ、気合を入れたとしてもやってることは、三人でスマフォをいじっているに過ぎない。例えばこんな感じに。

    と、ナウミとトキエがスマフォを無言でいじっている。
    そこにキョウタも参加してスマフォをいじっている。
    時折肩を回したり、腕を伸ばしたり。

ナウミ あ、
トキエ ん?
ナウミ 誤字った。
キョウタ りょ。

    また無言でスマフォをいじる三人。
    キョウタが立ち上がる。

キョウタ 地味だ。地味すぎる。なので、ド派手にやってみたいと思います。「映画ファンの中から、うちの高校フォロー者検索!!!」

    と、無駄な動きをしながらスマフォを操作する。
    ナウミとトキエもそれに従う。踊るような動きの中、

ナウミ 映画ファンアカ更新! 更新!!
トキエ フォローしつつ、映画声優ファンアカウント開始ぃ!!
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トキエ 声優のつぶやきにいいね! いいね! いいね!
キョウタ 検索範囲をさらに絞るぅ!
ナウミ 定期的に情報更新! 更新!!
トキエ いいね! いいね! いいね!!
キョウタ 検索! 検索ぅ!!
ナウミ 更新! 更新!!
トキエ いいね! いいね! いいね!!
キョウタ 検索! 検索ぅ!!
ナウミ 更新!
トキエ いいね!
キョウタ 検索!
ナウミ 更新!
トキエ いいね!
キョウタ 検索! 検索!? 検索!!

    三人の動きが止まる。キョウタのスマフォをナウミとトキエが覗き込み、その顔が同時に上がる。

ナウミ&トキエ&キョウタ 見つけた!

    暗転。
    

13 再びのラストシーン

    本番の日。
    ジュリエットの格好をしたイマリがいる。ロレンス神父に渡された薬を持っている。

ジュリエット もしこれが毒薬だったら? 神父様が私を騙していたら? いいえ。そんなことはない。神父様は立派なお方だもの。……でも、もし、お墓の中で、ロミオが来る前に目覚めてしまったら? 愛する人のいない一人ぼっちで。でも、それは今と何が変わるのかしら。

    と、舞台端に光が当たる。ロレンス神父の格好したキョウタが双眼鏡で客席を覗いている。
    ロミオの格好をしたナウミがそばにいる。

キョウタ いるいる。多分あれ。あの、奥の端。で、中央にいるのがイマリのお母さんだろ。どっちもプロフィールの写真そっくりだ。
ナウミ この薄暗さでよく見えるね。
キョウタ 暗視機能付いてるからな。(と、ナウミに双眼鏡を渡す)これで、イマリの目的は達成できたな。
ナウミ (と、双眼鏡を覗いて二人を確認しつつ)イマリ、気づいてないけど。
キョウタ それは劇終わってから教えてやればいいよ。よし、後はラストシーンだな。
ナウミ ……ねえ。
キョウタ なんだよ。
ナウミ ラスト、変えてもいい?
キョウタ このタイミングで!?
ナウミ だよね。ごめん。
キョウタ ……やれよ。
ナウミ いいの?
キョウタ 最初にイマリの様子に気づいたのはナウミだろ。でも、それから何も言わなかった。本番までずっと。
ナウミ トッキーと同じでなんて言っていいかわからなかったんだ。
キョウタ 今はあるんだろ?
ナウミ なんかさ、イマリの両親見てたら浮かんできた。
キョウタ 今しか言えないんだろう。
ナウミ ロミオじゃないとジュリエットには届かないと思うんだよね。
キョウタ じゃあ、やれよ。可愛い後輩のためなんだろう?
ナウミ キョンキョン。
キョウタ キョンキョン呼ぶな。
ナウミ なんであんたモテないんだろうね?
キョウタ うっさい! わりとモテるほうだわ!
ナウミ ありがと。

    キョウタが去る。
    ナウミは一度双眼鏡で両親を確認する。決意を胸に去る。
    ジュリエットに再び光が当たる。

ジュリエット ……ロミオ様。あなたのために。私は……(と、薬を飲み、ふらつくようにそでに去る)
乳母声 お嬢様! 奥様大変です! お嬢様が! お嬢様が!

    ランタンを手にロミオがやってくる。腰には剣を下げている。
    ロミオはゆっくりと慎重に歩を進める。やがて、ロミオはジュリエットを見つける。
    ロミオはジュリエットを見つける。言葉無く、側による。恐る恐るその肌に触れようとする。
    肌から漂う冷気に思わず手を離す。大げさなほどに声を出す。

ロミオ 僕の恋人! 僕の妻! 死でさえも、君の美しさを殺すことは出来なかった! 大丈夫。僕がそばにいる。二度と離れはしない。

    と、ロミオはジュリエットに顔を寄せる。

ロミオ(ナウミ)(と、小声で) 両親が来ているよ。
ジュリエット (と、ジュリエットは思わず反応しそうになる)
ロミオ(ナウミ) ……さあ、目よ。これが見納めだ。(と、小声で)許可はもらった。ラストを変える。
ジュリエット (と、再び反応しそうになる)
ロミオ (と、毒薬を出し、飲もうとする)……いや、飲めばすぐに終わるんだ。もう少し、君との時間を過ごすのもいいだろう。せめて、誰かが来るまでは。

