花魚さんのFF(Funny family)
作 楽静
登場人物(男5人 女5人 計10人) | |
母 | 花魚家母 旧姓 草壁妖精(くさかべ・ふぇありー)傭兵。 |
父 | 花魚家父 花魚流止不和(はなざかな・るしふぁー)主夫。 |
イチロウ | 28歳 長兄 一郎 オカマ。 |
ミチコ | 26歳 長女 道子 腐女子。 |
チカラ | 23歳 次男 力 鉄道オタク。 |
チヒロ | 17歳 三男 千尋 ちょっと不良。 |
リンゴ | 23歳 藤崎林檎 (ふじさき・りんご)漫画オタク。 |
シイナ | 17歳 詩菜 (ふじさき・しいな)演劇部。 |
アマネ | 25歳 筑津久井周(つくつくい・あまね)チカラの彼女。 |
ホウスケ | 28歳 邦助(ほうすけ) 議員を狙う男。 |
※作中に出てくる名前は、好きな名前に変えていただいて結構です。
※初演ではチヒロ・ホウスケは女子が演じていました。
季節は春。
舞台の中心は花魚家のリビング。大き目のテーブルが目立つ。
リビングには家族共通の本棚、家族の写真が沢山入っている。
子供たち全員の卒業アルバムもそこにある。
1 いつかの風景 3月
舞台に明かりがつくと母と父がいる。母と父の部屋。母のお腹には二人の初めての子供がいる。
父は母のお腹を気遣いながら、二人の時を過ごしている。
父 ハルは?
母 予定日7月よ。
父 ヒロ、アマネ、ミチ、なんてのもいいかな。漢字一字でさ。
母 普通過ぎない?
父 普通が一番だって。
母 あんまり普通な名前じゃ面白くないじゃない。
父 少なくとも僕の「ルシファー」よりは普通がいいな。
母 ルシファーはね。はじめ聞いたときびっくりしたもの。
父 妖精と書いてフェアリーと読ませる君の名前もすごいと思うけど。
母 へぇ?
父 そ、そんな僕らの子供なんだから、普通の名前がいいよ。普通の名前で、普通の人生を送ってほしい。
母 あなたの人生は普通でしょ。名前は関係ないんじゃない?
父 フェアリーと結婚する人生のどこが普通なんだよ。
母 へえ、そういう事言うんだ?
父 ま、まあ、名前が普通だからって、普通の人生だとは限らないか。ほら、イチローなんて、名前は普通だけど、メジャーリーガーになったりするしね。
母 イチロー! それ面白い!
父 え?
母 すごい普通! 普通すぎて面白い。
父 いや、だから野球選手にね、いるよね?
母 (と、おなかを撫でながら)花魚イチロー、か。どんな人生を歩むのかしらね。普通で、平凡で、何の変哲もない有りふれた
月なみで決まり切った可もなく不可もない人生を歩むのかな。
父 普通って言葉に恨みでもあるの?
母 それとも普通じゃない、面白い子になるのかな。例えばさぁ――
と、チヒロが現れる。着崩した制服姿。父と母は去る。
チヒロが語る間に、イチロウ、ミチコ、チカラが現れる。
イチロウ、ミチコ、チカラは後ろを向いて話す。語り終わると去る。
チヒロ こうして、花魚家の長男として生まれた花魚イチロウは、現在28歳。独身。今や立派な、オカマだ。
イチロウ オカマじゃないわよ。取ってないだけ。あたしはいわゆる、BNHなのよ。わかる? ビフォアー・ニュー・ハーフ。
チヒロ あれで、高校時代モテたらしい。男に。次に生まれたのは花魚ミチコ。現在26歳。独身。彼氏いない歴イコール年齢の会社員。
理由は簡単。花魚ミチコは腐っている。
ミチコ 腐ってない腐ってない。って、あ! 部長が新人君いびってる。ふおーー! 聞いた? 「真面目にヤレ」だって。
何を? ナニを? あれ、絶対部長誘ってるよ。新人君マジ頑張れ。
チヒロ 腐ってやがる。三番目に生まれたのは花魚チカラ。現在23歳。金融会社に勤めている。そして、オタクだ。
チカラ オタクが悪いか! 近鉄の22000系の美しさを知らずに何が人生だ。あの、ハチのような色、滑らかなボディ、
見れば見るほど魅惑的で、
チヒロ そして、末っ子が俺、花魚チヒロ。17歳。まぁ、ちょっとした不良をやってる。花魚家には普通な奴がいない。だから、
これから話すのは普通じゃない家族の話だ。
と、シイナが現れる。場所は道端となる。
シイナ ちーちゃん。ちーちゃん!
チヒロ それと、隣に住む藤崎(ふじさき)姉妹の話だ。こいつは妹の方、藤崎シイナ。
シイナ 今日も学校サボったでしょ。最近ちーちゃん変だよ。あたしの知ってるちーちゃんじゃないみたい。
チヒロ いつも言ってるだろ。ちーちゃんって呼ぶな。
シイナ 照れてるの?
チヒロ 嫌がってんだ。この格好見ろ。ちーちゃんなんて似合わないだろ。
シイナ 大丈夫だよ。その格好がまず似合ってないから。
チヒロ 放っておけよ。
シイナ 放っておけるわけないでしょ。ちーちゃん。中学の時は真面目で仲間思いのバスケ部だったのに。今時、不良なんて流行らないよ。子供は子供らしくだよ。
ほら、私みたいに!
チヒロ お前のせいでもあるからな?
シイナ 私のせい?
チヒロ 演劇部の公演だかで「ちーちゃん」「ちーちゃん」って連呼しやがって。俺がどれだけからかわれたと思ってるんだ。
シイナ そういう役だったんだよ。卒業式の夜に教室にちーちゃんとちーちゃんの友達が集まってね。おしゃべりするの。
あたし、ポッキーの袋きゅいって開ける役だったでしょ?
チヒロ うるせえな。誰も聞いてねえよ。
シイナ 自分が言い出したくせに。
チヒロ もういいから帰れよお前。
シイナ ちーちゃんのガキ。子供!
チヒロ 同い年だからな。
シイナ ちーちゃんのツンデレ! デレろ!
と、シイナが去る。
チヒロ その日、まずチカラがミチコに相談を持ちかけた。
チヒロが去る。
2 チカラのお願い@
花魚家の室内。チカラとミチコが舞台上にいる。
ミチコはチカラの彼女を演じる。
チカラ アマネ。
ミチコ 「なあに、チカラ」
チカラ ん。(と、手で何かを止める合図)
ミチコ は? ああ。「なあに、ちーくん」
チカラ 実は、家族を紹介する前に、アマネには話しておかなくちゃいけないことがあって。
ミチコ 「なに?」
チカラ 実は。うち、姉さんが二人いるって話していたと思うんだけど。
ミチコ はい?
チカラ 姉さんが二人いるって話していたと思うんだけど。
ミチコ 「ああ、そうなの? あと、弟君が一人だっけ?」
チカラ 弟はいない。
ミチコ いない!? なにそれ。
チカラ いいから。
ミチコ 「それで?」
チカラ 姉さんが二人いるって話していたと思うんだけど、実は、
ミチコ 「実は?」
チカラ 姉さんの一人は、兄さんなんだ。
ミチコ 「ん? お兄さんとお姉さんがいるの?」
チカラ 本当は兄さんなんだ。でも、姉さんなんだ。
ミチコ 「どういうこと?」
チカラ やっぱり説明できない!
