ナツミさんの憂鬱
楽静
登場人物
神宮寺 ナツミ | 高校一年生 この物語の主人公(?) 最近、幼なじみとの友情と恋の境目問題で ちょっと憂鬱。 |
松本 ツヨシ | 高校一年生 ナツミさんの幼なじみ。 DJ志望。電波に載せて、ナツミさんへの 思いを飛ばす野望有り(?) |
鈴木 クミコ | 高校一年生 ナツミさんの親友。 恋愛下手で、告っても振られる。 親友のナツミさんと最近微妙。 |
相川 レイコ | 年齢不詳 ナツミさんの敵(?) 不思議な力によって、未来を当てる。 年齢は秘密。 |
吉岡 君 | 高校一年生 ナツミさんの知らない人。 クミコのクラスメイトらしい。 クミコの変わり様に驚くが……? |
クミコは俯く。
辺りがうっすらと夕焼けの風景へと変わっていく。
街角、夕暮れが支配している。
クミコを慰めるナツミ
占い小屋をぱぱっと作るレイコ
ヤケに薄暗い場所にあるそれは、どこかもの悲しい。
心配そうに2人を見るツヨシに気づいて
ナツミは追いやる仕草をする。去るツヨシ
4者はそれぞれの行動をしている。
と、クミコが足を止める。
引っ張っていたナツミは一瞬転びかけるが、
こらえてクミコに向く
音楽は徐々に下がっていく
1 占い小屋のある帰り道
ナツミ「ほら、クミコ」
クミコ「もういいよ」
ナツミ「なにがいいのよ」
クミコ「もう放っておいてよ」
ナツミ「いい加減元気出しなさいよ」
クミコ「元気なんてでないよ〜」
ナツミ「振られるのはいつものことでしょ〜」
クミコ「ナツミには、わからないよ。この、胸の痛みは!」
ナツミ「そりゃわからないけど」
クミコ「って、いきなり切り捨てないでよ! なんかあるでしょ?慰めの言葉が」
ナツミ「え? だって、毎度のことだし」
クミコ「ナツミ、最近冷たいよね」
ナツミ「だって、クミコってば振られた回数、これでもう二桁でしょ?
いい加減慣れなさいよ」
クミコ「慣れる分けない! それに、まだ二桁行ってないよ」
ナツミ「そうだっけ? えっと、まず秋山先輩でしょ」
クミコ「うぅっ(なんか傷ついているらしい)
ナツミ「岩崎君、うっくん、遠藤、岡田先輩」
クミコ「(名前を呼ばれるたびに傷ついていく)」
ナツミ「木下くん、ブライアン、武者小路様、河田先輩!」
クミコ「ぐっはぁ(ついに耐えられなくなって倒れた)」
ナツミ「(気づかずに)本当だ。……それにしても、入学してから半年で9回って」
クミコ「お願いだから言わないでよ! 今はそんなこと聞きたくないの!」
ナツミ「(苦笑しつつ)そんないい男だったかなぁ? 河田先輩って」
クミコ「何言ってるのよ! あの(首筋を撫でながら)
胸鎖乳突筋の美しさ!」
ナツミ「どこよそれ」
クミコ「(無視して)僧坊筋のがっちりさ!」
ナツミ「だから……(クミコを見て)あ、ここなんだ。へぇ……」
クミコ(自分の腕の手首を掲げ)前腕屈筋群に浮く血管!」
ナツミ「うわっ。気持ち悪っ」
クミコ「(力こぶを作って)上腕二頭筋はもちろんのこと、
上腕三頭筋のしまり具合のよさったらもう……」
ナツミ「『もう』って言われても」
クミコ「さらに――」
ナツミ「もういい」
クミコ「でも、これから「ひらめ筋」の美学について――」
ナツミ「もういいってば! 正直、そんなに筋肉に詳しい女の子って、気持ち悪い」
クミコ「うっそぉ!? だって、河田先輩マッスルだから、
きっと筋肉好きだろうと思って調べたのに」
ナツミ「そして、その知識を使うことなく振られたってわけか」
クミコ「その通り」
ナツミ「しかたないよ。終わった恋は忘れなさい」
クミコ「そんな簡単には忘れられないよ………いいよね、ナツミは余裕で」
ナツミ「彼氏なんて、いなくても困らないからね」
クミコ「そんなこと言って。松本君といい感じのくせに」
ナツミ「ツヨシ? (慌てて)アイツは駄目。男なんて思ったこと無いし」
クミコ「幼なじみって、結構漫画や小説だとベタな設定なんだけどなぁ」
