Another Time 楽静作

Another Time

キャスト 全員女
香奈(21)=カメ  のんびりとしている小さい子
椎野(21)=ウサギ すらっとした嫌味そうな女
飯田(21)=キツネ ちょいと小太りさん

照明 全照
○踏み切り(お昼 季節は夏)
音響→FI(電車の踏み切りの音)

香奈 携帯を持って上手から登場。
   いかにも今会社周りをしてきたといった様子で肩を落とす。
   何気ない動作で電話をかける。

音響→電話音


香奈 「あ、椎野? ねぇ。私また内定落ちちゃったよ。
    え? あんたが遊んでるからだって? なによそれ、
    人が落ち込んでいるときに、よくそういうこといえるわねぇ。
    貴方には、慰めるって気持ちが無いの? 
    ……ああ、そう。分かったわよ。ああ、せっかく十年間も続いた友情も今日で終わりね。
    はいはい、(イヤミに)じゃあがんばらせていただきます。ありがと。そして、さようなら!」


香奈 電話を切る動作
香奈 しばらく受話器を見てから、もう一度電話をかける
音響→電話音


香奈 「あ、飯田? ねぇ、聞いてよ、今椎野に電話かけたらさ。
    え? 今から出かけるから電話しないで? 
    ……彼氏とデートぉ!? もういいわよ! あんたも椎野も勝手にやればいいでしょ!! 
    はいはいじゃねさよならばいばい!」


香奈 電話を切る

音響→FI(電車の踏み切りの音)
音響→FO

香奈 熱そうに自販機にお金を入れるまねをする
   →お金を落とす。お金の行く先を追って、踏切を超える。
   →お金を拾う→嬉しそうに笑う

音響→CI(電車の迫る音)

香奈 電車のほう来る方向(客席)を見たまま固まる。

音響→音量UP
照明→暗転
音響→CO

○秘密基地(笑)の一室
照明→CI
音響→FI(ちょっと怪しめ)

椎野 (コードネーム:ウサギ)上手から登場。香奈の姿を見つけて、せかせかと近づく。
椎野 (ウサギ)香奈(カメ)の体をゆする。


椎野(ウサギ)「カメ、カメ! ……いい加減おきなよ」

香奈(コードネーム:カメ)椎野の言葉に身体を少し動かす。

香奈(カメ) 「ウ……ん」

ウサギ    「まったく。ほーら、おきなってば」

香奈(カメ)目を覚ます。どことなく焦点の合わない顔で周りを見る

香奈(カメ) 「……ここは?」


ウサギ安心した顔で


ウサギ    「あ、やっと目が覚めたみたいね」


香奈(カメ)不思議そうにウサギを数秒見つめる。


香奈(カメ)「……だれ?」


ウサギ、香奈の言葉にはっとして揺らしていた手を離す。(セリフは起き上がりながら)


ウサギ「誰って……私が誰だか分からないの? (大げさに嘆いて)だからいったじゃない! 
    いくら甘いものが好きだからって、コンデンスミルクを一気飲みするもんじゃないって」


カメ、ウサギの言葉に驚いて立ち上がりながら


カメ 「コンデンスミルク?! 私そんなものを飲んだ覚えは」

ウサギ「そうよね。あんな馬鹿な事をして、認めたくない気持ちは分かるけど。(コンデンスミルク見せて)ここに! 
    証拠はちゃんとあるのよ。でもよかったわ。目が覚めて。これでまた一緒に仕事ができるわね」

カメ 「仕事?」

ウサギ「そう! 私達の愛すべき仕事。 ざぁぁぁっつ(THAT)マアダラァ(murder)!」

カメ 「まあだらぁって・・・・人殺しぃ!?」

ウサギ「どうしたのカメ。そんな素っ頓狂あげちゃって」

カメ 「だって、人殺しなんて急に言うから」

ウサギ「……どうやら甘いものの取りすぎで、脳までいっちゃったみたいね」

カメ 「その前に、コンデンスミルクなんて飲んだ覚えないって」

ウサギ「(カメの言葉は無視。しかしセリフを噛むわけではない)
    いい、カメ。この世の中には、いて良い人間と、
    悪い人間がいる。そうでしょ? そんなものよ、世の中なんて。だから、  
    私達がいらない人間を、ほいほいっと片付けるんじゃない。
    私達、秘密結社『アニマル図鑑』が!」

