グッバイ・ドロシー2013年度ver
作 楽静


登場人物

現実の世界の人々
シロド ケイ  主人公。17歳。高校三年生を目の前にして、引きこもる少女。一人好き。
コマツナ トーコ  ユイの友達。頭が良いらしい少女。
サクライ ミサキ  ユイの友達、体を動かすのが好きな少女。
空想の人物たち
ライオル (男でも可) ライオンを模した少年
カ・カシィ/少女  どこか抜けている悪ぶった女の子。/娘に甘いママ
ブリキン/ダディ(声) 男 わりと片言のナイスガイ/娘に甘いダディ
オズ  男 ラスボスの自覚のあるボス。
トト/ケイの母(声)  自称お助けキャラ。司会進行役
シャショー・シャン/マミィ(声)  銀河鉄道の車掌。/娘に甘いマミィ


     三月(春)の物語
     舞台の上にはブロック体で作られた空間。
     このブロックの移動によって、舞台転換を行う。
     舞台はブリキンと、カシィによって作られる。


1 始まりと終わりの場所。

     ライオルが現れる。子供が描くようなライオンの格好。本を持っている。

ライオル 「オズの魔法使い」は、童話作家、ライマン・フランク・ボームによって描かれた。
    1900年の5月に出版されたこの本は、当時の子供たちの心を捉え、大ヒットとなったらしい。(と、本を閉じ)
    ……なんてことは、この物語には関係が無い。これは、カンザスにも住んでいないし、オズにも行けない、
    一人の女の子の物語だ。そして僕の。といっても、彼女の物語はこれまでも続いてきたし、これからも続いていく。
    だから、語れるのは、僕が彼女といた時間。それも、ほんのひとかけらに過ぎない。では、そろそろ始めようか。

     ライオルが話している間に、少女達が舞台にいる。
     ライオルが視線を向けると、そこに光が当たる。

2 一月中旬

     放課後。帰る格好のケイ。(次のシーンのため、衣装を大きめのコートとマフラーで隠している)
     ミサキとトーコも帰り支度をしている。二人とも、制服にコートやマフラーという格好。

ケイ ねぇ、春休みにどこか行こうよ。
ミサキ 冬休み終わったばかりでもう春の話?
ケイ 三学期なんてあっという間だよ。それに、夏休みの時みたいになったら嫌だし。
トーコ 夏休み?
ケイ ほら、海。
トーコ ああ〜。(と、嫌なことを思い出し)ああぁ〜。
ミサキ あれはケイが悪い。
ケイ なんでよ。
ミサキ 「海行きたい」なんて、当日言うことじゃない。
トーコ 混んでたよね。
ミサキ 疲れただけだった。トーコなんて、帰りの電車でさ、
トーコ わ、だから思い出させないでよ!
ミサキ ほらね。あんな思いはもうやだよ。
ケイ でも、そんなこと言ったら、ミサキだって。
ミサキ あたし? なんかやったっけ?
ケイ ほら冬休みに突然「映画行くよ!」って言ってさ。
ミサキ あ! あれは、ほら……
トーコ まだやってなかったよね。
ミサキ テレビが悪い。上演してないのにCM流すから。
トーコ ちゃんと調べないとダメだよ。
ミサキ そんなこと言ってて、トーコだって、
トーコ あたし?
ミサキ ……は、特にないか。
ケイ ないね。
ミサキ トーコはいつも、ちゃんと調べるから。
ケイ 裏切り者だ。
ミサキ 裏切り者め。
トーコ なんでよ〜。調べないのが悪いんだよ。
ケイ そう、だから調べてから行こうよ。春休みに。
ミサキ 春休みか〜。
トーコ あたし、無理かも。
ケイ え、なんで?
トーコ 親が、「今月から、塾行け」って。受験生だし。春休みも講習入るんじゃないかな。多分。
ケイ 国公立狙いだもんね。
トーコ 狙ってるだけだよ。でも、近場だったら大丈夫。あと、お金がかからないなら。
ケイ うん。
ミサキ あたしは、ちょっとくらいお金かかってもいいよ。あ、でも土日連続とか無しね。バイトだから。
ケイ バイト!? 始めたの?
ミサキ 始めるの。
トーコ ミサキの親、バイト反対じゃなかったっけ?
ミサキ そうなんだけど、音楽系の専門行きたいって言ったら、「学費は自分で払え」って言われちゃって。
トーコ 厳しいね。
ミサキ 仕方ないよ。自分の将来のためだし。
ケイ 二人とも、大変だね。
トーコ ケイは?
ケイ 私? 私は……変わりたく、ないなぁ。今のまま。2年生のまま。
ミサキ そりゃ無理だ。
トーコ さすがにね。
ケイ ……変わりたくないなぁ。

     ライオルがいつの間にかケイの側にいる。

ライオル そんな彼女の物語だ。

     舞台が暗くなる。明るい音楽が鳴り響く。


3 夢の世界。

     トトが現れる。歌のお姉さんのような格好。

トト こんにちは。夢の案内人、トトです。みんな、元気〜?(マイクを観客席に。声を拾ったように満足げに)
  よーし。みんな元気だ。さて、ここは、見ての通り悪の本拠地。オズの城。え、さっきまで教室(?)だったよねと思う人
  いるかもしれないけど、そこは、心の目を通して見ろよってことで。あぁ! そんな話をしていたら、ほら! 
  オズがやって来た。

     オズが舞台に現れる。サラリーマン風。

トト 続いて、正義の味方の登場です! まずは鋼鉄の意志に硬い体! ブリキン!

     ブリキンが現れる。ブリキ。

トト 柔軟な思考と、火をも恐れぬ勇気。カ・カシィ!

     カ・カシィが現れる。カカシ。

トト 最後に、我らがリーダー! ライオル&ケイ!

     ライオルとケイが現れる。ケイは寝間着。ライオルの胸には勇気の勲章

トト オズを前に、四人がどんな戦いを繰り広げるのか!? 夢物語3469話「別れ話は明日に告げて」開幕です!(と、去る)

     派手な音楽とともに、オズが語りだす。

オズ とうとうここまで来たか。
ライオル 追い詰めたぞオズ!
ケイ 今日こそあんたを倒す。
ブリキン に(げようたって)
カシィ 逃げようたってそうは行かないからね。
ブリキン だ。
オズ ふはははは。雑魚が何人集まろうと私の前では雑魚だということを教えてあげよう。
ライオル なにをぉ!? みんな! かかれ!
ケイ&カシィ&ブリキン おー!
オズ 名刺フラッシュ!

     なんだか効果音とともにカシィが倒れる。

ライオル&ケイ カシィ!
ブリキン シィ!

     カシィの頭には名刺が刺さっている。

カシィ くっ。ごめん。不覚だっ……た。(と、去る)
ライオル&ケイ カシィ!
ブリキン シィ!
オズ まずは、一人。
ライオル よくもカシィを!
ブリキン ぜ(ったいに許せない)
ケイ 絶対に許さないわよ!
ブリキン だ!
オズ ふふふ。許さなければどうするのかね?
ブリキン うおおおお!(と、オズに向かう)
ライオル ブリキン!
オズ あ、失礼しました。(と、頭を下げる)
ブリキン おぉ!?
オズ 挨拶が遅れました。私、こういうものです。(と、名刺を差し出す)
ブリキン おぁ、すいません。えっと……(と、名刺を探し始める)
オズ 名刺ストラッシュ!
ブリキン ぐおぁああ。(と、切られ、去る)
ライオル&ケイ ブリキン!
オズ ふふふ。サラリーマンを甘く見ないことだな。
ライオル まさか、オズがこれほど強いなんて。
ケイ ……ライオル。
ライオル なに?
ケイ 私が隙を作るから、あなたは逃げて。
ライオル 何言ってるんだ! 駄目だよそんなの!
ケイ じゃあね。ライオル。
ライオル ケイ!