ナツミ「あり得ないから小説になるのよ」
クミコ「そりゃそうか。でも、松本君って優しいじゃん♪」
ナツミ「優しいだけよ」
クミコ「うわっ、厳しい。松本君だってもてないわけじゃないのになぁ」
ナツミ「そうなの!?」
クミコ「うん。時々私だって「あ、いいかも」って思う時あるよ?」
ナツミ「……クミコ、目の医者行きなさい」
クミコ「だーかーら。ナツミはいつもそばにいるから分からないんだよ。失ってから気づくことって
あると思うなぁ………河田先輩〜(なき崩れる)」
ナツミ「大丈夫。クミコの場合、初めから先輩は遠い場所にいたから」
クミコ「そっか(いきなり泣きなおり)んじゃしかたないっか」
ナツミ「立ち直り早っ」
クミコ「だって、いつまでも泣いていたって仕方ないじゃん。
じゃあ、今度は近くの人を好きになろっかな」
ナツミ「いいじゃない。別に恋人なんていなくたって」
クミコ「やだ。欲しい」
ナツミ「せっかく、孤独が似合う秋なんだし」
クミコ「寂しい秋だからこそ、人肌が欲しくなるんだよ」
ナツミ「人肌、ねぇ…………」
クミコ「あ! やだぁ、もう、ナツミのエッチ」
ナツミ「なんでそうなるのよ」
クミコ「人肌って言っても、そっちじゃないんだよ」
ナツミ「(慌てて)そんなことより、まずテスト勉強しないと、
やばいんじゃない? 中間だって」
クミコ「ああ、それは、ナツミ様のお力をお借りいたしますから、
大丈夫大丈夫」
ナツミ「調子いいわねぇ」
と、突然舞台奥に、レイコの姿が浮かび上がる。
レイコ「あぶなーーーい!」
思わずナツミとクミコはその場に止まる
舞台の奥にいたレイコが叫んだのだ。
しかし、まだ顔は見えない。
レイコ「はい、そのまま止まって。よし、オッケー!」
クミコ「ちょっと、なんですかあなた?」
ナツミ「クミコ! あれ!」
ナツミが言った途端、車のブレーキ音と、
衝突音があたりに響き渡る。
そして、なぜか猫のぬいぐるみが飛んでくる。
レイコ「はい! 素早くキャーーーチ!」
言われたとおりに、思わずクミコは猫をキャッチする。
レイコ「ナイスきゃーーーち♪」
クミコ「うわあああ」
思わずナツミにパスしてみたり
ナツミ「なにこれ!?」
レイコ「おめでとう!」
クミコ「え?」
レイコ「あなた達は、未来を変えることに成功したのです!」
ナツミ「はぁ?」
クミコ「未来を、変える?」
レイコ「本当ならその猫は、跳ねられたまんま道路に衝突して、生々しく死んでしまうとこだった。
それをあなたが救ったのよ! どう? 生きてる?」
ナツミはレイコの言葉に猫の体をよく確かめて
ナツミ「大丈夫、みたい。なんか、ぶらぶらしているけど」
ナツミ、ネコを軽くいじってみたり。
レイコ「よかった。ああ、自分の力が恐ろしい。……また、一つの命を救ってしまった」
クミコ「なんなの? ねぇ、一体何が起こったの?あなたは? ここは?」
レイコ「私は」
ナツミ「(素に戻って)馬鹿。
(と、クミコを舞台はじっこまで引っ張って)
ここは、○○駅前でしょ」
クミコ「(同じく素に戻って)うっそぉ!? 練習の時は、△△駅だったじゃん」
ナツミ「だって、△△駅には、あんなの(占い師を指し)いなそうだったから」
クミコ「でも、○○駅なんて、マイナーすぎると思うけど」
ナツミ「そんなことないわよ。(一番前の席の客に)ねぇ? 知ってるよね、
○○駅。ね? 知ってるでしょ? ……知ってるって言えよ!」
クミコ「ナツミ、いきなり喧嘩売らなくてもいいから」
ナツミ「だって、一番前の席に座っているのに、○○駅も知らないなんてあり得ないでしょ?」
クミコ「そうだね。私は知っているから、落ち着こうね?」
クミコはナツミを落ち着かせたり。
レイコ「私の名前は相川レイコ」
クミコ「なんですか、おばさん。」
レイコ「おばさんじゃない! レイコさんっていう、占い師の、お姉さん、よ」
ナツミ「占いしぃ?」