ミチコ なんで出来ないかなぁ。
チカラ 無理だよ。だって彼女には普通だって思われてるんだ。今更変な家族がいるなんて言って引かれたくない。
ミチコ 普通? 誰が?
チカラ 僕が。
ミチコ 鉄オタのクセに。
チカラ それはいいんだよ。見てわからないんだから。
ミチコ いっちゃんだって、見た目は、
チカラ オカマだよね。
ミチコ でも、普通にいいオカマよ。
チカラ オカマの時点で普通じゃない。
ミチコ オタクだって似たようなもんでしょ。
チカラ とにかく僕は普通の家族を見せたいんだ。だから頼むよ姉さん。皆に邪魔をしないよう説得を手伝って欲しいんだ。
ミチコ 面倒くさいなぁ。
チカラ 今度一緒に池袋行くから。荷物持ちで。
ミチコ 今回だけだからね。
チカラ ありがとう!
ミチコ しかし、電車にしか興味がないと思ってたあんたに彼女とはね。
チカラ ちっちっち。僕は鉄道が好きなの。電車だけじゃない。
ミチコ どっちも同じ意味でしょ。
チカラ 全然違うよ。電車だと電気で走ってるものって意味だろ? 鉄道には蒸気機関車や、ディーゼル機関車も入るから。
ミチコ そうなんだ。
チカラ 言葉は正しく使ってくれなくちゃ。
ミチコ で、そんな鉄道馬鹿のあんたが彼女の何処に惚れたの?
チカラ 端的に言うと、匂いかな。
ミチコ またマニアックな。
チカラ なんか、安らぐんだよね。たぶん、相性が凄くいいと思うんだ。
ミチコ 香水のせいじゃない?
チカラ そんなこと無い! 彼女の匂いはそんなんじゃないんだ!
ミチコ ま、それ以上喋られると気持ち悪いから置いておくとして。でも、姉二人って言ってるんでしょ? あと一人はどうするの?
チカラ 藤崎姉に頼んだ。
ミチコ リンゴちゃんに?
3 チカラのお願いA
道端。と、リンゴがやってくる。チカラとリンゴが話すのをミチコは見守る。
チカラ 頼む、藤崎! 一日だけ僕の姉さんになってくれ。
リンゴ 頭大丈夫?
チカラ フリだよフリ。姉さんのフリをして欲しいんだ。
リンゴ 無理でしょ。同い年だし。
チカラ 大丈夫だよ。藤崎老けてるから。
リンゴ あぁん?
チカラ 大人っぽいから。綺麗だから。とても同い年には見えないよ。
リンゴ え〜どうしようかな。
チカラ 駅前の、ほら、ケーキ屋、
リンゴ パクテル?
チカラ そう。モンブラン買うからさ。好きだよね?
リンゴ モンブラン一個じゃなあ。
チカラ プリンもつける。
リンゴ なん……だと?
チカラ しかも二個だ!
リンゴ ね、姉さんになれば。ふりさえすれば、ほ、本当に、パクテルのモンブランに、プリンも二個もくれるのか。
チカラ ああ! 約束する! 姉さんのフリと引き換えのギブ アンド テイクだ。やるだろ? やれよ。やると言え!
リンゴ だが断る!
チカラ なにっ!!
リンゴ この藤崎リンゴが最も好きな事のひとつは、自分が有利だと思ってるやつに「NO」と断ってやる事だ!
チカラ ……気は済んだか?
リンゴ うん。
チカラ やってくれるか?
リンゴ プリン三個にして。
チカラ わかった。
リンゴが去る。
4 家族会議の夜
花魚家のリビング。ミチコが話しているうちに父とイチロウ、チヒロが集まってくる。
ミチコ 次男のチカラに恋人が出来たのは三か月前らしい。あいつも23だし? おかしくないとは思う。べつに、悔しいとか
思ってないし。そして弟は彼女が来るという前日に、こう言った。
チカラ 彼女には、姉が2人と俺と母の4人家族って言ってあるんだ。
ミチコ ということで、明日はチカラが彼女連れてくるけど邪魔しないでねってさ。
イチロウ どういうこと? 弟が彼女つれてくるって言うのに、なんであたしはいちゃ駄目なのよ。
チカラ 兄さんは、
イチロウ 「姉さん」
チカラ ほら、オカマだし? 普通じゃないから。
イチロウ 今時、一家に一人くらいオカマがいたって普通よ普通! っていうか、オカマじゃないわよ。取ってないだけ!
ミチコ そういうこと言うから駄目なんじゃない?
イチロウ 納得いかないわ。
父 イチロウはともかく、なんで息子が彼女を連れてくるって言うのに、俺はいたら駄目なんだ。
チカラ 父さんは、いないことになってるから。
父 何故だ!?
チカラ だって、名前が。
父 悪いのか? ルシファーって名前が! ルシファーの何が悪い!
チカラ 堕天使だし。
父 痛い名前だってことはわかってる。別に名乗ったりしないさ。だいたい、父さんがいることなんて秘密に仕切れないだろうが。
チカラ それは、ちょっとづつ情報を小出しにしていこうと思ってて。
ミチコ まあ、重いじゃない? いきなり家族総出で出迎えられても。母さんだって今海外勤務中なんだし。ね?
父 納得いかないな。
ミチコ えっと、チヒロは?
チヒロ 俺もいないことになってるんだろ?
チカラ うん。
チヒロ じゃあ、出かける。
ミチコ ありがとう。ってことで、せっかくチカラが彼女連れてくるって言うんだから、みんな協力してあげないと。ね?
イチロウ で、もう一人の姉は誰がするのよ。
ミチコ それはリンゴちゃんが頼まれたって。
イチロウ なによそれ。
チカラ 兄さん。
イチロウ 「姉さん」
チカラ 明日一日だけ、頼むよ。俺、振られたくないんだ。
父 チカラ。お前は、そんなに俺達が嫌なのか。
ミチコ 父さん。
父 うちが普通じゃないのは分かってる。でも、お隣さんに頼むくらい。嘘をついてごまかすくらいに、嫌なのか。
普通じゃないって言うのは、そんなに悪い事なのか? 普通で、平凡で、何の変哲もない有りふれた月なみで決まり切った
可もなく不可もない、そんな普通がいいのか。
と、電車が駅に着く音がする。家族が辺りを見渡す。チカラがスマフォを取り出す。
チカラ 電話だ。ちょっと出てくる。
父 チカラ!
チカラ ……そうだよ。俺はそんな普通な家が良かったよ。
チカラが去る。嫌な雰囲気。
ミチコ (空気をごまかすように)まったく。遅れてきた反抗期ってやつ? ちーちゃんみたくちょっと不良入っちゃったのかなぁ。
チヒロ グレたくもなるだろ。こんな変な家じゃ。
イチロウ 変わってた方が人生面白いのに残念よねぇ。
父 まぁ、俺だって昔は普通が一番だと思ってたからな。でも、大事なのは普通かどうかじゃない。そんなんじゃないんだ。
ミチコ ……母さん、なんて言うだろうな。
と、リンゴがやってくる。鍋を持っている。
リンゴ こんばんは〜。え、何この空気。
イチロウ あら、いらっしゃい。
リンゴ 煮物。作りすぎたからもって来ちゃった。
ミチコ ありがとう。
イチロウ 悪いわね。いつも。
リンゴ どうする? このままキッチンもって行く?