カメ 「……変な組織名。だけど、それで分かった。カメって言うのは、コードネームって奴ね」

ウサギ「当たり前でしょ。私の名前はウサギ。そして、後キツネとボスの四人よ。どう? 思い出した?」

カメ 「……何か、そういわれると、そうだった気がする。」

ウサギ「頼りなげねぇ。……よし、わかったわ。とっておきを使ってあげる。音響!」


音響CI→(ルパンor007?)
カメ  体が勝手に銃を握る真似をし、ポーズをとる。
ウサギ その横でピシッと決めながら。


ウサギ「一つ」

カメ 「一夜の火遊びを」

ウサギ「二つ」

カメ 「不埒な痴漢親父を」

ウサギ「三つ」

カメ 「醜い厚化粧。切ってくれよう……って、これって曲と何の関係もないじゃない」


音響CO


ウサギ「うん。でも、思い出したでしょう? 貴方の使命を」

カメ 「……………ええ。私はカメ。本名を捨て、日夜悪を討ち、弱きを助ける日々を過ごす正義の暗殺者。だったわね」

ウサギ「そうよ。よかったわ。思い出してくれて」

カメ 「ほんとう。何でこんな重要な事を忘れていたんだろう」

ウサギ「それは仕方ないわよ。貴方って結構ドンくさいし」

カメ 「え?」

ウサギ「しかも、いっつも行動は遅いし、考えるのも鈍いし、甘い物好きだし」

カメ 「最後の一つは関係無いって言うより、そんなに言う事無いでしょ。私だって、組織のためにがんばっているのに」

ウサギ「所詮カメだけどね」

カメ 「そんなこといったら、貴方なんて、ワニに襲われて背中の皮はがされた小動物じゃない」

ウサギ「それは因幡のウサギでしょ。残念ながら、私は丹沢湖のウサギなのよね」



ウサギ余裕の姿勢。カメは少し不満げ。



カメ 「カメは万年生きるのよ」

ウサギ「ウサギは生物で始めて月に行ったのよ」



ウサギ余裕。カメ苛立ちを覚える



カメ 「海がめの産卵が感動的なの知っているでしょ?」

ウサギ「ウサギの愛くるしさにはかなわないわね」



二人にらみ合う。(というより、カメは怒り。ウサギは小ばかにしている)



カメ 「そこまで言うなら、勝負しようじゃない」

ウサギ「いいわねぇ。ウサギとカメ、どちらが優秀かってことね」

カメ 「勝負方法はそちらが決めてよ。どうせ私が勝つんだから」

ウサギ「ふぅん。いうわね。だったらシンプルに徒競走で勝負する事にしましょう。
    それなら貴方もずるなんて出来ないだろうから」

カメ 「いいわよ。じゃあ、いつにする?」

ウサギ「明日の朝にしましょう。今日は、まだ貴方の体調も悪いだろうし」

カメ 「私は別に」

ウサギ「体調を理由に言い訳されたらたまらないから」

カメ 「わかったわよ、じゃあ、明日の朝早くにね」

ウサギ「逃げるんじゃないわよ」

カメ 「貴方こそね」



カメ、ウサギにらみ合い、同時に向こうを向く。

ウサギ、そのまま上手へ退場



カメ 「……なーんて言ったけど。自信ないなぁ、かけっこなんて。」



カメ、一瞬ウサギが聞いてないかどうかを確認してから。


カメ 「しっかし。アタシってばなんだってあんな夢見てたんだろ。
    内定を得るための会社周りの途中で踏み切り事故なんて……私は初めからこの組織の人間。
    内定なんて必要ないのに……。っと、そんな事より明日のことだ。どうしよう……」