レイコ「そうよ。ほら? 格好だって、それっぽいでしょ?」
ナツミ「占い師って言うより……」
クミコ「ホステス?」
ナツミ「化粧濃いしね」
クミコ「いくつか分からないし」
ナツミ「無駄にハイヒールだし」
クミコ「衣装派手だし」
ナツミ「あれ、部費で買ったのよ、自分のために」
クミコ「うっわー。(一番前の客に)こういうのってアリなんですかね? ね?」
レイコ「悪かったわね! そうだ、あなた(と、クミコを指し)名前は?」
クミコ「私? ……鈴木クミコ、だけど」
レイコ「平凡な名前」
クミコ「うっ……気にしているのに……」
レイコ「まぁ、天格(てんかく)17に人格(じんかく)7、ってとこね。姓名判断ではそこそこの運命よね」
クミコ「え? 本当? やったぁ」
レイコ「でも、恋愛運に関しては……ははーん」
クミコ「『ははーん』ってなによ! 『ははーん』って!
そんなね!名前だけで人生分かる分けないでしょ!?」
レイコ「……あなた、雑誌の占いだと、いい結果になっている占いしか信じないタイプでしょ」
クミコ「なんでそれを!?」
ナツミ「誰でも分かるって」
クミコ「でも、所詮占いじゃん」
レイコ「ふぅん。所詮、占いねぇ。私の占いは当たるわよ。
……占ってみる?」
クミコはぐっと詰まる、ナツミに相談するようにナツミを見ると、
ナツミはクミコに猫を渡しつつ。
ナツミ「なるほど。そういう作戦ね」
レイコ「どういう意味かしら?」
ナツミ「そうやって不安感をあおって、占い料をとろうって気でしょう?」
レイコ「別に〜 いい結果がでるとは限らないから無理にお勧めはしないわよ」
ナツミ「でも悪い結果が出たら『そのかわりこれを買えば大丈夫』
なんて言って高い壺を買わせたりするんでしょ?」
レイコ「ふふ。そんなことしないわよ。悪い結果が出ても、なにも売りません」
ナツミ「どうだか」
レイコ「だってここは「占い」屋! 売るものがあったって、なにも『売らない』や♪」
時が、止まる。
ナツミ「…………うっわぁ」
クミコ「寒いよ〜 ここはとっても寒いよ〜(言いつつ倒れて)
アイム コールド ダイ ウィズ キャーット」
レイコ「(悔しそうに)だから! だから私は嫌だって言ったのに!
こんなの言いたくなかったのに〜」
ナツミ「はいはい。無かったことにして上げるから」
レイコ「本当?」
ナツミ「演出には内緒にしとく」
レイコ「ありがと。じゃあ、××ページの、□□行からね?」
ナツミ「え、それって、私の台詞……」
レイコ「よし、じゃあ始めるよ!」
クミコ「(倒れ込んだから)足、いたいんですけど」
レイコ「気にしない。気にしない。はい、初め!」
レイコが手を叩くと、再び劇に戻る。
ナツミ「でも悪い結果が出たら『そのかわりこれを買えば大丈夫』
なんて言って高い壺を買わせたりするんでしょ?」
レイコ「ふふ。そんなことしないわよ。悪い結果が出ても、なにも売りません」
ナツミ「どうだか」
レイコ「そのかわり」
ナツミ「ほら、やっぱり」
レイコ「悪い結果にならない未来を教えて上げる」
ナツミ「はぁ!?」
クミコ「それってどういうこと?」
レイコ「だからぁ。
(突然インテリっぽい眼鏡を取りだしかけて)
例えばですね、あなたが事故にあって死んでしまう、
そんな未来がもしあったら!」
クミコ「もしあったら」
レイコ「その時は、私が死なずにすむ未来を教えて差し上げましょうと、
まぁ、こういうことです」
クミコ「でも、そんなこと無理なんじゃない?」
レイコ「どうしてだい、ジョニー?」
ナツミ「だれよ、ジョニーって」
クミコ「だって、未来を変えるなんて」
レイコ「HAHAHA。いいかいジョニー。
運命は、一つなんかじゃないんだよ。
未来は変えられるんだ。
(客席を指し)例えばトム! 君はお金が欲しい!」
クミコ「(うなずいている)」
レイコ「そんなトムには、お金を手に入れられる未来を教えて上げましょう。
HEYメアリー! 一生健康でいたいって?
