進メ!ガクランジャー
作 楽静


登場人物

ヒーローチーム
タツマ ユウタ 男 ガクランジャー 肉体派(緑)
アカシ タカコ 女 ガクランジャー 頭脳派(赤)
コマキ キミ  女 ガクランジャー 三枚目(黄)
サメザキ サナ 女 ガクランジャー 語学派(青) 
黒田部長 女 ガクランジャーチームのボス的存在
灰谷局員/ハツデ(アトデ) 女 秘密基地受付/よく襲われる人
白山秘書 男 黒田の秘書。本当は二枚目
金岡銀子博士  女 年齢不詳の博士。発明好き
井口支部長 男 ○○県ヒーロー支部本部長
怪人チーム
怪人 プラム 女 お色気担当
怪人 ナバーナ  女 悪知恵担当
怪人 ジャンガ 男 やられ役担当
ボス 女 そのボス。
その他
安藤 テレビ局員  女 組織内新聞の記者。
丹下 カメラマン  女 その専属カメラマン。



     どこか違う世界のお話。
     「ヒーロー」も当たり前のように存在しているそんな世界。
     だからこそ、苦労も多いわけで。

1 いつかの夜。

     薄暗い夜。
     ハツデが走ってくる。
     それを通せんぼするように現れる影。プラムである。
     慌てて、反対方向へ逃げようとするハツデをナバーナが塞ぐ。
     ゆっくりとジャンガが現れる。

ジャンガ 逃げられないよ。ハツデさん。

ハツデ 私の名前を!?

ジャンガ ナバーナ。

ナバーナ ハツデノミコ、22歳。国際的に有名なプログラム開発者を両親に持つ。まさに、コンピューターのハイブリット。

プラム サラブレット。

ナバーム っと。その才能を正しい分野に伸ばせばよかったものの、幼少のころよりハッキングにばかり興味を持ち、
      ハンドルネームであるコミノデッツという名は、今やその業界では知らないものもいないほどの凄腕ハッカー。

ジャンガ その力をどうか私たちに貸してくれないかな?

ハツデ あなたたち何者なの?

プラム ネプス。聞いたことあるでしょう?

ハツデ まさか。

ジャンガ N.E.P.S。正式名称No Existence persons.

ナバーム 存在を認められない者たち。俗に言う、怪人。

ハツデ 政府の最重要機密事項?

ジャンガ やはりそこまでたどり着いてたか。ますます貴重な人材だな。

ナバーム 悪いけど、あたしたち、まだ存在を知られるわけにはいかないの。

ジャンガ 知られてないほうがやりやすいことはいくらでもあるんでね。

プラム しゃべりすぎ。

ジャンガ そうだな。じゃあ、話も分かったところで、ご一緒願えますかな? お嬢さん!


     と、ジャンガが何かしようとしたそのとき。


ユウタ&タカコ&キミ&サナ ちょっとまったぁ!

ジャンガ なんだと!?


     高らかとヒーロー登場の音楽が流れる。
     決め文句を言いながら一人ずつ出てくる。


ユウタ 地より怪人湧き出る時、

タカコ どこからとも無くすばやく現れ、

キミ 下してやるわ、正義の雷(いかずち)

サナ 以下同文!


     そして、あっけに取られる敵を残して、決めポーズ。


ユウタ その志は天行く緑竜(リョクリュウ)。ガクランジャーブラック!

タカコ その眼差しは燃える赤鷹(セキヨウ) ガクランジャーブラック!

キミ その素早さは地を駆ける黄虎(コウコ) ガクランジャーブラック!

サナ その……ブルーシャーク! ガクランジャーブラック!

ユウタ 五人そろって!

ユウタ&タカコ&キミ&サナ 七色戦隊ガクランジャー

ジャンガ どこから突っ込んでいいのか分からない。

ユウタ いまだ! フォーメンションA


     タカコが素早くジャンガの片手を決める。
     キミがもう片手を。サナは足を。


ジャンガ はぁ!?

ナバーナ ジャンガ!

ユウタ ガクランジャー、スマッシュ!


     ユウタが殴りつけるとともに、ジャンガが吹っ飛ぶ。


ジャンガ 卑怯者!!


     ジャンガが去る。


ナバーナ ジャンガ!


     ナバーナはジャンガを追っていく。


ユウタ これが正義だ!

プラム 強い。

ユウタ え?


     プラムとユウタは目をあわす。
     暗転。


2 談話室AM9:00


     闇の中、黒田が浮かび上がる。


黒田 二年前の、「闇の日」と呼ばれるあの日、ネプスは地球に現れ、そして
   侵略を開始しました。No Existence persons.存在しないものたち。
   フィクションにしかありえない怪人の姿をした彼らが、いったい何者であり、
   何が目的かは現在も詳しくは分かっていません。ただ分かっていることは、
   彼ら怪人は「狩り」と称して人間をさらうこと。さらわれる人物は決まって
   何かの分野で優秀な成績を収めているということだけ。
   もちろん、われわれ人間も黙って怪人のされるがままになっているわけにはいきません。
   しかし、警察部隊を投入するには、あまりにも自体は荒唐無稽じみていました。
   そこで、考え出されたのが、目には目を。存在しないものには存在しないものを、
   ということで、誰もが架空と思う正義のヒーロー、レンジャー部隊。というわけです。
   さて、わが部署のレンジャーの大きな特徴は、その服装にあるといっても過言ではありません。


     ユウタの姿が浮かび上がる。


黒田 闇にまぎれるには最適のフォルム。動きやすさを研究しながらも、
   脱ぎやすさまで計算され尽くされた究極の戦闘服、GAKURAN。
   そもそも赤や白、ピンクなどといった目立つ色は敵に発見してくれといっているようなものです。
   迷彩服は一般人と一緒に歩いていれば奇異に移るだけ。
   ところが、このGAKURANはといえば。どうでしょう。どこにでもいる学生そのものです。
   まさか、ネプスの怪人どもも、全学生に照準を絞るわけには行かないでしょう。
   これぞ、究極の戦闘服。そして、わが部隊こそ、究極のレンジャー部隊なのです!


     照明はれる。他のレンジャー員はあきれて聞いてる。
     レンジャー部隊のとある支部、談話室。
     中央にはテーブルがあり、テーブルクロスがかかっている。
     ポーズを決めたままのユウタの他に、
     タカコ、キミ、サナ、そして秘書の白山がいる。


白山 ブラボー。ブラボーです部長。

黒田 そうかな?

白山 もう、なにがブラボーかって、もうブラボーですよ。ブラボー以外の言葉があるとすれば……ブラボー!

キミ 無いのかよ。

ユウタ 部長。

黒田 なあに?

ユウタ もう座っていいですか。

黒田 うん。


     ユウタ座る。


黒田 よし、じゃあ、支部長が来てもこれで大丈夫だね。

白山 もちろん。ブラボーですよ。

キミ それ以外の言葉知らないのかよ。

サナ なんか、白山さん今日テンションおかしくない?

キミ 緊張してんでしょ。部長だって変じゃん。

黒田 こら、私語はしない。ここをどこだと思ってるの。

キミ 談話室ですけど?

黒田 違うでしょ。今日は。はい、タカコ君。


     ぼけっとしていたタカコは急に呼ばれて、


タカコ え、あ、そうですね。やっぱり、直接ってのは無理なんじゃないでしょうか?

黒田 はい?

