ブラスター!
作 楽静


登場人物

現実世界
岩崎 良子(イワサキ リョウコ)  女 小説家
    雄一(    ユウイチ)  男 その兄
里中 夏季 (サトナカ ナツキ)  女 その編集員
外田 亜希(ソトダ   アキ) 女 リョウコの友人
達野 美佐(タテノ   ミサ)/ミーサ 女 ユウイチに助けられた人@
野口 幸助(ノグチ コウスケ)/コウ 男 ユウイチに助けられた人A
港北の姉 (コウホクの アネ)  女 年齢不詳の霊媒師。新○の母をオマージュ
須藤 真 (スドウ  マコト) 女 サトナカの先輩編集員。
部長 男 サトナカ・スドウの部長。
ブラスター
ユータ=スターリン  男 森狩人。森を救う勇者。
ヨーコ=スターリン 女 その妹。
ワイト=ホノス/スノーホワイト 女 男装の戦士。亡国の王女。
グリムア 女 国をのっとった魔女。
ザココ 女 雑魚@
コーザ 女 雑魚A
ザザコ 女 雑魚B

※苗字に特に意味はありません。
※台本「お姉ちゃんロボ」の現実世界より、若干後のお話になります。

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     舞台準備
     舞台はいくつかのブロック(正六面体)で作られる。
     舞台が作られる間、始めに下手に作られたブロックを机に見立て、
     リョウコがノートパソコンを置く。
     やがて、マグカップを二つ持って、ユウイチが現れる。
     仲の良い兄妹は、何か楽しそうに話しながら作業をしている。
     リョウコが物語を打ち、ユウイチが感想を言う。
     なんでもない時間の一コマである。

     やがて舞台はゆっくりと闇に包まれる。


1 ブラスター 最終話 レッドローズ城 最上階。

     照明がつくと途端に、剣が振りぬける。


グリムア ぐああああああ。


     そこには、剣を振り切ったポーズのユータと、
     切られたと思わしきグリムアの姿がある。
     下手側の先ほどの位置では、兄妹がパソコンの画面を見ている。


ユータ 終わりだ。グリムア。

グリムア ふ、フフフ。フハハハハハハハハハ。

ユータ 何がおかしい?

グリムア まさか、魔女の力を持つこの私が、貴様ら森狩人(もりかりうど)に敗れるとはなぁ。

ユータ 五人もの仲間を犠牲にして、だ。

グリムア ククク。見事だ。ユータ・スターリン。褒めて使わそうぞ。

ユータ まだ、しゃべれるだけの力があるとはな。


     ユータが剣を構えなおす。


グリムア まぁまて。ユータ・スターリン。私はもう長くない。
     それぐらい分かっているさ。だから、せめて最後のおしゃべりを楽しんだっていいだろう?

ユータ どうかな? お前の言葉は信用できない。

グリムア ハハハハ。そうだったね。その言葉せいで、お前は何度も仲間の命を無駄に散らせたんだったな。

ユータ ……

グリムア 刺すか。私を。それもいいだろう。放っておいても私は死ぬ。そして、お前たちもな!

ユータ なんだと?

グリムア スノーホワイトの一人勝ちには決してしないということさ! あの小娘もろとも死ぬがいい!

ユータ スノーホワイト!? 王女は生きているのか?

グリムア アハハハハハハハ おろかなりユータ・スターリン! 己の近くにいるものの正体にも気づかぬとは!

ユータ 俺の近くに?

グリムア 鏡よ! 魔力の代わりに命をやろう。この者たちに、死を!


     グリムアが去る。


ユータ グリムア!


     ヨーコと、ワイトが現れる。
     ワイトの服が所々赤く染まっている。


ヨーコ お兄ちゃん!

ユータ ヨーコ!

ヨーコ 良かった。生きてた。

ユータ 馬鹿。約束したろ? 大丈夫だって。

ヨーコ うん。

ワイト 見たところ大きな怪我も無いようだな。

ユータ ワイト……

ワイト どうした? ああ、これは返り血だ。僕だってたいした傷は受けてない。

ユータ そうか。

ワイト グリムアは?

ユータ (首を振る)

ワイト そうか。


     ワイトが剣を収める。


ユウイチ とうとうラストシーンだな。

リョウコ うん。

ユウイチ 長かったな。ここまで、良く頑張ったよお前。

リョウコ いいアドバイザーがいるからね。

ユウイチ ははは。よし、妹よ。肩をもんであげよう。

リョウコ ありがとう。


     肩をもむ


リョウコ ねぇ、お兄ちゃん。

ユウイチ うん?

リョウコ これ終わったらさ、旅行行こうか。

ユウイチ お、休み取れそうなのか?

リョウコ 次の連載始まるまではね。お兄ちゃんは?

ユウイチ まぁ大丈夫だろ。有給まだ残っているはずだから。

リョウコ よっし。決まり。

ユウイチ どこか行きたいとこあるか。

リョウコ 国内! 温泉! 遠いとこ! 

ユウイチ なるほど。

リョウコ いい旅夏気分。

ユウイチ なんだそれ。

リョウコ 寒いから。気分だけでも、夏のつもりになりたいな、と。

ユウイチ よし。じゃあ、夏に行こう。

リョウコ そうじゃなくて、

ユウイチ じゃなかった。夏瀬に行こう。季節の夏に、瀬をはやみ〜、瀬をはやみ〜?

リョウコ 岩にせかるる滝川の?

ユウイチ そう、その「瀬をはやみ〜」の、「せ」で夏瀬。夏瀬温泉。

リョウコ どこそれ?

ユウイチ 山形だったかな。

リョウコ えぇ。寒いよ。

ユウイチ 雪の中なのに、夏温泉。

リョウコ ま、いいけど。お兄ちゃんのおごりだから。

ユウイチ む。おごりか。

リョウコ お兄ちゃんですから。

ユウイチ じゃあ、俺が満足いくもの、書いてくれたらな。

リョウコ その点は任せておいてよ、この後はさ、

ユウイチ いやいや、言うなって。そいつは、後の楽しみにしておく。


     と、ユウイチが立ち上がる。


リョウコ どこ行くの?

ユウイチ 買出し。ナツキ……サトナカさんに、原稿上がりそうだって連絡しつつ行ってくる。
     完結記念に3人でパーッとやろうぜ。

リョウコ じゃあ、アッキーも呼んでいい?

ユウイチ ソトダか。あいつ来るとうるさいからなぁ。

リョウコ だってお兄ちゃんがサトナカさんと盛り上がっちゃったら、あたし暇なんだもん。

ユウイチ 別に盛り上がらないって。

リョウコ でも、ナツキさんが、寂しがるんじゃないの?

ユウイチ ナツキが? んなわけないだろ。……サトナカさんだろ。一応、お前の担当だぞ。名前で呼ぶなんて失礼だろ。

リョウコ ふーん?

ユウイチ わかった。呼んでよろしい。

リョウコ ね、さっきの温泉ってさ?

ユウイチ 言うな。

リョウコ 夏瀬温泉? 探したのってさ、もしかして、サトナカさんを、

ユウイチ あ、ケーキ買ってやろうか? 

リョウコ モンブランがいいなぁ。

ユウイチ かしこまりました。

リョウコ あたし、サトナカさんだったら、お姉ちゃんでもいいなぁ。

ユウイチ 馬鹿言ってないで書いてくれ。

リョウコ はーい。

ユウイチ 面白くなかったら、おごりは無しだからな。

リョウコ うーん。自信ないなぁ。

ユウイチ 大丈夫。リョウコなら、絶対、大丈夫。

リョウコ うん。頑張る。


     と、ユウイチは行こうとするが、


ユウイチ あ、リョウコ

リョウコ なに?