だったら、風邪を引きそうな場所とか時間、
それにたいする対処法を教えてあげる」
クミコ「じゃあ」
レイコ「HAHAHA、ジョニー。分かっているよ。
恋人が欲しいんだろ?(と、クミコを見る)」
クミコ「(大きくうなずく)」
レイコ「だったら恋人が手に入る未来を
あなたに! (眼鏡を外して)
私の手に掛かれば未来はバラ色。
思う通りなのです!」
恍惚のレイコ。
一緒にうっとりするクミコ
呆れるナツミ。
ナツミ「さようなら」
レイコ「え、ちょ、ちょっと待ってよ。今から、ここらへんに電話番号が」
ナツミ「あのね、そんな話しあるわけないし、まともじゃないでしょ」
レイコ「そんなことないって。悪意はないし嘘じゃないわよ」
ナツミ「……やっぱり、さようなら」
クミコ「(ナツミの語尾にかぶせる)占ってください!」
ナツミ「はぁ!?」
レイコ「おやすいご用よ♪」
ナツミ「ちょっと、クミコ! 本気なの?」
クミコ「だって未来が分かるんだよ? 変えられるんだよ?」
ナツミ「嘘に決まっているじゃないそんなの」
クミコ「じゃあ、猫はどうして助かったの?」
ナツミ「…………」
クミコ「私、もう振られたくないし。幸せになりたいもん……だから」
ナツミ「……好きにしなさい」
クミコ「うん!」
ナツミは胡散臭そうにレイコを見た後、
猫を抱いて舞台から去っていく。
レイコはナツミの背中を目で追ってから。
レイコ「お友達?」
クミコ「そう。親友」
レイコ「親友、か」
クミコ「ナツミっていうんだ。もう、中学からずっと同じ学校だったの」
レイコ「そう」
クミコ「さぁ、じゃあ占ってよ」
クミコは言いながら座る。
途端、レイコは真剣な顔になって。
レイコ「初めに一つ聞いていい?」
クミコ「…………なに?」
レイコ「自分が幸せになるときに、もし、他人が不幸になっちゃうんだとしたら、どうする?」
クミコ「え…………それは、ちょっと、やだな」
レイコ「未来を変えるって事は、そういうことでもあるのよ」
クミコ「………できるなら、やりたくない」
レイコ「そう(微笑んで)…………はじめましょう」
クミコ「うん」
レイコの様子にクミコは首を傾げながらも、
嬉しそうにレイコの話を聞く。
と、舞台が暗くなっていく。
同時に鳴り響く音楽と共に、舞台に男が飛び込んでくる。
スポットが男を浮かび上がらせる。
3 次の日の朝
次の日の朝
ツヨシの家。
スポットに映し出されたのは制服を着ている男、ツヨシ。
段ボールを抱えているが、どうやらDJの机のつもりらしい。
おたまをマイクに、ツヨシはノリに乗っている。
ツヨシ「さぁ、陽気な音楽が流れる中、
ここでおなじみおさらいコーナーの時間だ。
まずはクミコ! この子はねぇ、可哀想な女なわけよ。
だって、振られてばかりの人生よ? 俺なら耐えられないね。
お次は、ナツミ、か。きっつい性格している女さ。
まぁ、でも俺としてはそういうとこも案外……
おおっと、こいつは番組には関係なかったかな。
そして、謎の占い師ミス レイコ。
年齢不詳の怪しい女。いったい何が目的なのか。
さぁ、そんな感じで始まりましたこの番組、
司会は毎度おなじみ、この俺ツヨシでお送りするぜ。
番組への感想は、何時でも送ってくれよな。
電話番号は」
と、言い終わらないうちに電話がかかってくる。
ツヨシ「おっと、早速リスナーからのお電話がスタジオにかかってきたみたいだ。
(電話に軽やかに出て)グッドモーニーング」