     と、その瞬間トトがマイクを持って出てくる。

ケイ なに、あんた!?
トト 突然ですがお知らせです。○○高校演劇部では現在部員を募集中。演劇部にあなたの愛を!
ケイ なに言ってるの!?
トト では、聞いてください。「グッバイ・ドロシー」(※もしくは歌を歌う代わりに流す曲名)

     そして演奏開始。もしくは音楽開始。

(※歌う場合)
トト 気がつけば着慣れてる ネクタイと背広
   焦がすたび慣れていく アイロンがけ
   そんな自分が 嫌になるたび
   思い浮かぶ 君との あの 思い出

   泥だらけでいつも遊んでいた
   泥で作ったお団子 ドロドロの山
   泥まみれの場面ばかり思い出しちゃう
   グッツ・バイ・ドロの、シーン
   グッツバイドロ・シーン
   グッバイ……ドロシー

     カシィやブリキン、オズにライオルも、ブロックを直して行く。強制的にケイは寝かされる。

ミサキ(声) ケイ? いるんでしょ? ケイ〜。
トーコ(声) ケイ〜 あーけーてー。

     ドアを叩く音。制服姿のミサキとトーコが浮かぶ。

4 ケイの家

     部屋の中。ケイの近くに、ライオルが座る。ミサキとトーコとケイの間にはドアがある。

ミサキ ケイ! いるんだろ!
ケイ (声に反応して)玄関、鍵かかってたはずだけど。
トーコ ミサキが殴ったらドアノブ壊れたよ?
ミサキ ちゃんとオバサンに開けてもらったろ(ケイに)壊してないからね!
ケイ 女子高生に壊されるようなドアだとは思ってないから。……それで?
ミサキ なんで、学校来ない。
ケイ ……風邪引いてるから。
ミサキ ひと月も?
トーコ 正確には欠席は18日。もしくは、3週間と三日? でも、二月は授業少ないから一月って言うのも言いすぎではないかも?
ミサキ うるさい。そんな長引く風邪なの?
ケイ ……そう。大変だったの。熱出て。咳もひどいし。
ミサキ 今も?
ケイ そうだって! うつると困るから早く帰って。
ミサキ そう。……なら、お大事に。……行こ。
トーコ ミサキがね、絶対おかしいって。
ミサキ トーコ!
トーコ ケイ、メール返さないし。電話にも出ないし。学校休む前、結構悩んでいるみたいに見えたから。
   もしかしたらなんか凄い悩みがあるんじゃないかって。だから来たんだよ。ね?
ミサキ ……もうすぐ春休みだし。三年になって、違うクラスになったらそんなに話し聞いてあげられなくなるだろ? 
   受験とかでお互い忙しくなるし。だから。
ケイ ……風邪引いているだけだから。本当に。
トーコ ……何かあったら、私たち、いつでも話し聞くからね?
ミサキ メールくらい返せよ。
ケイ ……そうだね。

     ミサキとトーコが去る。

ライオル 話せばいいのに。
ケイ ……別に、ミサキたちは関係ない。
ライオル (と、手紙を取り出す)直接言うのが難しくて、手紙を書きました。もうすぐ三年生だよね。
    ……あれ? ここまでしか書いてないや。なんだこの落書き。これ、あれだ。愛と勇気だけが友達な彼。
ケイ 青い猫型ロボット。
ライオル 顔が丸いとこしか共通点無いよ。
ケイ 落書きだからいいの!
ライオル ……一人で悩んでも、答えは出ないよ?
ケイ やめて。あんたなんて、所詮私の空想のキャラクターのくせに。
ライオル その空想に説教されちゃ終わってると思うよ。
ケイ ……ずっと変わらなければいいのに。このままずっと。そうしたら、みんな一緒なのに。
  三年生なんて、ならなくていいのに……
ライオル それは無理だよ。
ケイ 分かってる。……って、そんなことより、オズよ。あいつを倒さないと。
ライオル ……そうだね。オズをやっつけないと。
ケイ ブリキンと、カシィの敵(かたき)を取らなきゃ!
ライオル でもあいつ、今度は空の果てに逃げたんだ。
ケイ 空の果て? じゃあどうやって追えばいいの?
ライオル 大丈夫。空の果てには、鉄道で行けばいいんだ。
ケイ 鉄道?
ライオル そう! 銀河を走る白銀の列車。銀河鉄道に乗って!

     ライオルの言葉と共に、あたりの景色が変わる。

5 銀河鉄道に乗って

     シャショーが現れ、ブロックの位置を変える。

シャショー はい。ステーション 地球。ステーション地球。お忘れ物の無いようお降りください。
     次の発車は○時○分を予定しおります。
ケイ え? ここは?
ライオル 駅だよ。どう見ても。
ケイ あれは?
ライオル シャショーシャン。
ケイ 言えてないわよ。車掌さんでしょ?
ライオル いいんだよ。銀河鉄道の車掌である、シャショー・シャンなんだから。
シャショー あ、お客さん? ほら、入って入って。(と、ライオルとケイを電車に乗せ)で、どこまで?
ケイ (ライオルに)ずいぶんなれなれしいわね。
ライオル シャショー・シャンだから。
ケイ それ理由になってる?
シャショー はい。こそこそ話さない。シャショー・シャンには正直に。素直に。オーケー? さもないと、
ケイ さもないと?
シャショー 泣きます。
ケイ はぁ?
シャショー 冷たい反応されると、シャショー・シャン、心臓が痛くなります&哀しくなって、泣きます。
ケイ えっと……
ライオル 出落ちキャラだから、自分をアピールすることで一生懸命なんだ。
シャショー そういうこと言わない! で、どこまで?
ライオル 空の果てまで。
シャショー ソラハテ!

     なんだかショックな音が入る。

ケイ 大丈夫なの?
ライオル 分からない……
シャショー (急にシリアスに)なるほど、つまりあなた方がかの者達ということですか。
ケイ かの者達?
シャショー その者、二人づれで片方は精神年齢の低い少女。片方はライオン?の姿で現れ、ソラハテへの切符を所望するだろう。おお! あの伝説は本当であった(泣き崩れる)
ケイ 精神年齢の低い少女……って、誰が!
シャショー 何も言わなくて結構。ソラハテまで、の切符。お渡しいたしましょう。

     シャショーが切符?を二枚取り出す。なんか手に入れたっぽい音が鳴る。

ケイ これが、切符?
シャショー 快適な旅をお楽しみください。例え、何かを失う旅になろうと。

     格好良く、シャショー・シャンは去る。

6 二人の仲間

ケイ ……これで空の果てまで行けるってことよね。
ライオル そうだね。(と、言いつつ辺りを見渡す)
ケイ どうしたの?
ライオル 新しい仲間を探しているんだ。
ケイ でも、ブリキンとカシィは……
ライオル だから、新しい仲間、なんだよ。見つけた!