ユウイチ 瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の〜? なんだっけ?

リョウコ われても末にあわんとぞ思う。でしょ。これくらい覚えてなきゃ。

ユウイチ ああ、われても末に、か。行ってくる。

リョウコ あわんとぞ思う、ね。行ってらっしゃい。


     ユウイチが去る。


リョウコ 瀬をはやみ〜 岩にせかるる滝川の〜、か。


     腕を組むリョウコ。
     時間がしばし流れる。
     一つ頷くと、リョウコは書き始める。





ヨーコ 終わったんだね。とうとう。

ユータ ああ。終わったんだ。

ワイト グリムアの死骸は?

ユータ そこらへんに転がっているんじゃないか? 心配するな。ちゃんと倒したさ。

ワイト 分かってる。念のためだ。


     ワイトがいったん去る。


ヨーコ これで、森に帰れるんだね。

ユータ ああ。

ヨーコ みんなにも報告しないとね。

ユータ 喜んでくれるかな?

ヨーコ 当たり前だよ。これで、もう誰も苦しまなくてすむんだよ。やっとめでたしめでたしだね。

ユータ ようやく、普通の暮らしに戻れるな。


     と、ワイトが戻ってくる。


ワイト 喜んでいるところ悪いが、よくない知らせだ。

ユータ なに?

ワイト 魔物たちに、城が囲まれている。

ユータ 魔女を倒したら、魔物たちは散り散りになるんじゃなかったのか?

ワイト そのはずだ。

ユータ だったらなぜ、


     と、グリムアの声が響く。


グリムア(声) スノーホワイトの一人勝ちには決してしないということさ! あの小娘もろとも死ぬがいい!

ユータ グリムア、か。

ワイト 恐らくな。最後の最後までやってくれる。

ヨーコ どうするの?

ユータ ここへ来るときの道は?

ワイト 追っ手が来ないように爆破しただろう?

ユータ 絶体絶命って奴か。

ワイト いや、そうでもない。

ユータ なに?

ワイト 爆破で思い出した。


     ワイトが丸い玉を取り出す。


ユータ ブラスター?

ワイト そう。地下から来たとき使用した、魔力と爆薬を混ぜた爆裂玉だ。試作品だが。
   ブラスター0号というべきか。こいつを爆破させれば、だいぶ敵の数は減るはずだ。

ユータ そういうことは早く言え!

ヨーコ じゃあそれを使えばいいんだね?

ワイト だが、問題が一つ。

ユータ なんだよ一体?

ワイト こいつには信管(しんかん)が無い。

ユータ ……

ヨーコ お兄ちゃん? 信管って?

ワイト 爆弾を好きなときに発動させる装置のことだ。ブラスターは、起動させてから1分ほど時間の余裕があっただろう?

ヨーコ それがないの?

ユータ つまり、起動した途端、ドカンか。

ワイト ああ。

ユータ 威力は?

ワイト 1号より強力だな。もともと、こいつを使わないことにしたのがそれだ。

ユータ そりゃたいそうなこった。

ワイト 試作で作った段階では僕が犠牲になればいいと思っていたんだ。 
   だが、お前は言っただろう? 皆で戦おうと。だから、これは封印した。使う気は無かった。

ユータ そうか。

ワイト すべては僕の責任だ。僕が隙を作る。お前たちは、

ユータ しゃあないな! そこまで言われちゃ仕方ない。ヨーコ。ここで別れるぞ。

ヨーコ え!?

ワイト 何を言ってるんだ?

ユータ 俺しかいないだろうよ。俺がやる。

ワイト 馬鹿を言うな! お前が死んだらヨーコはどうなる!

ユータ だからって、女は死なせられねーよ。

ワイト だれが、ヨーコにやらすと言った! だから僕が、

ユータ 女は死なせられねえ。

ワイト ……いつから気づいていた?

ユータ ヒントをくれたのはグリムアだ。俺、馬鹿だからな。全然気づかなかったさ。

ワイト ユータ、僕、いや私は国を捨てた人間だ。生きる資格などない。

ユータ それでも生きるんだよお前は。……ヨーコを頼む。


     と、電話が鳴る。
     電話を取るリョウコ。


リョウコ はーい。イワサキです。え? あ、はい。イワサキです。ええ。イワサキユウイチは兄ですけど? 
    兄がどうかしたんでしょうか? え?


     救急車の音が響き渡る。
     リョウコの姿が闇に消える。




     ユータ・ヨーコ・ワイトが動き出す。
     さっきと言葉使い、動きが変わっている。


ユータ それでも、生きろ。じゃあ、ヨーコ。元気でな。

ヨーコ 待って!

ユータ ヨーコ?

ヨーコ これ。こっちのこれ! もしかして、隠し扉じゃない?

ワイト 何?

ユータ 何でこんなものが、ここに?

ワイト 城には、秘密の入り口がいくつかあるとは聞いていたが。

ヨーコ ここから、逃げられるかな?

ワイト 試す価値はあるな。

ユータ えらいぞヨーコ。良く気づいたな。

ヨーコ へへ。すごいでしょ? えらい?

ユータ ああ、えらいえらい。

ヨーコ えへへ。

ユータ よし。逃げ切るぞ!

ワイト ああ。

ヨーコ うん!


     ワイトとユータとヨーコが去る。
     原稿を持ったスドウの姿が浮かび上がる。
     その近くにはサトナカの姿。


スドウ ってなんでだーーー。

サトナカ やっぱり、まずいですよね。

スドウ まずいでしょ。これ。キャラ変わっちゃってるじゃない。ねえ?

サトナカ 変わってますよねぇ。

スドウ よねぇ。じゃなくてさ。サトナカ。これどういうこと?

サトナカ えっと、それはですね。つまり、なんというか。

スドウ サトナカ。

サトナカ はい先輩。

スドウ 説明は簡潔に。

サトナカ ……小説『ブラスター』完結しないことになりました!

スドウ よし。簡潔だ。って、完結しないってどういうことよ。

サトナカ だから、簡潔じゃないんです。って、簡単なのか、終わったのか分かりにくいですよね。

スドウ そんな言葉尻はどうでもいい。

サトナカ いや、ですからね。あの、ブラスター・プラスとしてですね。
     魔女グリムアの城から逃げた3人の逃亡劇を書こうかという話で落ち着きまして。

スドウ 落ち着いてどうする落ち着いて。

サトナカ でも、リョウコちゃんも今やっと落ち着いて小説を書き始めたばかりですから。

スドウ そりゃあ、お兄さんのことはね。大変だったとは思うけどさ。

サトナカ リョウコちゃん、見てるこっちが辛いくらいだったんですよ。

スドウ そんな、私のせいみたいな言い方しないでよ。

サトナカ すいません。

スドウ でも、あんたはこれでいいの? この終わり方、って、終わってないけど。

サトナカ ……。

スドウ イワサキさんだけの作品ってわけじゃないでしょ? これは。あんたも一緒になって考えてたんじゃない。
    グリム童話を基にしたファンタジーなんてべたな企画をごり押ししてさ。

サトナカ でも、面白かったですよね?

スドウ そりゃあ、イワサキさんの作家としての才能は認めるわよ。あたしが担当している作家に、つめの垢をせんじて飲ませたいくらいよ。
   でも、それはあの子一人のものってわけじゃなかったでしょ?