タカコ え!? あ、だから、間接的に? いや、直接ってのは、だから、あれですよ、やだなぁ。(サナに)ね?

サナ え? ああ、あれね。知ってた。だよねぇ〜

黒田 なにが?

サナ なにがって、だから、談話室が、

黒田 談話室が?

タカコ ああ! ですから、談話室ってのをですよね? 直接的に言うとあれだから、間接的に? って話ですよね?

黒田 そう。なんだ、聞いてたんじゃない。

ユウタ でも、部長。ちょっと無理があると思うんですが?

黒田 なにがよ。

ユウタ 作戦談議室にするんですよね? ここを。

黒田 そう。

ユウタ 俺ら、作戦について話し合った事なんか無いですよ?

キミ いつも気分だもんね。

サナ 必殺技だって適当だしねぇ。

黒田 だ〜か〜ら! それが駄目なの! 聞いたでしょ?この間の、○○地区の、

サナ ブラジャー隊?

キミ ブレジャーでしょ。

サナ ああ、そうだ、ブラジャーじゃ、下着だもんね。

ユウタ でも、それで出動したら敵もびびるよな。

キミ あんたは見たいだけでしょ。

ユウタ 悪いか?

サナ うちみたいに女ばかりとは限らないよ〜。男がいるかも。

ユウタ 世も末だな。

黒田 世も末なのはあんたらの頭の中! いい!? うちと同じような発想で、しかもあっちは制服戦隊を名乗ってるのよ!?
   ブレザーのくせに。

ユウタ 部長はブレザー嫌いですか。

黒田 好きだわよ! でも仕方ないじゃん。向こうが先に組織化されたんだから! 被るの嫌だもんあたし。

ユウタ どっちが世も末だよ。

黒田 とにかく、そのブラ、じゃなかったブレジャー隊の成績が上がってるのは知ってるでしょ。ね、白山。

白山 残念ながら、ブラボーとしかいえませんね。

黒田 じゃなくて、成績。

白山 えっと、ではタカコさん。

タカコ あたしですか?

白山 こないだ説明された時、いましたよね?

タカコ ……先月のネプスの怪人撃破数は、県トップ。そのうち三度ほど、うちの縄張りまで侵入しています。

ユウタ あれはないよなぁ。

サナ いいじゃん、楽できたんだし。

キミ でも、こっちの獲物を奪っといて、えらい顔されるのはむかつく。

サナ 確かに。

黒田 だ〜か〜ら! あんたたちも頑張りなさいって何度も言ったでしょ! 
   それなのにいつまでたっても、撃破率が上がらないから〜得点があがらないから〜
   本部からわざわざ支部長が様子を見に来ちゃうんじゃないよ〜。
   こういうときに限って博士もいないしさ〜。

ユウタ そういえば。

サナ 今日は来てないんですか?

黒田 知らないわよ。あの人気分屋だから。

キミ どうせ、また怪しげな発明品作って喜んでじゃないの? 
  ろくでもドア〜とか。まいたけコプターとか。


     と、その頭を白山がこっそりはたく。


キミ あいたっ

白山 大丈夫ですよ部長。さっきの説明ブラボーでしたから。

黒田 大体おかしいのよ。なんで毎回毎回、こっちが身を潜めて敵の不意をつくのに、あいつら逃げてるのよ。

サナ こないだも結局いいところで取り乱したもんね。

キミ スパイでもいたりして。


     間


キミ え? ごめん。冗談よ冗談。

ユウタ キミ。憶測で部長を疑うのは止めろ。

キミ 疑ってないわよ!

黒田 あたしがスパイなんかする分けないじゃない!

ユウタ 部長もこう言ってるだろ。

キミ だから疑ってないって。

ユウタ 部長、まぁ、人に信頼されるってのは難しいことですから。堪えてください。

黒田 あんたたち、あたしがどれだけ苦労していると思ってんのよ〜


     部長が走り去る。


サナ あ〜あ。拗ねちゃった。

ユウタ ああなると二時間は出てこないな。

キミ ユウタが馬鹿なことするからでしょ。本部長来るまでに出てこなかったらどうするのよ。

ユウタ 大丈夫、たかが査察だろ? ふらっと見に来て、ふらっと帰るだけなんじゃないの? ねぇ?白山さん。

白山 解散。

ユウタ え?

白山 解散かもよ。だってさ。

ユウタ マジ?

白山 成績悪いからねぇ。仕方ないんじゃない?

キミ ってことは首?

サナ それは勘弁〜。

白山 まぁ、部長のほうはあたしが何とかするから。あんたたちは、身だしなみでも、ぎりぎりまでどうにかしてみたら? 
   その制服着るのも今日で最後かもしれないんだし。


     白山が去る。


ユウタ あたしって言ったか今。

サナ うん。

キミ 突っ込むとこそこかよ。

タカコ 今日で最後、か。

サナ 困るよねぇ? いきなり辞めろとか言われてもさぁ。

ユウタ かといって、まさか秘密組織を労働基準法で訴えるわけにもなぁ。


     と、着信音。


ユウタ おっと、ごめん。


     ユウタが電話に出る。小声での会話。


キミ 訴えようとしたら、その前に消されるかもね。

サナ あたしらがネプスになるのか。ぞっとしないねぇ。

キミ とりあえず、化粧でも直しとく?

サナ うん。タカコ、いこう?

タカコ あ、あたしはいいや。

キミ 自信あるのか。

サナ 言うねぇ。タカコも。

タカコ じゃなくて。ちょっと、考えることあるから。

サナ そう。(キミに)行こ?

キミ うん。


     サナとキミが去る。




     タカコはユウタを見ている。


タカコ 今日で最後、か。


     タカコが胸ポケットから手紙を取り出す。
     結構シンプルだが、飾るところは飾っているピンクのラブレター。


タカコ こんなのに、頼りたくなかったんだけどなぁ。
    ……ピンクは派手だったかな。って、問題はそこじゃないよね。


     と、ちょうどユウタの電話が終わって。


ユウタ あれ? みんなは?


     タカコは慌ててラブレターを隠す。


タカコ え? ああ、お化粧、直しに行った。

ユウタ 女は大変だねぇ。

タカコ レディーですからね。

ユウタ それは失礼。で、タカコは直す必要なしと。

タカコ 元が元だから。

ユウタ そっか。

タカコ うん。


     ぎこちない間。


ユウタ&タカコ あのさ。

タカコ あ、いいよユウタからで。

ユウタ いや、いいよ。俺は。

タカコ なんでよ、言ってよ。

ユウタ いや、お前なんかあったんじゃないの?

タカコ ううん。なんでもないから。どうぞ、先に。

ユウタ そっか? その、俺さ、いや、俺じゃなくて、って、そりゃまぁ、俺のことでもあるんだけどさ。

タカコ うん。

ユウタ ここ、辞めたらどうする?

タカコ え?


     と、白山が現れる。
     きりっとしつつ、どこか間の抜けた感じ。


白山 ああ。タカコさんに、ユウタくん、おはよう。

タカコ え? あ、おはようございます?

白山 部長、怒ってた?

タカコ 何が、ですか?

白山 僕いなかったから。直接連絡しようと思ったんだけどさ。
   金岡博士が電話に出たから、頼んじゃって。やっぱりまずいかなぁとは思ったんだけど。

タカコ 遅刻、したんですか?