キツネ上手より登場


キツネ「お困りのようね」

カメ 「え? ……えっと……わかった! タヌキ」

キツネ「ちがうわよ。私はキツネ」

カメ 「うっそぉ」

キツネ「悪かったわね。あってなくて……そんな事より、貴方。ウサギと勝負する事になったそうね」

カメ 「そうなの。でも、自信なくって」

キツネ「そうだと思って、いい物を持ってきたわ。」

カメ 「なに?」

キツネ「これ」



言いながら、キツネは銃を取り出す。


カメ 「こ、これは……殺傷力と、命中性を極端に高めた結果、『悪魔の銃』として恐れられる事になった伝説の……」

キツネ「そう。『ジーマス二世(怖い先生のあだ名などをつけると良い)』よ」

カメ 「言い知れぬ冷たさを感じる名前よね……で? これがなに?」

キツネ「明日の試合で、これを使いなさい」

カメ 「え!? まさか、これをウサギに!?」

キツネ「そうよ。そうすれば間違いなく勝てるわ」

カメ 「そりゃあ勝てるだろうけど……」

キツネ「何をためらう必要があるの? 勝負は常に非情にならなくてはならないものでしょう?」

カメ 「そうだけど。ただでさえうちは人数が少ないのに」

キツネ「じゃあ、負けてもいいの?」

カメ 「そうれはいやだ」

キツネ「じゃあ、殺(や)っちゃうしかないじゃない」



キツネ、辺りを見渡して、ウサギの肩に手を回す。こっそりというような感じで



キツネ「相手だって同じこと考えているかもしれないわよ?」

カメ 「ウサギが?」

キツネ「やられる前にやっちまえって、言うでしょ?」

カメ 「やられる前に……」

キツネ「大丈夫、貴方にはできるわぁ(優しく)何にも怖がることは無いの。ね?」

カメ 「…………わかった。ありがとうキツネ」

キツネ「いえいえ、いいのよ。オホホ。(ぼそりと)私のためでもあるし」

カメ 「え?」

キツネ「あ、なんでもないわぁ。じゃあ、明日の試合、がんばってね」

カメ 「……なんか、キツネ、性格変わって無い?」

キツネ「そんなことあるわけないじゃない。それじゃね」

カメ 「そ、それじゃあ」



カメ、下手へ退場。



キツネ「そう。がんばってねカメ。……私のため」



カメ下手から戻ってくる。



カメ 「なにかいった?」

キツネ「いいえ、なんでもないわ。なんでもないのよ」



言いながら、上手へ退場する。



カメ 「変なキツネ」



上手からウサギ登場

優しげに



ウサギ「カメ」



ウサギの声に、かめは慌てて銃を後ろでに隠す



カメ 「な、何よ、勝負は明日でしょ?」

ウサギ「勝負の事じゃないわよ。貴方のご飯、今日は調子悪いだろうから、おかゆにしておいたから。
    さめないうちに食べちゃって」

カメ 「あ、うん」



カメ 不思議そうにウサギを見る



ウサギ「何? 毒なんて入れてないわよ」

カメ 「そんなこと思ってないわよ!」



ウサギ、笑って

ウサギ「じゃあなによ?」

カメ 「あなた、さっき私になに言ったのか覚えてないの? 私は怒ってるのよ。あなただって
    ……だから勝負する事にしたんじゃない」

ウサギ「分かってるって。でも、だからって仲間の体の心配しないわけにはいかないでしょ?」

カメ 「……ありがとう」

ウサギ「礼は食べてからにしなよ。言っておくけど、味の保証はしないからね」

カメ 「分かってるよ。ウサギって、料理へただものね」

ウサギ「よけいなお世話よ。ほら、いこ」

カメ 「うん。…………ねえ、ウサギ」

ウサギ「なに?」



照明→暗転

音響CI→ファンファーレっぽいの



キツネ「さあ、いよいよレースが始まります。本日の大戦カードの発表です。ウサギVSカメ…。
    どことなく昔話を思い出してしまいそうな大戦組み合わせですね。さあ、選手の入場です」

ウサギ「や、どーも、どーも」

カメ 「……なんで、こんな派手にやらなきゃいけないの?」

キツネ「いいじゃない、観客だっていないんだし」

カメ 「だからよ! 大体、基地の運動場でやる時点で、アナウンス必要ないじゃない」

ウサギ「いいじゃ〜ん。もりあがってさ」

キツネ「そうそう。細かい事は気にしないでいいの。(カメに近寄って)昨日の物は持ってるでしょうね」

ウサギ「大丈夫。ここに」

キツネ「そう。……さあ、では位置について。コースは、基地運動場の壁にタッチして戻ってくるシンプルな物とします。
    それでは…………よ〜い、ドン!」



音響CI→

ウサギとカメ、走るフリ。
ウサギ やや優勢で、先に下手へ退場する
カメ  そのあとを追う


キツネ「おっと、ウサギ優勢か? 今向こうの壁にタッチしました。ウサギ早い早い。カメ、追い上げるが、
    追いつけるのか!?」


ウサギ下手より登場。疲れた顔で



キツネ「おおっと先に戻ってきたのはウサギです。これはウサギで決まったような物でしょうか」


音響CI→銃声


ウサギ 驚いた顔で、胸のあたりを押さえる。振り返ろうとしながら、床に倒れこむ。
カメ  銃を手に、下手より登場。
カメ  明るく笑って(ブラックに)



