IF... 


人物紹介


ユウ    ビジュアル系。バイのホスト

レイジ  癒し系。オナベのホスト

サクラ  一途系。レイジに惚れている

オタク1 まじめ系 でもオタク。髪の毛が異様に長い。それを一本の三つ編みにしている

オタク2 痛い系。かわいい(自称)そしてオタク。

ユキ    周りに合わせ系。 つめたい(?)女

ナレーション(Na) 状況に応じてナレーションを入れてくれる。



シーン1

    照明 ユキを照らし出す

    電話をかけるのをためらっているそぶりのユキ。
    しかし、結局電話をかける

    音響 電話の音 CI


サクラ はい。もしもし 

ユキ あ、さくらちゃん? 

サクラ あれ? ユキ先輩? 

ユキ うん 

サクラ 珍しいですね。ユキ先輩から電話かけてくるのなんて。レイコさん元気ですか? 

ユキ うん。姉さんは今まだ大学なんだけど 

サクラ 今度また遊びに行こうっていっといてくださいよ〜 

ユキ あ、うん。わかったよ 

サクラ ・・・それで、今日は何のようなんですか? 

ユキ あのね。それなんだけど・・・・・・祐介君、いる? 

サクラ え、兄貴!? ちょ、ちょっと待っててくださいね! 


    ユキは電話を抱いて


ユキ どうしても、言わなきゃいけないことがあるの。
    あんなこと、本当は言うつもりじゃなかったんだって。
    本当は、あなたのことを・・・・・・・ 


    ユキは待つ。
    電話を耳に当てて。

    照明 徐々に落ちる

シーン2

○繁華街
 喧噪に巻き込まれた町の中で今日も声を張り上げる若い女達。
 そんな怪しげな飲み屋の一角に、奇妙な店がある。看板は ミラー 


   音響  喧噪  FI
   照明 繁華街風 FI


   登場した途端、客引きをしている一人の男、ユウ。
   ホストスタイル


ユウ さぁって! 今日も始めるか〜 
    男も女もオールOKなパブ『ミラー』のユウでっす♪
   (観客男に)ねえ君、『ミラー』はどう? どうせ、今日の打ち上げで飲むんだろ?
   うちは、高校生でも全然オッケーだよ♪
   (観客女に)あ、かわいいね。君。『ミラー』どう? サービスしちゃうよ♪ 


   しばらく勧誘をしていたユウだが、
   飽きたのかつまらなそうな顔になる。


ユウ ふーー。相変わらず、しけた面しかねえ場所だぁ 


   ユウは接客モードから、素に戻る。
   懐から、タバコを取り出してくわえる。
   さらにライターを取り出して、


ユウ たくっ。馬鹿らしいよなぁ。いくら不景気だからって、こうもお客いないものかねぇ 


   ライターを何度かするユウ。
   しかし、火はつかない。


ユウ この! この! ・・・・ちっ。馬鹿にしやがって 


    レイジ登場
    スーツ姿。男の格好をしている。
    登場した途端、ユウをけ飛ばす


レイジ ユウ。客は? 

ユウ いつっ ……ぜーんぜんだよ 

レイジ まったく。役に立たないなぁ 

ユウ うるせえな。レイジこそ、準備できたのかよ 

レイジ ユウが客連れてきたら、準備しようと思ってね 

ユウ ああ、そうかい 

レイジ またタバコ? いい加減やめとけよ。未成年なんだし 

ユウ 二十歳になったら止める 


    ユウはまだたばこに火をつけようとしている。
    しかし、火はつきそうにない。


レイジ 吸うなって神様が言っているんじゃないのか? 

ユウ ・・・ライター、持ってないよな? 

レイジ 吸わないからね 

ユウ だよな・・・ 

レイジ 中で待つことにしないか? 今日はまだ寒いだろ? 

ユウ そうだな。この時間じゃ、まだお客さんも来そうにないし 


   タバコをしまうユウ。
   途端、その時が止まる。


   照明 ユウのみに光


Na この男、加藤祐介18歳。パブ『ミラー』の従業員。
   カッコだけでホストを夢見ただけの典型的な若者である。 


   照明 戻る

   途端に、時間の動きも元へと戻る。


ユウ なんか、今一瞬止まらなかったか? 

レイジ はぁ? わけ分からないこと言うなよ 


   照明 レイジにのみ光
   途端に、レイジは奇妙なポーズで動きを止める。
   (Na中はユウの動きも止まっている)


Na この女、久方礼子20歳。同じく、『ミラー』の従業員
   なぜ自分がホストをやっているのか分からないままホストをしている若者である。
   ちなみに、遺伝子レベルまでしっかり女である 


   照明 元に戻る


ユウ ほら、今も、てか、お前今のポーズ 

レイジ そんなストップモーションみたいなこと起こるわけ無いだろ。疲れているんだよ 

ユウ そうかな・・・・それにしても、今日はどこの店も客入りが悪いみたいだぞ 

レイジ じゃあ、うちみたいなしょぼい店は余計無理か(笑) 

ユウ レイジ、笑い事じゃないだろ。これじゃあ、暇でしょうがない 

レイジ まぁなぁ 

    二人は話しながら退場しようとする。
    と、聞こえてくるのは声。


サクラ あ、レイジ〜 


    サクラ登場。
    かわいい感じの服。


サクラ 今日は、早く来ちゃった♪ 


    照明 サクラのみ明るく
    ストップモーション


Na この女、通称さくら。『ミラー』の常連客の一人。
   カラオケの十八番は『蠍座の女』そんな女である。 

 
    照明 全照


ユウ さくらちゃん 

レイジ あ、さくら。今日は、早いね 

サクラ だって〜。レイジに早く会いたくて 

ユウ 女心だねぇ 

サクラ 声きもいから、しゃべらないで 

ユウ ひどっ 

サクラ こんなのほっといて早く行きましょう? 今日は先に飲むの? それともまたホ 


   レイジはサクラの口をふさぐ


レイジ とりあえず、飲もうか。その後のことは、それから。ね? 

サクラ うん♪ 

ユウ レイジ、もしかしてさくらちゃんと・・・・ 

レイジ 野暮なことはいいっこなし。だろ? 

ユウ そ、そうだな。聞かないことが良いこともあるな 

サクラ レイジ〜。はやくぅ 

レイジ じゃあ、そういうことだから、先店入っているよ 

ユウ わかったよ。レイジにお客がつくのなら、俺も、誰かお客さん見つけてからはいらなきゃな 

レイジ りょーかい。行こうか 

サクラ うん。・・・あ、これ、お土産。大好きでしょ? ヨッチャンイカ

レイジ マジで!? やったね♪ 

ユウ じじくさっ 

レイジ&サクラ 黙れ 

ユウ ごめん 

レイジ あ、この看板、電飾壊れているぞ? 

サクラ ほんとだ。なんか、こうやってみるとまるで即席で作った間に合わせ作品みたいね 

レイジ それを言うなよ。事実なんだから 

ユウ あとで、俺が店はいるときについでにかたしとくよ 

レイジ さんきゅ 


    レイジ&サクラ退場。


ユウ しっかし、レイジ・・・・あんな子とやっちゃったのか・・・・はぁ。なんかショック。
    俺も、いい人見つけないとなぁ。この際、男でもいいんだけどなぁ 


オタク2 ほら、あれよあれ! あの人〜 

オタク1 え〜? そんな似ているかなぁ? 



     オタク2 登場
     ゴスロリ系。似合っていない。
     手に、アニメ調のカバンを持っている

     オタク1 オタク2の後ろから登場
     髪の毛がいたずらに長い。眼鏡。
   

ユウ ? 