白山 そうだよ。ひどいなぁ。僕がいないこと気づかなかったの? 二人とも。

タカコ 気づかなかったというか、

ユウタ いないとは思わなかったというか、

白山 うわっ。泣いちゃうよ僕。まぁ、いいや。とりあえず、部長に謝るのが先だから。じゃね。


     白山が去る。


ユウタ いたよな、さっき。

タカコ うん。……えっと、何の話だっけ?

ユウタ だから、さっき言ってたろ。解散かもって。で、思ったんだ。辞めたら
    みんなバラバラになっちゃうのかなって。

タカコ ……あたしも、そう思ってた。

ユウタ 俺らさ、所詮寄せ集めじゃんか。運動神経いいのとか、頭いいのとか
    集められてさ。チーム組まされて、一年、くらいかな。一緒にやってきて。

タカコ 1年と2ヶ月と25日。

ユウタ ああ。そんだけ毎日のように、こんな服着てさ。親にも、
    友人にもいえないような仕事を一緒にして。でも、辞めちまったら、また
    みんなばらばらになって、一緒にいたことも忘れて、それで終わっちゃうのかな、
    なんて思って。らしくないんだけどな。

タカコ ううん。私も、同じ。そう思ったよ。

ユウタ そっか。

タカコ だから、大丈夫なんじゃないかな?

ユウタ 大丈夫?

タカコ きっと、キミも、サナも、おんなじこと思っているだろうから。
   解散しても、そりゃしないのが一番なんだろうけど。きっと、
   ずっと一緒にいられるんじゃないかな。あたしたちなら。あたしは、一緒にいたいもん。


     と、言ってから、えらいこと言っちゃった〜という表情になるが。


ユウタ だな。

タカコ うん!

ユウタ じゃあ、信じてもいいよな。

タカコ うん。

ユウタ 俺が辞めても、みんな仲間だって。

タカコ え?


     と、ユウタは懐から手紙を取り出す。


ユウタ これ、出そうと思ってるんだ。

タカコ なにそれ?

ユウタ 辞表。

タカコ 辞表って!

ユウタ 声が大きいよ。

タカコ この仕事辞めるってこと?

ユウタ だからそうだって。

タカコ なんでよ!?

ユウタ まぁ、その、色々あって……

タカコ 色々って

ユウタ 色々だよ。

タカコ 答えになってない!





     と、灰谷が現れる。


灰谷 あ、探しましたよユウタさん! 

ユウタ あれ?灰谷さん。

灰谷 「あれ?灰谷さん」じゃないですよ! ちょっとどういうことですか?

タカコ どうかしたんですか?

灰谷 どうかしたかじゃないですよ? ここは秘密基地ですよ? 分かっているんですか?

ユウタ ええ、そりゃあもう。

灰谷 秘密基地の「秘密」っていうのはですね、秘密ってことなんですよ? 言っちゃ駄目なんです。小学校で習いましたよね?

ユウタ いや、小学校で習ったかどうかまでは……あ、でも中学までには知ってました。

灰谷 じゃあ、なんで、あんたの知り合いが、この基地に堂々と遊びに来ているんです!


     灰谷の言葉の終わりに誘われるように、プラムが現れる。


タカコ 怪人!?

灰谷 え、怪人?

ユウタ プラム。

プラム 来ちゃった。


     三人固まる。
     と、白山がやって来る。


白山 俺がもう一人? あれ? 俺はここにいるんだけどな? じゃあ、俺はなんだ? 疲れているのかなぁ……


     白山去る。


タカコ え、プラムって?

灰谷 怪人って言いました今? この子が。

タカコ ちょっと、ユウタこれどういうこと。

ユウタ (灰谷に)ちょっと待ってて。


     と、ユウタはすごい勢いでタカコを端に連れて行く。


タカコ ちょっと、ユウタあれって、

ユウタ ごまかしてくれ。

タカコ ごまかしてって。

ユウタ 理由は後で話す。絶対話す。だから、誤魔化してくれ。

タカコ どうせすぐばれるんだから、

ユウタ 頼む。お前頭いいだろ? 俺駄目なんだ。全然思いつかなくて。あとで絶対説明するから。

タカコ ……必ず説明してよ。

ユウタ 約束する。

タカコ (と、プラムを見て、)あー、えっと、あ、プ……

ユウタ プラム

タカコ (ユウタに)そのままの名前じゃまずいでしょ。(プラムに)プーティアさん! お久しぶりです。

ユウタ ああ、久しぶりだね、プーティア。

プラム プーティア?(自分の後ろを見る)

灰谷 あれ? タカコさんもお知り合いですか?

タカコ ええ。まぁ、それなりな? というか、灰谷さんもご存知のはずですよね? ね? プーティアさん。

プラム すいません。存じるってなんですか?それに私の名前は、


     と、ユウタが慌ててプラムによる。


ユウタ ちょっと、日本語が不自由でして。ははは。ね。プーティア。

灰谷 それよりさっき、怪人って、

タカコ そう! 外人。ガイジンなんです。この方。

灰谷 ガイジン?

タカコ ええ。イギィタリランテリラでしたかの。

灰谷 え?

タカコ イラレンポリエステンラ?

灰谷 え?

タカコ 外国です。国連にも加盟してない小さな国の。

灰谷 何でそんな人がこんな場所に?

タカコ 出たんですよ。

灰谷 何が?

タカコ ネプスですよ! その国にも。決まってるじゃないですか。

灰谷 ああ。

タカコ それで、日本に助けを求めに来たと。

灰谷 え、何でここに?

タカコ 知り合いなんです。古い。

灰谷 でも、だからって、

タカコ 私たちのではなく、部長の。

灰谷 部長の。

タカコ ええ。ですから、デスクのどこかに今日来るって書置きがあったんじゃないかな? 
    あ、でも、その手紙頼まれたのって、ユウタよね。

ユウタ あ、え? ああ、そうだったかな?

タカコ そうだったでしょ。あ、もしかしてあんた、今まだ持ってたりして。


     と、ユウタの体を触り、辞表を見つけ、


タカコ ほら! え〜なになに。「プーティアという女性が来たら、
    アカシタカコ君にお任せしてください」ですって。すいません。
    こいつが抜けてるばかりに。

灰谷 なんだ。そうだったんですか。すいません。私早とちりしちゃって。

タカコ いえいえ。仕方ないですよね?

ユウタ そうそう。

灰谷 じゃあ、プ……

ユウタ プテラ

タカコ プーティア!さんの、ことは任せてください。ほら、じゃあ、とりあえず、ね? そういうことですから、
   ちょっとそこまでお送りしますから行きましょう? ね? ぜひ行きましょう。どんどん行きましょう?


     と、タカコは灰谷を押して去る。





プラム ユウタ。

ユウタ プラム。


     二人はコブシを付き合わせる。
     どうやらそれがプラムの世界でのいちゃいちゃらしい。


ユウタ どうしたんだこんなところに。ここには来るなって、あれほど、

プラム ごめんなさい。だけど、どこに行ったらいいか分からなくて。

ユウタ もしかして、

プラム うん。バレちゃった♪

ユウタ それはそんな明るく言う言葉じゃない。

プラム 日本語難しくて。

ユウタ 日本語の問題じゃない。……そうか。ばれたか。

プラム うん。ごめんね。

ユウタ 大丈夫。お前は、俺が守るから。


     二人見つめあう。
     そこにタカコが戻ってくる。
     二人の姿にショックを受ける。必死に自分を押さえつける。


タカコ お楽しみのところ、申し訳ないんだけど。

ユウタ あ、タカコありがとう。灰谷さんは?

