GAME 
〜悪魔でも前向きな世界征服〜

キャラクター

吉田真央       魔王 世界を征服するという運命にある

(母)吉田アルマ   世界征服をもくろむ真央の母。黒魔術で実際年齢よりも若く見せている。
              いつも白衣を着ている

中野泗水(しすい)
 東京特許許可局勤め。暗黒舞踊の使い手。何かとのハーフ。

江藤九浪
       剣士。暗黒剣の使い手らしい。東大を何浪かした実力派。

雑魚キャラ       雑魚キャラ。色々な雑魚キャラになって登場する。

勇者&黒子      ご存じ勇者。デフォルト名は「エニクス」黒子にもなる。





照明 暗転

○真央の家
 魔法の本拠地。

音響 FO
照明 中央サス

真央「私の名前は吉田真央。至って平凡的な高校生。運動も、勉強も、平均。
    吉田って名字にしてもそう。珍しい名前でもないけど、
    別によくありすぎる名前ってわけじゃない。
    ……友達はいつも私のことを「普通な人」っていう。私もそう思ってた。
    ……そう、思ってた。17才の誕生日を迎えるまでは」


照明 全照

母 下手から登場


母 「真央。とうとう、あなたも今日で17才ね」

真央「そうね、ママ」

母 「実はママ、あなたに黙っていたことがあるの」

真央「え? ……なに?」

母 「驚かないで頂戴ね。実はね、真央。……あなたはね……魔王なの!」


音響 CI ショック音


真央「………………はぁ?」

母 「リアクションが小さいわねぇ。もっと、『ええ!!』とか『うそよっ!』とか、驚きなさいよ」

真央「驚くなっていったのは、ママでしょう?」

母 「それはそうだけど」

真央「だいたい、ばかばかしすぎて驚けないわよ」

母 「ばかばかしい?」

真央「そう。何が魔王よ。テレビゲームじゃあるまいし。私の名前が真央だからって魔王なわけ? 
    くだらない」

母 「信じないのね?」

真央「だーから、信じる信じないの問題じゃないから」

母 「その昔! 魔王と呼ばれる男がいたわ」

真央「なによ、いきなり」


音響FI 深刻音楽


母 「その男は、日本中の城を次々と攻め落とし、バラバラになっていた武士達を急速にまとめ上げた。
   時は戦国……その魔王の名は、信長」

真央「そりゃ、信長が魔王って呼ばれていたことは知っているけど」

母 「あなたは、その魔王の血を受け継いでいるのよ!」

真央「……いや、ありえないから」


音響CO


母 「と、に、か、く」

真央「うっわ。無視したよ、この人」

母 「あなたは魔王なのです、真央。17才になったからには、
   世界を征服するため動き出さなければなりません」

真央「いや、だからさ、冗談はいい加減に」

母 「(インチキ外人風)シャラーープ。黙りなさーーい。年長者の言葉は最後までリッスンしなさい」

真央「はい」

母 「大丈夫。あなたには信頼できる部下がいます。私があなたのために働くことはもちろんのこと、
   この日のために育ててきた、四天王があなたにはついているのです」