ナツミ「はーい。元気?」
ツヨシ「って、ナツミ!?」
ナツミ「今何処? まさか、まだ家でDJごっこやってるんじゃないでしょうね?」
ツヨシ「(DJの段ボールを下ろしながら)まさかぁ。もう家を出たに決まってるじゃんか」
ナツミ「そう、もう家を出たのねぇ。えらいわぁ。」
照明が、だんだんとついてくる。
それに従ってスポットは消えてくるのだが、
ツヨシは気づいていない。
ツヨシの自宅はごくごく一般家庭の雰囲気。
そして、明るくなった舞台には、
ナツミが腕を組んで立っているのだった。
なぜかその足には靴が。
しかし、ツヨシは気づかないようだ。
ナツミ「嘘つき」
ツヨシ「うわっつ!? え、いつから、いらっしゃったんです?」
ナツミ「(わざとらしく)『謎の占い師ミス レイコ』あたり
(と、ポーズをつけ)……ふっ。なにげに決まったわね」
ツヨシ「(ほっとして)なんだそこからか……」
ナツミ「てか、なんであんたがあの女のこと知っているのよ」
ツヨシ「なんでって……いや、昨日あの後通りかかったら、
鈴木さんとなんか話していてさ」
ナツミ「まっすぐ帰れっていったでしょ!?」
ツヨシ「いや、だって鈴木さんが心配だったから。結構泣いていたし」
ナツミ「大丈夫よ。クミコにとってはいつものことなんだから」
ツヨシ「だからって平気ってことないだろ?」
ナツミ「そりゃ、そうかもしれないけど」
ツヨシ「失恋って、いつしたって、その、同じくらい辛いんじゃないかな?」
ナツミ「……………ふうん。やけに知ったようなこと言うじゃない。告ったこともないくせに」
ツヨシ「(ナツミを意識して)んなこと、俺にだってあるよ」
ナツミ「(少しショックを受けて)……あるの?」
ツヨシ「え?………そ、そりゃあ、俺にだって、ね」
ナツミ「……どうせ、失敗したんでしょ?」
ツヨシ「……まぁな。やっちゃったって感じだったよ!」
ナツミ「(ほっとして)やっぱりね。……ほら、いいから学校行くよ!
いつまでもオタマなんて持ってないで、カバン取って来なよ」
ツヨシ「あ、ああ。いつも悪い。迎えにこさせちゃって」
ナツミ「あたしが迎えに来なきゃ、あんたいつまでもなりきりDJやってるでしょ?」
ツヨシ「今日はけっこう咽の調子悪くてさ」
ナツミ「近所でウワサになってたわよ」
ツヨシ「え? マジで!? なんて!?」
ナツミ「朝からお経でロックするのは止めて欲しいって」
ツヨシ「ああ、お経でロックか。斬新だなぁ……って、お経でも、ロックでもねぇよ!」
ナツミ「しょうがないでしょ。滑舌悪いんだから」
ツヨシ「……ちくしょう〜」
ツヨシ悔しそうに走ってカバンを取りに行く
ナツミはちょっと嬉しそうに
ナツミ「そういうところも案外なんて……
(怒ろうとしているみたいだが、笑みが浮かんでしまう)」
ツヨシはカバン持って戻ってくるが、いぶかしげに
ツヨシ「なーに、わらってんだよ」
ナツミ「何でもないわよ、行くよ。ほら、靴」
ツヨシ「え? 靴?」
ナツミがいいながら投げた靴を、ツヨシは不思議そうに受け取る。
瞬間、照明が変わる。
すがすがしいほど晴れた朝。
途端、ナツミは占い師のいた場所を見て
ナツミ「あら? あの占い師、今日はまだいないのね?」
ツヨシ「本当だ……って、どこに飛んだんだよ!」
ナツミ「○○駅前だけど?」
ツヨシ「唐突に自分だけワープするなよ」
ナツミ「行くよっていったわよ?」
ツヨシ「それだけかよ!? てか、靴履いている!?