タカコ ちょうど受付に人が来てたから。そっちに押し付けてきた。それより話、
   聞かせてくれるんでしょうね。

ユウタ ああ、実は、その、俺とプラムは、

タカコ わかったもういい。

ユウタ え?

タカコ それで、二人の関係がネプスの方にばれて、どこに行っていいか分からなくなってこっちに来たわけね?

プラム はい。

ユウタ お前本当に頭いいなぁ。

タカコ そんなことより。なんで、この子がこの場所知ってるの?

ユウタ そりゃ教えたから。さっき。

タカコ はぁ!?

ユウタ 電話してたろ? あれで。

プラム ユウタ、目印教えるのすごく上手いからすぐ分かったよ。

ユウタ そういうのは得意なんだ。

タカコ 馬鹿!

ユウタ え?

タカコ 敵に秘密基地の場所教えてどうすんだ!


     と、そこにテレビカメラを持ったスタッフ丹下と、安藤がやって来る。





安藤 あら? 修羅場? カメラ用意!

丹下 はい!

タカコ ユウタ!

ユウタ はい!


     タカコの言葉に、思わずユウタはプラムを隠す。


タカコ ……誰ですかあなたたちは。

安藤 あ、いいの。私たちのことはまるでそこにいないかのように扱って。
   知らないうちに必要な情報だけびびっと取り込む。それが、
   私のジャーナリズムだから。

タカコ カメラの持ち込みは禁止のはずですが!?

安藤 ああ、いつもはね。今日は特別。はいこれ。許可証。

タカコ 秘密組織広報「気にしねえ」? ああ、いつも読んでますよ。

安藤 ありがとう〜。嬉しいわ。握手しちゃう。

タカコ すごくくだらないニュースばかり載せている奴ですよね。

安藤 ありがとう。大丈夫たいていそう言われるから。慣れてるのあたし。


     安藤は落ち込む。


丹下 安藤さん! 大丈夫。読んでいる人は読んでいますから。
   面白いっていう人もいるじゃないですか。

タカコ なんで落ち込みやすい人ばっかりいるのよここは。

ユウタ どうする?

タカコ どうするって言われても、カメラに写すわけにいかないでしょ!(と、談話室テーブルのテーブルクロスを見つけ)
    これでもかぶせておいて。

ユウタ わかった。

安藤 そうよね! こんなところで落ち込んでいるわけにはいかない! 
   というわけで、先ほどの修羅場についてですが? って、
   (テーブルクロスをかけられているのを見て)え?

タカコ 気にしないでください。


     と、そこにサナが現れる。


サナ なんか、灰谷さんから、記者の人がいるから迎えに……安藤さん?

安藤 え?

サナ 安藤さんですよね。広報「気にしねぇ」の! いつも読んでますよ〜

安藤 本当!? ありがとう〜

サナ すごくくだらないニュースばかり載ってますよね♪

安藤 ありがとう……


     安藤落ち込む。
     丹下が慰める。


タカコ サナ、じゃあ記者の人たちを、部長のところまで連れて行ってくれる?

サナ うん。そのために来たんだし。って、なにそれ?


     サナが言うのはもちろんテーブルクロスの奴で。


タカコ いや、なんでもないのよ。新しい置物みたいな。

プラム プーティアです。

タカコ 馬鹿。

プラム でも、さっき、そう呼ばれました。

サナ プーティア?

プラム イラレンポリエステンラ国人です。

タカコ 部長の知り合いで、あ、だけど別にたいした用事じゃなくてね。

サナ イラレンポリエステンラ!? 今、イラレンポリエステンラって、言った?

タカコ うん。いや? どうだったかなぁ。

プラム イラレンポリエステンラです。

サナ 本当? やった。あたし、その国知ってるよ! ちょうど勉強してんだ。

タカコ ……はい?

サナ あたし珍しい国好きでさ。その国の文化とか、調べるとやっぱり言葉も知りたくなるじゃん。
   で、最近はまってたのがイラレンポリエステンラってわけ。まさかそんなマイナーな国の人に会えるなんて。
   (と、ちょっと、咳払いして)スデイ? シラホァ?

タカコ 何それ?

サナ こんにちは。お名前は。ってこと。スデイ? シラホァ? ん? 
   ちょっと違うかな? シラーホア? シーラホァ?

タカコ えーっと、駄目なの! 実は! その! この子の国実はね、

ユウタ 記憶喪失なんだ。

タカコ はぁ!?

サナ 記憶喪失?

ユウタ な? だから、言葉しゃべれないんだ。

サナ え、だって、今しゃべってなかった?

ユウタ それは、ほら、(タカコに)だよな?

タカコ えっと、あれよ。持ち物にね、書いてあったの。この子も言ってたでしょ?「そう呼ばれました」って。

サナ ああ。え、でも、

安藤 なになに? 大ニュースの予感?「記憶喪失少女、正義の味方に助けを求める」どう、この見出し。

丹下 いいですね先輩。ついでに、映像とって、情報求むとかやっちゃいましょうよ。

安藤 ナイスアイデア! ってわけで、えっと、あ、日本語は通じるの?

タカコ 駄目なんです!

サナ さっき喋ってなかった?

ユウタ それは、


     と、喋ろうとしたところをタカコに防がれる。


タカコ じゃなくて! カメラが。というより映像が? 
   ほら、宗教上の理由って奴で。見ると? なんか、あれなんですって。

サナ まさか、死んじゃうとか?

タカコ そうそれ! 人一人殺す気ですか? あなたたちは。

安藤 いや、そんなつもりないわよ。ねぇ?

丹下 ええ。じゃあ、インタビューだけにしておきましょうか。

タカコ 駄目なんです。

安藤 それも駄目なの?

タカコ 駄目です。

安藤 宗教上の理由?

タカコ 理由です。

サナ そんな国だったっけなぁ。イラレンポリエステンラって確か普通の宗教だったと思うけど。
   それ、別の国なんじゃない? エラレンティアとか。

タカコ そう言ってんだからしょうがないでしょ! 彼女が! 
   そうだって言ってるんだから! え? 他に何か?

サナ わかったよ。そんな怒らなくてもいいじゃん。

タカコ ああ、ごめん。でもサナ、部長からこの方たち連れてくるように言われているんでしょ? いいの? 部長待たせて。

サナ あ、じゃあとりあえず、部長のところ行きましょうか?

安藤 ですね。

丹下 どういうアングルで撮るかとか、打ち合わせしたいですし。

サナ カメラって私たちも映ります?

丹下 そりゃあ、もう。

安藤 メインは私ですけどね。

サナ なんでだよ。


     とか言いながら、安藤とサナと丹下が去る。





ユウタ 何とかごまかせたな。

タカコ なんとかぁ?

ユウタ なんだよ。

タカコ 何よ記憶喪失って? どうせ嘘つくんならもっとまともな嘘つきなさいよ!?

ユウタ いや、お前が困ってたから、つい。

タカコ つい? 「つい」で記憶喪失? はっ。どこの小学生だ。

ユウタ お前だって大して変わらないだろ? なんだよイラレンポリエステンラって。どこの国だよ。

タカコ 知らないわよ。つい口を出ちゃったんでしょ。

ユウタ つい、ねぇ。

タカコ 計算してたわよ。あんたが邪魔しなかったらだけど。

ユウタ お前今「つい」って言ったろ。言ったよな。

タカコ 元はといえばユウタがこんな面倒なものつれてくるのが悪いんでしょ?