     ライオルが空間を引っ張ると、トーコとミサキが現れる。二人とも私服姿。

ケイ トーコ!? に、ミサキ
トーコ え? ケイ!?
ミサキ ……なに、ここ?
ライオル ようこそ、銀河鉄道へ。コマツナトーコに、サクライミサキ。あなたたちを歓迎します。
ミサキ は? 誰?
トーコ 電車の、中?
ケイ ライオル! どういうこと!?
ミサキ てか、ここは何!? あたし、晩御飯食べていたはずなんだけど。
ライオル うん。食べてたね。シーフードカレー。
トーコ いいなぁ。カレー。
ケイ あたしシチューの方が好き。
ミサキ 横から口挟むな! じゃあ、何でいきなりこんなところにいる!?
ライオル 僕が引っ張ったんだ。(トーコに)君もね。
トーコ 引っぱったら来られるものなんだ。
ミサキ だから! あたしは何でこんなところにいるのかって聞いてるの!
ライオル 引っ張ったって言ってるじゃんか。大丈夫。意識だけだから。
ミサキ 意識だけ?
ライオル 本体は今頃眠ってるはずだから。カレーの皿に頭突っ込んで。
ミサキ 死んじゃう!?
ライオル 平気だよ。ほら、

     と、声が聞こえる。

マミィ(声) あら? ミサキ。どうしたの?
ミサキ マミィ!
ケイ&トーコ&ライオル マミィ!?
ミサキ あ……なに!? 文句ある!?
ケイ&トーコ ううん。別に。
ライオル いいよね。マミィ。
ミサキ うるさい!
ダディ(声) ママどうしたの?
ミサキ ダ(ディ)……(と、口を閉じる)
ケイ&ライオル ダ?
トーコ ダディ?
ケイ&ライオル まさかぁ。
ミサキ うるさいって言ってるでしょ!
マミィ(声) パパ、この子どうしたのかしら?
ダディ(声) はっはっは。おい、ごらん。ミサキったら、カレーに顔突っ込んで寝てるよ。
マミィ(声) あら。お茶目さん。
ダディ(声) ほらほら、鼻にニンジン刺さってる。
マミィ(声) 疲れてるのよ、きっと。お布団に運んであげて。
ダディ(声) はいはい。
ライオル いいご両親だねぇ。
ミサキ ……一生隠し通すつもりだったのに。不覚……
トーコ まぁ、ほら、家族の仲がいいって素敵だよね。
ミサキ うるさい! それで。ここはなに?
ライオル どこだと思う?
トーコ (手を上げて)ケイの夢の中?
ライオル 正解。
ケイ だからなんで、二人がここにいるの?
ライオル 言っただろ? 味方が欲しいって。
ミサキ 何の味方よ?
ライオル オズを倒す味方だよ。
トーコ&ミサキ オズ!?
ライオル そう。この世界を不幸のどん底に変える悪。それが、オズ。
ミサキ オズ、ねぇ。
トーコ そういう夢なんだ。
ケイ いいでしょどんな夢だって。放っておいてよ!
ミサキ 呼び出しておいて、放っておいては無いだろ。
ケイ 私が呼んだんじゃないんだって。ライオル!
ライオル そうそう。ご紹介が遅れました。僕はライオル。ケイとはずっと一緒にいる夢の住人。
    言っておくけど、ケイとの付き合いは高校からのお二人よりもずっと長いので。よろしく。
トーコ よろしくお願いします。
ミサキ よろしくじゃない! なんで、食事中に呼び出されて、しかも、呼び出した張本人に、「私が呼んだんじゃ無い」
   なんて言われなきゃならないんだ。納得いかない!
トーコ 私たちを呼んだのはライオル君なんでしょ?
ケイ そうよ。
ミサキ (ケイに)あんたが作ったキャラが呼んだのなら、あんたが呼んだってことだろ。
トーコ だからそういうことじゃないんだよ。だよね?
ケイ そう。ライオルが勝手にやったの。
ミサキ さっぱり分からない!
トーコ 説明してあげてもいいけど、エゴとスーパーエゴの違いくらいは分かる?
ミサキ もういい!
トーコ それで、ライオル君。私たち、何をすればいいの?
ライオル うん。君たちには僕らの手伝いをして欲しいんだ。だって……
ケイ だって?
ライオル ケイには言いづらいけど……ブリキンとカシィは……

     と、音楽が流れてくる。

ミサキ なにこれ。
ケイ&トーコ 敵(てき)ね。
ミサキ え、なにその反応。
トーコ こういう時に、こういう音楽がかかってきたら、それは敵が現れたってことだよ?
ミサキ そうなの?
トーコ ね?
ケイ&ライオル 常識。
ミサキ 常識なのか。

7 敵との遭遇

     B・カシィと、B・ブリキンが現れる。先ほどと衣装が変わっている。黒い。

カシィ おやおや。どうやらおそろいのようだねぇ。
ブリキン だな。
ケイ カシィ! ブリキンも! 無事だったの?
カシィ カシィ? 誰だいそれは?
ケイ 誰って、カシィでしょ?
カシィ あたしの名前はカシィなんてダサイ名前じゃないね。そうだろ? B・B。
ブリキン (格好いい立ち方を探している)
カシィ B・B?
ブリキン (格好いい立ち方を探している)
カシィ B・B!
ブリキン 俺の名前はB・B。見ての通り、ナイスガイ!
カシィ そして、あたしはブラックキャシィ。様をつけなかったら殴るわ。
ブリキン キャシィ。
カシィ (ブリキンを殴る)様を付けろ
ブリキン キャシィ
カシィ (ブリキンを殴る)様を付けろ
ブリキン キャシィ〜
カシィ (ブリキンを殴る)様を付けろ!
ブリキン 申し訳ありません女王様。
カシィ よろしい。
トーコ ……これは、特殊な世界だね。
ミサキ 呆れて喋るの忘れてたわ。こんなのが仲間?
ケイ 違う。なんで? カシィ
カシィ キャシィだって言ってるでしょ!(と、ブリキンを殴る)
ブリキン なんで俺!?
ケイ ブリキンも……そんなんじゃなかったのに。
ブリキン その哀れみの瞳が俺の心を鋭く刺す!
ライオル すっかりオズに変えられてしまったみたいだね。
ケイ オズに!?
カシィ 変えられたんじゃないわ。本当の自分にさせてもらったの。ねぇ、B・B。
ブリキン 溢れる開放感。俺を縛る鎖はどこにも無い!アイ アム フリー!
カシィ お手。
ブリキン はしっ(素早くお手をする)
カシィ 待て。
ブリキン はしっ(素早く待つ姿勢)
カシィ これぞ、私たちの本当の姿。
ブリキン わん!(同意)
カシィ と、いうわけ。
ケイ なんで? 私たち、ずっと一緒だったのに。……私たち、仲間だったよね?
カシィ そんなこともあったねぇ。でも、あんただって分かってるんだろ? 
ブリキン&カシィ 人は、変わるんだ。
ライオル 言いたいことはそれだけか?
ケイ ライオル。
ライオル ケイ。辛いだろうけど、でも、コイツラを倒さないとオズのところまでは行けないんだ。
ケイ でも。
カシィ そんな急がれてもねぇ。今回は、(ケイに)あんたを徹底的に倒すって言うのがオズの考えでね。
   まだ戦うわけにはいかないんだ。
ミサキ じゃあ何しに出てきたのよ。
トーコ ミサキ。割り込んじゃ迷惑だよ。
ミサキ うるさいな。こういう、なんかよく分からない会話が一番腹が立つのよ。
カシィ そうね。さっさと要件を片しちゃった方がいいか。B・B?
ブリキン 準備はOK。
カシィ あたし達の目的は一つ。あんたらから、
カシィ&ブリキン ライオルを引き離す!