父 いやいやそれは悪いって。ほら、チヒロ。
チヒロ あぁ?
父 父さんが、受け取ります。
と、父が受け取って去る。 チヒロは出かける準備をする。
イチロウ あんた、あたしの代わりなんだって?
リンゴ え? ああ。よくわからないけど一日だけ姉になってくれって。
ミチコ ごめんねぇ。弟のせいで。
リンゴ 家にいるだけでしょ? 別に構わないよ。でも、どういうこと?
ミチコ 理由聞いてないの?
リンゴ 興味ないから聞き逃した。
ミチコ そっか。弟がさ。彼女連れてくるのよ。
リンゴ そうなんだ。弟君が?
ミチコ (と、去ろうとするチヒロに気づき)どこいくのチヒロ。
チヒロ 今日うちのチームの集会なんだよ。
イチロウ 捕まるんじゃないわよ。
チヒロ んなドジじゃねえよ。
チヒロが去る。
リンゴ へぇ〜。弟君がねぇ。
ミチコ せっかくだから、お茶でも飲んでって。ね。いっちゃんも。いつまでもふくれてないで。
イチロウ そうね。女子会しましょ。でも、あたしはまだ納得したわけじゃないからねっ。
イチロウとミチコが去る。
5 シイナとリンゴ
藤崎家。
シイナがやってくる。
リンゴ とうとう、弟君にも春が来たんだねぇ。
シイナ って、弟君って、どっち? チカラ兄? ちーちゃん?
リンゴ え? あれ? どっちだろ。
シイナ 何で聞いてないの!
リンゴ 興味なかったから。
シイナ すごい重要でしょう!
リンゴ まぁどっちかっていったらちーちゃんじゃない? チカラ君はねぇ。ほら、あんまり三次元に好かれる顔じゃないし。
シイナ それどんな顔よ。
リンゴ ちーちゃんにも、春が来たんだねぇ。
シイナ 嘘だよ。ちーちゃんに彼女なんて。そんなそぶり無かったのに。
リンゴ でも、彼って、雨の中で困ってる人を見たら思わず傘を差しだしちゃう系の不良だし。そういうのきゅんと来る子って、いるんじゃない?
シイナ ちーちゃんの萌えポイントはあたしだけが知っていると思ってたのに……。
リンゴ ま、告白の一つも出来ない自分を恨みなさいな。
シイナ だまされてるんだ。
リンゴ え?
シイナ だまされてるんだ。ちーちゃん、人の本性とか見抜くの下手だし、お人好しだし。ずぼらに見えて神経質だし。
足短いし。そんなちーちゃんのこと好きになる人なんているわけない。
リンゴ あんた、本当にちーちゃんのこと好きなの?
シイナ 何時にくるって? その女。
リンゴ さぁ。昼頃に家に来てくれとは言われたけど。
シイナ 昼頃、ね。わかった。
リンゴ やめておきなよ。人の恋路を邪魔したっていいことないよ?
シイナ 邪魔じゃない。ちーちゃんにふさわしい女かどうか。あたしが見極めてやる。
シイナが去る。
リンゴ それストーカーの発想だよね。
リンゴが去る。
6 その夜の電話
それぞれの場所でそれぞれが電話している。
と、電話をしているチカラがやってくる。
チカラ あ、アマネ? うん。家族も楽しみにしているって。
と、アマネが現れる。
アマネ よかったぁ。ちーくんの家に迷惑かな? って心配してたんだ。
チカラ でも、うち全然普通だよ。なんも面白くないよ。
アマネ 何言ってるの。普通が一番だよ。
チカラ そうだよね。うん。本当凄い普通だから。姉さん達も普通だし。
アマネ 明日お姉さん達に会えるんだっけ? えっと、確かミチコさんと、
チカラ イチコ。
アマネ イチコさん。楽しみだな。お姉さん達可愛い? 美人系?
チカラ 普通だよ。二人とも凄い普通。
アマネ それじゃ分からないよ。
チカラ ま、楽しみにしてて。
アマネ うん分かった。
チカラ じゃあ明日ね。おやすみ。
アマネ あ、まって。
チカラ え?
アマネ なにか忘れてない?
チカラ えっと……ああ、俺はお前が好きだ。
アマネ うん。あたしも。大好き。
チカラ じゃあ、明日。(と、電話を切り)……うまくいくといいな。
チカラと入れ替わるように母。戦闘服っぽい格好をしている。アマネと入れ替わるように父がやってくる。
どこからかヘリの音。銃撃の音が聞こえている。
母 チカラが彼女を連れてくるってどういうこと?
父 ああ。メール見たのか。そうなんだよ。明日来るっていうんだ。
母 罠ね。
父 罠?
母 チカラがモテるわけ無いでしょ。コレは何かの罠よ。
父 チカラだって、もしかしたら女の子に好かれる事があるかもしれないじゃないか。
母 ないわ。
父 言い切った!
母 自分のおなかを痛めて生んだ子だもの。あの子がモテないのはあたしが一番良く分かってる。だから罠よ。
俗に言う、ハニートラップ。
父 鉄道オタクで入社一年目のチカラにそんな罠を仕掛ける価値があるとは思わないが。
母 つまりトロイの木馬ってことよ。
父 なるほど。わからん。
母 目的は家の中ってこと。こうしちゃいられない。今から帰るから。
父 帰るって、仕事は。
母 家のピンチに仕事なんてやってられますか! グリニッジ標準時間で、ヒトフタマルマル花魚家への帰還を目指す。
邪魔するものはことごとく排除する。私が帰るまで専守防衛に努めよ! 復唱!
父 はい! 専守防衛に努めます! ……罠か。考えすぎだと思うけど、一応準備はしておくか。
父が去る。
母 考えすぎだ。そう、堕天使の名を持つ男は心の中で笑っていた。しかし、大きな闇はすぐ近くまで迫っていたのだった。すぐそこまで。
母が去る。少し雰囲気が変わる。男がやってくる。筑津久井ホウスケ
ホウスケ そうか。ギャンブル好きの噂は本当だったか。その調子でカジノを紹介し続けろ。負債が膨れ上がったときに、
一億ほど目の前に積めば落ちるだろ。……ああ、無党派のアナウンサーなら問題ない。いくつかスキャンダルをつかんでる。
ついでに、あの党の、ほら、秘書の一人がSMクラブに通ってる奴。ああ、そいつだ。週刊誌にリークしてやれ。
あとは勝手に自滅してくれるさ。うん。よろしく。(と、電話を切り)よし、これで、ほかの候補者は抑えられる。
あとは、俺の問題か。
アマネが現れる。
アマネ 兄さん。
ホウスケ アマネか。どうだった?