ユウタ 面倒なものって言うなよ。

タカコ 言うなよも何も、面倒なものそのものじゃない。なんでよりによって怪人なのよ。

ユウタ 怪人じゃない。プラムだ。

タカコ おかしいじゃない。あたしら今何と戦っていると思ってるのよ? 
   これと戦ってるんでしょ? これと戦うために、
   こんな格好しているんでしょ? それなのにあんたが……
   馬鹿みたいじゃない私たちが。私が、馬鹿みたいじゃん。
   どうせ好きになるんだったらさ、職場の連中とまではいかないけどさ、
   もっと、もっとさぁ。あるでしょ? 違うでしょ? 
   もう、あたし何言ってるか分からないじゃん。

ユウタ ……

プラム ユウタ。

ユウタ え?

プラム これ、もうとってもいい?

ユウタ あ、ああ。


     ユウタはプラムからテーブルクロスをとる。


プラム 結構暑くなっちゃうね。

ユウタ ごめんな。

プラム ううん。……でも、喉渇いちゃった。水、お願いできる?

ユウタ でも……

プラム お願い。

ユウタ ああ。


     ユウタが去る。


プラム タカコ、さんですよね。

タカコ ……。

プラム すいません。今回は私のせいで。

タカコ ……。

プラム タカコさんは……好きなんですね? ユウタのことが?


     タカコは思わずプラムを見る。


プラム 分かりますよ。私だって、一応女の子ですから。

タカコ 怪人の特殊能力には、人の心を読む力まであるわけ?

プラム 私、次女なんです。5人兄妹の。末っ子ですけど。

タカコ ……それで?

プラム 私のいたところでは、徴兵制っていうのがあって、長男と、家計を支える確かな能力があるもの以外は兵隊にとられるんです。
    私、何の能力も無かったから。兵隊になっちゃって。でも、かえって軍の仲間のほうが、
    似たり寄ったりの境遇同士で安心できたんです。ある意味ラッキーですよね。
    ……だけど、そのうちに、地球って星への進攻が決まって。
    必要だからって言葉を覚えました。生活レベルを学ぶために、人を浚ったりして。
    ……そしたら、なんだか、みんな、あたしたちに似てるなって思って。
    あたしたち、といっても、あたしが所属しているチームのみんなですけど。
    なんか、戦うのいやになっちゃって。だけど、あたしたちには命令を聞くことしか出来なくって。
    そんな時、ユウタを見つけたんです。
    私たちは敵なのに、私、ユウタが、あたしにとっても正義のヒーローみたいに見えちゃって。それで……。

タカコ よく、今まで気づかれないでいたわね。

プラム 苦労しました。始めは、ラブレターを矢文にして。

タカコ 矢文!?

プラム 知りませんか? 弓に文を結んで。

タカコ そりゃ、知ってるけど。

プラム ユウタの心臓めがけて、えいって。

タカコ えいってねぇ!? あの時、あいつ生死の境をさまよったのよ?

プラム 生きていた時にはほっとしました。

タカコ なら初めから撃つな! それで、ユウタも応えたってわけ?

プラム はい。わざわざ、銃弾に手紙をこめて。

タカコ そういえば、良くあんたを銃で狙ってたわ。

プラム どれに手紙が入ってるか分からないから、全部受けてみたら、全部同じ内容でした。

タカコ あんたも頑丈よね。

プラム 怪人ですから。

タカコ 訂正するわ。女の子なんでしょ。

ユウタが好きになったっていうそれだけの。

プラム はい。


     と、プラムはいきなりタカコの手を握る。


プラム タカコさん。

タカコ なによ。

プラム ユウタをお願いします。

タカコ え?

プラム 私は、裏切り者としてどうせ処分されると、思います。いえ、
    分かっていて裏切ったからそれでいいんです。
    だけど、ユウタは何も知らなかったことにすればいいと思うんです。ユウタが助かれば、それだけで。

タカコ ちょっと待ってよ。あんたのいる場所には戦いたい奴なんていないんでしょ? 
   それでなんであんたが処分されるのよ。

プラム 上には逆らえませんから。裏切ったって分かればすぐにでも。

タカコ そんなの言わなければ、

プラム ずっとばれないなんて出来ないですよ。

タカコ 分からないじゃないそんなの、

プラム だって、私はもう、タカコさんたちと戦いたくないんですから。

タカコ そんなの……

プラム だから、ユウタだけでも。

タカコ ……約束は出来ないわよ。

プラム タカコさん。

タカコ 私たちだって、戦いたくて戦っているわけじゃないんだから!

プラム そうですよね。





     と、キミがやって来る。


キミ (袖から)白山さん? 白山さーん。


     慌ててタカコはプラムをテーブルクロスで隠す。
     君が出てくる。


キミ おーい。白山ぁ って、タカコ何やってるの?

タカコ えっと、ちょっと、置物の場所がね? 悪いから、移動しようかと。

キミ テーブルクロスかけて?

タカコ え、ああ。本当だ。いや、直接触ったらまずいかなぁって思って。

キミ そんなもん? ああ、それより、白山さん見なかった? カメラの人も来て、
  最終調整するってのにいないらしいのよ。博士は来てるのに。

タカコ 博士? いつのまに?

キミ さぁ。なんかサナはサナで調べものがあるとかで引っ込んじゃうしさ。で。
   あたしが面倒役を押し付けられたと。

タカコ 白山さんならさっき、ふらふらっとあっち行ったけど?

キミ あっちぃ? 何でまた。


     と、キミが去ろうとする。


タカコ あ、キミ。

キミ なに?

タカコ 怪人とさ、分かり合うって無理かな?

キミ は?

タカコ なんでもない。

キミ あんた大丈夫? 熱あるんじゃないの?

タカコ 無い無い熱は無い! 近寄らなくていいから!

キミ ちょっとおでこに手を当てるだけよ?

タカコ そういうの、今されると、困る。

キミ あっそ。人がせっかく心配してあげたのに。

タカコ ごめん。だけど大丈夫だから。

キミ はいはい。でも、調子悪いときは言いなよ。あたしらチームなんだから。


     キミが去る。


タカコ ありがとう。って、この状況は言えないよ。

プラム タカコさん、苦しい。

タカコ ああ、ごめん。でも、あんたこれくらい耐えなさいよ。見つかったらそっちのほうがきついのよ。

プラム だって、この布変な臭いするし。

タカコ フローラルな香りでしょ。


     と、剥ぎ取ったところに、金岡博士が現れる。
     白山と同じ服を着ている。


金岡 うふふふふ。

タカコ あ、あははは。

金岡 うふふふふ ふふふのふのふ。

タカコ あははははははははははは

金岡 おはよ。

タカコ オハヨウゴザイマス博士。

金岡 うん。

タカコ えっと、その、

金岡 キミちゃんは?

タカコ 白山さんを探しに。

金岡 ふぅん。


     金岡が来た道を去ろうとする。


タカコ 誰にも言わないでください!

金岡 何を?