     オタク2 ユウに近づいて


オタク2 ほら〜、ほらほらほら〜! そっくり! そっくりでしょぉ! 目の所なんかもう、そっくり〜 


     オタク1 ユウに近づいて


オタク1 そうかなぁ? この顎のラインは、もっと細いんじゃない? 

オタク2 そこら辺は、妥協ラインでしょ 

オタク1 私は、あの人の顎が好きだからなぁ。まぁ、鎖骨が似ていればまだ許せるけど 

ユウ なんだよ、あんたら? 

オタク2 きゃーーーー! 聞いた聞いた? すっごいイメージ通り。声そっくり〜!! 

オタク1 え〜。私のイメージよりはちょっと高めかなぁ 

ユウ だから、何なんだよ、あんたら? 

オタク2 あのあの、メッテル様は、どこかのお店で働いているんですよね? 

ユウ へ? メッテルって、誰? 

オタク2 何言ってるんですかぁ。メッテル様〜 


    オタク2 ユウの腕に捕まってくる

ユウ きしょっ。ちょっと、離せよ! 

オタク1 仕方ないですよ。メッテル様。こいつ、暴走しやすいんで 

オタク2 メッテル様、体細い〜 

ユウ だから、そのメッテルって何!? 

オタク2 メッテル様あったかぁ〜 

オタク1 銀河鉄道666(トリプルシックス)に出てくる素敵なお兄さんです。 

オタク2 メッテル様ですぅ 

ユウ 銀河鉄道? テツロウとか、メーテルが出てくる・・・ 

オタク1 それは、

オタク2&オタク1 銀河鉄道999! 

ユウ それなら知っているけど・・・ 

オタク1 銀河鉄道666は、最近の漫画です。
      正式名称は『銀河鉄道666。666(ろくろくろく)は悪魔の数字』といいます 


    オタク2 ユウから離れて

    照明 紫(?) CI 

オタク2 『僕は、人間の体になりたいんだ。メッテル。
      人間にいいようにもて遊ばれ、壊された、母さんのようにはなりたくない』 

オタク1 『例え、もう戻れ無い道だろうと。後悔はしないか? Tetu6号』

オタク2 『ああ。僕にあるかも分からない魂を、たとえ悪魔に渡すことになったとしても、
      僕は行くよ。あの船に乗って!』 

オタク1 『ならば私は切符をあげよう。銀河鉄道666の切符を!』 


    オタク2&オタク1 テンション上がりきったまま夜空を見てくっつきあう


    ユウ 引いている
    逃げたいが、雰囲気的に逃げれない。
    ちょっと周りを見て、自分は他人なんだと周りの人にアピールしたくなる


オタク2 『メッテル。あれが、次に目指す星だね』 

オタク1 『そうだT26。あれは冷たい心を持った人ばかりが住む、哀しい星』 

オタク2 『その哀しい星に、君の体は眠っているのかい?』 

オタク1 『いいや。私が置いてきたのは体じゃない。魂さ』 

オタク2 『メッテル。君は哀しい人だね』 

オタク1 『Tetu6号・・・・・』 

オタク2 『メッテル・・・』 

オタク1 『Tetu6号?』 

オタク2 『メッテル・・・僕は、もう・・・』 

オタク1 え、そんな台詞あったっけ? 

オタク2 『メッテル!』 


    オタク2 突然オタク1の唇を奪う
    舞台に背を向けるように

    オタク1 しばらく両手じたばたした後、
    その場に崩れ落ちる


ユウ う、うわぁ・・・・ 

  
    照明 元に戻す

    オタク2 すっきりしたかのように口元を拭った後


オタク2 思い出しましたか!? 

ユウ 思い出すも何も。知らないし。ほんと、俺、何も知らないから。むしろよるな! 

オタク2 大丈夫。今日は、本を持ってきていますから♪ 


    オタク1 沈没中


ユウ 本? 

オタク2 ええ。全、14巻♪ お店で読みましょうよ〜 

ユウ いや、うちの店は、そういうお店じゃないんだけど 

オタク2 平気ですよ〜。あたし、お酒も飲めますから 


    オタク1 まだ沈没中


ユウ え? 未成年じゃないの? 

オタク2 立派に、成人してますよ 

ユウ (オタク2に聞こえないように)俺より年上かよ・・・ 

オタク2 え? 何か言いました? 

ユウ いいや。何も。じゃあ、案内するよ 

オタク2 はーい。・・・ほら、カナも行くよ 


    オタク2 オタク1を無理矢理立たせる
    オタク1 やっと気づいて


オタク1 酷い・・・・ファーストキスだったのに・・・・ 

オタク2 (笑いながら)そんなの気にするなんて今時古いよ〜。(ユウに)ねぇ? 

ユウ いや、ねぇっていわれても 

オタク2 あ、もしかして、メッテル様、まだキスしたこと無いんですか? 

ユウ わ、わるいかよ? 

オタク2 あたし、メッテル様の唇、奪っちゃおうかな♪ 


    ユウ 思わず素に戻る


ユウ はい! 次のシーン行ってみよう。あ、今のシーン。カットね、カット。
    放送できないよぉ。やばいよ〜。毒電波だよ〜 

オタク2 もう!(ユウの肩を叩きながら)照れちゃって。メッテル様かわいい!
      お店あっちですよね〜。先行ってますよ♪ 

ユウ 知ってたのかよ! 

オタク2 愛でそれくらい分かります。うふ♪ 


    オタク2 店へと向かっていく。
    退場


ユウ 悪夢だ・・・・・・ 

オタク1 まったくだ 


     オタク1 吹っ切った笑い
     唇を拭う。


ユウ ・・・大丈夫? 

オタク1 いいえ 


     オタク1 少しよろけながら


オタク1 ふふふ。俺を本気で怒らしたな・・・ 


     オタク1 不適に笑いながら、オタク2に続くように退場。


ユウ ・・・今日、厄日かな・・・ 


     ユウ 看板を軽くこずく。看板からは反応はない。
     溜息一つついて、看板を持って二人に続いて退場


     照明 過去シーン FI
     音響 チャイム音(?)


NA 突然ですがここで、とある高校の休み時間の風景をお送りします 


シーン3

○学校の休み時間の風景
 私服OK学校だからなのだろうか。歩いている高校生達の姿はどれもカラフル


    オタク2&3 登場


オタク2 てか、オカ先うざくない? なんで、授業中に服そうチェックやるわけ? 

オタク1 あいつ、制服マニアだからじゃん? 

オタク2 え? まじで!? 

オタク1 まじ。だから、私服嫌いなんだって 

オタク2 なら、うちの高校来るなよって感じじゃない? 

オタク1 だよねぇ。ま、そりゃあんたの服はやばいけど 

オタク2 どこがやばいのよ! ただ、フリフリがついていて、ちょっぴり可愛さUP! なだけでしょ? 

オタク1 いや、まぁ、本人がそう思いたいんだったら、いいんじゃない 

オタク2 何で目をそらすのよ 

オタク1 え? 別に逸らしてないよ? うん。本人が似合っていると思っているなら、
      私はそれで言いと思う 

オタク2 だから、ちゃんとこっち見て話しなさいよ! 


     オタク2 オタク1の胸ぐら掴んでいる

     ユキ オタク達とは違うところから登場
     トイレにでも行っていたのか、手を拭いている。


ユキ おまたせ〜、って・・・ 

オタク1&2 あ 


オタク2 こ、これはただの、スキンシップって奴で 

ユキ そ、そうなんだ 

オタク1 んなわけあるかって! 