アマネ 明日。行くことになった。
ホウスケ ようやくか。つきあって三ヶ月とは。ずいぶん時間がかかったな。選挙までの時間を考えるとぎりぎりだったぞ。
アマネ あたしも、もう少し早いかと思ったんだけど。
ホウスケ やることはわかってるな。
アマネ ええ。上のお姉さんもいるみたいなのがちょっと不安だけど。
ホウスケ イチコねぇ。ふん。ひねりが無いな。勘はいいから気をつけろよ。覚えちゃいないと思うが、珍しい名前だからな。
アマネ 大丈夫。兄さんとあたしって全然似てないし。
ホウスケ 信用している。
アマネ まかせといて。うまくいったらお小遣いよろしくね。
ホウスケ アマネは本当にお金が好きだな。
アマネ 兄さんこそ。
ホウスケ ああ。俺はお金が好きだ。
アマネ うん。あたしも。大好き。うまくいくといいな。
音楽とともに溶暗。
飛行機の音。
7 次の日の花魚家
花魚家リビング。着ぐるみを着た父(頭と胴体が切り離せるもの)
女装をしたイチロウ、赤ん坊の格好のチヒロ。
そして苦笑気味のミチコと、呆然とするチカラ。
チカラ どういうことだよこれ。
ミチコ わたしが来たらこうなってた。
チヒロ 俺は起き抜けをイチロウにやられた。
イチロウ だって、父さんが、
父 (着ぐるみの頭を外し)母さん命令だ。
イチロウ って言うから。
チカラ 待ってよ。今日は大切な日だって言ったよね?
父 だからこうやって邪魔にならないように見守ろうとしているんだ。見ろ。座っていれば、でかいぬいぐるみにしか思えない。
チカラ おかないだろ! リビングにこんなでかいぬいぐるみは!
父 じゃあ、お前の部屋にいてやろうか? いいのか? 彼女と二人きりになろうと部屋に入ったら俺がベッドの横に座っていても。
チカラ わかった。父さんのは一万歩譲っていいとして、兄さん、
イチロウ 「姉さん」
チカラ その格好は何? あと、ついでにチヒロも。
イチロウ だって、お姉さんならいいんでしょ? 大丈夫。お店ではいつもこんな格好だし。こう言う格好大好きなの。絶対男だってバレない、
ミチコ バレるわ。
父 バレるな。
チヒロ バレるよ。
チカラ バレる。
イチロウ ま、その時はその時よ。
チカラ ダメダメだ!
イチロウ おとなしくしてるから、
チカラ 絶対ダメだ!
ミチコ チカラ。いっちゃんもこう言ってるんだし、必死になってるんだから。今日のところは大目に見るってことで
チカラ 姉貴。俺はもてないんだよ。知ってるだろ?
ミチコ 知ってる。
チカラ そんな俺の彼女だぞ。今日が最後の日になるかもしれないんだ。
イチロウ チカラの意地悪!
チカラ だいたいなんなんだよチヒロの格好は!
チヒロ 俺が聞きたい。
イチロウ あたしの子よ!
チカラ 無理やりすぎる! 頼むから余計な事はしないでくれ。頼むよ。この通りだから。
イチロウ ……分かったわよ。
ミチコ いっちゃん、どこ行くの。
イチロウ 作戦を練り直すわ。これで終わったと思わない事ね!
イチロウが去る。
チヒロ 俺、着替えてきていいよな?
ミチコ 写真撮っておく?
チヒロ うるさい。
チヒロが去る。
父 チカラ。イチロウの気持もわかってやれ。
チカラ ぬいぐるみは喋るな。……彼女、迎えに行く。
チカラが去る。
ミチコ なんか。この家では一番あたしがまともな気がしてきたわ。
父 ミチコ。
ミチコ ぬいぐるみは喋っちゃだめでしょ。さ、じゃあ弟の彼女を迎える準備しなきゃ。
ミチコが去る。
父 トイレ行きたいな……。
父はうつむく。
8 シイナの勘違い@
昼の駅前。アマネがやってくる。鞄と手土産を持っている。
アマネ 香水オッケー。メイクオッケー。うん。ネイルも完璧。(と、指先を空にかざす)掌を太陽にって、歌あったっけなぁ。
と、電話が鳴る。空にかざしてないほうの手で取る。ホウスケが現れる。
アマネ はい。
ホウスケ 俺だ。今大丈夫か?
アマネ 心配性なんだから。うん。まだ来てない。
ホウスケ そうか。
と、ホウスケとアマネの会話は無声に。シイナがやってくる。
シイナ 駅で待ち合わせると思ったんだけどな。いないか。
と、アマネを通り過ぎる。
ホウスケ アマネ、お前だけが頼りだよ。
アマネ (台詞が)くさいなぁ。
シイナ (「臭い」に反応する)え。
ホウスケ ちょっと臭い台詞だったか?
アマネ くさい。ここまで臭う。
と、シイナはついつい自分かと思う。
ホウスケ ひどい言い草だな。でも気をつけろ。お前はわきが弱い。
アマネ わきが?
と、シイナの目が片手を挙げているアマネを見る。
ホウスケ 正面からなら誤魔化せるが、横からだとコロリとやられる。相手の弱いところや逆に強い部分は頭に入れとけよ。
アマネ 大丈夫。(そこらへんは)抑えてる。
と、アマネは空に上げていた手を下ろす。ホウスケとアマネは無声演技に。
シイナ 腋臭(わきが)、なのか。わりと可愛い顔しているのに可哀そうに。……って、そんな場合じゃなかった。
と、シイナは去る。
ホウスケ では、気をつけて。
アマネ うん。ありがとう。兄さん。大丈夫。あたしに任せて。
アマネが電話を終えるとホウスケが去る。
アマネ 12時か。
と、チカラが走ってくる。
チカラ ごめん。待った?
アマネ ううん。今来たとこ。
チカラ よかった。えっと。行こうか?
アマネ うん。
と、チカラとアマネは去る。ホウスケが現れる。
ホウスケ 大丈夫といわれると、心配になる。それが兄心。よし。気づかれてないな。行くか。
と、ホウスケがチカラとアマネを追って去る。
9 彼女の挨拶
花魚家リビング。着ぐるみは動かない。ミチコとリンゴは一緒に座布団並べたり準備している。
チカラ(声) ただいま。
アマネ(声) おじゃまします。
と、チカラとアマネの声がする。ミチコとリンゴは顔を見合わせると
ミチコ 来た来た。さ、どんな彼女さんかな。
父 ミチコ。
ミチコ ぬいぐるみは喋らないの。
リンゴ え。ぬいぐるみ? どうしたのこれ。
チカラ(声) 姉さん?
ミチコ さっきからあったでしょ。
リンゴ なんかあるなって思ったけど。興味なかったから。
父 ミチコ。
リンゴ 喋った。これしゃべるよ。
ミチコ 父さん入ってるから。
リンゴ え。おじさん? なんでおじさんが?
父 ミチコ。トイレ……。
ミチコ このタイミングで!?
父 言いにくくて。
ミチコ ああ、もう。
チカラ(声) いないのかな? 靴は適当に並べてくれればいいから。
アマネ(声) ここ?
チカラ(声) そうそう。そこらへんでいいよ。
リンゴ あたし連れて行こうか?