     カシィは言うと何かを下にぶつける動作。途端、あたりは真っ暗orえらい色に。

ケイ なにこれ!?
ブリキン ふん。

     と、ブリキンがライオルを担いで連れて行く。

ライオル うわぁあああああ。
ケイ ライオル!?
カシィ 空の果てで待っているよ。せいぜい三人で頑張ることね。

     カシィが去ると同時に、あたりは元に戻る。

8 三人

ミサキ 何だったの? 一体。 
トーコ 彼、連れて行かれちゃったね。
ケイ ライオル……そんな……
シャショー(声) 銀河鉄道、発車いたします。駆け込み乗車はおやめください。はい。駆け込み乗車はおやめください。

     電車の動き出す音

ミサキ ……あんた毎回こんな夢見ているの?
トーコ よく体力持つよね。
ケイ こんなの初めて。ライオルがいなくなるなんて。
ミサキ そんなに同じ夢ばっかり見るわけ? 
ケイ そういうわけじゃないけど。……なんていうかな、ライオルはあたしの一番そばにいる、友達だから。
  昔からずっと傍にいる。……空想の、だけど。いいよ。笑っても。おかしいだろうし。
トーコ 小さい頃には私にもいたよ。ウーちゃん。
ミサキ なんか前に聞いたなそれ。ウサギだったっけ?
トーコ レディオギア・ルクラウス。
ミサキ なんだそれは。
トーコ 耳が長くて、赤い目で、ピンクなの。
ミサキ ウサギだろ、それは。
トーコ 違うよ。レディオギア・ルクラウス。世界に一匹の珍獣なんだ。
ミサキ よく分からん。でも、そんな変てわけじゃないんだからさ。だから、なぁ?(と、トーコに振る)
トーコ 言ってくれればよかったのに。
ミサキ だよ。
ケイ 親のこと、マミィって呼んでるんだ〜って風に?
ミサキ まぁ、人それぞれ秘密はあるよ。うん。
トーコ でも、ずっと一緒だったのならなんで今、いなくなったのかな?
ケイ 分からない。……どうしよう。このままいなくなったら……あたし……。
ミサキ 空想のキャラクターでしょ? 別にまた作ればいいんじゃないの?
ケイ そんなんじゃない! ライオルは、そんなんじゃないの。
トーコ ウーちゃんもね。いなくなってから、もう出てくれなかった。ウーちゃんみたいのは出てきてくれたけど。違った。
ミサキ だからどうしろって? これはあんたの夢なんでしょ。あんたがどうにかしてくれなきゃ、
   あたしらには何も出来ないじゃない。
ケイ そんなこと言ったって……

9 やってくるキーパーソン

     と、歌のお姉さんな格好のトトがやってくる。

トト お困りですか? お困りじゃないですか? お困りですよね?
ケイ あなたは……?
トト 困ったあなたのためのパーソナリティ。司会進行に、お助けキャラまでこなす、キーパーソン。トトです。
ミサキ トト?
トーコ オズの魔法使いで、ドロシーが飼っている犬?
トト 犬とか言わない! さぁ、ではご説明させていただきましょう。この列車、銀河鉄道はどこに向かっているのか。
  そして、オズの目的を。
ミサキ なんでそんなことあんたが知ってるんだ?
トト 司会者ですから。
ミサキ&トーコ なるほど?
トト さて。マイク!

     袖からマイクが飛んでくる。

トト はーい。こんにちは。夢の案内人、トトです。ここはどこかな? そう、見ての通り銀河鉄道。オズの元へと向かう列車内。
  何もないように見える? そこは心の目を通して見ろよってことで。ではまずはおさらい。オズはブリキンとカシィを洗脳し、
  自分の子分へと変えました。さらに、ライオルを誘拐。全ては、ケイをたった一人にするための策略でした。
ミサキ え、でも(あたし達が)
トト しかし! ライオルはさらわれる前に、人間の仲間を呼び寄せていました。口より先に手が出る女。サクライミサキ!

     音楽。

トト ポーズ。
ミサキ え?
トト ポーズとる! 早く。
ミサキ は、はい。(と、ポーズを取る)
トト 頭のよさはメンバー随一。コマツナトーコ!

     トーコはちゃっかりポーズをとっている。

トト 彼女らに守られし、我らがグループのリーダー! シロドケイ!

     ケイがポーズをとる。

トト 果たして三人は、ライオルを救えるのか?夢物語第3470話。「銀河鉄道に手を振って」堂々開幕です!

      音楽やむ。

ミサキ って、何よ今の!?
トト 説明、ですかね?
ミサキ 首かしげながら言うな!
トト というわけで、終わったので帰ります。
ミサキ ちょっと!
トト あ、もし用があったら元気な声で、「お姉さーん」って呼んでください。気が向いたら出ます。じゃ。

     トトが去る。

トーコ 毎回、こんな感じのノリなの?
ケイ ……うん。
トーコ 落ち込んでる?
ケイ うん。
トーコ まぁ、分かるよ。自分の夢って人に見られるとつらいよね。
ミサキ 毎回やってるんだったら落ち込むな! 知らずに辱めを受けた人間だっているんだから!
トーコ 結構ポーズ決まってたよ?
ミサキ うるさい! ほら、立って。とりあえず、行くよ?
ケイ どこへ?
ミサキ その、ライオルって言うのを探すんだろ。そうするのが目的みたいだし。
トーコ 自然に目が覚めるのを待つって手もあるよ?
ケイ ……ううん。行こう。
ミサキ まぁあんたの夢なんだし? あたしらも、起きるまではあんたについてってやるよ。
ケイ ……別に、いいよついてこなくて。あたし、一人で行くから。
ミサキ 呼び出したのはあんただろ!
ケイ あたしは呼んでない! 

   と、ケイが歩き出す。ミサキがついていく。

ケイ ついてこないでいいって!
ミサキ うるさい! さっさと歩け!

     ケイとミサキが去る。

トーコ まったく。仲がいいんだか悪いんだか。

     トーコが去る。
     雰囲気が少し変わる。

10 一方その頃

     辺りを伺いつつカシィと、ブリキンが来る。
     反対方向からオズがやってくる。変な格好。

オズ あ、ブリキンに、カシィ! 見(てよ どうこれ)
カシィ このバカァ!