真央「………質問」

母 「……なんですか? 魔王」

真央「いや、だからなんで世界征服しなきゃいけないわけ?」

母 「あなたは魔王だからです」

真央「いや、だから何で世界征服?」

母 「いいですか、魔王。世界征服は、魔王の、義務です」

真央「………………」

母 「私のことは今日から、司祭アルマと呼びなさい。魔王直属の部下にして、
   あらゆる黒魔術に長けています」

真央「黒魔術………もう、馬鹿なこというのはいい加減に」

母 「黒魔術のおかげで、肌年齢を20才も若くできているのよ」

真央「まじで!? ……だからそんなに若く?」

母 「大丈夫。あなたは魔王なんですから。こんな私の黒魔術なんかよりすごいことが出来るわ。
   いえ、何だって、出来るのよ」

真央「私が? 本当に?」

母 「もちろんよ。……さて、では四天王達を紹介しましょうか。………まずは、泗水!」


泗水「はい」


泗水 下手より登場
    和服。扇を片手に持っている


泗水「お呼びですか。アルマ様」

真央「え、今までどこに?」

母 「瞬間移動よ」

真央「うっそぉ!?」

母 「いい? 魔王。あらゆる常識は昨日を限りに棄てなさい。あなたは、魔王なんだから」

真央「魔王って言えば何でも解決すると思っていない?」

母 「(無視)泗水は、暗黒舞術の使い手です。彼女の舞を見た物は、
   彼女の思うままに動くようになるのです」

泗水「まだまだ若輩者でお恥ずかしい」

母 「普段は『東京特許許可局』に勤めているわ」

真央「OLなんですか?」

泗水「はい。茶くみを少々」

母 「では次は……デスターク!」





母 「デスターク!」

真央「……こないよ?」

母 「おかしいわね……デスターク?」

泗水「アルマ様」

母 「なに?」

泗水「岡崎デスタークさんは、腰痛が悪化したために先月から……」

母 「ああ、そうだったわね。ごめんね真央。デスタークは、今病院にいるんだった」

真央「そうなんだ……」

母 「気を取り直して、次行くわよ。ミルドーナ!」

泗水「秋田ミルドーナは、先週より、有給でグアム旅行です」

母 「……紅蓮!」

泗水「伊藤さんは出張でお忙しいから、今回はパスと」

真央「だめじゃん」

母 「九浪!」

九浪「は!」


九浪 下手から登場
    黒いマントを羽織っている
    日本刀をマントに隠すように装備


九浪「ただいま参上いたしました」

母 「よかった。ほら、真央。暗黒剣の使い手、江藤九浪さんよ。彼の剣にかなう者はそういないわ」

九浪「お褒めに与り恐縮です」

母 「普段は受験生をやっているわ。志望は東大だったわね」

九浪「目下浪人生です」

真央「………ねえ」

母 「なに?」

真央「なんで、四天王って言いながら、五人呼んだの?」

母 「え?」

泗水「私に、九浪、デスターク、ミルドーナに、紅蓮で……あ」

九浪「確かに五人……」

母 「まぁ、五人で四天王でも良いじゃない」

真央「五人だったら、四天王って言わないと思う」

母 「いいのよ。実際今は二人しかいないんだから」

真央「こんなんで、世界征服するの?」

母 「もちろんよ」

泗水「とうとう、始まるのですね。世界征服計画が」

九浪「長く待ちこがれていました」

母 「あなた達には働いてもらうわよ」

九浪「御意に」

泗水「望むところです」

真央「もう、わけわからないよ! 一体何が起こっているの!?」

母 「さあ、魔王。私たちはあの星を目指してただ走り続けるの。あの、世界征服の星を目指して」

真央「星なんて見えないよ〜」


照明 暗転
    中央サス

母&泗水&九浪
   それぞれ上手、下手に別れて去っていく


音響 FI OP(ドラクエOP)
照明 全照

真央 まごまごしている

母&泗水&九浪 で舞台設置
        無性演技でてきぱきと「魔王本拠地」を作り上げていく
        真央の衣装替えは泗水が行う
        最後に玉座が出来た時点で、真央はそこに座らされる



○魔王本拠地
 自宅を改造した魔王本拠地には、真央が座っている。
 真央の横には母がいる。


黒子 上手から走ってくる
   「次の日」の紙を観客席に見せ、下手へ退場
音響FO


母 「さて、魔王」

真央「この椅子、座りにくいんだけど」

母 「あなたが魔王になってからまず始めにやらなきゃいけないことが分かりますか?」

真央「そんなことより、こんな椅子じゃ肩こっちゃうよ」

母 「幼稚園バスジャック? 散髪屋で大量脱色剤使用? どれもちがうわよね」

真央「クッションも安物・・・ってか、これ百均じゃん!?」

母 「魔王には、魔王にしかできない事があるの。それは、なにかしら?」

真央「てか、人の話しを(聞いてよ)」

母 「相手が話している時はちゃんとその人の顔を見て話を聞く!」

真央「はい・・・・って私が怒られるの?」

母 「どこまで話したか話からなくなっちゃったじゃない」

真央「ごめんなさい」

母 「では。さて、魔王」

真央「あ、魔王にしかできないことってとこまでは聞いたから」

母 「・・・・・あ、そう」





真央「ママ?」

母 「・・・だから、途中で止められちゃうと台詞出てこないんだってば。もう!」


母 手を叩く(二回ほど)


黒子 下手から走って登場
   手に「悪マニュアル」を持っている


真央「なにあれ!? ってか、なにそれ!」

母 「えっと、『世界征服の始め方』だから・・・二十二ページか」

真央「マニュアル? これって、マニュアルあるの?」

母 「(咳)いい? 魔王。・・・・はいはい、覗かないの。・・・いい? 魔王」

真央「はい」

母 「あなたには、魔王にしかできないことをやるの。それはね・・・・」

真央「それは?」

母 「それは・・・勇者を倒す事よ!」


音響 CI ショック音(雷?)