ミチコ お願い。
リンゴ うん。おじさん、行きますよ!
と、リンゴは着ぐるみをうまい事支えて去る。と、チカラとアマネが現れる。
チカラ なんだ姉さん。いたんだ。
アマネ お邪魔します。
ミチコ いらっしゃい。どうも。
チカラ なんか様子おかしくない?
ミチコ 全然。全然そんなこと無いから。
チカラ そう? えっと、こちら筑津久井(ツクツクイ)アマネさん。
アマネ はじめまして。ツクツクイアマネです。
チカラ これ、二番目の姉
ミチコ これ言うな。ミチコです。
アマネ あ、お噂はかねがね。
ミチコ へぇ。なにを聞いているんだかねぇ。
アマネ あ、つまらないものですけど。
ミチコ わざわざありがとうございます。なんだろう。
アマネ ヨーグルトです。発酵されてるものがお好きなんですよね?
ミチコ ほう。
チカラ じゃ、そういうことだから。部屋行こうか。
アマネ え。まってよちーくん。もう一人のお姉さんは?
チカラ (と、ミチコへ)来てる?
ミチコ 今ちょっと取り込んでて。
チカラ ってことだから。行こうか。
アマネ だから、まってよちーくん。わたし、家族の人ともっとお話したいな。どういう風にちー君が育ったのか興味あるし。
子供の頃の写真とか。見たいな。
ミチコ ああ、アルバムならそこの棚に。
アマネ すごい。いっぱいあるんですね。これ、家族の?
ミチコ そうなのよ。卒業アルバムとかも全部ここ。
アマネ へ〜。あ、これお姉さんのですか?
ミチコ それはダメ。他のならいいから。
アマネ じゃあ、これが上のお姉さんの? イチコさんだっけ?
チカラ まあ、そうかな。
アマネ これが、ちー君ので。……(と、チヒロのをとり)これは?
チカラ あ、アルバムなら俺の部屋で見せるから。行こう。
ミチコ あんたなんでそんな自分の部屋に彼女連れ込みたいのよ。あ、そうよね。そういうことよね。ごめん。
チカラ そういう反応が嫌なんだよ。
ミチコ 壁薄いんだから声は抑えてね。
チカラ ここでいい。ここで見よう。
アマネ じゃあ、(と、イチロウのアルバムを取り)これ見たいな。
チカラ それは、イチコ姉さんに聞いてみないとだめかなぁ。
と、着ぐるみを支えてリンゴが戻ってくる。
リンゴ よいしょっと。おまたせー。
チカラ 何でこのタイミングで現れるかな〜。
アマネ あ、お邪魔してます。えっと。(と、着ぐるみを気にする)
ミチコ ああ、気にしないで。ぬいぐるみだから。ただの。ぬいぐるみ。
アマネ そうですか。
リンゴ あ、彼女さん? だよね?
アマネ あ、はい。ツクツクイアマネです。はじめまして。
リンゴ 初めまして。姉のリンゴです。
アマネ え?
リンゴ え?
アマネ お姉さんの名前はイチコじゃ……。
チカラ 源氏名なんだ! イチコって、イチゴに似てるだろ? イチゴは赤い。赤いはリンゴってね。
ミチコ 苦しいなぁ。
アマネ そうなんだ。よろしくお願いします。(と、手を出す)
リンゴ よろしく〜。
アマネ 美容外科の進歩って凄いですね。
リンゴ え。どういう意味?
チカラ 姉さん! 姉さんの卒業アルバムってさすがに見ちゃダメだよね。ね? ダメだよね。
リンゴ え、いいよ〜。
チカラ 言うと思ったよ! じゃあ、一緒に見ようか。
アマネ あ。
チカラ どうしたの?
アマネ ちーくん。あたし、ちょっと喉かわいちゃった。
ミチコ あ、ごめんなさい。お構いもせずに。今用意するわね。
アマネ あと、何か食べるものがあれば。ちー君の家に初めて来るんだと思ったら緊張しちゃって。なんか今頃おなかが。
リンゴ クッキー持ってくるよ。お勧めがあるんだ。まってて。
と、玄関方向へリンゴが去る。
チカラ どこ行くの!
リンゴ(声) ちょっと取ってくる。
チカラ もう、色々台無しだよ。
アマネ どこ行っちゃったの?
チカラ えっと、その、あれだよ、たぶん。あれ。
ミチコ チカラ。お茶入れるの手伝って。
チカラ あ、うん! 少し席外すね。
アマネ ごめんね。
チカラ いいんだよ全然。(フォロー)ありがとう姉さん。
ミチコ あんたには聞きたい事あるから。これ(と、手土産を見せ)とか。
チカラ いやだって、腐ったものが好きだなんて言えないだろ。
ミチコ そういう問題じゃない。
と、チカラとミチコが去る。
10 シイナの勘違いA
途端にアマネの態度が変わる。
アマネ あーもう、最悪。あいつきょどりすぎだし。家族はうるさいし。ああいうの大嫌いなんだよね。アルバムこんな並べて。
仲良し家族かよ。キモ。
と、着ぐるみがアマネの態度の変化にびくっとする。
アマネ ……気のせいか。(と、アルバムをめくり)花魚、花魚……これか。でも、すごいわ整形手術って。
これが、あれになるんだもん。別人じゃん。いくらかかってんだか。あ、兄さん発見。若い。ウケる。さっさと目当てのもの
見つけないと。……これか。「誰にだって欠点はある。それが君にとっては性別が違うってことに過ぎない。愛してる。
ツクツクイホウスケ」怖いわ〜。若さの勢いって怖いわ。さてと、どう処分するかな。
と、アマネはカッターを取り出す。
と、そこにシイナとリンゴがやってくる。
シイナ(声) 信じられない!
リンゴ(声) 違うのよ。あのね、
シイナ 敵だよ? あたしにとって敵じゃん。身内だったらさ、気を使って追い出したりするものじゃない!?
リンゴ だって、興味なかったから……。
と、カッターを持ったままのアマネとシイナとリンゴは見詰め合う。と、アマネは髪の毛をいじり。
アマネ あ、枝毛だと思ったら違った。良かった。(と、カッターをしまい)はじめまして?
シイナ さっきの……あの時分かっていれば……
アマネ えっと、ツクツクイアマネです。あなたは?
シイナ 藤崎シイナ。ちーちゃんの恋人です。
アマネ えっ? ちーくんの?
シイナ ちー君なんて気安く呼ばないで! ちーちゃんは、あたしのちーちゃんなんだから。
アマネ えっと、おいくつなの?
シイナ 17ですけど?
アマネ 17歳、未成年……犯罪じゃない!?
シイナ あなたこそ、いくつですか?
アマネ 25だけど。
シイナ そっちの方が犯罪でしょ!
アマネ なんで!? どっちかって言うとあたしの方がちょうどいい年齢だと思うんだけど。
シイナ はぁ!? それはあれ? 大人の魅力的なやつ?
アマネ 大人の魅力と言うか。常識的に考えて?
シイナ どこの世界の常識よ!
リンゴ うわー。修羅場だ。(と、言いつつ座りクッキーの箱を開ける)
シイナ だいたい、何処でちーちゃんと会ったのよ!