サトナカ はい。

スドウ お兄さんが、ユウイチ君がいなくて、書けるの? これから。

サトナカ 今、書いています。必死に。

スドウ これは、認めないわよ。あんたの先輩として言っているだけじゃない。
   小説ブラスターの一ファンであるスドウマコトとして、これは無いわよ。今までの話の展開が、崩れちゃうでしょ?

サトナカ はい。

スドウ あんたも辛いだろうけど、しっかりしなさいよ。

サトナカ はい。

スドウ いい作品もってこいよ!

サトナカ はい!


     スドウが去る。


サトナカ いい作品、か。ユウイチさん。助けてよ……


     と、ソトダが現れる。
     なにやらメモを片手に説明を始める。


ソトダ 作家イワサキリョウコの書く小説「ブラスター」は、中高生向けのライト小説として刊行された。主人公は、ヨーコ・スターリン。
   森で狩人を生業としているホビットと呼ばれる一族の一人だ。弓よりも剣を使うことに長け、
   そのため仲間内では変わり者扱いされながらも、皆と仲良く暮らしていた。その兄、ユータ・スターリンもまた、剣の名手。
   ある日、森の中で二人が一人の戦士を助けたことから物語は始まる。戦士の名前はワイト・ホノス。
   剣の扱いをろくに知らぬ上、魔法と呼ばれる不思議な力を持つ自称、戦士だった。
   同じころ、二人の暮らす森を含めた地域を治めるホワイト国王が住むローズ城が、魔女グリムアに攻め落とされる。
   国王、王妃、そして、王女であるスノーホワイトの逝去が魔女グリムアにより公表され、国民はグリムアに従うことを強いられる。
   グリムアの圧制に耐え切れず、自由のため決起する森狩人たち。何よりも普通を愛していたはずのヨーコは、兄ユータとともに、
   戦いに巻き込まれていく。と、こんな説明でどうですかね?


4 イワサキリョウコの家


     会話の途中でサトナカがぐったりとした格好でいる。


サトナカ ああ、まとまっていると思いますよ。

ソトダ ですよねぇ〜。ま、こんな感じで、次回の月間BOOKSに載るんで。担当としてもご理解のほどお願いいたします。

サトナカ はーい。

ソトダ なんですか、その返事。疲れているんですか? 

サトナカ べっつに

ソトダ あ、もしかしてリョーコの次回作、浮かんでないとか?

サトナカ うーん。それなんだけどねぇ。その前に、リョウコちゃんは?

ソトダ 台所。

サトナカ 調子はどう?

ソトダ いつものとおりですよ?

サトナカ アキちゃんも大変ね。たまの休みにも様子見なんて。

ソトダ 全然。友達のピンチには駆けつけるのはあったり前でしょ。

リョウコ(声) アッキー ちょっとお鍋とってくれない? 届かなくて。

ソトダ はーい?


     と、言いながらリョウコが現れる。
     そのすぐ後ろからユウイチ。


リョウコ あれ? サトナカさん。いらっしゃい。

サトナカ こんにちは。

リョウコ ごめんなさい。今ちょっと晩御飯の準備していて。

サトナカ いいのいいの。おかまいなく。

ソトダ 今日は鍋か。

リョウコ そう。ただちょっとお鍋、棚に上げちゃってて。あたしじゃ届かないから。

ソトダ まぁ、力仕事はまかしておけ。

リョウコ ごめんね。お兄ちゃん全然役に立たなくて。

ユウイチ 役に立ちたくても立てないんだよ。

リョウコ もうね、いつものとおり こんな調子だから。

ソトダ あ、えっと、うん。じゃあ、頑張ってくるよ〜 (サトナカに)後よろしく。


     ソトダが去る、


リョウコ (袖に)お鍋落っことさないでね〜。(ユウイチの方向へ)あれで、結構どじだからさ。

ユウイチ ……

リョウコ ね? それさえ直ればいいのにね。

ソトダ(声) あ〜なんか、背伸びしてたら、トイレ行きたくなってきた〜

リョウコ (袖に)お鍋取ったらね〜(ユウイチに)しかもやかましいし。

サトナカ ……元気そうね。

リョウコ 元気ですよ? ねぇ?

ユウイチ (サトナカに)不思議とな。

リョウコ うん。それだけがとりえだからね。

サトナカ まだ、見えているんだ。

リョウコ なにがですか?

サトナカ ねぇ、リョウコちゃん。

リョウコ はい?

サトナカ もうすぐ、49日よね?

リョウコ 何がですか?

サトナカ そんなの、(決まってるでしょ?)


ソトダ(声) 鍋取れたよ〜


リョウコ (袖に)あ、水張って、置いておいて〜(サトナカ)サトナカさん、今日はご飯食べてってくれますよね?

サトナカ ええ。まあ。

リョウコ よかった。最近食材余らせ気味で。だから今日は、あまったもの一気に使おうと思ってキムチ鍋なんです。
    あ、辛いの駄目ですよね?

サトナカ ええ。言ったことあったっけ?

リョウコ 前にお兄ちゃんが。
サトナカ ああ。

リョウコ じゃあ、ちょっと待っててくださいね。お兄ちゃん、サトナカさん、退屈させないようにね。じゃあ、ちょっと失礼します。


     リョウコが去る。
     サトナカはリョウコが声をかけた場所をじっと見つめる。
     ユウイチはサトナカを見る。
     ゆっくりと去る。


サトナカ ……ユウイチさん、いるの? ……なんてね。……ねぇ、本当はそこにいて、私の話し聞こえているんでしょ? 
     駄目だよ私。もう。どうしていいか分からないよ。何でよ。ユウイチさん。何で……




     ソトダやって来る。
     手を拭きながら。


ソトダ いやぁ。何回使ってもウォッシュレットってなれないや。なんか、便座暖かいのも気持ち悪いですよね。

サトナカ (聞いてない)なんでよ。

ソトダ え? いや、ほら、うちああいう、あっためる奴とかついてないから?

サトナカ (聞いてない)なんでなのよ。

ソトダ いや、お金が無いからかな? だって、便座なんてさ。ねぇ? 一日数回使うだけだし? 
   いや、一日数回も使うといったほうが正しいのか?

サトナカ (聞いてない)(運が)ついてないにも、ほどがあるじゃない。

ソトダ そんなこと言われたって……ついてないほうが普通じゃない?

サトナカ (聞いてない)普通じゃないわよ。ありえないわよ。

ソトダ え〜

サトナカ (聞いてない)馬鹿よ本当。

ソトダ そ、そこまで言うことないじゃん!

サトナカ え?

ソトダ 私だってねぇ。つけようつけようとは思ってるのよ。でもさ、ウォッシュレットなんてなくたって、トイレはトイレでしょ!? 
   体から出るもんはおんなじじゃない? 違う?

サトナカ え、ごめん。何の話か分からない。

ソトダ 何の話って!? え? 聞いてなかったんですか?

サトナカ え? 何か言ってたの? ごめん。聞いてなかった。

ソトダ あ、なんだ。いえ。なんでもないんです。あはは。じゃあなんだ独り言だったんですか。って、独り言!?

サトナカ わたし何かしゃべってた?

ソトダ ええ、そりゃあもう。

サトナカ そっか。

ソトダ 危ないですよ〜。独り言始めたら危ないって、うちのばあちゃんよく言ってましたもん。独り言で。

サトナカ うん。気をつける。

ソトダ リョウコも相変わらずあんな感じですし。

サトナカ いつも、ああなの?