     オタク1 オタク2から逃れて


オタク1 ユキ〜 次音楽じゃん? こんな奴無視して一緒に行こ〜 

ユキ え? あ、うん 

オタク2 そんな〜 

オタク1 てか、六限目音楽って疲れるよね〜 

ユキ 本当、くたくただよ 

オタク2 わたしも〜 

オタク1 (無視)そういえばさぁ、加藤の奴、またユキのこと見てなかった? 

ユキ え? 

オタク2 あ、見てた見てた! 

オタク1 お前は黙ってろ 

オタク2 会話に入れてよ〜 

オタク1 しょうがねぇなぁ 

オタク2 ありがとぉ 

オタク1 そうやってすぐ抱きつくなよ! 

オタク2 で、何の話しだっけ? 

オタク1 お前もう帰れ! 加藤の話だろ!? 

オタク2 そうそう! 加藤加藤。 あいつ、またユキのこと見てたよねぇ〜 このこの〜 

ユキ そんなに、見てたかな。やっぱり 

オタク1 あ、気づいてた? だよね。あんなにじろじろ見られたらね〜。あれは完全、LOVEだね 

ユキ そんな・・・もう! 変なこと言わないでよ 

オタク2 だよねぇ。加藤に、好かれているだなんて、かわいそすぎだよ〜 

オタク1 まぁね。なんか、アイツきしょいしね 

オタク2 ちょっとかっこいいからって調子に乗りすぎじゃない? 

オタク1 いるよね。ああいう勘違いしている奴 

オタク2 お前なんか誰も見てねぇって、みたいな 

オタク1 そうそう。なんか、時々居眠りしているとき寝言言うし〜 

オタク2 言ってた言ってた! こないだは『俺はパーマンじゃない!』だったよね 

ユキ そんなこと言ってたの? 

オタク1 そうそう、言ってた。わけわかんない夢見ているなよって感じだよね 

ユキ 二人とも、加藤君のことよく見ているんだね 

オタク1&2 ・・・・・・・・ 

ユキ え? あれ? 

オタク1 てか、あいつマジきもいんだけど! 

オタク2 しかも、カマっぽくない? 

オタク1 だよねぇ〜 

ユキ そんなにカマっぽいかなぁ? 

オタク2 あんなんなら、ユキのお姉さんの方がよっぽど男じゃん(笑) 

ユキ えぇ!? なんでそうなるの? 

オタク1 わかるわ、その気持ち 

オタク2 ね♪ ね♪ なんか、ユキのお姉さんってカッコイイもんね〜 

ユキ 姉さんは、写真写りが良いだけだよ 

オタク2 そんなこと無いって。こないだ見せてもらったプリクラなんて、
      普通にカップルかと思ったもん 

オタク1 あー思った思った。男と女って感じだったよねぇ 

オタク2 それにくらべて加藤は、はっ? お前本当に男かよっ!? って感じだしね 

オタク1 てか、こないだなんて授業中に、non・no読んでたしね 

オタク2 うわっ、まじきもすぎ 

ユキ でも、加藤君って妹いるし・・・ 

オタク1 え? まじ!? 加藤、妹いるの? 

ユキ うん 

オタク2 てか、なんで加藤の家族構成なんてしっているの!? 

ユキ なんでって・・・ 

オタク1 もしかして、ユキって・・・ 

オタク2 え!? もしかしてって、もしかして? 

ユキ ちがうよ! ただ、家近かったし、妹さんとは中学の時同じ部活だったし、
    よく遊んでたし、姉さんとも親しいから、それで 

オタク2 あやしいなぁ 台詞もやけに説明口調だし 

オタク1 なんか、慌ててない? 

ユキ 違うってば! あたし、加藤君って人間的に駄目だもん。目つき変態っぽいし。滑舌悪いし 

オタク2 うわっ。ひどっ(笑) 

オタク1 やっぱ、ユキがなんだかんだで一番きついよねぇ 

オタク2 言えてる〜 


      オタク1&2 退場
      ユキ その場に立ち止まって


ユキ また余計なこと言っちゃった・・・駄目だなあたし・・・
    ちゃんと言えればいいのに。
    本当はね。本当は、あたし・・・加藤君のこと・・・・ 


    ユキ 俯く


オタク1&2  ユキ〜? 早くきなよ〜 

ユキ あ、うん 


    ユキ 退場


    照明 薄暗い FI
    音響 派手な奴 FI

    無声演技

    音楽に合わせるように、レイジとユウが舞台セットもって登場
    てきぱきと舞台を組んだ後、レイジはサクラを手招いて、上手側の席へと座らせる
    オタク2も、サクラをまねして手招かれようとするが、
    ユウは単純に座る席を指しただけで出ていく。
    オタク2は不満そうに席に着く。
    オタク1は仕方なくオタク2の隣りに座る

シーン4
○ミラー 店内(夜)
 置かれているソファーは二つ。上手側のソファーにはサクラとレイジ。
 下手側のソファーには、オタク2と、オタク1がすわっている

    音響 バー
    照明 バーっぽい FI


オタク2 すごいねぇ。大人って感じ♪ 

オタク1 でも、なんか暗くない? 設備ちゃちいし 

オタク2 そこは、想像力でカバーでしょ 

オタク1 どうカバーできるのよ 

オタク2 実は、この床、大理石なの 

オタク1 うそぉ!? 無駄に高価じゃん! 


      オタク2&オタク1 無声演技


サクラ あれ、なに? 気色悪い 

レイジ まあまあ。ユウの客だから。我慢してやってよ 

サクラ レイジがそう言うんなら、我慢するけど 

レイジ いいこだね、さくらは 

ユウ おまたせいたしましたぁ 


    ユウ お盆にグラスを三つ載せて持ってくる。


オタク2 メッテル様〜 

オタク1 確かに、歩き方は似ているかもね 

ユウ 今日は指名ありがとう。ユウでっす♪ 

オタク2 メッテル様かっこいい〜 

サクラ 目が腐る 

レイジ だからそれを毎回言うなって 

サクラ だって、この後 


    ユウ 咳払い

ユウ ユウのユウは君のYOU(ゆう)君だけのユウになりたい。そんな俺を、どうぞよろしく 


    ユウ 礼


サクラ ほら出た 

レイジ ユウもそれいい加減止めたらいいのに。お客さん、引くよ 

オタク2 かっこいいい!! 

レイジ げ 

オタク1 ちょっと、今のは来ちゃったかも 

オタク2 だよねぇ。メッテル様すごい〜 

ユウ だから、俺、メッテルじゃないんだけど 

レイジ メッテル? 

サクラ さっきからバカみたいに繰り返していたけど、なに? それ 

ユウ だからさぁ 


    ユウ サクラ&レイジのところによって


ユウ なんか、漫画のキャラと俺をごちゃ混ぜにしているみたいなんだよ 

サクラ それはちょっと視覚に問題あるって言うか、頭大丈夫なの? 

レイジ てか聞いたことなくないか? メッテルなんて 

オタク2 えーーー! メッテル様を知らないの!? 

サクラ 聞き耳たててるし 

オタク1 まぁ、確かに知名度はそんなでもないけど 

オタク2 何言っているのよ。月にファンレターが、少なくても21通は来る漫画よ? 

レイジ 微妙だな、それ 

オタク2 もちろん、あたしだけでね 

サクラ 気色悪い 

オタク1 確かに同感 

オタク2 え〜なんで。カナだって先月は10通くらい書いてたじゃん! 