     カシィがいきなりオズを殴る。

オズ な、殴ったね。
カシィ 馬鹿! あんたいきなりそんな緊張感のかけらも無い声を出してどうする!? 
ケイに見られたら、全ておじゃんでしょ!
オズ だからって殴ること無いだろ。一応、君らのボスなんだけど。あと、おじゃんなんて久々に聞いたよ。
カシィ そういうのはボスらしい事をやってから言え。
オズ だって、いつも一人だったから。仲間が出来ただけで嬉しくて。
カシィ 言い訳しない。
オズ はい。あれ? ライオルは?
ブリキン 休ませてある。
カシィ 疲れているみたいだからね。
オズ そっか。ねぇ、ブリキン。ものは相談なんだけど。
カシィ ストップ。
オズ え?
カシィ ボスらしく。
オズ どんなだよ、ボスらしいって。
カシィ 威厳! 威圧! 意志の強さ!
オズ ハードル高っ!
カシィ いいからやる!
オズ はい! なぁ、ブリキン。ものは相談なんだが。合体攻撃をね、(したいんだけど)
カシィ ボスは相談しない! 命令。
オズ うむ。命令なんだが。
カシィ なんだが言わない。
オズ 命令、だ。
ブリキン はは。
オズ (と、歩き途中で振り返り)こんな感じ?
カシィ 振り返らない!
オズ はい! もう。一人じゃ無いって疲れるなぁ。
カシィ 何か?
オズ いえ! ところで、ケイたちは? 追ってきてないみたいだけど。
カシィ そういえば……
ブリキン 反対方向行ってたりして。
オズ はは。まさかぁ。ねえ?……え、うそっ。本当に!? じゃあ、追わなきゃ!
カシィ ボスらしく!
オズ 何をやっているんだ。早く追いかけるぞ。
ブリキン ははっ。

     と、オズとブリキンが去る。

カシィ 全く。一々世話が焼ける。(と、去る)

     雰囲気が変わる。

11 道の途中。

     と、ケイ&トーコ&ミサキがやってくる。三人とも疲れた表情。

トーコ ねぇ。言いにくいんだけどさ。
ミサキ じゃあ言うな。
トーコ ねぇ。
ミサキ なに。
トーコ こっちじゃないんじゃない?
ミサキ ……やっぱり、あんたもそう思う?
トーコ だって、もう結構歩いているよ。まぁ、夢の中だから仕方ないけど。なにも起こらないし。ちょっと疲れちゃった。
ミサキ あたしも。何で夢の中で疲れなきゃいけないんだ。

     ミサキとトーコがその場に座る。
     ケイは二人を一瞬見て、歩いて行こうとする。

トーコ ケイ?
ミサキ どこ行くの?
ケイ 先に進む。疲れたんでしょ。座ってれば。
ミサキ あんただって、疲れたんじゃない?
ケイ 別に。平気だから。
トーコ ケイ。ちょっとだけ休も? ちょっとだけだから。

     ケイが座る。
     誰かしら話し出さないかと期待する間。

ミサキ ……しかし夢の中まで一緒とはね。変な三人組だ。
トーコ ね。
ケイ 3月までのね。
ミサキ なんで?
ケイ 別に。
トーコ ケイ、どっか引っ越すの?
ミサキ え? 引っ越すの!?
ケイ 引っ越さない!
トーコ じゃあ、4月からも一緒だね。
ミサキ びっくりさせんなよ。
ケイ 引越しなんかしなくたってさ、変わるし。
ミサキ 何が?
ケイ ……別に。
ミサキ ああああああ! もうやだ。言いたいことがあるなら、ちゃっちゃと言いなよ! ちゃっちゃと! 何? 
   さっきから、変に突っかかったりさ! 勝手に引きこもるし! なんなの一体!
トーコ ミサキ、落ち着いて。
ミサキ これが落ち着いていられるか! こういうのイライラするんだよ。
ケイ イライラするなら見なきゃいいでしょ。
ミサキ ほら! こういうこと言う。ああ、もうやだ。やだやだやだやだやだやだ! いやだー!
トーコ ミサキ、落ち着いて。
ミサキ だから、これが落ち着いていられるか!
トーコ 落ち着け。
ミサキ ……(そっぽを向いて座る)
トーコ ……私も、ミサキも心配なんだよケイのことが。
ケイ ……
トーコ 話したくないんだったら、無理に聞かないけどね。
ケイ ……小学校の頃、さ。
トーコ うん?
ケイ 小学校の頃、仲がいい友達がいたの。トーコみたいに、頭良くて、ミサキみたいに真っ直ぐで。
  一緒にいるのが楽しくて。こういうのが友達なんだって、思ってた。……中学はさ、その子私立だったんだ。
  ずっと友達だよって、二人で家庭科の時間に作った人形を交換し合ってさ。あたしが作ったの、凄い下手で。
  あの子のは、もらうのがもったいないくらいよく出来てて。
  あたし、凄く目立つ場所に人形を置いて。いつも学校から帰ってきたら一人で見てた。中学では全然友達できなくって。
  でも、あたしにはあの子がいた。大丈夫って思ってた。連絡しなくっても、つながってるって。勝手に思ってて。
  ……中二の終わりに、偶然、町で会ったんだ。一瞬誰か分からなかった。これからデートなんだって言われて。
  話したいこといっぱいあったはずなのに、全然浮かばなくって。とっさに、「人形」って言葉が出てきちゃって。
  そのまま、言ったんだ。「人形、うちに飾ってあるんだ。卒業式のとき交換した奴。机の上において」

     と、可愛く着飾った少女(カシィ)が出てくる。

少女 「ごめん。あたしそれ、捨てちゃった」
ケイ あ、そうなんだ。
少女 「取っておこうとは思ったんだけど」
ケイ ううん。いいよ。ほら、下手くそだったし。あたしは、宝物だって思ってたんだけどな。
少女 「ごめんね。そんな風に思ってなくて。……あ、あたしもう行かなきゃ」
ケイ そっか。じゃあね?
少女 「うん。またね。……今度メールするよ」

     少女が去る。

ケイ それっきり。おしまい。メールもなし。一度こっちから送ったら、あて先不明で戻ってくるし。仕方ないんだよ。
  人間変るもんね。生まれてからずっと変わらない人がいたら、それこそ変だし。ね? なんか、暗い話になっちゃったけど、
  あれだ。あれってなんだ。つまりさ。どうせ、変わるんだからさ。離れることになるんだからさ、そんなさ。
  くっつかないで欲しいんだよね。別に友達なんて必要としてないんだから。

     ケイが、そのまま去ろうとする。

ミサキ 待ちなよ。
ケイ なに? 
ミサキ 言い逃げすんの?
ケイ 何、言い逃げって。
ミサキ 真面目に聞いてりゃ泣き言ばっかり。つまり、「離れないで」ってことだろ? だったらそう言えよ。
ケイ そんなこと言ってない。
ミサキ 自分ばっかり不安なつもりでさ。ばっかみたい。
ケイ 誰が馬鹿よ!
ミサキ 馬鹿じゃなきゃトンマだ。
ケイ 何とんまって。久々に聞くんだけど。意味分かって使ってるの?
ミサキ トンマってのはトンのマだよ。決まってるだろ。
ケイ それ何の説明にもなってないんだけど。
ミサキ だから、馬鹿だって言ってんだよ。
ケイ 放っておいてよ! 私は、一人がいいの! 何も分からないくせにごちゃごちゃうるさい!
ミサキ 分かってないのはどっちだ!
ケイ うるさい!
ミサキ あんたがこんなに馬鹿だとは知らなかった。ああ、呆れました。本当やんなった! あたし行くからね! 
   行くったら行くからね! もう、絶対、あんたなんて知らないから!