お前、俺の家で土足だったのかよ!」
ナツミ「見てなかったの?」
ツヨシ「『見てなかったの』じゃねーよ!」
ナツミ「まぁ、行くよって言葉で場所を移動できるのは高校演劇探してみても、私くらいかな」
ツヨシ「うわっ……思いっきり流された」
ナツミ「ほら、さっさと靴履きなさいよ。置いて行くわよ?」
ツヨシ「はい、ただいま……」
靴を履くツヨシ。
ツヨシ「ああ、そういえば、ナツミ。今日の英語の宿題ってさ」
ナツミ「神宮寺さんでしょ? 松本君」
ツヨシ「へ? ………あ、ああ、ごめん」
ナツミ「しっかりしてよ。何度も言ってるでしょ。学校では」
ツヨシ「わかってるって。ちょっと、ぼけっとしただけだよ」
ナツミ「変に誤解されたりしたら困るでしょ」
ツヨシ「別に俺は」
ナツミ「もちろんあたしがね」
ツヨシ「そういうこと言うか」
ナツミとツヨシが舞台を去ろうとする。
クミコ「あ! 松本君、ストーーップ!」
舞台に元気よくクミコが現れる。
ノートを片手に持っている
ツヨシ「な、なんだよ」
ナツミ「また猫!?」
ツヨシ「ね、猫!?」
ナツミ、思わず辺りを見渡す。
クミコ「違うよ。(ツヨシに近づいて)松本君、ちょっと、足どけて」
ツヨシ「あ、うん(いいながら足をどける。グリコのマーク)」
クミコ「やったーー。百円みっけ♪」
ナツミ「どんな目してるのよ!?」
ツヨシ「(まだ、ポーズしたまま)すごいなぁ。よく見つけたね」
クミコ「違う違う。これよ、これ」
ナツミ「数学のノートがどうかしたの?」
ツヨシ「(ポーズのまま)流すのかよ。なんかつっこめよ」
ナツミ「(クミコに)それで?」
ツヨシ「もういいです」
クミコ「昨日までは確かに、ただの数学のノートでした。
でも、今は違うのであります! その名も、『百発百中予言ノート』!」
ツヨシ「……なによりもまず、そのネーミングセンスどうかと思うぞ」
クミコ「名前はどうでもいいの!
これにはねレイコさんから教えてもらった、
今日起こることが書いてあるのです!
百円玉を見つけるって言うのも、
ここにちゃんと書かれているんだから」
ナツミ「(思わずノートを見て、ト書きを読むように)
『ツヨシとナツミに駆け寄るクミコ。
クミコが止めなければ、ツヨシが嬉しそうに百円玉を拾う』
……そんな……」
ツヨシ「じゃあ、その百円って本当は俺が拾うはずだったのか!?」
クミコ「そういう未来って事もあるって事ね♪ でも、
これはもう私の物だから〜 ね? すごいでしょ?」
ナツミ「……偶然よ」
クミコ「ナツミはそういうと思った。でもでも、すぐに信じるようになるよ、ナツミも」
ナツミ「クミコ、いい? もしよ? もし、そのノートに書いてあることが事実だとしてもね」
クミコ「やめてよ、お説教は」
ナツミ「でもね、クミコ」
クミコ「あ、そういえばレイコさんに言われていたんだった。
そんなときはこう言えって」
ナツミ「なによ」
クミコ「あ、松本君は、あっちね」
ツヨシ「はい」
クミコ「(ナツミを引き寄せ)『夜、あなたが枕の下に引いている写真、
松本君に教えちゃうよ』って」
ナツミ「!………何でそれを!?」
クミコ「だから、レイコさんに教えてもらったんだって♪
さ、学校行こう〜」
クミコは上機嫌で舞台へと去っていく。
と、途中で振り返って。
クミコ「あ、ナツミ。今日のお昼休みは、
廊下の左側を歩いた方がいいよ♪」
そして、今度こそ本当に退場
ナツミは驚きで固まってしまう。
ツヨシ「ナツミ、いや、神宮寺さん? その、学校、遅れるよ?俺らも行かなきゃ」
ナツミ「先行ってて」
ツヨシ「……なんか、いらだってない?」
ナツミ「別に。普通よ」
ツヨシ「いいじゃんか。鈴木さん、楽しそうなんだしさ。
レイコさんだっけ? 占い師も、
悪い人ってわけじゃなさそうだったよ」
ナツミ「だから、別に気にしてないって言ってるでしょう?」
ツヨシ「……そうですか。んじゃ、行くよ? 俺」
言って、ツヨシは舞台から去る。
思わず、ナツミはツヨシが去った方向を見ていた。
ナツミ「自分にだって分からないわよ。……なんで、こんなにいらいらするのかなんて」
ナツミが舞台を去る
5 そして昼休み
照明変わって廊下に。明るい昼のイメージ。
チャイム音と共にクミコとツヨシが現れる。
ツヨシはなんだか、別人風(むしろ別人です)