タカコ 多分、博士の頭の中に浮かんでいるものだろうすべてを。

金岡 あら? 何のこと。

タカコ 見てたでしょうしっかり。

金岡 見てました。

タカコ これにはいろいろ事情があってですね。

金岡 だいぶ、困っちゃってるみたいね。タカコ君。

タカコ 何でそんな楽しそうに言うんですか!?

金岡 だって。タカコ君の困っている姿って、可愛いから。

タカコ 博士!

金岡 助けて欲しい?

タカコ え?

金岡 助けて欲しい?

タカコ (思わず何度もうなずく)

金岡 では、ここでクエスチョン。

タカコ はい?


     と、金岡は何かのアイテムを取り出す。


金岡 これはなんでしょう?

タカコ これはって。

金岡 今度の発明品なんだけどね。これは、何をする道具でしょう? 
   見事答えられたら助けてあげる。タカコ君が困っているすべてから。

タカコ そんなの分かるわけ無いですよ!

金岡 ま、分からなかったらお終いかしら。
   その制服着るのも今日で最後かもしれないわね。

タカコ ちょっと、博士! せめてヒント!

金岡 ヒントなら、もう上げてるわよ。

タカコ え?

金岡 チャオ♪


     金岡が来た方向へ去る。


タカコ 一体……どうしろっていうのよ。





     と、ユウタが現れる。


ユウタ タカコ。

タカコ ユウタ! あんた飲み物買いにどこまで行ってるのよ!? 
   あんたがいないうちにこっちはねぇ!

ユウタ いや、実はそれより大変なことになっちゃってるみたいなんだな、これが。

タカコ これ以上大変なことなんてあるわけ無いでしょ。

ユウタ そうかなぁ。


     と、ユウタの後ろからジャンガが出てくる。


ジャンガ そうは思わないがね、俺は。

タカコ うわぁ。

プラム ジャンガ……

ユウタ ごめん。負けちゃった。

タカコ 何やってるのよ……

ジャンガ この基地の場所は既にボスも知っている。
     今向かっているとの知らせも受けた。終わりだよ。お前たちは。


     と、ジャンガの後ろからキミと白山が出てくる。


キミ それはどうかしら?

タカコ キミ!?

キミ 隠れたり忍び寄るのは結構得意でね。意表つかれたでしょ?

白山 だてに正義の味方をやっているわけでもないんでね。

ジャンガ 俺の背中を取るとは。

キミ ほら、銃をおろしなさい。色々話してもらわなきゃいけないんだから
   あんたには。(と、タカコを見て)あんたにもね。


     タカコは顔を俯かせる。


ジャンガ く、仕方ない。


     と、キミの後ろからナバーナが出てくる。
     両手の銃をキミと白山に向ける。


ナバーナ なんて言うと思った?

キミ あたしの後ろを!?

白山 あっちゃぁ。

ナバーナ 忍び寄るのが得意なのは、あんただけじゃないってこと。

ジャンガ おとなしく、してもらおうか。


     と、反対からサナがやって来る。


サナ ねーねー! わかったよ、イスタリナムナ国でしょ! 写真を恐れる宗教って言ったら、ここしかって、あれ?


     暗転。


10


     とある道端。

     ボスが歩いてくる。


ボス あれ? おかしいなぁ。ここらへんだと思ったんだけどな。


     反対側から、本部長の井口がやって来る。


ボス あ、すいません。

井口 はい? どうしました?

ボス ここへ行きたいんですけど(と、地図を見せる)

井口 えっと?

ボス ああ。この、正義の基地ってところです。

井口 ああ、なんだ。ここだったら僕、これから行くところですよ。

ボス え、本当ですか?

井口 なんだったら案内しますよ。

ボス じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな。

井口 甘えてください。それにしても、素敵なファッションですね。

ボス 民族衣装なんです。私、○○といいます。
   まぁ、皆からはボスなんて呼ばれているんですが。

井口 あなたもですか。

ボス というと?

井口 私もね。好きなんですよ。ボスって呼ばれるの。
   まぁ、立場的には部長くらいなんですけど。

ボス だったらいいですよ。私なんて立場的には課長ですから。

井口 またまた〜

ボス いえいえ、本当の話。


     なんて言いながら井口とボスは去る。

11


     明かりがつくと、それは数分後。
     縛られているレンジャーチーム。
     白山は頭から袋までかぶせられている。


タカコ それで、みんな捕まったと。

キミ くそっ。油断した。

サナ いったいどうなってるのこれ? 記憶喪失の人は?

ジャンガ ふふ。すべて作戦通りだな。

ナバーナ 全く。こうも簡単にいくとはね。

タカコ 作戦?

ジャンガ なぁ、そうだろ? プラム。

タカコ プラムが? 

ユウタ どういうことだ?

キミ なに? あんたたち、怪人と知り合いなの?

サナ ねぇ、(タカコに)さっきの人はどこいったの?

タカコ もういないわよ。

サナ なにそれ?

ユウタ プラム! 答えろよ。作戦通りって言うのはなんだ?

ジャンガ プラム。いい。しゃべる必要は無い。

ユウタ プラム!

ジャンガ 想像はついているんだろう人間? お前が考えられる想像のうち最悪のものが。

ユウタ まさか……。

ナバーナ ヒーローと名乗るものたちは基地を持っている。
     そしてそれは極秘扱い。ハッカーを一人や二人さらったところで、
     到底居場所は把握できない。だから、網を張った。

ジャンガ 美しい蜘蛛の糸には、牙をもつ存在に気づかぬおろかな羽虫がかかるもの。

ナバーナ この場合は女という糸に、馬鹿な男が一人からめとられたというわけ。

ユウタ そんな……

サナ (キミに)ごめん。ついていけないんだけど。どういうこと?

キミ 裏切り者は、一番近い仲間の中にいたってことよ。

タカコ ユウタ……。

ユウタ すまん。みんな。俺のせいで。でも、まさかプラムが……

タカコ ……馬鹿言ってんじゃないわよ。

ユウタ え?

タカコ 馬鹿言うんじゃないわよ。好きな奴の言葉くらい信じなさいよ。
   好きなんでしょ? 怪人だとか関係ないんでしょ? 
   だったら信じてみなさいよ。それが嘘だっていいじゃない。
   信じきってみなさいよ。あんたが信じないでどうするのよ。好きな女の
   言葉も信じられないで、一体あんたは何を信じようってのよ。

ユウタ タカコ

タカコ あたしはね、あんたの言葉がなんだって信じるわよ。
   あからさまな嘘だって信じてみせるわよ。だって……だから、信じなさいよ。ねぇ、プラム。
   あんたが何言われているか知らないけど。あたし、降りたから。

プラム おりた?

ジャンガ 人間、いい加減くだらないおしゃべりは止めてもらおうか?

タカコ あんたのお願い、聞かなかったことにするから。だから、知らないからね。
   こいつのことどうこうするのも、あんたのさっきの言葉が本当なら、あんたも腹くくりなさいよ。

プラム 私は、

ジャンガ プラム。余計なことは考えるな。


同時に
ユウタ 俺は
プラム 私は


     二人は顔を見合わせる。
     静かにうなずいた。


12


     と、ボスと本部長がやって来る。
     盛大な笑い声。


ボス(袖から) いやぁ、おかげさまで無事につけましたよ。なんとお礼を言っていいのやら。

井口(袖から) 何を言っているんですか、困ったときはお互い様、って。え?


     ボスと井口は状況に気づく。


同時に、
ジャンガ ボス! 
タカコ 支部長!? なんでここに? ってボス!?