     と、ミサキが去る。

トーコ ミサキ!
ケイ トーコも、もういいよ。ミサキと一緒に帰って。あたしは、一人でいいから。
トーコ ……寂しかったんだよ。あたし達。
ケイ え?
トーコ ずっと、友達だって思ってたから。離れっこないって思ってたから。
   なのに、ケイは悩んでいるのに何にも言ってくれないから。ずっと、寂しかったんだ。
ケイ そんなこと……
トーコ ……高校一年のとき、同じクラスの中で、あたし達だけクラスに中学までの知り合いいなくてさ。
   それで、仲良くなったんだよね。あたしたち。
ケイ ……うん。
トーコ 二年になっても同じクラスでさ。いろんなとこ行ったよね? 旅行の班も、くじ引きだったのに、クジ交換してもらって。
   懐かしいよね。修学旅行。もう、半年も前だけど。
ケイ うん。
トーコ ミサキは専門だし、あたしは一応国公立狙いだし。多分バラバラだろうなぁって、思ってた。
   ……でも、三人ともずっと一緒だろうなって、ずっと馬鹿やったり、時々一緒に遊んだり、大人になったら、
   一緒に飲みに行ったり。……するんだろうなってあたしは思ってたんだ。きっと、ミサキだってそう思ってて。
   ケイも、そう思ってくれているんだろうって思ってた。
ケイ ……ごめんね。そんな風に思えてなくて。
トーコ ううん。ケイの気持ち聞けて少しすっきりした。
ケイ ……あ、あたしもう行かなきゃ。
トーコ そっか。じゃああたし、行くね?
ケイ うん。またね。今度メールする。
トーコ ……うん。待ってるね。

     トーコが去る。

ケイ ……今の、言葉……あの子が言ったのと同じ……馬鹿だ。あたし。(と、うつむく)

12 ボスとの遭遇@

オズ(声) おやおや、一人かね?

     オズがやってくる。でかいマント姿。

ケイ オズ!?
オズ あんまり遅いから、こちらから来てしまったぞ。
ケイ ライオルはどこ?
オズ さぁ、どこかな? 私を倒せたら教えるというのはどうだろうか?
ケイ その言葉、忘れないでよね! いでよ! 剣!

     と、剣が飛んでくる。

オズ え、そんなのこれまで出たことあったっけ。
シャショー(声) 説明しよう! ケイの呼びかけによって飛んでくる剣は、聖剣エクスガリバー。ようするに、剣?
オズ 説明になってないだろそれ!
ケイ いまだ!

     ケイがオズを切る。

オズ ぎゃあああ。く、しかしこの程度では、

     ケイがオズを切る。

オズ ぐあああああ。く、なかなかやるな。しかし、

     ケイがオズを切る。

オズ ぐおおおお。な、なるほど。どうやら、この姿では失礼だったよう

     ケイがオズを切る

オズ ぎゃああ。せ、台詞を言わせて、

     ケイがオズを切る。

オズ ぐっはああ。

     オズが倒れる。と、ケイはオズの胸倉を掴みつつ

ケイ さあ、ライオルはどこ!?
オズ 今の回数だと、普通にやられていると思うけど。
ケイ 生きているんだからちゃっちゃと話なさい。
オズ 分かった。話すから、まずは手を放してくれ。
ケイ 話したら放してやるわよ。
オズ 話すから放せ!
ケイ 先に話せ!
オズ 話したら放すって、わけが分からなくなるから、とりあえず手をお放しください。

     ケイが手を放す。

オズ ふふふ。どうやら、この姿では失礼だったようだ。
ケイ ライオルの居場所を教えるんじゃなかったの!?
オズ そんなこと言いましたっけぇ?

     ケイが切ろうとする。

オズ キャシィ!

     カシィがやってくる。

ケイ カシィ……
オズ ここは任せたぞ。準備をしてくる。
カシィ はいはい。
オズ 見せてやろう、私の真の姿を!

     オズが去る。

ケイ 待て!
カシィ おっと。しばらくここは通さないわよ。
ケイ カシィ……。お願いだから、元の姿に戻って。
カシィ あたしはこっちの方が性に合ってるのよ。
ケイ カシィはそんなんじゃない!
カシィ ……あんただって変わっているくせに。なんであたしは変わっちゃダメなの?
ケイ だって、カシィは私の仲間だから……
カシィ 怖いだけでしょう? 外見や、趣味が変わったくらいで、気持ちまで変わってしまうんじゃないかって。
   みんな変わるって自分で言っておいて、誰もが変わらないで欲しいって願ってる。
ケイ そんなこと分かってる!
カシィ 分かっているなら、変わったあたしのことも分かりなさいよ! ……そうすれば、また仲間に戻れるかもしれないわよ。
ケイ え?
カシィ ほら、もう準備は出来たの?
オズ(声) もちろん!
カシィ 今回のオズは手ごわいわよ。一人で倒せるかしら?

     カシィが去る。

ケイ カシィ!
オズ(声) さぁ、第二ラウンドといこうか。

13ボスとの遭遇A

     オズがやってくる。ありていに言ってでかい。ブリキンがオズを肩車している。

ケイ でかっ。
オズ はっはっは。
ブリキン はっはっは。
オズ&ブリキン そうとも。
オズ ラスボスって言うのはでかくなるものなんだ。どんなRPGだってそうだろ?
ブリキン だろ?
ケイ 体がでかくなったくらいで、何が変わるって言うのよ!

     ケイが剣を振りかぶる。が、オズの動作で弾き飛ばされる。

ケイ 剣がっ
オズ・ブリキン はっはっは。
オズ 今の私にとっては、ハエが止まる動きだったよ。
ブリキン たよ。
ケイ くっ。
オズ これで、終わりかな? 
ブリキン かな?
オズ カシィ。つれて来い。
カシィ(声) はいはい。

     と、カシィにつれられてライオルが現れる。後ろ手に縛られている。

ケイ ライオル!
ライオル ケイ!
オズ 最後にライオルに会わせてやる。感謝するんだな。
ブリキン だな。
ケイ ライオル、ごめん。助けられなかった。
ライオル オズ! 女の子をいたぶってそれでもラスボスか!
オズ 不思議なけちの付け方だな。悪いが私は、
ブリキン 俺は、

同時に
オズ 男女平等に、いたぶるのが好きなんだ!
ブリキン 男女平等に、いたぶられるのが好きなんだ!

ライオル 自慢された……。
オズ さあ、ではそろそろ終わりにしようか。
ミサキ&トーコ お待ちなさい!
オズ なにやつ!?