泗水 上手から登場
    手にラジカセを持っている

泗水 ラジカセを止める


音響 CO


母  泗水に頷く

泗水 母に頷き返す

泗水 上手へ退場


真央「はあ?」

母 「いい、魔王。この世界に魔王がいる限り、必ず勇者は現れるの。
   信長を倒した、明智光秀のように」

真央「あの人勇者だったんだ・・・」

母 「それから、・・・・それから・・・・・バラモスを倒した勇者とか」

真央「もう、現実世界は打ち止め!?」

母 「だって、私歴史弱いから仕方ないじゃない」

真央「だから、魔王も、勇者も現実にはいないから」

母 「そんなことないわよ〜。現に、今九浪が勇者を探しに行っているわ」

真央「無駄骨だと思うけど」


九浪「見つけました〜」


母 「ほら♪」

真央「うっそぉ!?」


九浪 下手より登場


九浪「勇者が先ほど、魔王討伐のために家を出た模様です!」

母 「その知らせ、真か!」

九浪「は。お疑いあればご確認を」

母 「それは道理。・・・・泗水。水晶をここに」

泗水「はい」


泗水 上手より登場
    手には骸骨(頭部)を持っている。


真央「それ、水晶違う!」

母 「何言っているのです。魔王。どっからどう見ても、水晶でしょう?」

真央「骸骨じゃん」

母 「力ある骸骨は水晶の代わりとなるのです。常識でしょう?」

九浪「当然のことです」

泗水「小学生の知識ですわ。魔王」

真央「そんな分けないでしょ!」

母 「いいから魔王。席に着いていなさい。(骸骨に)さぁ、わが父吉田光郎の骸よ」

真央「って、おじいちゃんなの!?」

母 「今こそ水晶となりて勇者の姿を映したまえ!」

真央「おじいちゃーーーん」


照明 暗転
   下手サス

黒子(勇者)
   勇者ルックに身を包んでいる
   布の服、ひのきの棒。それと、布の袋。


勇者「それではマザー&ファザ♪ 行って来ます〜」


照明 全照


勇者 その場で歩いている演技


真央「エっちゃん!?」

母 「おお。布の服を着て、ひのきの棒を持つ、あの姿は!?」

泗水「紛れもなく、勇者そのもの」

九浪「デフォルト名、エニクス。父オルテガを持つ勇者です」

真央「勇者じゃないから。あれ、私の友達よ! ってか、えっちゃんってそんな名前だったっけ!?」

母 「しかし、さすが勇者。魔王の近くにいつの間にか紛れ込もうとしていたのだから」

泗水「侮りがたしと言うところですか」

真央「だーかーらー友達なんだってば!」

母 「九浪。勇者の始末、頼めますか?」

九浪「御意に」


九浪 下手へ走る


真央 「だめーーー」


照明 暗転
   下手サス


勇者「(「散歩」熱唱中)歩こう〜歩こう〜私は〜元気〜(略)」

九浪「止まれ! 勇者!」


九浪 下手から登場


勇者「何やつ! ふんふふんふん〜(鼻歌で歌の続きを歌っている)」

九浪「まず、その聞き苦しい歌を止めろ」

勇者「失礼な! これでも旅立つ時のために練習したんだ!」

九浪「黙れ音痴」

勇者「音痴って言う奴が音痴だ!」

九浪「ほほう。ならば勝負してみようじゃないか」

勇者「なに!?」

九浪「貴様の歌と俺の歌。どちらが上手いか勝負だ!」

勇者「望むところだ!」

九浪「では、俺から行くぞ!」


九浪 指を鳴らす
   剣をマイク代わり

音響 FI Gacktで前奏長い奴

九浪 歌おうとする

勇者 いきなり歌い出す。音痴


九浪「ば、馬鹿野郎! 何でお前が歌っているんだ!」


音響 CO


勇者「え? 同時に歌って歌唱力を試すんじゃないの?」

九浪「んなわけあるか! というより何より前に、何だその歌い方は! Gacktなめてるのか!」

勇者「だってぇ。がっくんの曲ってぇ難しくてぇ」

九浪「ふっ。これで、貴様を葬る大義名分がついた」


九浪 剣を抜く


勇者「お前。敵か!?」

九浪「いかにも魔王直属の四天王が一人。九浪」

勇者「そんな!? 家から出たばかりで四天王クラスが出てくるなんて」

九浪「いつでも勇者の自宅周りは雑魚キャラってわけじゃないんだよ」

勇者「こっちの武器は剣ですらないのに!?」

九浪「問答無用!」


音響 FI ドラクエ戦闘シーン


九浪 斬りかかる


勇者 ひのきの棒で応戦
   ひのきの棒を両手に持ち、九浪の剣を頭上で受け止める
   

ひのきの棒は九浪の剣を受けまっぷたつに割れる(モチロンはじめから割っておく)


勇者「あ」


照明 赤
   暗転

音響 CO
   CI FF戦闘終了時


九浪「任務完了」


勇者 下手へ退場

九浪 下手へ退場

照明 全照


真央「そ、そんな・・・エっちゃん・・・」

母 「これで、勇者は片づいたわね」

泗水「何ともあっけない最後でした」


泗水 頭蓋骨を持って上手へと移動


泗水「次に何かご用があるときは、私をお使いください」

母 「たよりにしているわよ」


泗水 上手へ退場


真央「エっちゃんが・・・・死んじゃった・・・・」

母 「世界征服のためだもの。仕方ないわ」

真央「酷いよ。家の中でふざけているならまだしも、これじゃ・・・これじゃあ・・・」

母 「ふざけてなんていないわ。本気よ」

真央「だって、こんなの・・・・・・・そっか」

母 「どうしたの?」

真央「夢、なんだ。なーんだ。これ、夢なんだ」

母 「何よ急に。夢なんかである分けないでしょう?」

真央「だって。こんなの実際にあるわけないじゃん。夢なんでしょ? 
    夢。そうに決まってる。な〜んだ。
    すっごい焦っちゃった。ただの夢落ちかぁ、これ」