    と、どこかにロレンス神父の格好をしたキョウタと語り部②の格好をしたトキエがいる。

トキエ 本番で台詞変えるとか、漫画やドラマか!
キョウタ なんとかフォローはするから。
トキエ 頼むよ。あたし本番弱いんだから。

    と、二人が見守る中、ロミオが語る。両親にも届くように。

ロミオ ……ジュリエット。教会で死が二人を別つまでと誓った時に、こんなにも早く別れが来るなんて思っただろうか。でも僕は思うんだ。例え何年一緒にいようと、二人の時を十分だと感じるなんて出来ただろうかと。どれほど時が経っても、君が僕より先に亡くなったなら、僕はきっと今日と同じように君が居ないことを嘆くんだろう。この思いは、君と過ごした時間が短かったからじゃない。君だから抱く思いだ。この思いは決して変わらない。

    と、ジュリエットの体が動く。

ジュリエット ……本当に、変わらない、ものでしょうか。
ロミオ ジュリエット!?
ジュリエット 暗い闇の中。あなたの声が聞こえました。安心するはずの声。でも私は、怖くてたまらなかった。
ロミオ 何が怖いの?
ジュリエット 父も母も、変わってしまった。乳母(ばあや)も……人は変わる。誰かを愛する前と後で変わるように。愛した後とそれより先、変わらないだなんて、誰が言えましょう。
ロミオ 変わっていくのは怖い?
ジュリエット 私の気持ちが、あなたの気持ちが変わるのが、怖い。……でも何より怖いのは、変わったのに、変わっていないふりをすることなんです。少しも平気じゃないのに、平気なふりをすることなんです。だからロミオ、お願いをしてもいいですか?
ロミオ どんな願い?
ジュリエット 私を思う気持ちが変わったら。その時は、必ずすぐに教えて下さい。もちろん、あなたの愛が消えないようにあなたを愛したいと思っています。でも、お互いの愛が変わってしまったのなら、その時は。変わっていないふりはしないでください。
ロミオ 約束する。愛が変わったその時は、隠さず告げると誓おう。
ジュリエット ……ありがとうロミオ。その言葉で、ようやく私は前を向ける気がします。

    ジュリエットが立ち上がろうとする。
    ロミオが手を貸す。

ロミオ 夜のうちに街を離れなければいけない。両親に会うことは出来ないと思う。
ジュリエット はい。
ロミオ キャピュレット家は(と、観客席を指す)向こうの方角だ。最後に、両親に伝えておくことはないかい?
ジュリエット (と、イマリは客席に父と母を見つける)……お父様、お母様。どうか、お二人はお二人の心のままに生きてください。心を隠さず、偽らず、誤魔化さず。私も、そう生きたい。生きていこうと思います。今までありがとうございました。

    ジュリエットはしっかりと観客席に頭を下げる。
    ゆっくりと顔を上げ、ロミオを見て笑う。ロミオもジュリエットを見て微笑む。
    ロミオとジュリエットが見つめ合う。
    インカムをつけたキョウタが舞台袖でいる。

キョウタ (インカムに)うん。音楽あげちゃって。幕。ここでお終いにしよう。
トキエ 了解!

    音楽が高まっていく。トキエは緞帳幕を下ろす合図。
    暗転。拍手が聞こえる。
    暗闇の中、声「本日の公演はすべて終了いたしました。お忘れ物の無いよう、お気をつけてお帰りください。繰り返します――」

14 エピローグ

    練習着姿のキョウタがやってくる。伸びをする。
    スマフォをいじりながら柔軟。
    と、練習着姿のトキエがやってくる。

トキエ おはよう、キョンキョン。
キョウタ キョンキョン呼ぶな。おはようトッキー。
トキエ トッキー呼ぶな。
キョウタ ならお前も呼ぶな。
トキエ だが断る。
キョウタ 断るな。

    と、トキエは無視して柔軟を始める。
    キョウタも、柔軟をしている。

トキエ 昨日休めた?
キョウタ 久しぶりになにもない休みだったからな。ずっと寝てたよ。
トキエ あたしも。まあ、本番後って毎回そんな感じだよね。
キョウタ 翌日が祝日で良かったよな。
トキエ ……イマリ、ずっと謝ってたよね。
キョウタ まあ、最後ドタバタしたからな。
トキエ でもイマリ悪くないよね? どっちかって言うと、ナウミのせいでしょ?
キョウタ そう言っても、「そんなことないです」の一点張りだったろ。
トキエ だよね。このまま部活やめちゃったらどうしよう……。

    暗くなる二人。
    と、そこへナウミがやってくる。やたら元気。

ナウミ おっはよー!
キョウタ おはよ。
トキエ おはよってか、テンション高すぎない?
ナウミ いやぁ昨日一日ほぼ寝ていたし、今日も授業全部寝てたから体力有り余ってんだよね。
トキエ それは寝すぎ。
キョウタ これで後はイマリだけか。
ナウミ イマリ? ああ、聞いてないんだ?
キョウタ え。
トキエ イマリ、何かあったの?
ナウミ イマリはね……もう、いないんだ。
キョウタ ……え。
トキエ 嘘、どういうこと?
ナウミ ということで、いらっしゃいませ一年生!