アマネ 道端よ。
シイナ まさか、逆ナン!?
リンゴ おー積極的。
アマネ 雨に濡れてね、困ってるみたいだったから、傘を貸してあげたの。濡れ鼠みたいになっててね。可愛かったのよ。
リンゴ うわー。王道だぁ。男女逆だけど。
シイナ あたしなんて、ずっとお隣さんだったんだから。
リンゴ 幼馴染もパターンだよね。
シイナ 黙ってて。あんたに、ちーちゃんは相応しくない。
アマネ でも、あたし、ちゃんとちーくんに好きだって言ってもらってるの。あなた、言われた事あるの?
シイナ ぐっ。
アマネ 恋人だって言うくらいだから、あるのよね?
シイナ ……。
アマネ ないなら、ガキが余計な口挟まないでくれる? うざいから。
シイナ ……。
アマネ お姉さん。ちーくん戻ってくる前にその子外へ出しちゃったほうがいいと思いますけど。なんか、変に混乱しちゃうし。
リンゴ えーこれから面白くなりそうだったのに。
シイナ ……のくせに。
アマネ は?
シイナ ワキガのくせに!
アマネ はぁ!?
シイナ ワキが臭いくせにえらそうなこと言ってんじゃねーよばばあ!
アマネ 誰のワキがくさいっていうのよ!
シイナ あんたのワキが臭いって言ってんだよ!
アマネ 適当な事言わないで!
シイナ 必死に抑えてんでしょ。知ってんだから。聞いたんだからあたし。
アマネ 誰から聞いたのよそんな出鱈目!
シイナ さあねぇ、誰でしょうねぇ。
アマネ クソガキ!
シイナ クソワキ!
アマネ 誰がクソだ!
シイナ お前のワキだよ!
と、お互いに奇声をあげながら取っ組み合う二人。
11 剥がれ落ちるモノ
と、チカラとチヒロとミチコがやってくる。チカラはお盆を持っている。
チカラ ごめんね。待たせちゃったよね(と、お盆をテーブルに置く)
チヒロ 何で俺まで。
ミチコ 暇なんだからいいでしょ。え、何この状況。
同時に
シイナ ちーちゃん!
アマネ ちーくん!
同時に
チカラ はい?
チヒロ ああ?
アマネ わたし、臭くないよね? 別に匂わないよね?
シイナ わたし、ガキじゃないよね? 子供じゃないよね?
チカラ え、アマネの匂い僕は好きだよ。
アマネ 匂うのか! やっぱりあたしは匂うのか!
チヒロ 子供だって言ってたのはお前だろ。
シイナ まさかのブーメラン!
アマネとシイナは倒れ伏せる。
ミチコ ……何があったの?
リンゴ なんか途中から怒鳴ってて興味なくなった。
ミチコ あんたはいつもマイペースよね。
アマネ なんであたしがこんな目にあわなきゃいけないの。
チカラ アマネ? 大丈夫?
アマネ うるさい! 近寄らないでよ!
チカラ アマネ?
アマネ あたし帰る。(と、アルバムを掴んで去ろうとする)もうこんなとこ、いたくない。良く分からないぬいぐるみはあるし、
クソガキはくるし、意味分からない。帰る。さよなら。
チカラ アマネ!
と、そこへイチロウが派手な格好で現れる。怖い。
イチロウ じゃーん。ここで真打登場!
現れたイチロウは好き勝手動き回った挙句アマネに寄る。
アマネ ぎゃああああ!(と、驚きアルバムを落としてへたり込む)
チカラ 兄さん!
イチロウ 「姉さん」でしょ。どう。これなら文句無いでしょ? 女子力アップしてみたの。
チカラ 何か違うものがアップしてるよ。
イチロウ あら、これあたしの卒業アルバムじゃない。なっつかしー。
アマネ なんで……。お姉さんが、二人?
イチロウ あら? あんたどっかで見た事あるような?
チカラ ツクツクイアマネさんだよ。
アマネ 整形したはずじゃ……。
イチロウ やあねぇ。まだ取ってないわよ。って、ツクツクイ? ああ! ツックンの妹さんじゃない?
あごのラインがそっくりだもの。そうでしょ。ツクツクホーシのツックン!
アマネ 嘘。兄さんと私は全然似てない。
イチロウ 何言ってるのよ〜。兄妹だもの。どっかしら似るに決まってるじゃない。ねぇ?
姉弟達は目をそらす。
イチロウ (ちょっと太く)そこは同意しろよ。
慌てて頷く姉弟。
イチロウ 懐かしいわ。ツックン。卒業アルバムにね。熱い告白の言葉を書いてくれたの。ほら、これ「誰にだって欠点はある。
それが君にとっては性別が違うってことに過ぎない。愛してる。ツクツクイホウスケ」ああ、思い出すわ。高校時代のあの、
熱いベーゼ。んはっ。
ミチコ やめろ〜。身内ネタはやめろ〜。
チカラ ここにきて姉さんがダメージを。
ミチコ ああ。自分の妄想力が憎い。
アマネ (と、アルバムを奪おうとする)返して!
イチロウ 返してって、それあたしのなんだけど。
チカラ アマネ? どういうこと?
12 花魚一家。
母 なるほどね。それが目的だったわけか。
と、母が現れる。戦闘服。
イチロウ&ミチコ&チカラ&チヒロ 母さん!?
ミチコ え。今はギニアのはずじゃ。
母 家族のピンチに駆けつけない母親が何処にいるのよ。(と、アルバムをイチロウから受け取りつつ)それにしても、
まさか卒業アルバムが目当てとはね。だから言ったでしょう? 罠だって。
と、反対側から父が現れる。
父 ツクツクイといえば、三代続く議員様のご一族だ。次の選挙に出馬する前に、ほじくられそうな過去は消しておこうって事かな。
イチロウ&ミチコ&チカラ&チヒロ 父さん! え? 父さん!?
ミチコ え、じゃあ、あれは。
母 裏口から覗いている怪しいのがいたから。とりあえず、拘束しておいたのよ。
と、母は着ぐるみをめくる。ホウスケが猿轡をかまされている。
リンゴ 結構運ぶの大変でしたよ。
母 ありがとうね。空港で買ったクッキーだけど、良かったらどうぞ。
リンゴ ありがとうございます。わー、面白い箱〜。(と食べだす)
アマネ そんな。兄さんは柔道の段持ちなのに。
チカラ 母さんは、傭兵なんだ。
アマネ え?
母 戦場を駆けるフラワー・フェアリーこと、花魚フェアリーよ。
父 妖精が傭兵なんて駄洒落っぽいよね。
イチロウ さてと。父さん母さんも揃ったことだし。どうしてくれようかしら。
チカラ アマネ。
アマネ ……。
チカラ 全部、嘘だったのか? 僕の事を好きだって言ってくれたのは、全部。嘘だったのか。僕に言ってくれた事は全部、全部、
アマネ (と、笑い出す)
チカラ アマネ?