母 「・・・・・ふうん」

真央「・・・・なによ」

母 「べつに。夢だと思いたければ、夢だと思っていればいいじゃない?」

真央「止めてよ、これ以上惑わすようなことをいわないで」

母 「私は別にどちらでも良いのよ? あなたの願いを叶えてあげただけだから」

真央「私の・・・・・・願い?」

母 「あれは・・・確か、一ヶ月くらい前だったわね」


母 手を叩く


音響 FI 録音テープ


母 『こら。真央。いつまでゲームやっているの?』


真央「ママ・・・の声?」

母 「そう。美声でしょ?」


真央『もう少しだけ』


真央「あたしだ・・・」


母 『まったく。そんなゲームの何が面白いのよ』

真央『面白いよ。だって夢があるじゃん』

母 『夢?』

真央『そう。「こうなったらいいなぁ」って。
    私、こんなバリバリファンタジーって感じの世界に行ってみたいなぁ。』

母 『ふうん。お姫様を助ける勇者にでもなりたいの?』

真央『ううん。どうせなるんなら、魔王が良いな。目指せ、世界征服! みたいな?』


母 『・・・・本当に?』

母 「(同時に)本当に?・・・・・そう、聞いたでしょう?」


音響 FO


真央「じゃあ・・・あの時、私が、うんって言ったから・・・・・」

母 「そうよ。ほら、わかったでしょう? 娘の願いを叶えるなんて、いい母親よね?」

真央「そんな・・・・あり得ないよ・・・・・」

母 「願いは叶うのよ。あなたは願ったんだから。自分の発言には責任持たなくちゃ」

真央「だって。こんなの・・・人が、死ぬなんて」

母 「これからもっともっと死ぬわよ。だって、あなたは恐怖の魔王なんだから」

真央「そんな・・・そこまで私考えていた訳じゃないし・・・だって、こんなの・・・・」

母 「信じる、信じないわ、あなたの自由よ。魔王。・・・でもね」

真央「・・・・?」

母 「ゲームは、もう始まってしまったのよ?」


母  上手へ退場

真央 項垂れている


照明 暗転になると見せかけてすぐ全照
音響 CI ドラクエの宿屋


黒子 下手から登場
   「そして、朝」の字を見せながら上手へ行き、
   素早く下手へ退場


母 「あら? 魔王。昨日はそこでお休みになられたのですか?」

真央「・・・・・・」

母 「今日から本格的に世界征服ですからね♪ 勇者もいないことだし。
   さあ、何から手を着けましょうか」

真央「・・・ゲーム、なんだよね?」

母 「ええ。そうよ。人生は、ゲーム。それで良いの。やっと、あなたもやる気になったみたいね♪」

真央「おかしいよ」

母 「え?」

真央「ゲームだったら、勇者は死なない」

母 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・しまった!」

真央「え?」

母 「そうか。その手があったのか・・・泗水!」

泗水「はい!」


泗水 上手から登場


母 「勇者はどうなっているの?」

泗水「はい? 勇者ですか?」

母 「そうよ。今すぐ、勇者を見せて」

泗水「え、でも、水晶は昨日の夕方クリーニングに・・・」

母 「だったら、映像はいいわ。聞くだけで」

泗水「はい!」


泗水 上手へ退場


真央「どういうこと?」

母 「うっかりしていたわ。勇者のおきまりを一つ忘れていたの。
   これは、世界征服手間取るかもしれないわね」


泗水 上手からメガホンを持ってくる


泗水「はい、これを」

母 「ありがと」

真央「ただの、メガホンじゃん」

母 「魔法の品物は一見なんでもないしなに見えるのよ。ほら、顔くっつけて」


真央 仕方なく母と耳をくっつける
母  メガホンで聞く動作

舞台袖から


声 「おお、勇者よ! 死んでしまうとは情けない」


母 「遅かったかぁ」

真央「これって・・・もしかして・・・・」

母 「勇者の復活よ。ただし、ゴールドは半分だけどね」

真央「じゃあ、エっちゃん生きているの!?」

母 「(エセ外人風に)はーい、そこ。そこは喜ぶところじゃないよ! 勇者生きてちゃアンラッキーね」

真央「だって・・・」

母 「とにかく、すぐに討伐隊を出さないと・・・・・九浪! 九浪!」


下手より 雑魚登場
     頭に「くろう」という字が書かれた札かなんかをつけている。
     大きな袋を持って登場


雑魚「およびですか」

母 「・・・・本物の九浪はどうしたの?」

雑魚「今日は東大の発表日なのでお休みです」

母 「どうせまた落ちるに決まっているのに・・・・わかったわ。あなたに行ってもらいます」

雑魚「本当ですか!?」

母 「ただし。九浪としてではなく、スライムとして!」

真央「スライム!?」

雑魚「了解しました!」