ジャンガ ボス! そいつは敵です!

タカコ 支部長! 気をつけて! ネプスです!

ボス 敵?

井口 ネプス!?

キミ サナ!

サナ うん!


     ボスと井口が離れる。
     その瞬間、サナとキミが縄から脱出する。
     サナは井口を守るように。キミはナバーナに構える。
     思わず攻撃しようとするプラムの前にユウタは立ちふさがる。


ジャンガ 縄に結ばれたふりをしていたわけか。

サナ 別に。あんなの解こうと思ったらすぐ解けるし。

井口 まさか、あなたがネプスのボスさんだったとは。お若いのに。苦労なさったんでしょうね。

ボス そういうあなたも、まさか支部長なんてクラスだとは。なるほど、確かに部長ですね。

井口 この基地からは逃げられませんよ?

ボス 逃げやしませんよ。破壊するだけです。


     タカコは縄を解く。


タカコ なんで? 支部長、入ってくるとき楽しそうに笑ってたじゃないですか。

キミ タカコ、戦闘中よ。私語は謹んで。

タカコ 本当に戦わなくちゃいけないの? 怪人なんて、姿がちょっと変わっているだけじゃない。
   そうですよね。支部長。違いますか?

キミ タカコ!

支部長 タカコ、君でいいのかな?

タカコ はい。

支部長 確かに、君の言うとおりだ。

タカコ だったら、

支部長 でも、われわれは組織なんだよ。ねぇ、ボスさん。

ボス そう。末端のね。上の言葉に従うのが、唯一できることってわけでね。


     戦いがはじまりそうになる中、タカコが叫ぶ。


タカコ なによそれ。分けわかんない。戦いたくないなら戦わなきゃいいでしょ! 何でそれじゃ駄目なのよ!


13

     と、声が響く。


白山 タカコ君が今、いいこと言った!


     白山現れる。
     紙袋を被っている白山はおびえる。


白山 みんな聞いてましたか? 今、タカコ君はいいことを言いましたよ? 
   すごくいいことを言いました。

タカコ 白山さん?

サナ え、そんなわけないよ、だって、

キミ 白山さんは、そこに……

ユウタ ドッペルゲンガー?


     紙袋を被った白山が怯える。


ジャンガ こいつらは分身の術なんてものも使えるわけか?

白山 はっはっは。どうでしょうね。ねぇ、タカコ君。

タカコ え?

白山 助けて欲しいかい?

タカコ ……博士?

キミ はぁ?

ユウタ 博士?

タカコ 金岡博士なんですか?

白山 クイズにまだ、答えてないよ? さっきのあれは?

タカコ 変身装置?


白山&金岡(そで) その通り!


     白山がすばやく袖に隠れる。
     そして、金岡博士が現れる。


金岡 これぞ、私が苦心の末に発明した、チェンジ君。この完成の暁には、
   この部隊の名前をチェンジマンに変えたいくらいだったんだけど、
   それは被っちゃうからやめておくわ。

ジャンガ 何なんだお前は。

金岡 私が話しているときに口を挟むな。

ジャンガ はい。

金岡 さて、じゃあ、タカコ君が問題を解いてくれたから、約束どおり助けてあげるわね。

タカコ でも、博士、

金岡 私が話しているときに口を挟むな。

タカコ はい。

金岡 そもそも問題はというとだ。それぞれ抱えている悩みは同じにもかかわらず、
   お互いに協力できないからこそ解決できないという点にある。
   支部長、われわれの悩みは?(支部長が答える前に)そう、戦いたくないのに、
   相手が攻めてくるから、やもなく戦っているという状況。では、
   あなた方ネプスの悩みは? そう。攻めたくないが、そうしないと星にも帰れないから、
   上の命令で仕方なく戦っている。と。つまり、
   この状況をどうにかできれば、すべては丸く収まるわけだ。

タカコ でも、そんなの一体?

金岡 それの答えは二つ。これ(チェンジ君)と、こいつを使う。


     金岡が合図を出す。
     安藤と丹下が現れる。


安藤 あ、呼びました?

丹下 ひどいですよ。ずっとあたしたち待っててって、え? なにこれ?

タカコ どうやって?


     金岡再び合図。
     暗転。
     物語は冒頭っぽいところへ戻る。


14


     薄暗い夜。
     ハツデ(名前はアトデ)が走ってくる。
     それを通せんぼするように現れる影。プラムである。
     慌てて、反対方向へ逃げようとするハツデをナバーナが塞ぐ。
     ゆっくりとジャンガが現れる。


ジャンガ 逃げられないよ。アトデさん。

ハツデ 私の名前を!?

ジャンガ ナバーナ。

ナバーナ アトデノミコ、22歳。

プラム 職業、料理人。

ナパーム ただし、その料理を食べた人間は、食材に書かれたとおりの死に方をするという。

プラム 死神の舌の力の持ち主。

ハツデ どこで、それを!?

ジャンガ その力をどうか私たちに貸してくれないかな?

ハツデ あなたたち何者なの?

プラム ネプス。聞いたことあるでしょう?

ハツデ まさか。

ジャンガ N.E.P.S。正式名称No Existence persons.

ナバーム 存在を認められない者たち。俗に言う、怪人。

ジャンガ さぁ、ご一緒願えますかな? お嬢さん!


     と、ジャンガが何かしようとしたそのとき。


ユウタ&タカコ&キミ&サナ ちょっとまったぁ!

ジャンガ なんだと!?


     高らかとヒーロー登場の音楽が流れる。
     決め文句を言いながら一人ずつ出てくる。


ユウタ 地より怪人湧き出る時、

タカコ どこからとも無くすばやく現れ、

キミ 下してやるわ、正義の雷(いかずち)

サナ 以下同文!


     そして、あっけに取られる敵を残して、決めポーズ。


ユウタ その志は天行く緑竜。ガクランジャーブラック!

タカコ その眼差しは燃える赤鷹(セキヨウ) ガクランジャーブラック!

キミ その素早さは地を駆ける黄虎(コウコ) ガクランジャーブラック!

サナ その……ブルーシャーク! ガクランジャーブラック!

ユウタ 五人そろって!

ユウタ&タカコ&キミ&サナ 七色戦隊ガクランジャー


ジャンガ とりあえず、あれだ、今四人目意味あったかというか、五人そろってないだろというか、
     何で全員黒いんだよって言うか、何より、七色戦隊のくせに色がひとつも無いって、突っ込むところが多すぎる!

ユウタ いまだ! フォーメンションA


     タカコが素早くジャンガの片手を決める。
     キミがもう片手を。サナは足を。


ジャンガ はぁ!?

ナバーナ ジャンガ!

ユウタ ガクランジャー、パーンチ!


     ユウタが殴りつけるとともに、ジャンガが吹っ飛ぶ。


ジャンガ 卑怯者!!


     ジャンガが去る。


ナバーナ ジャンガ!


     ナバーナはジャンガを追っていく。


ユウタ これが正義だ!


金岡 はいカット!


15

     あたりは明るくなる。今までの登場人物が言葉とともに
     ぞろぞろ出ては通り過ぎる。
     プラムはハツデを気にかけたりしている。


安藤 お疲れ様で〜す。

丹下 お疲れ様です。ばっちし、いいの、取れましたから。


     と、安藤はタオルを配っていく。
     丹下はカメラのチェック。


ハツデ お疲れ様です。失礼します。

舞台上ALL お疲れ様です〜


     ハツデ去る。


ユウタ (周りに)俺、最後のポーズゆがんでなかった?