     と、ミサキとトーコがやってくる。本人達だと分かるが、変装している。

ミサキ 女一人にずいぶんとひどいことやってくれるな。
トーコ おいたをする子は私たちが許しませんよ!
ケイ トーコ? に、ミサキ?
ミサキ 違う! 我々は断じてそんなのではない!
トーコ 「バレバレだよ?」って言ったんだけどね。
ミサキ ばか! あれだよ、私たちはほら、なんだ。二人で一組のあれなんだ! そう思え。
ケイ 帰ったんじゃなかったの?
トーコ そうしようと思ったんだけど、ミサキに怒られちゃって。酷いよね。あたしにケイの説得を任せたつもりだったんだって。
ミサキ 帰り道も分かってないのにどうやって帰るのかって言っただけだ。
トーコ 「三人でじゃなきゃ意味ないだろ」って言ったくせに。
ミサキ うるさい! ああ、もう邪魔だ!(と、返送道具を捨てる)……ってわけで、三人で帰るから。
ケイ でも、私、(酷いこと言って)
ミサキ 変わってくのが怖いんだったら、一緒に変わればいい。それだけだろ。
トーコ ケイと一緒じゃなきゃ嫌なんだって。ミサキは。
ミサキ 一言多い! ほら、なに変な顔してるの。
ケイ ごめん。
ミサキ いくよ!
ケイ うん!

     三人はオズを向く。何か凄い調子のいいムード。

オズ はっはっは。無駄無駄無駄!

     が、オズに三人とも速攻やられる。

ミサキ そんなっ。
トーコ 物語的に、今ので敵を倒してハッピーエンドだと思ったのに。
オズ 甘い甘い。そんな簡単にはやられませんよ。これで最後だからな!
ケイ ごめん。私の夢のはずなのに。
ミサキ あんたが謝ること無い。
トーコ きっと、何か手があるよ。ね。
ケイ 何かって言われたって……

14 お姉さん

     と、声が流れる。

トト(声) もし用があったら元気な声で、「お姉さーん」って呼んでください。
ケイ お姉さん。
ミサキ え?
トト(声) 気が向いたら出ます。
ケイ お姉さんを呼べばどうにかなるかも。
トーコ トト?
ケイ うん。
ミサキ よし、じゃあ、呼ぶか。
オズ なんだ? なにをする気だ?
ミサキ せーの。

三人 お姉ーさーん。

     何も起きない

ミサキ うわっ。凄い恥ずかしい。
トーコ ちょっと、照れちゃうね。
ケイ なんで何も起こらないの?
トト(声) だって、やる気を感じないからさぁ〜。

     どこか違う場所にトトが現れる。

ケイ やる気って……
トト もっとこう、切実な? パワーが欲しい。
ミサキ そんなこと言われたって。
トト 後楽園の子供たちのような情熱? ヒーローに出てきて欲しいっていう、愛情? そういうのが、足りない。全然足りない。
ケイ どうしろっていうの!
トト 叫んで! 力いっぱいに。
ケイ そんなこと言われても、
ミサキ 急には出来ないよ。ねぇ。
トーコ うん。
トト しょうがないなぁ。(と、客席に)さぁ、じゃあ、みんな。みんなのパワーをあの三人にあげてください。いいですか? 
  これやってくれないと、芝居進みませんからね? はい。じゃあ、右手を上げて! そう! 左手もあげて! 
  左右に揺らして〜。空気中にあなたのパワーを集めてください。はい、揺れて〜揺れて〜。
  そして、右手と、左手のしわとしわを合わせて、幸せパワーを、前に押し出す! そう、今だ!

(※ 観客には楽しく盛り上がってもらいましょう)
(※ 冷たい反応されても観客に怒ったりしないようにしましょう)


三人 お姉さーん!

     照明が変わり、トトが現れる。

トト おめでとうございま〜す。現れました〜。
ミサキ なんか、すっごい無駄に疲れた気がする。
トト 何か言いました?
ミサキ いえ、別に。
オズ 何だお前は。
トト あるときは司会のお姉さん。あるときは、キーパーソンを名乗るお調子者。して、その実態は!
ケイ&ミサキ&トーコ&オズ&ブリキン その実態は?
トト すきあり!(と、素早くオズ(ブリキン)に一撃を与える。)
ブリキン ぐおおおお。
オズ し、しまった。しかし、それしきの攻撃で。
トト それはどうかな?
オズ なに?
トト 百以上ある人体のツボのうち、消化器系のツボをついた。あなたを乗せている彼。
  もうじきトイレに行きたくてたまらなくなることでしょう。
オズ え、それって。
ブリキン ぐあああああ。
トト あえて言おう。貴様の出番はすでに終わっている。
オズ ちょ、ちょっと、こういうのあり? ねぇ!

     と、言いながらオズとブリキンが去る。

トト 一丁あがり。
ケイ すごい。
トーコ あっという間に倒しちゃったねぇ。
ミサキ 最初っから呼べばよかったんじゃない?
トト では、これにて。また、用があったときは、いつでも呼んで下さい。
ケイ もう、呼びたくは無いなぁ。
トト だと思った。(と、去る)
ケイ ……カシィ。
カシィ ……ほら。変わっても、変わらないものもあるでしょう。
ケイ え?
カシィ (がらりと雰囲気変えて)ボスがやられたとなっちゃ、こちらの負けみたいね!

   と、カシィはライオルを突き飛ばす。

ケイ ライオル!(と、ライオルに寄る)
カシィ じゃあね。結構、楽しかったわ。

   カシィが去る。

ケイ カシィ!

15 銀河鉄道を降りるとき

     あたりの雰囲気が変わる。

ミサキ ……終わったの?
トーコ どうだろう。……ケイ?
ケイ 多分。終わりだと思う……じゃあ、帰ろう? ……ライオル?
ライオル ……駄目なんだ。僕。
ケイ え? 何が?
ライオル ここで、お別れなんだ。
ケイ どういうこと?
トーコ 銀河鉄道。やっぱりそうか。
ミサキ トーコ?
トーコ 考えてたんだ。なんで、今回はいつもと違うんだろうって。私たちが呼ばれて、ライオル君がさらわれて。
   オズってボスが倒されて……これまで、オズはやられたりしなかったんだよね?
ケイ うん。でも、それは私たちがオズまでたどり着けなかったから……
トーコ なんで今回はたどり着けたのかな? そう思ってたら、この列車が頭に浮かんだ。銀河鉄道。友との、別れの列車。
ケイ 何言ってるの?
ライオル 皆で決めたんだ。終わりにしようって。
ケイ 何、言ってるの? みんなって?
ライオル オズや、ブリキンや、カカシィや、トトだよ。このままだと、君は夢の世界に逃げてばかりだから。
ケイ 私逃げてなんて、
ライオル 逃げてただろ? 僕らと一緒にいる時間が長くなって。おかしいって自分で分かっているくせに、
    ずっと自分をだましてただろう? 変わってきてるのに、変わってないふりしてただろう?
ケイ そんなことない。
ライオル 僕に嘘はつけない。僕は君なんだ。……だから、行くことにしたんだ。本当はもっと早くそうしなきゃいけなかった。
    だけど、出来なかった。君を、一人にしたくなかったから。
ケイ じゃあ行かないでよ。私、一人になっちゃうよ!
ライオル 君は一人じゃない。だって、友達が一緒にいてくれるじゃないか。