ソトダ ええ。どっか見てペラペラ〜って。まるで、いるみたいに。

サトナカ 見えるのかな? リョウコちゃんには。

ソトダ まさか。お化け屋敷入っても、大笑いするほど、お化けとか信じてない奴ですよ?

サトナカ だからこそ、見えるとか。

ソトダ ないない。ないですって。

サトナカ 近い存在だったから。リョウコちゃんが。一番。とか。

ソトダ そんなドラマみたいな。

サトナカ 見えたらいいのに。

ソトダ サトナカさん……あ、じゃあ、こういうのどうですか?

サトナカ え?

ソトダ あたし、知り合いに、って言っても、あれですけど。取材の関係で知り合ったってだけの知り合いですけど、いるんですよ。
   スピチュリアル? スピ、スピ

サトナカ スピリチュアル

ソトダ それだ。 だったか、霊視だったか出来る人。ほら、一時期流行ったじゃないですか。

サトナカ ああ。

ソトダ 見せてみましょうか? リョウコのこと。その人に。

サトナカ ……


     と、チャイムが鳴る。


ソトダ ん? 誰だ? ちょっと見てきますね。

サトナカ あ、私が。

ソトダ 今日は雇われ家政婦ですから、私。(と、出かけようとして)あ、そだ。これ、リョウコから。


     と、ソトダは原稿を取り出す。


サトナカ 原稿?

ソトダ プリントアウトしたから読んで待っててくださいって。

サトナカ うん。分かった。ありがと。

ソトダ いえいえ〜


     ソトダが去る。
     サトナカはまた空を見る。


サトナカ いないんだよね。どこにも。


     サトナカが原稿を読む。


6 ブラスト・プラス と 現実と


     物語と現実はリンクする。
     ソトダが去った反対から、ユータ ワイト ヨーコ が現れる。


ユータ ここは、一体どこなんだ?

ワイト 城から出たんだ。森の中だろう。

ヨーコ でも、こんなところあたし知らないよ?

ユータ 俺もだ。

ワイト 君たちだってすべての森を知っているわけじゃないだろう。

ユータ 馬鹿にしちゃ困るな。俺は森の狩人だぞ?

ワイト じゃあ、どうやったら森から出られるか教えていただきたいね。

ユータ だーから、それを今調べているんだろうが。ヨーコ。

ヨーコ うん。でも、木が邪魔で星が見えないよ。

ユータ とりあえず、空が見える場所まで移動しなきゃだな。

ワイト たいまつもいつまで持つかは判らない。また火をつける羽目になる前に、広いところに出よう。

ユータ おう。


     三人がさ迷う。


サトナカ そのとき、三人の前に、二人の人物が現れた、か。


     ソトダ現れる。


ソトダ サトナカさん。

サトナカ (原稿を見ながら)うん? どうしたの?

ソトダ お客さんなんだけど。

サトナカ リョウコ呼ぶ?

ソトダ それが、その。


     ミサとコウスケ現れる。


サトナカ あなたたちは……


     リョウコが現れる。
     ユウイチはその後ろにいる。


リョウコ なにしに来たの?

ミサ あの、今日は、

コウスケ 御礼と、お詫びをしにきました。

リョウコ なんのですか? お礼をされることも、謝られることなんて何も無いですけど? ……おにいちゃんは黙ってて。

ユウイチ ああ。二人とも生きていたのか。良かったなあ。

サトナカ そういうのは止めてくださいって、病院でもお話したはずですけど。

コウスケ 警察の方にも、止められました。

リョウコ だったら、どうぞお帰りください。私たちのことは、お構いなく。

ミサ 夢に見るんです! 

コウスケ ミサ。

ミサ 毎晩。毎晩。あたしたちがあの時、喧嘩なんかしていたせいで。

コウスケ ミサ、止めろ。

ミサ あの人、仲裁に入ってくれたのに、あたしたち振り払って、なのに、

コウスケ 止めろって。

ミサ 信号が赤なの気づかないまま、喧嘩してて、助けてくれたそのせいで、あなたの、お兄さんが、あんな、血、血まみれで。

コウスケ ミサ!

ミサ (顔をさし)ここに、血が、ぴしゃって、まるで、雨粒みたいだなって、馬鹿なこと思って。
  押された体が、痛いとか、そんな、そんなことばっかり考えて、それで、あの人、笑って……笑ってたんですよ!
  それがいつも、いつも夢に……出てくるんです。だから。だから。

コウスケ (ミサを抱き)もういいよ。もういいから。……一度、お会いして、頭を下げた方がいいと思いまして。

サトナカ そうですか。ユウイチさん、笑ってたんですか。

ユウイチ 笑うしか出来ないだろ。あれは。

リョウコ 帰ってください。

ユウイチ いいじゃんか、リョウコ。どうせ鍋なんだから、みんなで食べたら。

リョウコ いいから帰って! 帰れ! お兄ちゃんはいるんだから! 


     リョウコが走り去る。


ソトダ リョウコ!


     ソトダが追いかける。
     ミサとコウスケは帰ろうと背を向け固まる。
     サトナカは、原稿の世界に迷い込む。





ヨーコ お兄ちゃん!

ユータ ん? あれ? どうしたんだ? こんなところに。おい! ワイト。

ワイト どうした? なんだ。迷子か?

ヨーコ ねぇ。もしかして、この近くの村の人?


     ミサとコウイチは、ミーサとコウに変わる。


ミーサ 人間だ。人間がいるよ?

コウ ああ。人間だ

ユータ はぁ? 何言ってるんだ? 頭大丈夫か?

ワイト ユータ! そいつから離れろ?

ユータ 何言ってるんだよ? こんな武器も持ってない奴。

ミーサ 人間発見! 人間発見!

コウ へいお前ら! こんなところに人間がいるぜ!


     と、ザココ ザザコ コーザ が現れる。


ユータ 罠ってわけか。

ワイト 人間そっくりの警報装置といったところだろう。無用心に近づいた途端、大声を出し、仲間を呼ぶ。

サトナカ この二人って、もしかして……


     と、ソトダが現れる。
     ソトダに何事かサトナカは話す。
     ソトダが外へと走る。
     サトナカがリョウコが去ったほうへ走り去る。


ヨーコ どうするの?

ワイト 知能のある魔物か。やっかいだな。

ユータ は。大丈夫だ。ここは俺に任せろ。

ザココ 「俺に任せろ」とか言っちゃってるんだけど?

ザザコ うわっ。あたし、本当に言っているのって初めて聞いたよ。

ザココ あたしらも言ってみる?「俺に任せろ」

コーザ なんか、かっこいいねぇ。

ザザコ え〜 あたしは駄目だな。

ザココ 正直ないよねぇ。

ユータ すっげぇむかつく。おいお前!

ザザコ あたし?

ユータ 来な。

ザココ ご指名だよ。

ザザコ しょうがないなぁ。ま、みんな。あたしに任せな。

コーザ カッコいい〜。


     ザザコが進み出る。


ザザコ 行くよ!

ユータ あ、○○(有名人)があんなところに!

ザザコ え? マジで!?


     ユータは問答無用で切る。


ザザコ ぐあああ! 卑怯者〜


     ザザコは去る。


ザココ うわっ。最悪。

コーザ 卑怯だねぇ。

ザココ あれは無い。無いね。

コーザ 無いねぇ。

ユータ 次。来な。

ザココ どうする?