雑魚 袋の中からスライムグッズを取り出す。
   スライムの頭 と ニヘラ口


雑魚「行って来ます〜」


雑魚 下手へ退場


真央「スライムなんて・・・やられに出すようなもんじゃん」

母 「ようし。これで時間は稼いだわね」

真央「時間稼ぎだったの!?」

母 「当たり前でしょう。勇者に経験値稼がれても困るから、よわっちいの送ったのよ。泗水!」

泗水「はい」


泗水 上手から登場
   食事中だったらしい


泗水「(食べながら)何かお呼びですか」

母 「これから、世界中の教会を潰してきて頂戴。勇者にもうこれ以上復活されないようにね」

真央「無理だって!」

泗水「分かりました」

真央「分かっちゃうの!?」

泗水「この泗水、命に代えても頑張ります」

母 「屍は拾ってあげるわ」

真央「ひどいよ、それ」


泗水 下手へ退場


泗水「魔王様。一つだけ、よろしいでしょうか」

真央「な、なに?」

泗水「移動中の代金は、経費で落として良いですか?」

母 「駄目よ。今月は真央の携帯代だけできついんだから」

泗水「りょ、了解です〜」


泗水 下手へ退場


真央「今更携帯代も何もないのに・・・」

母 「こう言うのはしっかりやらないと駄目なの!」

真央「はーい」


雑魚 下手から登場
   頭に三角布(死者がつける奴)つけて登場


雑魚「やられました〜」

母 「早かったわね」

真央「スライムだしね」

雑魚「それはもう、完膚無きまでに叩きのめされました〜。でも、私、頑張ったんですよ」

母 「聞いてあげるから、聞いてあげるからそんな目で見ないの」

真央「何が、あったんです?」


雑魚 途端嬉しそうに三角布を取って


雑魚「私がさりげなく、道を歩いていると、遠くから勇者がすごい勢いで駆けてきました」


照明 CI


勇者 下手から登場
    持っている武器はやっぱりひのきの棒
    でかい布を持っている


勇者「ば、ん、め、しーーーーーー」

雑魚「きゃあああーーあああああ」

勇者「・・・・って何だ。スライムか」

雑魚「何だとは失礼な!」

勇者「ほう。スライムのくせに、勇者にかなうと思っているのか?」

雑魚「やってみる?」


雑魚 構える


勇者「スライムに手足はない」

雑魚「そ、そっか」


雑魚 気をつけ


勇者「行くぞ!」

雑魚「こい!」


音響 CI ドラクエ戦闘


勇者「勇者の攻撃」

雑魚「スライムはひらりとかわした」


雑魚 左右に揺れながら


雑魚「スライムは挑発している」

勇者「むっかーーーー。勇者の攻撃」

雑魚「スライムはひらりとかわした」


雑魚 左右に揺れながら


雑魚「スライムは挑発している」

勇者「まだやるか!! 勇者の攻撃!」

雑魚「スライムはひらりとかわした」


勇者 いきなり袋からリンゴ(小さい。おもちゃ)取り出す
    雑魚にぶつける


雑魚「あ、ひどい! 次、私の番なのに!」

勇者「勇者は八百屋のおばちゃんからもらったリンゴを投げた」

雑魚「いたっ。ちょっと、いたいって」

勇者「リンゴを投げた」

雑魚「いたっ 食べ物は大切にしなきゃ駄目だよ!」


勇者 袋から巨大なリンゴを取り出す
    雑魚にぶつける


勇者「リ、ン、ゴを投げたああああ」

雑魚「それ、リンゴじゃない〜」


雑魚 その場に倒れる


音響 CI ドラクエレベルアップ音


勇者 リンゴを拾いながら


勇者「勇者はレベルが上がった。魅力が2上がった。滑舌が1上がった。人前で上がらなくなった。
   羞恥心が2下がった」


勇者 雑魚を下手へ引きずっていく


勇者「さあて、食事〜食事〜」


勇者&雑魚 下手へ退場

雑魚 下手から登場


雑魚「ってことだったんです〜」

真央「リンゴに負けたんだ・・・・」

母 「そして、食べられちゃったのね」

雑魚「はい。余すとこなくしっかりちゃっかり」

真央「てか、食べられたって・・・・じゃあ、ここにいるのは?」

母 「ゴーストよ」

真央「ゴースト!?」

雑魚「なるほど。次はゴーストで行けば良いんですね♪」

母 「いえ。今の勇者のレベルなら、ゴーストを倒せないわ」

真央「リンゴ使って勝ったしね」

母 「次は、スライムベスでいくのよ!」

雑魚「わっかりました」


雑魚 袋からスライムベスグッズを出す


雑魚「いってきまーす」


雑魚 下手へ退場


真央「なんか、ママの方がよっぽど魔王らしいよね」

母 「なにいっているのよ。魔王の力を前にしたら、私なんてちっぽけな存在でしかないわ」

真央「そんなこと言ったって、私はなにもできないよ? いつもふつーだったし」

母 「あら? 何言っているのです魔王。そんなこと無いわよ。あなたには究極呪文があるのよ」