オタク1 あたしのは一通一通心を込めて出しているから。よく、21通もだせるわね 

オタク2 土日以外は書いていたから 

オタク1 読む方も大変でしょうね 

オタク2 そんなこと無いって 

サクラ どっちもどっちだと思うけど 


    同時に

オタク1 全然違います! 
オタク2 全然違うわよ! 


    ユウ レイジの方によって


ユウ なんで俺、こんな客ばっか来るんだろ 

レイジ 運命だろ? 

サクラ でも、いいんじゃない? よく似合ってるし? 

ユウ さくらちゃん、さすがにそれは酷くない? 

オタク2 あーー。なんか、騒いだら咽乾いちゃった。これ、いただきますね♪ 


   オタク2 グラスを一気のみ
   腰に手を当てて、親父スタイル。飲み終わった瞬間口を拭って


オタク2 ぷはあああ。きたぁあ! 

オタク1 うるさい 

オタク2 ほら、メッテル様、こっち来てよ〜。あたしたちは、客ですよ〜 

ユウ はいはい・・・ 


   ユウ オタク1とオタク2からちょっと離れて座る


サクラ あ、そうだ、レイジ。今日こそ、見せてね 

レイジ え? なにを? 

サクラ その、胸のロケットの写真 

レイジ ええっ。やだなぁ。こんなとこで言わないでよ。今どき恥ずかしいじゃん。ロケットなんて 

ユウ 確かに 

サクラ 聞き耳たてないでくれない? 気持ち悪いんで 

ユウ ごめんなさい 

サクラ あんたはそっちで、オタクトークしていればいいの 

ユウ はい 

オタク2 メッテル様可哀想〜。 

オタク1 いやね。女のヒステリーって 

サクラ 何か言った? 異星人 

オタク1 あれ? もしかして図星でした? 

サクラ オタクの言動はいつでもわけ分からないわね 

オタク1 オタクじゃありません。ミーハーなだけです 

サクラ ミーハーなんて、言える顔だと本当に思っているの? 鏡見たことある? 

オタク1 そっかなぁ。結構いけてるよね、あたし 

オタク2 ね〜♪ 


    サクラ 机を無言で蹴る


レイジ あの、さくら? 

サクラ なに、レイジ 

レイジ 暴力は良くないよ 

サクラ いつ、私が、暴力を、振ったの、かしら? 

レイジ ごめん 

ユウ さくらちゃんって、怒ると怖いよね 

サクラ 黙れ 

ユウ はい 

オタク2 いや〜。怖い〜 

オタク1 や〜ねぇ。本当。怒りっぽい人って 

サクラ いい加減、その存在を止めてくれない? 

オタク1 そんなこと出来る分けないじゃん。馬鹿じゃない? 

サクラ 正直きもい 

オタク1 そーですかー 


サクラ いいかげんにしろよ 
     この

音響 ピー音 CI

○○○○○○が!(字数と○の数は関係ありません) 


オタク1 別に、あたしそんな言葉でダメージうけないんだけど 

オタク2 酷い! 酷すぎる 

オタク1 あら? そっちにクリーンヒット?(笑) 

オタク2 笑い事じゃないよ! なによ! あんたなんて・・・・ 


     オタク1&オタク2&サクラ
     無声演技


サクラ(なによ、この○○○○が!)

オタク1(それも微妙にあたってる(笑)

オタク2(どっちの味方なのよ!)

オタク1(別に頭悪い喧嘩に興味ないし)

サクラ(二人とも、結局○○○○のくせに)

オタク1(んだよ、○○○○はそっちだろ。ついでに○○○か?(笑))

サクラ(○○○○!)


    口パクのみの罵りあい


Na ただいま、あまりにも聞くに耐えない状況のため、無声放送でお送りしています 


ユウ 怖い。女ってやっぱこわい 

レイジ さくら、ストップ。はい、どーどーどー。抑えて、抑えて 

サクラ (興奮したネコのように)ふー、ふー、ふー 

レイジ あまりさくらを怒らせるなよ。 ここは楽しく飲むところなんだからさ 

オタク1 私たちだって楽しく飲みたいです 

オタク2 ね〜 

オタク1 ただ、降りかかる火の粉は払います 

オタク2 ね〜 

オタク1 (オタク2指して)こいつは頭悪いだけなんで気にしないでください 

オタク2 ね〜。って、ちょっとまってよ 

サクラ まぁ、私もこれくらいのことで切れたりはしないわよ 

オタク1 切れそうだったくせに 

サクラ あまりに低脳な物を見ると、ついね 

オタク1 そんな高等な頭には見えないけどね 

サクラ やっぱり、殺す? 

オタク1 出来もしないくせに 

サクラ へぇ。そんなこというんだ? 


    サクラ 立ち上がる
    レイジ 必死に抑えつける


ユウ まあまあ、本当おちつこうぜ。な。こんな場所で騒いだって面白くないって 

オタク2 あ、じゃあ、わたし、一発芸やりまーす 

ユウ いよ! 待ってました! 

オタク2 いっきまーす 


   オタク2 オタク1の髪の毛を持ち上げる
   オタク1の頭の上でくるくる回す。


オタク2 タケコプター 


   間
   レイジ なにげにうけている


オタク2 え? だ、だめ? これ。じゃあ・・・・・・ 


   オタク2 オタク1の髪を持ち上げる
   オタク1の額に垂らして


オタク2 眉毛〜 


   間
   今度こそ完全に白けている


オタク2 え? こ、これもだめ? じゃ、じゃあとっておき! 


   オタク2 言うと、舞台中央で、ポーズを決める。
   色っぽい声で一言、


オタク2 セクシー 


   正直、きもい。


音響  神経の切れる音  CI


   オタク1 無言でテーブルを叩く
   サクラ 同上
   ユウ 足踏みならして、瓶を持つ
   レイジ 指を鳴らし始める


オタク2 え、うそ。これもだめ? 

オタク2以外 そういう問題じゃない!! 


   オタク2 悲鳴とともに前を向く


   音響 派手な戦闘音 CI
   暗転


   ソファーとなるブロックはスキマを無くしてくっつけてしまう。
   一ニ個はけてしまってもいい
   テーブルもすべてはけてしまう


   音響 FO
 

   全照
   音響 ジャズ系 FI

シーン5
○ ミラー 店内
 喧噪が一時期去った店の中。レイジは一人グラスを口に運んでいる


   ユウ 頬にタオルをあてながら登場


ユウ いつつつ。利いたぁ。さくらちゃんのパンチ 

レイジ (苦笑)て、何でお前が殴られているんだ? 

ユウ さくらちゃん、あいつを殴るフリして、俺のことも3割は殴ってた 

レイジ まさか 

    ユウ ソファーに座りながら

ユウ でも、なんとか落ち着いたよ。三人とも、あっちの部屋でぐったりしている 

レイジ ご苦労様 


    レイジ ユウにもグラスを差し出す


ユウ サンキュ 


    レイジ&ユウ しばらく黙って飲んでいる


ユウ なぁ 

レイジ ん? 

ユウ ロケットって・・・ 

レイジ ああ。これのことか? 


    レイジ 胸元からロケットを取り出す


ユウ 妹さんだろ? 

レイジ あれ? 俺、お前に妹がいるって教えたっけ? 

ユウ いや。でも、なんとなく分かった 

レイジ すごい勘だな 

ユウ ・・・・ユキちゃん? 

レイジ 名前まで!? エスパーか? お前 

ユウ ううん。でも、知ってる 

レイジ そっか 

ユウ 妹の写真をロケットに入れるなんて、重傷だな 

レイジ 俺はシスコンだからね 

ユウ まぁ、でも、ユキちゃんかわいいからなぁ、分かる気がする 

レイジ あれ? 会ったことあるのか? 