コーザ あたし行くよ〜。

ザココ 引っかかるなよ。

コーザ 名案があるから。


     コーザが進み出る。


コーザ はあああああ!


     と、気合を入れたコーザは指を両耳に。


コーザ これで、騙されないよ〜


     ユータは切る。


コーザ ああ、両手が使えなきゃ戦えなかった〜


     コーザが去る


ザココ 馬鹿〜!?

ユータ まだやるのか?

ザココ ふん。あたしをそこらのザコと一緒にしないで欲しいねぇ。二人の敵。取らせてもらうわよ。


     ザココが進み出る。


ユータ あ、あそこにいるのは〜

ザココ あ、○○が、半裸で歩いている!

ユータ なにぃ!?


     ザココの攻撃を、間一髪でよける。


ユータ こいつ、強い。

ザココ 言っただろう? そこらのザコと一緒にしないで欲しいって。

ユータ あ、あそこにいるのは〜

ザココ あ、○○が、半裸で歩いている!

ユータ 二度も引っかかるか!

ヨーコ あ、本当だ。

ユータ&ザココ なにぃ!?

ザココ しまった。


     ユータがザココを切る。


ザココ 連携とは、卑怯なり。


     ザココは去る。
     反対からリョウコがやって来る。ノートパソコンに向かう。
     そのすぐ横にユウイチ。


ユータ すまん。助かった。

ヨーコ 自分の技に引っかかってどうするのよ。

ユータ 面目ない。ワイト、どうした?

ワイト あまりの馬鹿らしい戦いに、少し気が遠くなりかけていた。

ユータ 悪かったな。俺は、(頭を指し)ここで戦う男なんだよ。

ワイト 使っていたようには見えなかったが。

ユータ そんなことより、こいつらをどうするかだ。


     三人はミサとコウを見る。


ワイト 壊してしまうべきだろうな。

ヨーコ もう、誰も罠にかからないようにだね。

ユータ しかし、人間の姿をしているってのはなんとも気分が悪いな。

ワイト それが奴らの手口だ。

ユータ そうだったな。


     ユータが剣を構える。
     と、サトナカが走りこんでくる。


サトナカ 駄目! リョウコちゃん! それは駄目よ!


     サトナカは利き手にペン。反対の手に原稿を持っている。
     ペンでユータの剣をはじくと、ミーサとコウを守る。


リョウコ サトナカさん。創作の邪魔しないで。

ユータ 誰だお前は。

ワイト われわれの邪魔をする気か?

サトナカ リョウコちゃん、判っているでしょう? この人たちは魔物じゃない。

ヨーコ その二人は魔物よ! だから殺すの。

サトナカ 違う! あなたの作品の登場人物は、そんなこと言わない! 判っているでしょう!?

リョウコ これは私の小説よ。

サトナカ あなたが書きたいのはこんなんじゃない!


      サトナカはペンで三人を倒す。
      ミーサとコウは逃げていく。


ユータ なんだったんだ今のは。

ワイト 幻術か?

ユータ とにかく、先を急ごう。


     ユータとワイトが頷き走っていく。


ヨーコ&リョウコ これで満足?


8 現実世界


     ヨーコが去る。


サトナカ リョウコちゃん。どうして、こんなことしたの?

リョウコ なんのこと?

サトナカ この二人、あの二人でしょ?

リョウコ さぁ。

サトナカ とぼけないで。判るんだから。ユウイチさんが助けた二人よね。それを、わざと殺そうとした。 

リョウコ 私が考えたんじゃない。

サトナカ じゃあ、誰が考えたって言うのよ!?

リョウコ お兄ちゃんが言ったから。

サトナカ ユウイチさんが?

リョウコ お兄ちゃんが言ったのよ。あいつらが悪いんだって。あいつらさえいなければよかったんだって。


      リョウコが視線を送るそこに、ユウイチはいない。
      ユウイチは二人の姿を寂しそうに見ている。


サトナカ ユウイチさんはいないのよ。

リョウコ いるよ。ここに。

サトナカ いないのよ。

リョウコ サトナカさんには見えないだけでしょ?

サトナカ そんなこと……。

リョウコ 私のほうがずっとお兄ちゃんと一緒にいたから。だから、お兄ちゃんは私にだけ見えるのよ。

サトナカ 違う。

リョウコ お兄ちゃんはずっと、あたしと一緒だったんだから。あたしが駄目だって思うたび、助けてくれたんだから。
    だから、今だって一緒にいてくれるんだよ。あたしにだけ、姿見えるんだよ。じゃなきゃ、おかしいでしょ? 
    あたしのピンチには、お兄ちゃんはいつだって来てくれるんだから。

サトナカ リョウコちゃん……

リョウコ 小学生のときは、一輪車に乗れないってあたし、お兄ちゃんに泣きついて。
    そしたら、お兄ちゃんは「大丈夫だよ」ってあたしが乗れるまでずっとそばにいてくれた。
    中学のとき逆上がりが出来ないって相談したときだって「大丈夫だから」って、部活の後練習に付き合ってくれて。
    体育の二重跳びのテストも、数学の宿題も、英語の課題も、大学のレポートも、みんな、みんなあたしが困るたび「大丈夫だ。
    リョウコなら大丈夫だ」って。お兄ちゃんは言ってくれるんだから。サトナカさん、覚えているでしょ? 
    この小説、ブラスターってタイトルの本当の意味。

サトナカ 物語のキーとなる爆弾とは、全然違う、はじめの意味のこと?

リョウコ そう。おにいちゃんと、あたし。ブラザー&シスター。だから、これは二人の小説。お兄ちゃんと決めたんだから。

サトナカ でも、ユウイチさんは、もう、

リョウコ だからいるんだってば! お兄ちゃんは今もいて、だから私は書き続けるの。お兄ちゃんと二人で。ずっと! 
    これは、この小説は誰にも奪わせない。

サトナカ でも、だったらリョウコちゃんには余計分かっているはずでしょ? 
     これが本当にユウイチさんが望んだこと? こんな話になることを、
     あの人は本当に望んでいたの?

リョウコ うるさい! そんな話、聞きたくない!


    リョウコが頭を抱える。
    声をかけられないサトナカ。



    と、ソトダがやってくる。


ソトダ ああ、サトナカさん、ここにいたんだ。

サトナカ お帰り。っていうのも変か。

ソトダ まぁ、あたしの家みたいなものだし。リョウコは?

サトナカ 怒らせちゃった。

ソトダ そっか。連れてきましたよ。霊媒師。

サトナカ 見つかったの?

ソトダ もちろん。あたしの情報網をなめちゃいけない。


    と、ソトダの後ろから、怪しげな女が現れる。港北の姉(こうほくのあね)。


港北の姉 だーからあたしは霊媒師じゃないって言ってるじゃないのさ。

ソトダ のようなものでしょ。幽霊見えるんだから。

港北の姉 幽霊じゃないの。守護霊。スピリッチュアルなもんなんだから。

ソトダ スピリチュアルでしょ。便乗する気満々なだけじゃない。こちら、港北の姉さん。

港北の姉 さんは余計だよ。なんか「アネさん」なんて言われたら、ヤクザの女房みたいじゃないのよ。

ソトダ 年齢不詳。あたしより多分年上。日本終わってる。

港北の姉 うっさいわね。たかだか一度取材に来たくらいで、こんなところまで引っ張ってくる人間に言われたくないね。

ソトダ なによ?

港北の姉 なにさ?

サトナカ えっと、それで、港北の姉、ですか?

港北の姉 そうです。

サトナカ 幽霊が見えるんですか?