クミコ「やっと昼休みだ〜。あー疲れたぁ」
ツヨシ(吉岡)「んでも、鈴木ってば本当すごかったなぁ、今日」
クミコ「止めてよ〜。吉岡君。そんな、可愛くてプリティで、キュートだなんて、誉めすぎだよ〜」
吉岡 「一言も言ってないし」
クミコ「そういう吉岡君こそ、最近、松本君に似てきたんじゃない?」
吉岡 「そりゃ、同じ人間だから……違う! それは誉め言葉じゃない」
クミコ「誉めてないもん」
吉岡 「誉めてないのかよ!」
クミコ「でも、本当私ってば今日そんなにすごかった?」
吉岡 「ああ、すごかったすごかった」
クミコ「そんなぁ〜 ただ、数学で満点取って、体育でも大活躍で、
ついでに、漢字の小テストでも満点だったくらいじゃーーん♪」
吉岡 「普通、一日でそれだけ変わったら、もう別人だぞ」
クミコ「(笑って)もしかしたら、本当に、そうなのかもよ?」
吉岡 「え?――」
クミコ「あ、これから私、ちょっと用事があるから。じゃあね、吉岡君♪」
吉岡 「あ、おう。五時間目に遅れるなよ」
クミコ「分かってるって」
クミコは舞台から去る。
吉岡 「本当、実は別人何じゃないか? ………俺は、松本とは別人だけどな」
と、カッコつけたらカツラが取れる。
慌てて吉岡、舞台から去る。
反対側からナツミが考え込むようにやってくる。
6
ふと、薄暗い廊下へ。
ナツミが現れる
ナツミ「……結局、休み時間もクミコの教室行かなかったし、
昼休みくらいは行こうかな……なんでよ、
なんでこんなに、私がいらつかなきゃいけないのよ
……クミコが私の秘密を知っていたから?……それも、
あの人に未来が見えるからだって言うの?
……確かめなくちゃ」
ナツミ、考え込みながら歩いている。
と、舞台に現れるのはツヨシ。
ツヨシは本を読みながら歩いてくる
2人とも、前を見て歩いていないので、ぶつかる。
だが、倒れたのはナツミの方だ。
ナツミ「あ、ごめんなさい! ……って、(ツヨシと言いかけ)松本君」
ツヨシ「俺は、吉岡じゃないぞ」
ナツミ「いや、わけ分からないから」
ツヨシ「あ、ごめん」
ナツミ「てか、あんたなんでこんな所歩いているのよ!」
ツヨシ「それはこっちの台詞だ!って……ほら、手を貸すよ」
ナツミ、ちょっとまんざらでも無い顔だったり。
ツヨシの手で起きあがったところへ、
クミコがやってくる。
クミコ「いやぁ、決定的瞬間、だね」
ナツミは思わずツヨシを思いきり押し飛ばしながら
ナツミ「クミコ! なんで………」
ツヨシ「……素で痛い」
クミコ「レイコさんに教えてもらったんだよ〜。本当、あの人の言うことってば百発百中だよね。」
ナツミ「そんな」
クミコ「言ったでしょ? 廊下の左側を歩いた方がいいよって
右側歩いているからそうなるんだよ」
ナツミ「偶然よ」
クミコ「でもねぇ〜あたし、今日の小テスト満点取ったんだよね♪」
ナツミ「まさか。クミコが?」
クミコ「信用しないの? でも、本当だよ♪ だって、答え分かっていたしね♪」
ナツミ「そんなのただの、カンニングでしょ」
クミコ「(むっとしつつ)でも、体育ではバスケで点入れたし。松本君は、
私と体育一緒だったから、見ててくれたでしょ?」
ツヨシ「ああ。そういえば、今日は珍しく活躍していたよな」
クミコ「確かに今日は「珍しい」なのかもしれないけど。
でも、すぐにそれがいつものことになるわよ」
ナツミ「クミコ、百歩譲って、あの人が本当に未来を当てられるんだとしてよ」
クミコ「あたるのよ! 絶対」
ナツミ「でも、そんなのにずっと頼るなんてやめなさいよ」
クミコ「なんで?」
ナツミ「なんでって……クミコのためにならないし」
クミコ「私のためにならない? なんで」
ナツミ「……そんな未来ばっかわかったってろくな人間にはならないでしょ?」
クミコ「へぇ。ナツミって未来が読めるんだ」
ナツミ「何言っているのよ! そんな分けないでしょ!」
クミコ「それなら、どうなるかなんて分からないじゃん」
ナツミ「馬鹿なこと言わないでよ。楽してばかりじゃ人間駄目になるわよ」
クミコ「……楽することって、いけないの?」
ナツミ「そういうこと言っているんじゃないの」
クミコ「ナツミは苦労していないからそういうこと言えるんだよ」
ナツミ「何馬鹿なことを」
クミコ「馬鹿でいいわよ!