    と、イマリがやってくる。少し緊張しているように見える。

キョウタ&トキエ イマリ!
キョウタ なんだよ。変な嘘つくなよ。
トキエ 一瞬嫌な汗かいたし。
キョウタ 本当だよ。
ナウミ 嘘はついてないよ。まあ、詳しいことは本人から。

    と、ナウミが一歩下がる。
    イマリがキョウタとトキエに向く。

イマリ その、今回は色々とあたしのためにありがとうございました。ナウミ先輩から聞いて。お二人もすごくあたしのために頑張ってくれたって。すごく、すごく嬉しかったです。
キョウタ いや、良かったよ。両親と会えたんだろ?
イマリ はい!
トキエ 話、出来たの? それで、仲は戻ったの?
イマリ 離婚することになりました!
キョウタ&トキエ え――。
イマリ あ、全然険悪とか無いですから。あたしは母と暮らしますけど、父も、年に何度かは会おうって。夫婦の縁は切れたけど、あたしの親としての縁は切れて無いって。だから、良かったかなって。
キョウタ ……まあ、イマリが良いなら、いいのか。
トキエ そうだね。イマリのためだったんだし。
イマリ はい! でも、それで、その、離婚することで、名字が変わるんですよね。
キョウタ あ――。
トキエ そっか。
イマリ そうなんです。もう、イマリじゃなくなるんです。
トキエ そっか。それで、「イマリはもういない」ってこと?
ナウミ そそ。
イマリ と言うよりも、今までって、あたし、イマリって呼ばれ続けていれば元のままでいられるような気がしてて。それで、名字で呼ばれたいみたいなところがありまして。馬鹿ですよね。自分でジュリエットに言わせておいて。「家の名前。そんなの、手でもない。足でもない。腕でも顔でもない。あなたの体のどこでもない。」……そう言っていて、一番縛られていたのは、あたしだったんです。

    と、ナウミが手を叩く。

ナウミ はいはい。もうロミジュリは終わったんだからね。今はもう、ジュリエットじゃないでしょう?
イマリ そうでした。
ナウミ では、一年生さん。お名前をどうぞ。
イマリ(アスミ) イマリ・アスミ改め、キジヤ・アスミです! 改めてよろしくおねがいします。

    明るい音楽が流れ始める。

キョウタ キジヤ?
トキエ どんな字書くの?
アスミ 犬猿雉の「キジ」に、屋台の「や」でキジヤです。でも、どうせなら、
トキエ あーそれで、桃太郎の話しだしたとき、犬と猿しか言わなかったんだ?
アスミ つい連想しちゃうから言いにくいってことはありました。なので、できればアスミって(呼んでください!)
ナウミ ジャスミン!
アスミ え?
ナウミ キジヤ・アスミだから、あだ名はジャスミン! どう!?
トキエ ジャスミン! かわいい!
キョウタ せっかくだし、次はアラジンっぽい舞台でもやるか?
ナウミ だったらあたし、あれ。敵のオウム。
トキエ 流石に、あの話を四人では難しいよ。でも、やるなら、ランプの魔人。
キョウタ じゃあ俺は、
ナウミ&トキエ 猿だ!
キョウタ なんでだよ!!
アスミ 待って下さい! え、ジャスミン決定ですか。あたしは、アスミって呼んでもらったほうが、
ナウミ 大丈夫大丈夫。「あたしたちがバラと呼ぶ花だって、他の名前がついても、同じように香るはず。アスミだってそう」
トキエ 「たとえアスミと呼ばれなくても、あなたはあなた。」
キョウタ だから君は、今日からジャスミン。
ナウミ&トキエ ジャスミン。
アスミ もうロミジュリは終わったんです! あたしはアスミ! アスミって呼んでください!!

    音楽が高まる。からかいとじゃれ合いが続く演劇部。
    一つの公演を終えて、部員たちの表情は明るい。
    物語が繋いだ絆がそこにはある。明るいまま幕が下りる。



参考
「ロミオとジュリエット」 大山敏子著(旺文社文庫)

あとがき
数年おきの感覚で「ロミオ&ジュリエット」を題材に作品を作りたくなる衝動に駆られてしまいます。
それだけ、シェークスピアによる作品が完成されているものである証拠なのでしょう。
今回は特に、「ジュリエットは赤子の頃地震を経験している」ことと、
「人を引き留める必要がある病気が広がっていたからこその悲劇」というのが、
改めて作品を作りたくなったきっかけではあります。

60分に収めるには、カットする必要がある個所があるかと思いますが、
そこは上演する皆様にお任せします。家庭に縛られているような気がしている一人の少女が、
先輩に恵まれて解放される。そんな姿が何よりも見たくてこの作品が出来ました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。