港北の姉 ええ。職業柄ね。スピリチュアルな仕事ですから。

サトナカ じゃあ、彼女の側にいる霊も?

港北の姉 彼女のそば? どれどれ。ちょっと失礼しますよ。


    港北の姉が進み出る。


リョウコ 誰?

サトナカ 霊媒師さん。

港北の姉 そういう妖しげな名前じゃないって言ってるでしょ。まったく。
      どいつもこいつも、霊媒だとか、占いだとか適当な名前をつけて。
      これからはスピッチュアルだってのに。

ソトダ スピリチュアル。

港北の姉 静かにしてて。集中してんだから。


    目を凝らす。
    ユウイチは思わず逃げる。
    港北の姉の目がその動きを追う。
    ユウイチ驚いて逃げる。
    さらに追う。


リョウコ お兄ちゃんが見えるの?

ユウイチ うわっ。本当に見えてるのかこいつ。

港北の姉 見えるわよ〜。伊達に能力があるわけじゃないんだから。

サトナカ じゃあ、やっぱりユウイチさんはこの部屋にいるの?

港北の姉 いるもなにも……


    と、ユウイチは首をふる。
    港北の姉、顔だけで反応。「え?」
    ユウイチ両手を振って、さらに口パク「いない」


港北の姉 きあい。

サトナカ は?

港北の姉 いや、きらい? きらい? きらに? きらし? きー?  ラー?


    ユウイチ、ノートを書いて、苦しむふり。が、
    ×というしぐさ(「キラ」じゃない)


港北の姉 書いたら苦しくなって、うっ? 書いたら苦しくなって、う?


    ユウイチ諦める。おいておいて、のしぐさ。


港北の姉 は、置いておいて。

ソトダ 自分で呼んでおいてなんだけど、失敗だったかも。

サトナカ 見えるんですか? ユウイチさん。

リョウコ だから言ってるでしょ? お兄ちゃんはここにいるって!


    と、リョウコが指差す一点。
    そこは、ユウイチのいる場所ではない。


リョウコ ね? ここにいるでしょ? 今だって、私に話しかけてくれてるんだから。

港北の姉 そうか。いない、か。


    ユウイチは頷く。


リョウコ え?

港北の姉 あなたのお兄さんの幽霊はここにはいません。スピリチュアル的にも感じられません。オーラが無い。

リョウコ うそです。ここに、だって、ここで笑っているんですよ。

港北の姉 残念ながら、それはあなたのお兄さんじゃない。幽霊でもない。

リョウコ だったらなんだって言うんですか!?

港北の姉 幻です。

リョウコ 帰ってください! 帰れ!


    リョウコは港北の姉にプリントアウトした原稿をぶつける。
    紙があたりに飛び散る。


港北の姉 死んだ人間に出来ることなんて無いんです。生きている人間を大事にしてください。
      ああ、それと(ユウイチに言うように)未練を持っている霊ほど霊力は強いはずですから? 
      思いっきり念じれば、そりゃ生きている人間の一人か二人くらいには見えるかもしれませんよ。
      まぁ、霊力尽きて消滅すること覚悟のうえで、ならですけど。


    港北の姉がユウイチを見る
    ユウイチは頭を下げる。港北の姉去る。


ソトダ ちょっと、港北さん!


    ソトダが去る。


10


    リョウコはパソコンの前に力なく座る。
    サトナカは原稿を拾っていく。


サトナカ ユウイチさん、まだそこにいる?

リョウコ 今は、いない。

サトナカ そう。

リョウコ 変なこと言われたから、怒って成仏しちゃったのかも。

サトナカ そっか。

リョウコ ……馬鹿なこと言ってるって思ってるでしょ?

サトナカ ううん。

リョウコ 思ってるくせに。

サトナカ ちょっとね。

リョウコ 痛い女だなって、思ってるんでしょ。判ってるよ。お兄ちゃんがいないくらい。幽霊なんて、いるわけないって。

サトナカ うん。

リョウコ でもあたし、どうしたらいいか分からない。お兄ちゃんがいなくちゃ……


    リョウコがうつぶせになる。
    電話が鳴る。
    リョウコを一人に出来ずにサトナカは電話を取る。
    スドウが現れる。


サトナカ はい?

スドウ あ、サトナカ?

サトナカ 先輩? どうしたんですか?

スドウ どう? ブラスター。進んでる?

サトナカ いえ。

スドウ そっか〜。それは困ったわねぇ。

サトナカ ええ。あの、先輩、用件は。

スドウ ああ、それなんだけどね。……ブラスター・プラス、OKかもしれない。

サトナカ 本当ですか!?

スドウ 部長がね。乗り気になっちゃって。

サトナカ 部長が?


    と、部長現れる。


部長 あ、サトナカ君、出た?

スドウ はい。

部長 (スドウと代わって)あ、サトナカ君?

サトナカ はい。

部長 聞いたよ、ブラスタープラス。いいよね。響きがいい。

サトナカ はぁ。

部長 本の人気もあるし、今のうちにどんどん出しちゃおうよ。

サトナカ そう、ですか?

部長 うん。そうだ。どうせなら、今度はイソップ童話もくっつけちゃってさ。森を出たら、亀とウサギが競争しているの。
   どうこのアイデア、悪くないよねぇ。

スドウ はい。部長代わって。早く代わってください。

部長 スドウ君怖いよ。そんな怒ってばかりだと、嫁の貰い手、なくなっちゃうぞ?

スドウ シャアアアア(猫的な威嚇)

部長 うわっ。じゃあサトナカ君。続き、楽しみにしているから〜


    部長が去る。


スドウ 大丈夫? サトナカ。電話切ってないよね?

サトナカ なんとか。

スドウ 書きかけの原稿見せたら、部長何でか張り切っちゃってさ。

サトナカ そうですか。

スドウ 書けて稼げるうちに、稼がせておきたいらしいよ。部長は。

サトナカ ……。

スドウ イワサキリョウコは、そのうち書けなくなるだろうってのが、こっちの大体の意見だから。

サトナカ そんなこと……。

スドウ だったら、あんたがどうにかしなさいよ。

サトナカ そんな、無理ですよ。

スドウ ブラスター・プラス、このままだと絶対失敗するから。一応、企画は進めるかどうかってとこで止めてある。あとはあなたが決めて。

サトナカ 先輩、あたしじゃ、無理です。

スドウ それとも、ブラスターを終わらせるか、ね。

サトナカ ……。

スドウ 失礼します。


    電話切れる。


11

    サトナカ頭抱える。


リョウコ 何の電話?

サトナカ ……ブラスター・プラス。書いてもいいって。

リョウコ そうなんだ。

サトナカ 部長が気に入っちゃって。あの人いつも感覚で動いてるから。明日にはなんて言っているか判らないけど。

リョウコ 無理って、なにが?

サトナカ それは、その、

リョウコ あたしが書くのが無理ってこと?

サトナカ 違う。リョウコは書けるわよ。絶対。ただ、あたしが、

リョウコ あたしが?

サトナカ あたしには、あなたに書かせることが出来ないから。

リョウコ お兄ちゃんじゃないもんね。

サトナカ うん。

リョウコ それで、向こうはなんて?

サトナカ 続かせたくなければ、終わらせろって。

リョウコ どっちがいいの?

サトナカ 私には、判らないわよ。

リョウコ そんなの、ずるい。

サトナカ え?

リョウコ これは違う、ああじゃない、そうでもない、文句ばっかり言って。否定するだけ否定して。
    結局どうするか判らないなんて。そんなのずるいよ!