真央「究極呪文?」

母 「そう。その名も、『強制リセット』」

真央「強制? りせ・・・」


母  あわてて真央の口をふさぐ


母 「だめよ。口に出しちゃ。それを口に出したらすべて終わりなんだから」

真央「何なの? この言葉」

母 「言葉じゃなくて、呪文よ。世界の電源を落とす魔法だと思っていればいいわ」

真央「電源を、落とす?」

母 「最後の最後。もう、自分が終わりだって時に、相手を道連れにして使う呪文よ。
    どう? この世界では最強の呪文でしょ」

真央「って、終わっちゃったら意味無いじゃん」

母 「大丈夫よ〜。そしたら、またやり直せば良いんだから」

真央「やり直す?」

母 「そうよ。この世界ではそれが可能なんだから」

真央「・・・・ってことは、やっぱり、ここって現実の世界じゃないの?」

母 「(露骨に慌てて)何でそういうことになるのか、私わからなーい」

真央「露骨に怪しいとぼけ方は止めて!」

母 「はい」

真央「やっぱり変だと思ってたとおりだ。こんな事が現実で起こるわけ無いんだよ」

母 「起きてるじゃーん」

真央「誤魔化さないで! 何をママがやったのか分からないけど、
    私を驚かそうとこんな事をやったんでしょ!? 答えて。この世界は現実じゃないんでしょう?」

母 「・・・・・はい」

真央「じゃあ、なんなの?」

母 「・・・・・聞きたい?」

真央「聞きたい」

母 「本当に、聞きたい?」

真央「聞きたい」

母 「本当に、本当に、本当に、」

真央「ママ。いい加減にして」

母 「(ため息)・・・・わかったわよ。・・・・魔王、私が、普段何の職業をしているか知っていますか?」

真央「何の仕事? ・・・・・白衣着てるから・・・・学校の先生?」

母 「なんで学校の先生で白衣なわけ? 
   私は別に防寒服やチョークの粉よけのために白衣着ているんじゃないわよ」

真央「じゃあなに?」

母 「実はね。ママは、マッド・サイエンティストだったの!」


音響 CI ショック音


泗水 上手から登場
    ラジカセを持っている
    ラジカセをオフ

音響 CO


母  泗水を見て親指をつきだしたポーズ


泗水 頷く
   上手へ退場


真央「はぁ?」

母 「だから、マッド・サイエンティストよ。聞いたことあるでしょう?」

真央「あるけど、それ、職業じゃないじゃん」

母 「何言っているのよ〜。世界を混乱させるような発明をして、楽しむ。
   これがマッド・サイエンティストの仕事よ。最近なんかだと、
   ノーベル賞を取った日本人二人のうち、
   一人の名前を国民の記憶から抹殺させちゃったりしているわ」

真央「ノーベル賞取ったのって、田中さん?」

母 「と、後一人誰?」

真央「え? ・・・・そんな人いたっけ?」

母 「ほら、科学の勝利よ♪」

真央「なんかやっていることしょぼいんだけど」

母 「そんなこと無いわよ〜 ってわけで、そんなことをやっているわけ」

真央「それで?」

母 「なにが?」

真央「私に何したのよ! それで、この世界は!」

母 「ああ。これはゲーム世界よ」

真央「ゲーム世界?」

母 「そう。真央が『魔王になりたい〜』なんて言っていたから、簡単に、
   ゲームを何本かいじくって世界を作り上げてみたってわけ。
   まぁ、市販ゲームのプログラムくらい、私にかかれば簡単にいじれるわ♪」

真央「じゃあこの家とか、全部プログラムなの? ・・・私も?」

母 「そういうことね。基本となったのが、ドラクエとFFだから、ドラFとでも名付けましょうか♪ 
   なんか、ドラエモンの派生系みたいね。
   どうせだから、ポケモンもくっつけちゃえばよかったかしら。ドラモンFとか。」

真央「・・・・・そうなんだ・・・・全部、プログラムなんだ」

母 「そうよ〜。苦労したんだから。特に、キャラクターに人間並みのAIをつけるのに苦労したわね。
   こんなの学会で発表したらノーベル賞ものよ。ああ。自分の才能が恨めしいわ」

真央「・・・・・・そっか・・・・」

母 「こんな母の娘であることを誇りに思わなきゃね。いいのよ。
   あなたはこのゲームを楽しんでくれれば。私にはお礼なんて入らないわ〜」

真央「・・・・じゃあ、じゃあさ」

母 「? なに? 何か疑問?」

真央「・・・・私は、どこにいるの?」

母 「魔王? ここにいるじゃない」

真央「そうじゃなくて。私は、どこにいるの?」

母 「・・・・・・どういう意味かしら?」

真央「これは、ゲームの世界なんでしょう? じゃあ、私はゲームの主人公なんだ。
   でも、だったら、外の世界の私は? 私は今、何をやっているの? 私は、どこにいるの? 
   私は・・・・・プログラムなの?」