カメ 「あれ? ウサギ、何でこんな所で寝ているの? だめだなぁ。試合中に眠っちゃ。……追い越しちゃうよ」


カメ  笑いながらゴール。


キツネ「カメ、今ウサギを追い抜かし、余裕のゴールです。おめでとう、カメ」

カメ 「ありがとうちょっと、良心が痛むけどね」

キツネ「勝った者が正義の世の中なんだから、気にすること無いわよ。疲れたでしょ?」

カメ 「結構ね」

キツネ「(微笑んで)じゃあ、今楽にしてあげる」



キツネ、銃を取り出す。



カメ 「キツネ……あんた」

キツネ「ふふ、残念だけど、貴方にはここで死んでもらうわ。ウサギを殺した罪を悲観した自殺ってことにしてね」

カメ 「私を騙したの?」

キツネ「騙したなんて人聞き悪いわね。ただ、『これを使ったら』って言っただけじゃない」

カメ 「……一体、何が目的なのよ」

キツネ「貴方達二人がいなくなれば、この組織は、ボスと私の二人だけの物
    ……私達の愛の巣のためにも貴方達は不要だったのよ」

カメ 「貴方が愛なんて言っても説得力ないわよ。どうせ組織のお金が目当てだったんでしょ」

キツネ「なに言ってるの。お金は初めから当然私の物だからいいのよ」

カメ 「な、なんて身勝手なの……」

キツネ「なんとでも言いなさい。とにかく、貴方には死んでもらうわ。あの世でウサギと一緒にせいぜい悔しがるのね」



ウサギの明るい声が響く


ウサギ「なに言ってるの? 私はまだこっちの世界にいるのよ」

キツネ「なに!?」


ウサギ、立ち上がる。背中から(でも、どこからでも)銃を取り出す


ウサギ「残念だったわねキツネ。貴方のたくらみ、全て聞かせてもらったわ。かぁ〜、言いたかったのよねぇ、このセリフ」

カメ 「勿体つけすぎよ! あたしが殺されるとこだったじゃない。」

ウサギ「ごめんごめん。……とにかくキツネ。貴方の作戦は全て水の泡よ。ちなみに、今の会話は
    全てテープに取らせてもらったわ」

キツネ「なぜ? 貴方はカメに撃たれたはず」

カメ 「確かに撃ったわよ。空砲をね」

ウサギ「そう、そして私はタイミングよく倒れただけ。大体血が出ない時点で怪しまない貴方も貴方よ」

キツネ「でも、二人はケンカ中で」

カメ 「仲直りしたの。あれから」

ウサギ「そう。おかゆパーティーやってさ」

カメ 「あの味はいただけなかったけどね」

ウサギ「うるさいわね。味の事は言わない約束でしょ。……ってな訳で、貴方の考えが露呈したって訳」

キツネ「……結局、女の気紛れに策を仕掛けた私がバカだったって訳ね」



キツネ、ひざを付く



ウサギ「そう。そして、貴方は友情を甘く見すぎたのよ」

キツネ「友情……どうせ、私はお金だけが友達よ。あなたたちのことだって、
    バカで間抜けなやつらとしか思って無かったわ」

カメ 「キツネ……(怒りを通り越し、あきれを通り越した微笑)本当に、とことん腐ったやつよね」

ウサギ「(微笑んで)大丈夫、キツネ。これからだって間に合うわ」


キツネ、顔を上げて


キツネ「え? ……私も、あなたたちの仲間にしてくれるの」

ウサギ「もちろんよ…………生まれ変わったらね」

キツネ「え」

ウサギ「裏切り者には死あるのみだから」



ウサギ 銃をキツネの額にくっつける
カメ  銃に弾を補充しキツネに向ける


カメ 「また合えるといいわね。キツネ」

キツネ「え、ちょっ、ちょっと、まって」

カメ&ウサギ「だめ」



照明→暗転(or赤)
音響→銃声×2
キツネ崩れる


ウサギ&カメ「任務完了」


照明→暗転

音響FI→エンドっぽいの
○病室

音楽が鳴っているうちに、ウサギ上手へ退場。簡易ベットを下手(?)から運んでおく
カメ  ベットに寝そべる。
飯野(キツネ) 上手側にイスを置いて座る(このイスはどこかで用意)