金岡 大丈夫。ブラボーだったわよ。

ユウタ ありがとうございます。

キミ つぎはあたしが主役ね。

サナ あ、私も。

金岡 はいはい。


     ジャンガとナバーナ出てくる。


ジャンガ 俺ばっかりやられるってのはちょっと納得いかないんだけど。

ナバーナ 私も、自分の出番について言いたいことが。

サナ ああ、それあたしも思ってた。あたしら、もっと出番あってもいいよね。

ナバーナ そうでしょ? よかったぁ。あたしだけじゃないのね。

サナ みんなそんなもんだよ〜。

キミ じゃあ、私たちでも考えてみる? 戦闘の流れ。

ジャンガ それだ。


     四人頷いて去る。


安藤 これ、記事にしたらやばいよね。

丹下 間違いなく消されますよ。この人たちに。

安藤 うん。分かってるんだ。分かってるんだけどさ。新聞のネタが〜

丹下 安藤さん!

安藤 ネタが欲しいのよ〜


     とか言いながら安藤と丹下が去る。


タカコ (観客に)と、まぁ、何が本当で何が嘘か分からない状況ですよっと。

ユウタ (タカコに)どうだった?

タカコ まぁまぁなんじゃない? ねぇ?

プラム うん。ユウタ、格好良かった。

タカコ はいはい。あんたはいつもそれなんだから。

金岡 みんな良かったわよ。

タカコ 博士。

金岡 うん?

タカコ これで、本当大丈夫なんですか?

金岡 何が?

タカコ この映像、送るんですよね? ネプスにも、私たちの組織の上にも

金岡 そのとおり。

ユウタ それで、俺たちは戦わなくてすむ。

金岡 それはちょっと違うかな。

ユウタ え?

金岡 お互いに拮抗している戦闘の映像を送っていれば、しばらくの間お互いの
   組織をだませるでしょう。ああ、ちゃんと戦っているんだなと。でも、
   それはまぁ一年くらいの話よ。そのうち「おんなじ様な戦いばかりしやがって」とかなるでしょう。

ユウタ じゃあ、結局俺たちは。

金岡 で、そんなときのために、これがあると。


     金岡がチェンジ君を見せる。


タカコ チェンジ君。

金岡 そう。いざとなったらね。みんなそれぞれ変身しちゃえばいいのよ。なんかに。そんで、逃げちゃえっと。

タカコ そんな!?


    と、黒田が現れる。


黒田 ちょっと、博士。博士ってば。

金岡 なんです?

黒田 ネプスのボスさんがお話があるって。


     と、ボスが現れる


ボス ちょっと、うちらが簡単にやられすぎじゃない?

金岡 そうですか?

ボス そうよ。あれじゃ、普通の雑魚と変わらないじゃない。

金岡 じゃあ、すごく苦戦するバージョンを作りましょう。

ボス だったら、こういうシナリオはどうかしら? あたし考えてきたんだけど。

金岡 では、部長に向こうでご説明お願いします。(部長に)

部長、頑張ってください。

黒田 はぁ。ほら、行きますよ〜

ボス まずね、空から大王イカを降らせてさ。

金岡 それは無理です。


     ボスと部長去る。
     と、白山と灰谷が現れる。


灰谷 そうですか。白山さんはすべて、自分じゃなくて、自分にそっくりな人間がやったと、そう言いたいわけですよね。

白山 だから、あれはほら、あ、博士! 説明してあげてくださいよ。
   あれは全部自分だって。博士でしょ、俺の姿使って変なことしたのは。

灰谷 博士、この人分け分からないこと言うんですよ 変身だとか。幽霊だとか。

金岡 白山君。頑張れ。


     博士が去る。


白山 博士! えっと、一応聞くけど、何したの俺?

灰谷 ひどい! もうお嫁にいけない!


     灰谷が走り去る。


白山 そんなことをぉ!?

     
     白山も追いかけて去る。


タカコ さ、シャワーでも浴びてくるかな。

ユウタ なぁ、

タカコ ん?

ユウタ お前さ、あの時、信じろって言ったじゃんか。

タカコ ああ、言ったね。

ユウタ 結局、お前の言うとおりだったよな。プラムは、俺のことを思って、黙ってた。

プラム だって、あのまま私がユウタを騙してたってことになれば、ユウタも、楽に私たちを倒せるかなって。

ユウタ そうして、俺に倒されるつもりだったんだってさ、こいつは。

タカコ そう。

ユウタ お前の言葉が無かったら、俺、

タカコ 何言ってるの。あんなの一瞬頭に血が上っただけでしょ。あんただったらすぐに気づいたって。

ユウタ あの時思ったんだけどさ、お前、もしかして俺のこと

タカコ あたしたちは仲間でしょ? 仲間が仲間のピンチを助けなくてどうするのよ。

ユウタ そうか。そうだよな。

タカコ うん。しかし何とかなったよね。あんたももう、これ、いらないでしょ?


     と、タカコが見せたのはユウタの辞表。


ユウタ ああ、まだ持ってたのか。

タカコ うん。


     タカコは辞表と自分のラブレターを重ねながら。


タカコ 大丈夫かなって分かったら、こうしてやろうと思って。


     そして真っ二つに引き裂く。
     以下は、ずっと紙を引き裂きながら。


ユウタ そっか。

プラム タカコさん。

タカコ うん?

プラム ありがとう。

タカコ あのねぇ、言っておくけど、これですべて終わったわけじゃないんだからね。
   どっちの組織も騙しているわけだし。ってことはどっちも裏切っているわけでしょ。大変なのよこれから。

ユウタ 分かってるよ。

タカコ 本当に分かってるの〜 全部あんたら二人が原因みたいなもんなんだからね。
    これであんたら二人が喧嘩別れでもしてみなよ。みんな、どんだけ気が抜けるか。

ユウタ 分かってる。


     ユウタがプラムの手を握る。


プラム うん。頑張らなきゃね。

タカコ よし、じゃあ、普通に祝福されない二人にせめて、あたしが祝福の雨を降らせて上げよう。


     と、タカコは切れ切れにした辞表とラブレターの紙を空に投げる。


ユウタ お前それ、ごみばら撒いているだけだろ。

タカコ 気にしない気にしない。

プラム 桜みたい。

ユウタ うん。……って、なんでピンクも混じってるんだ?


     タカコは笑ってごまかす。
     紙ふぶきが止んでも、二人は空を見ている。
     そして、プラムとユウタ、見詰め合う。

     溶暗


あとがき
前回に引き続き、今回もファンタジー。
ヒーロー戦隊物としては二作目になるんでしょうか。

もともとは、
「全員が学ランを着ているという正義のヒーローがいて、
 一応赤とか青とかいるのに、皆服は基本ブラック」
って言うばかばかしい発想からで、それだけだともう使い古されているネタだと思ったので、
色々掛け合わせて見ました。人数がたくさん出ている割には、上演時間は短いです。
私としては「ガクレンジャー」のほうが、レンジャーっぽいかなと思っていたのですが、
カクレンジャーって番組ありましたからね。昔。ということで「ガクランジャー」になりました。
ばかばかしいなぁと思っていただければそれだけで幸いです。

読んでいただきありがとうございました。