     ミサキとトーコとケイが顔を見合わせる。

ライオル ……空想である僕らは、本当は、小さい頃の思い出と一緒にいつの間にか薄れていくはずなんだ。
トーコ 私の、ウーちゃんみたいに?
ライオル だけど、ケイは怖がりだったから。一人になるのが寂しいくせに、離れるのが怖くて、
    誰とも長く一緒にいられなかったから。だから、僕が傍にいた。でも、もうそれも終わりにしなくちゃ。
ケイ どうしても、行くしかないの?
ライオル それが普通の事だって、君自身思っているんだよ? いつまでも空想の世界には生きられない。
    それは、ケイが一番知っているはずでしょ?
ケイ だけど。
シャショー(声) まもなく、この列車は空の果てに到着いたします。どなた様もお忘れ物の無いよう、お降りください。
ライオル 行かなくちゃ。言っておくけど、はっきり見えなくなってしまうだけで、僕はいつだってケイの傍にいるからね。
    僕は君なんだから。
ケイ でも、私、ライオルがいなくなったら……
ライオル ……もう、仕方ないなぁ。

     ライオルは少し笑うと、その胸から勲章を取る。

ライオル これをあげるよ。勇気の勲章。これをもらったら、誰だって勇気をもつことが出来るんだ。
ケイ 私……
ライオル 胸を張って。じゃないと、勲章に笑われるよ。

     そして、ライオルは去ろうとする。

ケイ ……ありがとう。
ライオル うん。
ケイ 一緒に居てくれて、ありがとう。傍で笑っててくれて、ありがとう。一緒に怒ってくれて。泣いてくれて、ありがとう。
  ……それから、あの、えっと、まってね。おかしいな。まだあるのに。まだあるんだ。もっと。まだあるんだって。
  ……だから、待って。もう少しだけ。……いいよ。一人でも。だって、これあたしの夢なんだから。どうせ、起きたら一人で。
  あたし、たった一人で。嫌だけど。でも、無理だから。だから。覚めなくていいから。いつまでも。あたしを……
  あたしを、一人にしないでよ!
ライオル ケイ……
ミサキ ばか!(と、ケイを抱きしめる)
トーコ ケイ! あたしたちがいる! 側にいるから。
ライオル ……勇気を出して、目を覚ましてごらん。そうしたらわかるよ。大丈夫。君は勇気の勲章を持っているんだ。
ケイ ……ライオル。

     ライオルは笑顔で去る。ケイが泣き崩れる。
     あたりが暗くなる。

16 終わりと始まりの場所。

ライオルが浮かび上がる。

ライオル 物語はこれにて閉幕。僕は――小さい頃、きっと誰もが生んだだろう僕らは、ただ静かに舞台を離れるのみ。
    ……だけど、もうほんの少しだけ少女の物語を続けよう。始まりは、こんな音から。

     チャイム音。
     ライオルが消えると、トーコとミサキが現れる。私服のまま。

ケイの母(声) はーい。どちらさま?
ミサキ あっ おばさん。こんにちは。
トーコ すいません。ケイ、まだ寝てます?
ケイの母(声) 休みの日まで悪いわね。どうぞ入って。部屋にいるから。
トーコ&ミサキ おじゃましま〜す。

     と、部屋の中。ケイは人形を手にしている。子供が作ったような人形。ライオルに似ている。
     ミサキとトーコとケイの間にはドアがあるらしい。

ミサキ ケイ! 起きてる?
ケイ うん。
トーコ 入っていい?
ケイ ……いいよ。

     ミサキとトーコが部屋に入る。あたりが明るくなる。

トーコ おはよ。
ケイ ……おはよ。
ミサキ ……元気じゃん。
トーコ その人形? 話してくれたの。
ケイ うん。(気づいて)夢、じゃなかったんだ。
トーコ 夢だったけどね。寝てたから。
ミサキ あったな、「夢だけど、夢じゃなかった!」ね?
トーコ うん。あったよね。よく真似したなぁ。
ケイ ……昔ね。
トーコ うん。
ケイ オズの魔法使いの本が好きだったの。勇気のないライオンが私みたいで。
  かかしも、ブリキも皆主人公のことが好きなのが羨ましくて。
トーコ あたしも、よく読んだよ。ミサキは?
ミサキ 本なんて読んだら目が痛くなる。
ケイ 不思議だったの。……ドロシーはなんで元の世界に帰りたがったんだろうって。
  そこにいれば友達も、欲しいものも手に入るのに。
トーコ 夢はいつか覚めるから。
ケイ ……そうだね。
ミサキ ……オズの魔法使いって、あたし、映画見たんだけど。見たことある? ミュージカルの奴。
ケイ (首を横に振る)
ミサキ オズの世界で見たライオンや、カカシ、ブリキもかな? は、みんな現実の世界でドロシーの側にいる人たちに
   そっくりだったってオチだった。……ま、だからなんだってわけじゃないけど。
ケイ ……そっか。……二人とも、ごめん。
ミサキ なぜ謝る。
ケイ 迷惑、かけたなって。
ミサキ そりゃあね。
ケイ ごめん。
ミサキ だから、そうじゃなくって……トーコ。あれ。
トーコ うん。はい。ケイ。(と、袋をケイに渡す)
ケイ なにこれ?
トーコ ミサキがね。夢の中でもらったものは、さすがに起きたら無くなってるだろうって。

     ケイが袋を開ける。中には、勲章が入っている。

ミサキ みっともなく探し回っているんじゃないかと思って。
トーコ 記憶を頼りに作ったから、ちょっと正確かどうかは怪しんだけどさ。
ミサキ ほら、付けてあげるから胸張って。
ケイ ……うん。

     ミサキがケイに勲章をつける。

トーコ (ミサキに)ねぇ?
ミサキ ああ。

     ミサキとトーコが勲章を見せる。勲章は三つあった。

ミサキ あんた一人じゃ不公平だと思って。
トーコ 三人、一緒がいいよねってミサキが言って。
ミサキ うるさい。
ケイ うん。ご(めんね)
ミサキ こら。
ケイ え?
ミサキ 謝るな。あたし達、悪いことしたみたいじゃんか。
トーコ そうだよ。
ケイ うん……ありがとう。
トーコ うん。
ミサキ ……やっと言ったよ。
トーコ ね。
ケイ ……あのさ……学年が変わって、三年になっても、一緒にいてくれる?

   ミサキとトーコが顔を見合わせる。

ミサキ (意地悪く笑って)さぁ、どうかな。
トーコ って言ってるから、ミサキだけ仲間はずれにしよう。
ミサキ こら! 三年になっても、なんて限定するな。一年で終わらせる気?
トーコ ミサキは欲張りだから。
ミサキ おい!
ケイ 本当だよね。
ミサキ ケイまで、あたしを悪者にするなよ!

     ケイが二人に言う。「二人とも大好き」
     ミサキが照れる。トーコは嬉しそうに言葉を返す。
     ケイが照れる。ミサキが照れながら同じ言葉を
     二人にかける。三人は笑う。
     違う世界から、オズやライオルやブリキン、
     カシィやトトが見守って笑っている。
     シャショーが現れ、皆を違う場所へと案内していく。
     溶暗


参考文献 銀河鉄道の夜(宮沢賢治 ちくま文庫)
       オズの魔法使い(岩波少年文庫)

あとがき
起きたらほとんど忘れてしまうのだけれど、夢を見た瞬間夢の中で
「あ、これこないだ見た夢の続きだ」とはっきり分かることがありませんか?
その夢では、夢の中でしか会えない人もいたりして、
目が覚めたときにちょっと残念な気持ちになったり、
何で今になってあの夢の続きを見たんだろうと悩んだりすることがありませんか?
もしかしたらその夢はこの物語のライオルのような存在が、
見せている夢なのかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。