母 「あなたと私はこの世界の住人よ〜。バーチャルリアリティってやつ♪」

真央「そう、なの?」

母 「そうよ♪ こうやって頭にでかい装置をくっつけてね。あなたが寝ている内に、
   ゲームの世界の中に投入させたのよ」

真央「なんだ・・・そうだったんだ」

母 「そうよ。だからもう、何も疑問に思うことはないのよ。
   あなたは、このゲーム世界を楽しめば良いんだから。 わかった?」

真央「・・・・うん」

母 「さあ、では魔王の疑問も解決したことですし。
   私の黒魔術によって、まずはこの地上から朝を無くしてやろうかしら」

真央「黒魔術師の本領発揮ってところね」

母 「そうですよ魔王。私の黒魔術は世界一ですから」

真央「いいなぁ。黒魔術。いくらゲームの世界だからって、私、なにもできないし・・・・黒魔術?」


真央 母の顔を見る
母  真央の視線に気づいて首を傾げる


母 「どうしたの? 真央」

真央「黒魔術を使ったから、ママは若い姿で・・・でも、じゃあ実際のママは? 
   ・・・本当の、ママは・・・?」


真央 現実の世界を思い出そうとするが出来ない
   震え出す


泗水 下手から登場


泗水「ただいま戻りました」

母 「泗水。それで成果は?」

泗水「はい。世界中の教会をすべて潰してきました〜」

母 「ご苦労」

泗水「ありがたいお言葉」


泗水 頭を下げる


九浪 下手から登場


母 「おお、九浪。お帰りなさい」

九浪「ただいま、帰りました」


九浪 いきなり泗水を後ろから刺す

照明 CI 赤


泗水「な・・・九浪・・・?」


泗水 その場に倒れる

照明 全照


母 「九浪・・・なぜ?」

九浪「先ほど、東大の結果発表を見てきました」

母 「何の関係があるの?」

九浪「受かってたんですよ。と、う、だ、い」

母 「それはよかったじゃない。おめでとう」

九浪「だから、僕、こんな事もうやっていられないんですよね」


九浪 言いながらマントを解く


九浪「大学の結果発表を見た時点で、悪の四天王、九浪は死にました。
    今日から僕は、正義になります」


九浪 マントをひっくり返す
   そこには「正義」の文字が


九浪「今度からは勇者、九浪と呼んでください」

母 「な! 勇者だと」

九浪「そうさ。世界征服など、この勇者が許さない!」

母 「生意気な。私の黒魔術で、酢豚にしてやる!」

九浪「呪文など、唱える前に倒すのみ!」


九浪 剣を振るう

母  避ける
   後退

二人 にらんだまま 真央を挟んで間合いを取る

黒子 下手から登場
   母の元へ走り、さりげなく杖を渡す。
   下手側にいる泗水を引きずって、下手へ退場

音響 CI ラスボス


母 「ふっふっふ。勇者よ。まさかここまでたどり着くとは思わなかったぞ」

九浪「貴様の野望も、今日限りだな」

真央「・・・・・まって」

九浪「行くぞ!」


九浪 斬りかかる
母  杖で受ける
真央 自分の考えに戦きながら二人を止められずにいる
   震えている
   小さく「まって・・・まってよ・・・・」と繰り返している。

戦いの末、
九浪 母を斬る


九浪「勝った」

母 「く・・・・やはり、この姿のままでは失礼だったみたいだねぇ」

九浪「なに!?」

母 「見せてやろう! もう一つの姿を!」


黒子 下手から登場 
   母に衣装を着せて、下手へ帰っていく


母  顔だけ着ぐるみ。しかもガチャピン。
   手も着ぐるみの手。足には怪獣スリッパ。


九浪「なんて恐ろしい」

母 「ゆくぞ!」


九浪 動きが急にゆっくりになる
母  九浪の背に回っている


母 「おそい」

九浪「なに!?」


九浪 慌てて避ける


母 「無駄無駄無駄〜」

九浪「く、強い!?」

真央「まってよ・・・・」

母 「今度は、こちらからいくぞ!」

真央「ねえ まってよ!」


音響 CO


母 「魔王?」

真央「もういい。もうゲームの世界はもういいよ!」

九浪「ゲーム? なんのことだ?」

真央「この世界よ。この空間も、あなたも、泗水・・・さんはいないけど、
   ママも・・・・あたしも、みんなゲームのプログラム」

母 「何言っているの真央。あなたは」

真央「私もゲームのプログラムなんでしょう?」

九浪「プログラム? 俺が?」

母 「そんなことないわよ。だって、現実にあなたは生きているわけでしょう?」

真央「そう、思いこんでいるだけだとしたら?」

母 「そんなこと」

九浪「そういえば、何で俺はこんなことしているんだ?」

真央「だって、ママはずっと若いママじゃない」

母 「だからそれは」

真央「黒魔術? だったら、現実世界のママは何で若いの?」

九浪「俺は・・・俺は?」


九浪 その場にしゃがんで悩み出す

母  無言


真央「20代の肌を持っているママはゲームの中でしかあり得ない。
    だけど、私はその若いママしか知らないのよ。
    ・・・・つまり私は現実世界を知っているんじゃない。そう思いこんでいるだけ」