ユウ 同じ高校 

レイジ まじ!? そんな偶然ありかよ? 

ユウ まぁね 

レイジ すげえなぁ・・・・ 

ユウ ユキちゃん、元気? 

レイジ !?・・・・・・・・死んだよ 

ユウ え? 

レイジ ガンだった 

ユウ ・・・・・いつ? 

レイジ 先月 

ユウ ・・・・・・・・・そうか 

レイジ 知らせた方が、良かったか? 

ユウ ・・・・・・いや。知っていたって、何にもならないからな 

レイジ ・・・・そうだな 


   レイジ 立ち上がって下手に去る

   ユウ 震えながらソファーに再び腰を下ろす
   タバコを取り出す
   必死に火をつけようとするがつかない


ユウ そっか・・・・・・死んだのか・・・・・ユキちゃん・・・ 

 
   沈黙を破るように流れ込む、無神経なナレーション


Na ただいまから、加藤による回想シーンをお送りいたします 

ユウ え、俺、思い出したくないんだけど? 

Na お送りいたします 

ユウ いや、だから 

Na ミュージックスタート! 

ユウ 聞けよ、人の話! 


音響  ラブストーリーは突然に Fi


ユウ 始まっちゃうしなぁ・・・なんだよ、この曲・・・ 
   (あきらめたように)あれは、夕方。下校途中の正門前だった。


   ユウ ソファー(ブロック)を積み重ねて
   積み重なったブロックに寄りかかる


ユウ 俺は待っていた・・・門の前で。背中に当たる高校のプレートがやけに冷たかった。
    俺の、初めての、告白の場所・・・・・ 


   照明 回想 FI

   音響 FO

シーン6
○下校時間の学校


ユウ ・・・今日こそ言うぞ。言うぞ、言うぞ・・・・よっしOK。
   (鏡を取り出して)
   服装、完璧。髪型、絶好調。リップ・・・・みずみずしぃ。
   今日の俺は最高だ、輝いている! 完全に、パーフェクトだ! 


   ユウ 上手を睨んで


ユウ さぁ、来るなら来い。一瞬だ。勝負は一瞬で決まる。
   俺が告って、ユキちゃ・・・いや、ユキが頷いてそれで終わりだ。
   はれて俺の彼女いない歴18年も終了か・・・長かった。長かったなぁ 


   ユキ&オタク1&オタク2 登場


   ユウ 門に一瞬隠れる。


オタク1 それでさぁ、あいつったらおかしいのよ 

オタク2 まじでぇ? 

オタク1 テスト0点だったのに、名前まで間違えてマイナス三点

オタク2 うわー最悪

 
   ユウ 門の影から飛び出す


ユキ (ユウに気づく)・・・あ・・・・ 

ユウ (もうすでに、普通じゃない言い方)やぁ 

オタク2 何よ、加藤 

ユウ お前に用はねえよ。消えろ 

オタク1 校門で待ち伏せなんて良い度胸じゃない 

ユウ お前にも用はない 

オタク2 あたしたちに用がないんなら 

オタク1 まさか・・・・ 


    オタク2&1 おもわず道をあけてしまう


ユウ ユキちゃん・・・ 

ユキ え、あ、はい 


    たまっていたものを吐き出すように、
    熱き言葉がユウの口からあふれ出す。


ユウ 俺は、君が、好きだ 

ユキ ・・・・ 

ユウ 俺と、つき合ってくれ 

ユキ ・・・・・・ 

ユウ 二人で熱い恋に落ちよう。 カモーン フォール イン ラブ 

ユキ ・・・・・ 

ユウ (ユキには聞こえない声で)決まった・・・ 


   オタク2&3 吹き出す


オタク1 まじで? マジで言ってんのあんた? 

オタク2 うわーきた! すごいの聞いちゃったよあたし 

ユウ うるせぇな。お前らには関係ないだろう? 

オタク1 あのねぇ。一つ教えて上げる 

ユウ なんだよ 

オタク1 あんたみたいのとね。ユキがつき合う分けないでしょ 

ユウ 俺みたいのってのは、どういう意味だよ! 

オタク2 そのまんま。てーか。きもっ 

オタク1 きしょ 

オタク2 カマっぽい 

オタク1 バカっぽい 

オタク2 むしろガキ? 

オタク1 アホだし 


   オタク2&1 言葉でユウをどんどん傷つけていく

   ユウ 舞台隅まで追いやられていく


ユウ う、うるさい! 別に、お前らに何て思われてたって、関係ねぇんだよ!
    これは、俺と、ユキちゃんの問題だろ!? 

オタク2 だって、ユキ 

オタク1 しっかりあんたからトドメ刺してあげなよ 


   見つめ合うユウとユキ。
   ユキは静かに口を開く。


ユキ あたし・・・あたし、悪いけど加藤君のこと、人間と思えない 

ユウ な・・・・ 

ユキ 住む世界が違うってより、星が、違うのかな? 

ユウ そんな・・・ 

ユキ 悪いけど、迷惑だから。てか、犯罪だと思う 


   ユキ そのまま歩いていってしまう。
   退場


オタク2 うわぁマジ、強烈 

オタク1 よかったね。加藤。ちゃんと返事もらえて 

オタク2 そうそう。あたし達のおかげでもあるんだから、感謝しなさいよ 


    オタク1&2 ユキに続いて退場


ユウ そんな・・・そんな・・・・俺・・・俺・・・・・ 


   ユウ 門にぶつかる
   門となっているブロックを崩す。
   崩したブロックを雑にソファーとして並べる
   その一つに座る


シーン7
○再び店内

   音響 ドナドナ CI
   照明 バー FI

   サクラ 登場


サクラ 何か荒れてるわね、この部屋 

ユウ ちょっと、ね 

サクラ いっとくけど、あんたにシリアスは似合わないわよ 


   音響 FO


ユウ ただ、回想で無駄に体力使っただけだよ 

サクラ 弱いわね 

ユウ てか、さくらちゃん。もう、復活したの? 

サクラ 人をゾンビみたいに言わないで 

ユウ ごめん 

サクラ あんなデブ女のパンチ二、三くらったくらい、大したこと無いわ 全部避けたわよ。

ユウ そうか・・・・レイジは? 

サクラ あっちの部屋の後始末してる。デブが戻しちゃって 

ユウ ああ、それは悲惨だな 


   間
   サクラ レイジの近くに座る


サクラ ・・・レイジのロケット、中身女なんでしょう? 

ユウ ああ 

サクラ わたしよりかわいい? 

ユウ もちろん 

サクラ ・・・・嘘でも、そういうのは『ちがう』って言うものじゃない? 

ユウ 嘘ついて欲しかったのか? 

サクラ それはそうだけど・・・・・凹むわ、それ 

ユウ マジなのか? さくらちゃんは、その、レイジに 

サクラ 大マジ 

ユウ ・・・だったら、心配すること無いって。その子、レイジの妹だし 

サクラ は!? どういうこと? 

ユウ だから、妹の写真をロケットに

サクラ それは、わかるわよ。今時ロケットって時点でやばいのに!? やばいと思わないの? 

ユウ 俺はやばいと思う 

サクラ ショック。かなりショック。東横線で桜木町に行けなくなるってことよりもショックだわ 

ユウ ・・・・なんか、微妙 

サクラ どこがよ! この上なくショック受けてるでしょ! 終点横浜よ!
     そこから徒歩なの? 桜木町! 

ユウ 大丈夫。JRあるから 

サクラ そういうことを言っているんじゃないの! 