サトナカ だって、書いているのはあなたでしょ?

リョウコ お兄ちゃんは一緒に考えてくれた。一緒にアイデア出し合って。一緒に悩んで。一緒に書いてくれた。

サトナカ 私は担当なのよ?

リョウコ お兄ちゃんはお兄ちゃんでしかなかったのに!? 小説家でも、編集員でも、記者でも、なんでもない。
    ただのサラリーマンだったのに? あたしのお兄ちゃんだからってだけで、悩んでくれたのに?

サトナカ 仕方ないじゃない! あたしだって、あたしだってね、アイデアが出るんだったら出してあげたいわよ。
     こうしたらいいんじゃない? とか、いえるんなら言ってみたいわよ。言わないんじゃないの。言えないの。
     出てこないの。ブラスターを終わらせるか? 終わらせないか? 判らないわよ。
     ユウイチさんが死んで、この上、ユータまでも殺す? 出来ないわよ。でも、どうしたらいいかなんて浮かんでこない。
     全然浮かんでこないのよ! あたしだって辛いんだから。悲しいのが自分だけなんて思って幻見てるあんたよりもね、
     もっと、もっと、ああ、もう! こんなこというつもりじゃなかったのにな。こんなんじゃなかったのに。


    サトナカは頭を抱える。


リョウコ サトナカさん。

サトナカ ごめん。疲れてた。頭冷やしてくる。


    サトナカ去る。


12


リョウコ 言いたいことだけ言って。勝手に解決して。ずるいよ、やっぱり。


    リョウコは兄がいると思っている方向へ話しかける。
    ユウイチは反対側へ回る。


リョウコ でも、良かったね。お兄ちゃん。サトナカさんも、辛いんだって。
    わたし、駄目だね。全然判らなかった。サトナカさんも、悩んでたのかな。出来ないって。


    リョウコはふと、思い出し笑い。


リョウコ ううん。ちょっと思い出しちゃって。……さっきさ、サトナカさんに言ったの。
    お兄ちゃんは、私が出来ないとき、いつも側にいてくれたって。一輪車のときも、逆上がりのときもって。
    ……うん。お兄ちゃんも覚えているでしょ? あれね。私、嘘ついてたんだ。
    一輪車も、逆上がりも、二重跳びだってちゃんと出来たのに、出来ない〜ってお兄ちゃんに泣きついてたんだ。
    だって、お兄ちゃん、一輪車、逆上がりも、どれも全然出来なかったでしょ? 
    なのに、私に教えようとして頑張って覚えてくれたよね。嬉しかったんだ。それが。
    泥だらけになっても、何度も起き上がって、傷だらけの癖に、お兄ちゃんがあたしに言うの。
    「大丈夫だよ。リョウコには出来るよ」って。
    言葉通りに一輪車に乗れたあたしの髪を、お兄ちゃんは撫でて、「よくやったな」って。
    ずっと、それが言ってもらいたかったんだ。

ユウイチ 気づいてたよ。それくらい。

リョウコ 嘘だよ。そんなわけ……!?


    リョウコは初めてユウイチに気づく。


ユウイチ いつだってお前は出来るくせに出来ないって言うんだよな?

リョウコ お兄ちゃん? そんな、だって

ユウイチ だからさ、分かってんだろ?

リョウコ わからないよ。あたし何にも。

ユウイチ 大丈夫だよ。出来るって。

リョウコ 出来るかな?

ユウイチ 大丈夫。リョウコなら、出来るよ。

リョウコ うん。

ユウイチ ……うん。じゃあ、行くぞ?


    ユウイチが去ろうとする。


リョウコ サトナカさんに、よろしくね。

ユウイチ 判っちゃうか。

リョウコ 妹だから。

ユウイチ そうだな。じゃあ、元気で。

リョウコ お兄ちゃん! 覚えてる? 瀬をはやみ、

ユウイチ 岩にせかるる滝川の?

リョウコ・ユウイチ 割れても末に、会わんとぞ思う。


    リョウコは涙をぬぐう。パソコンに向かう。
    登場人物たちが現れる。


13 ブラスターエンディング


ワイト すべては僕の責任だ。僕が隙を作る。お前たちは、

ユータ しゃあないな! そこまで言われちゃ仕方ない。

ヨーコ。ここで別れるぞ。

ヨーコ え!?

ワイト 何を言ってるんだ?

ユータ 俺しかいないだろうよ。俺がやる。

ワイト 馬鹿を言うな! お前が死んだらヨーコはどうなる!

ユータ だからって、女は死なせられねーよ。

ワイト だれが、ヨーコにやらすと言った! だから僕が、

ユータ 女は死なせられねえ。

ワイト ……いつから気づいていた?

ユータ ヒントをくれたのはグリムアだ。俺、馬鹿だからな。全然気づかなかったさ。

ワイト ユータ、僕、いや私は国を捨てた人間だ。生きる資格などない。

ユータ それでも生きるんだよお前は。……ヨーコを頼む。

ヨーコ お兄ちゃん? 嘘だよね? またいつもの冗談なんだよね?

ユータ ヨーコ。

ヨーコ めでたしめでたしでしょ? 普通の暮らしに戻るんだよね? 約束だったもんね。大丈夫だって。そう言ったよね? 
    お兄ちゃん言ったよね?

ユータ ヨーコ。

ヨーコ いやだ!


    ヨーコは何かを悟ったのか耳をふさぐ。
    その手をユータは強引にとる。


ユータ ヨーコ。お前は大丈夫だ。

ヨーコ そんなことない。

ユータ お前は、もう俺がいなくても大丈夫だ。


    ヨーコがユータに抱きつく。


ヨーコ 嫌だよ! 勝手に決めないでよ。無理だよ。駄目に決まってるじゃん。
    一人は嫌だよ。怖いよ。寂しいよ。ね? 置いていかないで。あたしも、
    一緒に行くから。ずっと。だから、置いていかないでよ。

ユータ 子供かお前は。

ヨーコ 子供でいいから。

ユータ ……お前は大丈夫だ。

ユウイチ お前は大丈夫。

ヨーコ 私は、大丈夫?

ユウイチ 大丈夫だよ。

ユータ 大丈夫。

ユウイチ&ユータ 一人でやれるさ。大丈夫。

ヨーコ&リョウコ 大丈夫。

ユータ (ワイトへ)ブラスターを。


    ワイトがブラスターを渡す。


ユータ さぁ、笑顔でさよならだ。

ユウイチ さよなら。リョウコ。

ヨーコ&リョウコ またね。お兄ちゃん。

ユウイチ&ユータ ああ。またな!


    ユウイチとユウタが身を翻す。
    暗転

14

    サトナカが一人でいる。
    携帯を見て、いらいらしている。


サトナカ もう、どうすりゃいいのよ。


    ユウイチが現れる。


ユウイチ 好きにしろよ。

サトナカ え?

ユウイチ お前の好きにすればいいんだよ。俺のこととか、関係なしにさ。

サトナカ ユウイチ、さん?

ユウイチ あいつのことよろしくな。なんも出来なかったから俺。なんも。だから、少しの間だけ宜しくな。

サトナカ ば、

ユウイチ ば?