母 「・・・・よく、気がついたわね」

真央「少し考えれば分かる事よ。この世界を作り出すだけの頭脳があるのなら、
    自分の娘そっくりの人格を作り出すことだってたやすいでしょう? ううん。
    本当は、娘なんていないのかもしれない」

母 「それは、どうかしらね」

真央「それとも、これがすべて本当の娘のためのゲームなのかも」

母 「・・・・・・・それで? どうするの?」

真央「そんなこと決まっているでしょう? この世界を作ったのはあなた。
    だけど、私はあなたのゲームに乗りたくはない。だったら答えは一つ。私は」


音響 CI 録音
真央『私は、言ってはならない呪文を言うわ』


真央「・・・・・え?」

母 「そう。言ってしまうのね」

真央「違う。今のは、私が言った言葉じゃない。私が言いたかったのは」


音響 CI 録音
真央『私は、言ってはならない呪文を言うわ』


真央「違う。そうじゃなくて」

母 「言いたいなら早く言ったらどう? 私は止めたりはしないわ」

真央「・・・言わなきゃ、いけないの?」

母 「それ以外に、選択肢はあるの?」

真央「選択し・・・・・・ない」

母 「じゃあ、言うしかないんじゃない?」

真央「私は・・・・・・言ってはならない呪文を、言う・・・・」

母 「どうぞ?」


真央 うなだれる
   抗い難い力に突き動かされているかのよう
   ゆっくりと言葉を吐く


真央「強制・・・・リセット」


照明 CO 暗転
音響 FI

母 衣装を着替える
  白衣はそのまま

椅子を斜めにする
真央にテレビゲームのコントローラーを握らせる

九浪 下手へ退場

音響 FO

○吉田家自宅
 ソファーのあるリビングルーム。
 真央と母親が一緒にテレビを見ている。
 テレビ画面には今はゲームの画面が映っている。

音響 FI
照明 全照


母 「・・・どう? 今回のゲームは?」

真央「ちょっとまってよ〜。あたし消えちゃうの? めっちゃこわいんだけど」

母 「あら? ちゃんと真央が言ったとおり、コメディにしたじゃない?」

真央「それって、最初だけじゃん。全然コメディじゃないよ」

母 「ずっとコメディじゃつまらないわよ」

真央「そんなこと言ってもさぁ。・・・・だいたい、いーの? こういうの作って。著作権の侵害だよ」

母 「別に売り出すわけじゃないから良いのよ。どう? 面白かった?」

真央「うーん。アドベンチャーにしちゃあ、道が一本すぎかなぁ? 泗水さん死んじゃうし」

母 「あら? それは、真央が分岐点でミスったからよ。真央ったら、
   選択肢の度に「だまっている」を選択するんだもの」

真央「だって。ゲームの設定自体よくわからなかったし」

母 「何言ってるのよ。せっかく世界征服物作ったのに、
   サイドストーリーに入っちゃったら意味ないじゃない」

真央「え? これ、サイドストーリーなの?」

母 「あったりまえでしょう?」

真央「あたりまえなんだ・・・でも、なんか怖いね」

母 「何が?」

真央「自分が、実はゲームの世界の住人、なんてさ」

母 「そう?」

真央「だって・・・」


音響 CI 録音
真央『私も、ゲームのキャラかもしれないじゃん』


真央「え?」

母 「そうね。そうかもねぇ」

真央「ちょっと待ってよ。私、今、何も・・・」

母 「だったら、試してみたら?」

真央「え?」

母 「究極の呪文。・・・・試してみたら?」

真央「そんな・・・・何言ってるのママ。そんなの」


音響 CI 録音
真央『試して、みようかな』


母 「そうよ。試してみなさいよ」

真央「いや、違う今の声は・・・いやだよ、そんなの・・・・」

母 「嫌なの?」

真央「だって・・・・私は・・・・ゲームの・・・・キャラなんかじゃ」

母 「さあ。どうかしらね。いいじゃない。ゲームのキャラだって。
   べつに、この世界が現実じゃなくたって」

真央「そんなの」

母 「だって。現実だから、ゲームだからで、何が変わるの? 何も変わらないわよ」

真央「でも・・・」

母 「それが嫌なら、言ってみればいいじゃない」

真央「私・・・・・・」


真央 うなだれる
   抗いがたい力に突き動かされるように震えながら
   口を開く


真央「強制・・・・・リセット」


暗転

音響 FI
役者 はける

照明 中央サス

ソファーの上にはコントローラーが置いてある


溶暗