アマネ うるせーよ、オタクが。
チカラ え。
アマネ うそつきはどっちだよ。父親はいない? 姉が二人? 皆普通の家族です? 嘘ばっかり。そりゃそうだ。
こんな変人ばかりの家族じゃ恋人なんかできるわけない。嘘でもつかなきゃね。傭兵に? 不良に? オカマに オタクの姉弟。
一つ屋根の下仲良しこよしで生きてますって? 気持悪い。そうよ。嘘。ぜーんぶ嘘。
兄さんから頼まれなきゃ誰があんたみたいな、オタクに近寄るんだ。信じるほうがおかしいだろ。
チカラ じゃ、じゃあ、僕らの出会いも?
アマネ なんかそういうのが好きそうだって言うから乗ってみたら簡単に引っかかるんだもん、笑っちゃった。知ってたよ?
上の二人のことも、弟がいるってことも。ま、情報だけだから、会ったときには驚いたけど。全部知っててあんたの嘘に
付き合ってやったんだ。三ヶ月も! 家に恋人を呼ぶくらいのことが出来ないへたれのせいで、三ヶ月もくだらない嘘に
つき合わされたんだ。あたしの時間を返せよ! あたしがあんたのために使ってやった時間を返せよオタク!
チカラ そんな……。
アマネ お前らみたいのがまともな恋愛できるわけねーだろ! 変人一家が。気持ち悪いんだよ!
アマネの剣幕に思わず黙る家族たち。
チヒロ ……ふざけんじゃねー!
チヒロの叫びに思わず皆がチヒロを見る。
チヒロ ふざけるなよ! 人の家族の悪口べらべら言いやがって。時間を返せだ? お前こそ、兄貴から奪った時間を返せ!
そりゃ兄貴はオタクだ。マニアックで、家族の誰もついてけねえ。モテねえよ。だから騙していいのか? お前がやったのは
ただの詐欺じゃねえか! 今日が最後かもって言ったんだぞ。電車だか鉄道だかのことばっかの兄貴が、最後のチャンスかも
しれないって。だから頼むって。ああ、うちの家族は変人ばかりだ。だけど、バカにして、奪う事が普通なのかよ!
暴れるチヒロを周りが抑える。
ミチコ チヒロ!
シイナ ちーちゃん。
イチロウ もういい。もういいわよ。チヒロ。
チヒロ 離せよ! 一発ぶん殴ってやる!
父 チヒロ。
チヒロ 親父!
母 やめなさいチヒロ。
チヒロ なんで、止めるんだよ。
母 (と、アマネに)お嬢さん。確かにうちの家族は普通じゃない。でもね。そんなことは大切じゃないの。
だって、うちの家族は誰よりも自分らしく生きてるから。(と、父に)ね?
父 それにな。家の中を漁る為に誰かを騙すような、そんな腐った奴はいないんだ。花魚家を侮るなよ。小娘が。
アマネが睨む。父はにらみ返す。アマネが視線を落とす。
母が手を一つ打つ。
母 さ、お客さんのお帰りだ。それ連れてさっさと帰ってもらおうか。
と、着ぐるみを指さす。アマネが寄るとホースケが立ち上がる。
と、アマネに母がアルバムを差し出す。
母 もっていきなさい。これが目当てだったんでしょ。
アマネはアルバムを奪う用に取るとホウスケと去る。
13 花魚家の報復
チヒロ いいのかよ。こんな終わり方で。
母 終わり?
イチロウ アルバムも渡しちゃったしね。
シイナ こんなんならあたしが殴っておけばよかった。
チカラ いいんだよ。これで。夢の終わりなんてこんなもんさ。
チヒロ 兄貴。
ミチコ あれで許しちゃうの?
父 あれで許す?
と、父と母笑い出す。そしてリンゴも。
チカラ 父さん? 母さん?
ミチコ リンゴちゃん?
リンゴ いつからこれで終わりだと錯覚していた?
イチロウ&チカラ&ミチコ&チヒロ&シイナ なん……だと。
父 これで終わり? これで許す? そんなわけが無いだろ。花魚家に手を出したんだ。この、「流れ止る不和」と書いて、
ルシファーが許しても、
母 妖精と書いてフェアリーが許さない。許すわけが無い。リンゴちゃん。撮れてるわよね?
リンゴ じゃじゃん。(と、クッキーの蓋をひっくり返す)もちろん。
と、そこにはスマートフォンがはまっていた。
リンゴ クッキーを食べるフリしながら、ばっちり録画済。
母 チカラ!
チカラ は、はい?
母 鉄オタとしての能力は、写真だけじゃないわよね? 動画の編集作業くらい出来るでしょ? うちに都合がいいように、
相手に都合が悪いように切り張りするくらい。
チカラ ……当たり前だよ。動画編集くらいお茶の子さいさいだ。
母 よし、やれ!
チカラ 鉄オタにまかせてよ!
と、チカラはスマフォを受け取って去る。
母 ミチコ!
ミチコ あたし?
母 卒アルの言葉覚えてるわよね? 腐女子のあんたなら、アレをある事ない事盛り上げて燃料投下するぐらい出来るでしょ?
ミチコ 何のために捨てアカウントをいくつも持ってると思うの。朝飯前よ。
母 よし、ばら撒け!
ミチコ 腐女子にまかせろ!
と、ミチコは嬉々として去る。
母 イチロウ。
イチロウ あたしも何か出来る?
母 何言ってるのよ。男と呼ばれず、女と呼ばれず、だからこそ繋がり合うのがオカマ道(みち)。あんたは真実を叫ぶだけでいいの。違う?
イチロウ オカマじゃなくて、ってもういいわオカマで。あたしのフォロアー力(りょく)は52万! 汚い花火をあげたるわ!
母 よし、打ち上げろ!
イチロウ オカマにおまかせ!
と、イチロウが去る。
リンゴ あたしも微力ながらお手伝いしますね。
母 ありがとうリンゴちゃん。
リンゴ 52万には勝てないけれど、知り合いの政治好きな人にちょっとお話しするくらいは出来ますから。
母 よし。頼んだ!
リンゴ 一般人よりのオタクにまかせてください!
と、リンゴが去る。
父 よし、俺も。
母 うん。頑張れ。
父 え、それだけ?
母 あなたに余計な言葉が必要なの?
父 ……おう! まかせとけ!
と、父が去る。
母 ああやってその気にさせるのが、いい女ってものよ。
シイナ 勉強になるなぁ。
チヒロ 母さん、俺は?
母 馬鹿ね。あんたはもう十分やったじゃない。家族の誰もあの子に言い返せなかったとき、あんただけが怒りをぶつけて見せた。
不良の蛮勇。かっこよかったわよ。あとはそれを勇気に変えて、別のところに向けなさい。(と、去ろうとする)
チヒロ 母さん。ごめん。……俺、ずっと恥ずかしくて。だって、俺だけ普通みたいだったから。みんなどっか変なのに、
俺だけ真面目みたいだったから。だからこんな格好で。不良ぶって。そのくせみんなの事否定して。馬鹿みたいで。
母 いいのよ。
チヒロ え?
母 否定して、受け入れて。でもやっぱり認められなくて。ぶつかって。反発して。そっぽ向いて。いつの間にか同じ方向を
向いてたりする。それが、家族ってものでしょう。
チヒロ うん。
母が去る。
14 チヒロとシイナ。そしてその後
シイナ みんな行っちゃったね。
チヒロ ああ。
シイナ おかしいの。普通じゃないのに。なんか楽しそう。
チヒロ ああ。
シイナ ……嬉しかった。
チヒロ なにが?