照明→全照
照明→FO


ウサギ(椎野)「(舞台そでで)すいません!? 仲居香奈の病室はどこですか。はい。205号室ですね。わかりました!」


ウサギ(椎野)上手より登場

飯田(キツネ)が、椎野に気づき、顔を上げる


椎野 「香奈!」


椎野は香奈に近寄る(香奈の顔には白い布をかけておく)


椎野 「……」


無言で椎野は香奈の顔から布を取る


飯田 「生きてるみたいだろ?」


椎野、飯田の存在に気づく。


椎野 「飯田……来てたの?」

飯田 「……本当、生きてるみたいだよな。……死んでいるんだぜ、それで」

椎野 「香奈……(泣く)」

飯田 「なーんてね」

椎野 「え?」



飯田の声に気づき、慌てて香奈の脈を取る。


椎野 「生きてる……」

飯田 「本当運がいいよねぇ。山手線にはねられて生きてるなんてさ」

椎野 「飯田! 騙したね」

飯田 「私はただ某漫画(タッチ)の台詞を言っていただけよ」

椎野 「あんたって性格悪すぎ」



香奈の手が動く
音響→FI


椎野 「香奈!?」

香奈 「……ウサギ?」

椎野 「はあ?」

飯田 「……大丈夫なの? どこか強く打ちすぎたんじゃない?」

椎野 「大丈夫? 私よ、椎野よ。分かる?」

香奈 「…………椎野……じゃあ、あれは……飯田?」

飯田 「あれって言うのが納得いかないけど、そうよ」

香奈 「……夢、だったんだ」

椎野 「なにが? 何かいい夢見てたの?」

飯田 「どうせ、ハーレムでも作ってる夢見てたんでしょ。まったく、人が心配してたってのに、気楽な物よね」

香奈 「違うよ、そんなんじゃないって」

椎野 「じゃあ、どんな夢見てたの? 教えてよ」

香奈 「ふふ。秘密だよ」

飯田 「まったく、勝手にやってなさいって」

香奈 「友情って、いいよねぇ」

椎野 「本当、大丈夫なの貴方?」

香奈 「大丈夫だよ。コンデンスミルクなんて飲んだりしてないからね」

椎野 「なに言ってるの? やっぱりダメよ、看護婦さ〜ん」

香奈 「大丈夫だってば」

椎野 「い〜や、大丈夫じゃない」

香奈 「あたしが大丈夫って言ってるんだからいいの!」

椎野 「黙って寝てなさいこの意地っ張り」

香奈 「何よ、意地っ張りはあんたでしょ」

椎野 「なに言ってるの、香奈のほうが百倍は意地っ張りじゃない。そして、わがままで、どじで、まぬけで」

香奈 「そこまで言う普通? あんたなんて、いっつもど下手な料理で人を食中毒に仕掛けるくせに」

椎野 「それは関係無いでしょ」


二人、にらみ合う
飯田はあきれて


飯田 「ほら、二人とも、ここは病室なんだから、もうちょっと静かにしなさいよ」

香奈 「こうなったら勝負よ、椎野」

椎野 「望む所よ。勝負方法はなんにする」

香奈 「夏だし、我慢大会にしましょう」(季節によって変更)

椎野 「いいわね。じゃあ、貴方が退院したらすぐにね」

飯田 「本当、いい加減にしなって」

香奈 「もちろん、飯田もやるのよ」

飯田 「なんで!?」

香奈 「いいからやるの。約束したんだから」

飯田&椎野 「約束!? (顔を見合わせて)誰と!?」

香奈 「それは秘密。さあて、じゃあ体力つけるため、もう一眠りしなきゃ」

飯田 「ちょ、ちょっと香奈!」

椎野 「やっぱり看護婦さん呼んだほうがいいのよ。看護婦さ〜ん」



二人が騒いでいるうちに、音響が上がっていく。
途中から無声演技へ
音響が良いとこまで言ったら暗転。


終了。