ユウ いや、俺がいいたいんだけど それ 

サクラ どうにかして、わたしの写真にならないかしら・・・ 

ユウ うわ、流したし・・・ 

サクラ 人の話は目を見て聞く! 

ユウ はい!・・・無理じゃないか? だって、ユキちゃんは 

サクラ ユキっていうの? 

ユウ そう。かわいい子だったよ 

サクラ ふうん? 知ってるのね? 

ユウ まあね 

サクラ で、どんな子なの? 

ユウ かわいい子だったよ。とっても 

サクラ それは聞きました。具体的に説明して 

ユウ そうだなぁ・・・・・ 


    照明 過去シーン FI

    ユキ 登場。歩いてくる
    ユウ 座ったまま


ユウ あ、ユキちゃん。おはよ〜 

ユキ おはよ 


    ユキ 立ち止まりもせず下手へ歩きさっていく

    照明 全照


ユウ ってかんじ? 

サクラ かわいいの? それってかわいいの? 

ユウ かわいいだろ! めっちゃくちゃかわいいじゃんかよ!
   クール&ビューティって感じだろ? 冷たくされるほど男は燃えるんだよ! 
   もう、我慢できない! なんだよ! わかるか!? この、炎! 

サクラ そ、そうなんだ? 

ユウ あと、こういうのもあったな 


    照明 過去シーン FI

    ユキ 登場。歩いてくる


ユウ あ、ユキちゃん。さよならぁ〜 

ユキ さよなら 

ユウ グッバイ〜 

ユキ (無視) 


    ユキ 退場

    照明 全照


ユウ ・・・こんなに話せたらすごいラッキーな一日だった・・・・ 

サクラ 全然かわってないじゃない! 最後の グッバイ って意味無いでしょ! 
     全然相手されて無いじゃない! 

ユウ そこがまたいいんだよ! 燃えるだろ?! 萌え萌えだろ?! 
    青春なんだよ! ドラマなんだよ!
    冷たさの裏に隠れたいとおしさに、もう、男はメロメロなんだぁ!!! 

サクラ わからない。わたしにはわからないわ 

ユウ だろうなぁ 

サクラ こうなったら、直接交渉でいくわ! 

ユウ 直接? 

サクラ レイジから、ロケット奪って棄てる 

ユウ え、それって交渉してない・・ 

サクラ あたしが正義よ! 


    サクラ 走って退場
 

ユウ ・・・・・元気だなぁ 

オタク2 メッテル様ぁあ♪ 


   オタク2 下手から登場
   口を拭い拭い


ユウ ・・・・元気だなぁ・・・・ 

オタク2 メッテル様! あたし、もう駄目! 


   オタク2 その場に膝をつく


ユウ あ、そう 

オタク2 ひどいわ。メッテル様。
      わたしが、こんなにあなたへの思いに胸ときめかしているって言うのに!
      ほら、心臓だって、ドックンドックン! ビッコンビッコン!! 
      バッコンバッコン!!! ぷーーー 

ユウ ・・・・えっと、病院教えようか? 

オタク2 ああ! それなのに! それなのに、あなたは冷たい言葉。
      ああ、この胸張り裂けそう・・・ 


   オタク2 しばらくポーズ
   が、キッと正面を向いて


オタク2 照明! 反応が遅い! 


   照明 オタク2にだけ照明を当てる


オタク2 そう、これ。これを待っていたの。ああ、なんてかわいそうなわたし 

ユウ うそぉ 


   オタク2 今度は音響の方を睨む


オタク2 そういえば、わたしの説明ってまだないんじゃなかったっけ? ねぇ、音響さんっ 


   オタク2 ウインク


Na 増崎ティナ。21歳。気は優しくて力持ち。縁の下に入っていれば世間が安心のアニメオタク。
   ちなみに、ティナは偽名である。本名は増崎ヨシ・・・ 


オタク2 余計なことはいわんでいいんだよ! 


   照明 全照


オタク2 わたしたち、ずいぶんと色々なことを知り合ったと思わない? 

ユウ 思わない思わない 

オタク2 こんなにも、わたしは、メッテル様に自分をさらけ出しているのに? 

ユウ てか、さらけ出して欲しくもないんだけど 

オタク2 大丈夫。わたしメッテル様のことならなんでもわかってあげられるから 

ユウ いや、人の話聞いてます? 

オタク2 告白だったら、いつでも聞きます! 

ユウ まず、その電波な耳をどうにかしろ! 

オタク2 え? そんなにわたしって、耳の形かわいい? 

ユウ ちっがーーーーう! もう、何なんだよ今日は! 厄日? 今日ってば、俺、天中殺!? 


   ストップモーション

Na 説明しよう。天中殺とは、天運が味方しない時期である。
   12年間に2年間と、毎年の12ヵ月間に2ヵ月間あるらしい 


   ストップモーション解ける

ユウ あ、そうだったんだ。へぇ・・・って、そうじゃない! 

オタク1 天中殺とは、また古い言葉ですね 


   オタク1 登場


ユウ また訳の分からないのが・・・・ 

オタク1 大丈夫。わらしはあなたの悩みをすべれ解決しに来たのれす 

ユウ 酔ってません? 

オタク1 ア、リトル 

ユウ おー。アイ、シー(ほぼ自棄) 

オタク2 なによ、カナ。もしかして、わたしとメッテル様との愛を引き離そうとしているの? 
      そうはいかないわよ。わたしには前世からメッテル様と一緒になると、
      女神アルテナ様がおっしゃられて、
      聖騎士、ミカエルが公約を掲げたほどなのよ。
      モチロン結婚式には純白のウエディングドレス。
      だけど、危ない! そこにはサタンの魔の手が迫っていたの。だけど大丈夫よ。
      現世では私はサタンの力をも抑えられる力を・・・ 

オタク1 うるさい 


   オタク1 オタク2の首筋ひっつかんでひざげり。
   オタク2 倒れる

   オタク1 オタク2を引きずりながら


オタク1 ふふふふふ。先ほどの恨みついにはらすときが来たようね。
      どおれ、キャラ設定変えて、貧乏性なギャルゲーオタクで、
      男同士のカップリングが大好きという、痛い女子高生にしてやろうかねぇ 

ユウ 黒っ。黒すぎっ 

オタク1 甘い! (観客席を向いて)この中に必ず、
      『やば、あたしのことだ』と思った人間が一人はいる! 必ずいる!
      むしろあたしだ! 

ユウ (素に戻って)んな、まずいっすよ〜。いきなり客敵に回しちゃまずいっす。
    暴走ネタきびしいっす 

オタク1 そ、そうか 


   オタク1 我に返る
   咳払い


オタク1 お騒がせしました 

ユウ い、いえ。べつに 

オタク1 さあ、じゃあ行くよ、ヨシコ 


   オタク1 オタク2を引きずりながら


オタク1 重っ! この女素で重っ!! ・・・やめた 


   オタク1 オタク2をその場に放置


オタク1 そうだ。忘れるところでした 

ユウ は、はあ 

オタク1 これ以上、無駄なことを望みすぎても意味はないですよ 

ユウ え? 

オタク1 じゃ、そういうことで 

ユウ ちょっと! ちょっと待てよ 

オタク1 なんですか? 

ユウ 思わせぶりなこと言って、そのまま退場はないだろ? 

オタク1 カッコイイのに 

ユウ カッコは関係ない! 

オタク1 やっぱり、普通の状態でもカッコイイですか? 

ユウ そういうことを言っているんじゃない! 

オタク1 実は、仲間由紀恵目指しています! 

ユウ いや、聞いてないし 

オタク1 こんなこと、異性に言うのは初めてなんですよ? 