シイナ ちーちゃん。変わってなかった。家族のために怒るちーちゃん。あたしの知ってるちーちゃんだった。
チヒロ 別に、家族のためだけじゃない。
シイナ え?
チヒロ 怒ったのは、その、お前が馬鹿にされたみたいだったから。
シイナ ちーちゃん。
チヒロ なんか俺、お前がけなされると、すげー腹立つわ。
シイナ ちーちゃんが、デレた〜!!
チヒロ でれてねえよ!
シイナ ねね、ちーちゃん。
チヒロ なんだよ。
シイナ 普通だとかそうじゃないとか気にしないでさ、これからも、ちーちゃんが生きたいように生きればいいよ。自分らしく。ね?
チヒロ ……生きたいように生きてたら、今日来たあいつらみたいになるかもしれないぞ。
シイナ ちーちゃんはならないよ。
チヒロ なんでそんなこと言えるんだよ。
シイナ だって。あたしがいるから。
チヒロ そのドヤ顔は引く。
シイナ なんでよ! 今ちょっといいこと言ったよ!
チヒロ うるせえな。誰も聞いてねえよ。
シイナ 自分が聞いたくせに。
チヒロ もういいから帰れよお前。
シイナ ちーちゃんのガキ。子供!
チヒロ 同い年だからな。
シイナ ちーちゃんのツンデレ! デレろ!
音楽
楽しそうに笑う二人を残し照明が暗くなっていく。
と、チカラが現れる。
チカラ 少しだけその後の話をしようと思う。まず僕は彼女に振られた。というか電話は着信拒否に。メアドは変えられ、
完全音信不通状態。彼女の姿を見ることはもうない。それでも彼女、筑津久井アマネが大声で家族を罵倒している音声は、
今日もインターネット上で再生され続けている。ネットって恐ろしいね。あ、僕は最近、
信州は木曾の森林鉄道に夢中だ。あの可愛いフェイス。おもちゃみたいなボディがたまらない。そもそも森林鉄道は、
と、ミチコが語りだす。チカラは去る。
ミチコ あの日、私のばらまいた燃料は正直大して成果をあげなかった。というよりも、いっちゃんのオカマ仲間と、
リンゴちゃんのちょっとした知り合いが恐ろしすぎた。いっちゃんの方は日本中のオカマによるデモへと発展し街中の
いたいけな子供たちを連日怯えさえ、リンゴちゃんの恐らく知り合いによって筑津久井のあらゆるSNSは炎上し続けた。
そんな彼らの失敗を思うたび、「あたしは大丈夫。まだ大丈夫」と自分に言い聞かせている日々だ。
と、イチロウが語りだす。ミチコは去る。リンゴが現れる。
イチロウ あたしは、彼女が出来ました。
リンゴ 彼女でーす。
イチロウ 30になる前に気が付いたんだけど、あたしってばどっちもいけるみたい。まあ、元々そんな気がしてたんだけど。
リンゴ オカマですもんね〜。
イチロウ そーよ。オカマよ。取るのは子供が生まれてからにするわ。
リンゴ 二人の子供が生まれたら、イチロウさんのいちと、リンゴのごをつなげて、イチゴって名前にしましょうね。
イチロウ すごい。死神の代わりとか出来ちゃいそうな名前。あ、そうそう。最近ストーカーが出来たわ。
と、ホウスケが現れる。
ホウスケ イチロウ君と、藤崎さんの力を合わせれば県議員も夢じゃないよ。ね、チャレンジしてみようよ。俺と君の仲じゃない?
ね? ね?
と、アマネが現れる。
アマネ 兄さん。いい加減夢見ないで働いてよ。三十前で定職についてないとかマジうざいんだけど。
ホウスケ 働く気はあるんだよ働く気は。(と、逃げる)
アマネ (チカラとリンゴに)覚えておけよ。
と、アマネが去る。
イチロウ まだまだなにかありそうね。
リンゴ ま、その時はその時って感じで。ね?
と、イチロウ、リンゴが去る。
15 続 いつかの風景
母と父の部屋。母がオープニングと同じ格好で現れる。
母が話しているうちにオープニングの格好で父が現れる。
母 こうして、持ち前の呑気さと明るさで困難を乗り切るうち、花魚イチロウと、藤崎リンゴは、めでたくゴールイン。
二人の間に生まれてくる子は、それはそれは可愛い男の子で、名前は、当初の二人の希望通り、イチゴと名付けられたのでした。
そしてその数年後、
父 待とうか。もう、いい加減待とうか。
母 なに。いいとこだったのに。
父 二世代目の物語まで行くのはちょっと長すぎじゃないかな。
母 そうかな。
父 一時間近く語ってたからね。
母 あら、もうそんなに?
父 大体さ。おかしいよね色々と。君、傭兵じゃないしね。
母 洋裁教室には通ってるけどね。
父 お隣さん藤崎さんじゃないし。
母 菅原さんと、キムなんとかさんよね。
父 筑津久井なんて議員聞いたことない。
母 あったらびっくりよ。話しながら考えたんだし。
父 ま、言いたいことはわかったよ。名前で普通にこだわっても、普通の子になるとは限らない。それよりも人の嫌がることをしないで、
自分に自信を持った子に育てようと思った方がいいってことでしょ。
母 そうなの?
父 違うの?
母 いや、なんとなく、あたしとあなたの子供の時点でもう普通じゃないんだから、あまり普通って意識しない方がいいかなぁって。
父 そっか。うん。自分らしく、元気があればいいよ。
母 そうね。元気があれば何でもできる、ってね。
父 そこまでの元気は求めてないなぁ。お前はどんな子になるんだ? イチロウ。
母 まだまだわからないよねぇ。
父 ……そういえば、なんで教えてくれなかったの。
母 何を?
父 子供の性別。分かったなら教えてくれても良かったのに。
母 あ、昨日聞いたのよ。言おうと思って忘れてた。
父 そっか。楽しみだ。一緒にサッカーしたり。キャッチボールしような。
母 あんまり危ないことはダメよ。女の子なんだから。
父 ……ん?
母 ん?
父 女の子なの?
母 女の子よ? お医者さんもはっきりそうおっしゃってたし。
父 これまでの流れは!? イチロウは!?
母 え。やだ。たとえ話でしょ?
父 そっか。……そうだよ。たとえ話だった。
母 変なお父さんねぇ。
父 ごめんごめん。そっか。女の子か。
母 男の子が良かった?
父 そんなことないそんなことない。(と、お腹に向かって)自分らしく、元気であればいいんだよ。それでいいんだ。女の子か。
……そうだ。よかったなぁ。取ろうとする必要ないんだぞ。最初っからついてないんだから。
子供の誕生を祝うような音楽。
光があふれる。
そしてゆっくりと暗くなっていく。
完
あとがき 「普通に考えてさ」 「ここは、普通○○だろ」 「普通わかるでしょ」 なんて、ついつい使ってしまいがちな「普通」って言葉。 良くも悪くもない状態のはずなのに、 聞いているうちに居心地悪い気持になるのは何故なのでしょうね。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 |