サトナカ バカ言ってんじゃないわよ! 今更そんな。勝手に消えて、勝手に出てきて! 手品のショーかなんかですかあなたは? 
     人が苦労しているのに涼しい顔しちゃって。

ユウイチ しょうがないだろ死んでんだから。

サトナカ だから死んでるんじゃないっつってんのよ! 何で死んでんのよ! そのせいで、あたしが、どれだけ。どれだけ苦労して。
     そういうこと全然考えないで、そんなフラフラっと出てきてさぁ。

ユウイチ 体浮いてんだから。そりゃフラフラするさ。

サトナカ なんで、そんな……お決まり過ぎる死に台詞言っちゃってんのよ。

ユウイチ 死んでるからな。

サトナカ もっとあるでしょ。なんかさ、こう、感動的にさ。せっかく、幽霊? 
     みたいに出てきたんならさ。あたしのやる気がこうさ、上がってくるようなさ。あるもんでしょ? 
     もう私、なんも判んないのに……本当。あなただったら、そう思ってたのに。

ユウイチ ……旅行、行こうと思ってたんだ。

サトナカ 旅行?

ユウイチ 夏瀬温泉ってのが、山形にあるらしくてさ。お前の、名前みたいだなって思って。

サトナカ 一字違いだけどね。

ユウイチ そこで、言おうと思ってたんだ。

サトナカ なにを?

ユウイチ 俺と……

サトナカ 何よそれ。そんなの今更じゃない! 今更過ぎるでしょ! どうしろってのよ! そんなんでさ。
     死亡フラグどころか、死んでから言ったってしょうがないじゃない。駄目人間にもほどがあるわよ。
     紙っぴらみたいなもんよ。紙より軽いわ。浮いてるんだもんね。
     何の意味もないわよ!ふざけんのも大概にしなさいよ!

ユウイチ ごめん。

サトナカ ごめんですむかあああああああああ!


    と、ソトダがやって来る。


ソトダ あ、ごめん。なんか、大声で叫んでたから。誰かと喧嘩しているのかと思って。
   えっと、買い物してくるね。確か足りない材料あった気がして、リョウコに電話したんだけど、出なかったから。
   多分書いているんだよねぇ。あはは。じゃあ、行ってきます。


    ソトダが去る。


サトナカ リョウコちゃん、書き始めたんだ。

ユウイチ ああ。

サトナカ そっか。……なら私も頑張らないと。

ユウイチ 大丈夫か?

サトナカ なんかね。叫んだらすっきりしたわよ。大丈夫。やるわ。

ユウイチ そっか。

サトナカ だから、見ててよね。ずっと。

ユウイチ ……ああ。


    サトナカは電話をかける。


サトナカ あ、先輩ですか? サトナカです。さっきの話ですけど! あたし決めましたから! ええ。やりたいようにやってやります。


    暗転。


15 エピローグ そしてオープニング。

    暗闇の中爆発音。


ヨーコ(声) お兄ちゃん!!

ワイト(声) 振り返るな! あいつの思いを無駄にする気か!


    ヨーコとワイトが駆け込んでくる。
    リョウコはノートパソコンを打っている。
    その側にはサトナカ。

    下手から敵が現れる。ザザコ・コーザ
    ヨーコとともに剣を抜きつつ、上手に去ろうとするワイト。
    上手から敵が現れる。コザザ


ヨーコ 囲まれたっ。

ワイト 諦めるな。あいつの犠牲を無駄にはしない。絶対、生きのびるぞ。

ヨーコ はい!


    ザザコが襲い掛かろうとしたとき、剣士が走りこんでくる。
    コウである。


ワイト あなたは!?

コウ 姫。ずっとお探ししておりました。近衛兵が一人、コウ。参上いたしました。

ワイト なぜここが?


    と、そこへコザザが襲い掛かろうとする。
    そこへまた走りこんでくる影。
    ソトダである。


ソトダ お待たせっ

ヨーコ アキ! 生きてたの!?

ソトダ そう簡単に死なないって。どえらい爆発音がしたんでね。判ったんだ。あんたたちが戦っているんだって。あたしたちも一緒にやるよ。

ヨーコ ありがとう。

ソトダ お礼は後で。

コウ 一人、強力な魔法使いを呼んでおります。まずはそちらへ!


    ヨーコ・ワイト・ソトダ・コウが走る。
    敵が追いかけてくる。


リョウコ サトナカさん。本当にいいの?

サトナカ あたしが許す!やっちゃいなさい!

リョウコ うん!


    ヨーコ・ワイト・ソトダ・コウの前にさらに敵が現れる。
    スドウにグリムアに港北の姉。


スドウ そこまでだ森狩人。

港北の姉 あたしらから逃げられると思わないことね?

グリムア あなたたちはここで終わり。

ワイト グリムア!? 生きていたのか!?

グリムア あたしは何度だってよみがえるさ。あたしの夢が叶うためなら何度だってね。

ワイト くそっ。ここは僕が!

コウ なりません姫!

ワイト しかし。

コウ どうやら、間に合ったようです。


    光があふれる。
    そして、ユータが現れる。
    その横にはミーサの姿がある。


ワイト ユータ!

ヨーコ お兄ちゃん!?

ユータ 待たせたな!


    ユータはいきなり敵に切りかかる。
    よける敵。ユータ・ヨーコ・ワイト・コウ・ミーサ・ソトダを囲む敵。


ミーサ 何とか間に合いました。

コウ 彼女が、白の魔術師と呼ばれているミサ・ミーサです。

ミーサ リアルに説明すると、中々グロイ回復作業でした。

ユータ 頼むからリアルには言わないでくれ。

グリムア しぶとく生き残っていたか。

ユータ 死んだかと本気で思ったんだけどな。どうやら、まだまだ死ねないらしいぜ。お前を倒すまでな。

グリムア こざかしい。やれ!

スドウ&港北の姉 ははっ

スドウ(ふと、編集者に戻って) ってあんたたちね、こんなめちゃくちゃ、あってたまるもんですか!

サトナカ でも、やりますから。

スドウ 書ききれるんでしょうね? ここから先も。

リョウコ 大丈夫です!

スドウ その言葉、確かに聞いたわよ!


    敵対味方の殺陣。
    再び連携を取り直す。
    いつの間にかリョウコとサトナカの側にはユウイチがいる。座って笑っている。


ワイト ふん。倒しても倒してもキリがないな。

コウ 姫。弱音は禁物です。

ソトダ でも、こりゃ、全部倒すのは至難の技だよ。

ユータ だったらどうする?

ミーサ 諦めますか?

ユータ バカ言うな。

ヨーコ ……やるしかないよね。

6人 ああ!

ユータ 行ってやろうぜ!行けるとこまで!


    六人の動きはスローになっていく。
    それは敵も同じ。

    いつまでも書き終わらない物語に、作家と担当が足を踏み入れた

あとがき
自分が良くスランプに陥りやすいせいか、書けない小説家を良く思い浮かべます。今回もまたそんなお話です。
気がついたら似たようなお話を4作くらい書いていました。どうか、
「似たような話ばっかり書いているなぁ」と、生暖かくあきれてください。
人数がやたら増えているのは、人数がやたら増えていたときに上演しようと思って書いていたためです。

いいですよね。ファンタジー。
イベントで誰かが死ぬたびに「ここでザ○リク使えば解決じゃないか?」なんて思ったりします。
でも、ファイヤーエン○レムみたいに、途中で死んだら復活無しというゲームも厳しいものがあります。
結局、ファンタジー物は好きなんですが、もっぱら読む専門というのが最近の流れだったり。

そんな中、剣を振ってみたい。魔法を使ってみたい。そんな演劇やってみたいと、
頭の中で何かがささやいたので出来たお話です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。