ユウ いや、だから聞いてないから 

オタク1 この髪ほどいたら、すぐに貞子もやれると思いません? 

ユウ だーかーら! そんなことは聞いてない! 

オタク1 自分で呼び止めたくせに 

ユウ あんたも、やっぱり電波な耳だな 

オタク1 ・・・本当は、自分が聞きたくないだけでしょう? 

ユウ なにわけわかんないこと言ってんだよ 

オタク1 そのために、私たちを呼んだくせに 

ユウ はあ? 大丈夫? やめてくれよ、また前世がどうとか言い出すのは 

オタク1 突然ですが、今日は何日ですか? 

ユウ え? 

オタク1 さぁ、何年何月何日でしょう? 

ユウ そんなの・・・・・・・・・・・あれ? 


   レイジ 登場


レイジ そうか、お前、そのために現れたんだな? 

オタク1 ・・・なんのことでしょうか? 

レイジ ・・・ユウ、あっちの片づけがちょっと手こずっているんだ。手伝ってくれ 

ユウ え? あ、うん。わかった 

オタク1 逃げても、終わりは必ずやってきますよ 

ユウ 逃げる? 

レイジ いいじゃないか。別に、誰を困らせているわけでもないんだ 

オタク1 そうでしょうか? 

レイジ そうさ。ユウ、気にすることはない。行こう 

ユウ ああ・・・・なぁ、レイジ 

レイジ なんだ? 

ユウ 今日って、何日? 

レイジ べつに、そんなこと知らなくたっていいじゃんか 

ユウ そうだけど、でも 

レイジ らしくないなぁ、ユウ。いつもみたいに、
     ノリよく『そうだよな♪』って言っていればいいのさ 

ユウ いつも・・・? 

レイジ ユウ? 

ユウ ・・・おかしいな。・・・・いつも、俺どうしてたっけ? 

オタク1 ほら、当のご本人は困ってますよ 

レイジ ・・・・そうか。確かに、そうなのかもしれないな 

ユウ なに? いったい、どういうことだよ? 

レイジ 終わりの時が、来たみたいだ 


    レイジ 懐から銃を出す


ユウ え? 

レイジ 実はお前は22世紀を見込んでヨダソウ社が作ったアンドロイドだったんだ 

ユウ はぁ!? 


    音響 派手な音 CI


レイジ だがしかし、不良品が発見されてダストにされてね。
     まぁ、そこをちょうど家庭用ロボットをほしがっていたセワシ君(仮名)に拾われて、
     悪の組織『ラブ&ピース』の暗殺用の兵器として改造手術を受けた 

ユウ ちょっとまて 

レイジ ところが、『ラブ&ピース』に反抗する正義の秘密結社『デストロイ』は
     そんな愚行を許しはしなかった! 
     白熱する白兵戦の中、愛する人を守れなかったお前は、
     自分の記憶をドライヤーで焼ききってしまう 

ユウ もしもーし? 

レイジ 記憶を失ったお前を不憫に思ったヨダソウ社の窓際社員小林郁三さんは、
     桜木町近くのこの安っぽいバーに引き取ってもらうことにしたんだが 

ユウ いや、だから待てって 

レイジ そこには君の力を利用しようとするこそくな奴らが大勢いてね。
     しかたなく、君を破壊しなければならなくなったのさ。
     OH イッツ ハードボイルド。グッバイ ユウ 


    レイジ ユウに銃を向ける

    間


ユウ って、なんだよ、そのいきなりな設定の嵐は。なんでいきなりそうなるんだよ!
    そんなの、ここにいる人、誰も理解できないだろ! 


レイジ ふ、当然だ……嘘だからね 

ユウ へ? 


    音響 CO


レイジ (笑う)もしかして、信じたのか? まさか、この展開で実はアンドロイドはないだろう? 

オタク1 残念ながら、あり得る展開ではないですよね 

ユウ じゃあ、その銃はなんだよ! 

レイジ 持ってみただけだよ。いや、エアガンがちょうどあったんでね。使ってみたくて。 

ユウ 怒るぞ! 

レイジ 大丈夫だ。もう怒ってる 

ユウ そうじゃなくて! 

レイジ ああ。分かってる。もう、終わりにしよう。ねえ。 


    サクラ 登場


サクラ 思ったよりあっけなかったわね。もう終わり? 

ユウ だから何だよ、終わりって 


    オタク2 いきなり起きあがって


オタク2 わしはまだまだ死なんぞぉ 

オタク1 あんたは黙ってろ! 


    オタク1 ひじうち
    オタク2 沈む


ユウ あ、もしかして、今日の厄日は『ドッキリだった〜』とか? 

レイジ ・・・その方がよっぽど良かったかもしれないね 

サクラ ある意味ね。でも、薄々、自分でも気づいているんじゃない? 

ユウ 何に? 

オタク1 ここが、どんな場所か、です 

ユウ ここは、『ミラー』だろ? 

レイジ まったく。ひねりがない回答だなぁ 

ユウ ひねりもなにも、何のことだかわからないんだから、仕方ないじゃないか! 

オタク1 ミラーは、鏡 

サクラ 鏡は映すでしょう? 

ユウ 何を? 

レイジ 心を、さ 

サクラ 心の鏡よ。まだ分からないの? 

オタク1 心の底の、願いの鏡 

ユウ 願いを、写す? 鏡? 

レイジ 『もしも・・・・』彼は考えた 

サクラ 『もし・・・』彼は願った 

オタク1 『IF・・・』そして、世界は作られた 

ユウ どういうことだ? なぁ、なにが、何がどうなっているんだよ? 

オタク2 私はいつまで死んでるの? 


    近くにいる人間が容赦なく踏む
    オタク2 沈む


レイジ しかたがない。これだけは使いたくなかったけど 

サクラ つまり、こういうこと 


   レイジ サクラ オタク1
   指を鳴らす

   そして流れる音楽

   音響 『世にも奇妙な物語』CI


ユウ タモさーーーん!? 


   ユウ その場に崩れる


ユウ うそ? まじ? そういう話しなの? これ
    ここまで引っ張っていて、そういうラストなの? 
    不思議な世界? まじで? 


    
レイジ 彼は、彼女に振られた。だけど 

サクラ 彼は、振られたショックに耐えられなかった。だから 

オタク1 彼は、

レイジ&サクラ&オタク1 彼女がいない世界を作った 


    音響 FO


ユウ 俺が、作った? この世界を? 

オタク1 そのとおり そして、私たちを 

ユウ これを!? 


    ユウ オタク2を指す


オタク1 残念ながら 

ユウ なんで、俺はこんな世界を・・・・ 

レイジ だから言ったろう? お前は、自分がいる現実に耐えられなかったんだよ 

サクラ なんせ、必死に告った女に断られるんだものね 

オタク1 しかもシュチェーションが最悪だった 


    ユウ以外 うなずく(沈んでいるオタク2はもちろん動かない)


ユウ (はっと気づく)や、やめろ、それだけは、言わないでくれ 

レイジ 夕日が沈みかけた校庭 

ユウ 止めろ 

オタク1 校庭では野球部が練習中 

ユウ 頼む、止めてくれ 

サクラ 下校途中の生徒も、まだちらほら残っている 

レイジ あ! 彼女が来た! 

サクラ さぁ言わなきゃ 

女合唱 カモーン フォール イン ラブ 

ユウ 頼む、この通りだ! 止めてくれ!!! 


    ユウ 土下座状態


レイジ 何人いたっけ? あそこに 

ユウ ・・・10人は、いました 

サクラ やっちゃったね 

ユウ はい 

オタク1 だから、この世界に逃げたんだよね 

レイジ 歪みきった、この世界にね 

サクラ ほんと、歪みまくり 

ユウ じゃあ、ユキちゃんは・・・ 

オタク1 あなたにとっては死んでくれた方が良かったんでしょうね。

それも、よっぽど同情的な死に方で。でも 

ユキ 生きているわよ 


    ユキ 上手から登場


ユキ 今頃、元気いっぱいハイスクール・デイズを満喫中♪ 

サクラ ちなみに、あれはあなたが今、都合良く作り出したキャラだから 

レイジ 確かに、ああいうキャラなら楽だったのに 

ユキ うふ♪ 

ユウ じゃあ、ここは・・・これは、夢、なのか? 

レイジ そこら辺が微妙なんだよなぁ。 

サクラ どうなんでしょう? 

オタク1 こんなに、はっきりした夢ってあるんですかね? 

ユキ でも、まあ、こういう世界もありかなっておもうけど 


    ユウに向かって


レイジ&サクラ&オタク1&ユキ ね? 


ユウ いや、そんなこと聞かれたって・・・・って、あ! そうか! 


   ユウ レイジに向かって

ユウ ・・レイジ、お前・・・ユキちゃんの、姉さんだ 

レイジ へえ? そうなんだ? 

ユウ そうなんだって・・・・礼子さん、なんで・・・ 

レイジ 仕方ないだろう? お前の中ではこうなっているんだから 

サクラ じゃあ、あたしは? 

ユウ お前は・・・・・俺の妹・・・・ 

サクラ うげっ。きもちわるい 

ユウ うるさい! 俺だっていい気分じゃない! 

オタク1 私は? 

ユウ で? どうやったらこれ、元の世界に戻れるんだ? 

オタク1 無視かよ! 

レイジ 傷が癒えたら、だ 

ユウ え? 

レイジ ここは、お前の傷を癒すための場所なんだよ。心に出来た深い傷をね 

ユウ 俺の傷・・・ 

ユキ わたしが・・・っていっても、私じゃないけど。つけちゃった、傷 

ユウ ああ、そういうことか・・・・ 

レイジ まぁ、でも、だいぶ傷も癒えた頃だし、そろそろいいのかな? 

オタク1 時間的にも、いい頃合いですしね 

ユウ え? じゃあ・・・ 

サクラ 戻れるって事よ。よかったわね 

ユウ いや、ちょっと待てよ。まだ傷癒えてないって 

ユキ 大丈夫。あなたなら、大丈夫だから 

ユウ 何がだよ! どこら辺見てそう思うんだよ 


   ユキ ユウの鎖骨あたりで円を作って


ユキ ・・・ここらへん? 

ユウ 関係ないだろ! 

レイジ そんだけ怒鳴れれば大丈夫さ。では、ミュージックオン! 

ユウ いや、だから! 


   音楽 FI  夢の中へ 


ユウ ちょっと待て! これで現実に帰るのか! なんっか違うだろ! 


    レイジ&サクラ&オタク1&ユキ (踊っている) 
    前奏が終わると、歌いながら退場していく


ユウ いや、だから! ちょっとまて〜〜!! 


    オタク2 いきなり起きあがると、歌いながらユウの周りを回り出す


ユウ って、何でお前は、残っているんだよ!
    さっさと帰れ!
    何で回っているんだよ!
    もういやだぁ!!


    照明 暗転

    オタク2 退場

    少し乱雑にくっついていたソファーは、さらに乱雑になる。
    二つばっかし電話の台として上手に移動するのも良いかもしれない

シーン8
○男の部屋
 男が一人、座っている


   照明 ユウのみ明るく

ユウ ・・・・夢か・・・・(携帯を見る)なんだよ。あれから、まだ一日もたってねえじゃねえか。
    傷、癒えてねぇよ。・・・・引きこもろうかなぁ。まじで 


    サクラ 電話をもって、嬉しそうににやついている。
    その姿は見えない


サクラ 兄貴! ユキ先輩から電話かかってきたよ 

ユウ はぁ!? 

サクラ 兄貴に、言いたいことあるみたいだよ〜 

ユウ ちょ、ちょっとまって! 


    ユウの照明が消え、サクラの頭上につく。
    ユウは慌ててその照明に入る


ユウ まじで、ユキちゃんから? 

サクラ マジマジ、大マジ 

ユウ 何のようだろう・・・ 

サクラ もしかしたら告白じゃない? ね。ここで聞いていい? 

ユウ だまれよ。あっちいけ! 


    ユウ 電話に出ながらおっぱらう


サクラ 偉そうに。振られちゃえ、バカ兄貴 


    サクラ 退場


ユウ もう、振られてるっつーの 


    ユウ 覚悟を決める


ユウ もしもし? 

ユキ あの、あたし・・・ユキですけど 

ユウ ・・・・なにかよう? 

ユキ あのね・・・・ 

ユウ なに? 

ユキ ・・・・・・・あたし、あの場所では言えなかったんだけど・・・・・加藤君のこと、好きだよ 

ユウ はぁ!? 

ユキ それだけだから 

ユウ おい! ちょっと待てよ! 切るな! 切るなよ! 


    照明 ユキを見せる

    ユキ 携帯電話を片手に立っている


ユウ どういうことだよ、それ。あれだけきついこと言って、お前 

ユキ あの時は、どうかしてたの 

ユウ どうかしてたのですむ問題かよ! 

ユキ ごめんなさい・・・・ 

ユウ ごめんなさいって・・・俺、めっちゃくちゃ・・だって、お前 

ユキ あれは、その、友達がいたから。だって、あんな所で告白されるなんて、思わなかったから 

ユウ だからって・・・・そりゃ場所考えなかった俺も悪いけど 

ユキ ・・・・あたしのこと、もう嫌い? 


   間
   色々なものを感じながら、
   それでも、ユウはユキを思う自分を見つける


ユウ いや・・・・・・・・・好きだよ 

ユキ ・・・・・・ありがとう。ごめんね。素直じゃなくて 

ユウ いや、いいよ。こうやってちゃんと言ってくれたんだから 

ユキ 加藤君なら、そう言ってくれるって信じてた。
    ・・・・・・あたしって、ずるい女、なのかな 

ユウ まぁ、ほんのちょっとな。でも 

ユキ でも? 

ユウ そういうところが・・・その・・・好き、だったりするから 

ユキ ・・・・・・ありがとう 

ユウ そんなの、俺こそだよ・・・・これ、夢じゃないよな? 

ユキ え? 

ユウ いや、さっき変な夢見ちゃってさぁ 

ユキ ・・・・どんな夢なの? 

ユウ いや、それ説明すると、すっごいばかばかしいんだけどさ 


    突如かかってくる場違いなミュージック
    音響 FI 夢の中へ


ユウ そうそう、こんな音楽が・・・・って・・・・え? 


    いつのまにか、ユキの横にはオタク1が立っている


オタク1&ユキ ・・・・ばれちゃった? 

ユウ ばれちゃったって・・・・まさか!? 


    ユウ ユキを見て、驚愕の表情
    オタク2 いつの間にかユウの背後に回っている


オタク2 きちゃった♪ 

    ユウはついに悲鳴を上げる
    そして闇がすべてを包む。
    この物語が初めから決められた悪夢だったかのように……


暗転


(声のみ)
サクラ 兄貴〜電話だよ〜? たくっ。まだ寝てんのかよ。
     ごめんなさい、ユキ先輩。兄貴、寝ているみたいです。
     え? じゃあいいんですか? わかりました〜
     あとで、兄貴にはきつく言っておきますから! 


    音響 上げていく