……なによ、人を馬鹿馬鹿って。いいでしょ? 苦労にはもう疲れちゃったの。
好きになって、振られて、いいことなくって。そんな毎日にはもううんざりなのよ!」
ナツミ「でも」
クミコ「私のやることに一々口出さないでよ!」
ナツミ「クミコ……」
わざとらしくチャイム音がなる
ツヨシ「な、なぁ、チャイムなったからそろそろ」
ナツミ「なら、松本君は早く教室戻ったら?」
ツヨシ「ああ、でも、お前らも」
ナツミ「いいから、早く」
ツヨシ「わ、わかりました」
ツヨシは舞台から去る
間
7
クミコ「松本君、可哀想〜」
ナツミ「いいのよ。今は、あなたのことでしょ」
クミコ「あたし? いいじゃん私のことは。
今、これで幸せなんだしさ。ほおっておいてよ」
ナツミ「何言ってるのよ。今だけの幸せなんて」
クミコ「ナツミは……私がナツミの秘密を知っているのが嫌なだけなんじゃないの?」
ナツミ「!! ………それは違う」
クミコ「本当? ……枕の下に入れている写真、あれ、誰のだか私が聞いていないと思う?」
ナツミ「そんな……」
クミコ「……ただの幼なじみだなんて言ってさ。恋なんて興味ないなんて言っちゃってさ」
ナツミ「違う。あれは」
クミコ「ちがく無い! ちがくないでしょ! ……人の失恋聞いて、慰めるフリしちゃって。
本当は笑っていたんでしょ? そりゃあ、可笑しいよね。
自分にはちゃあんと、いるんだもんね」
ナツミ「違う! 違うわよ……私はいつもあなたのために。親友だからって」
クミコ「秘密を言わないのが親友なの!? 隠しごとして。
陰で笑って。それが親友なの?」
間
クミコ「………でもね。許して上げるナツミ。
だって、親友を失うのって辛いものね」
ナツミ「………………ありがとう……」
クミコ「その代わり、私、もらっちゃうからね」
ナツミ「なにを?」
クミコ「松本君。」
ナツミ「え……?」
クミコ「私、今度は松本君のことが好きになっちゃったみたいなの。
だって、松本君、優しいんだもん」
ナツミ「そんな……」
クミコ「いいんでしょ? だって、松本君はただの幼なじみだもんね。
私と親友に戻るってことは、そういうことでしょ?」
ナツミ「だって、それは」
クミコ「いいわよ。止めたかったら止めても。でも、私には未来がついているから。
あなたには、過去しかないのよ」
間
クミコ「さてっと。授業そろそろ行かないと。んじゃまた明日ね♪」
クミコは言いながら舞台を去る。
ナツミ「……どうして、どうしてこんなことに? 私はただ、クミコを……クミコを……
どう、したかったんだろう?」
ナツミは一人蹲っている。
照明が暗くなる
8
暗い中、占い師の姿が浮かび上がる。
大きな傘を持っている。
どうやらこれから雨が降り出そうとしているらしい。
レイコ「そして舞台は進み出す。役者は踊る。
誰かが決めたシナリオ通りに……
名も知らぬ支配者よ、笑みを浮かべて
見ていればいい。……私たちは、
あなたの思うようには、進まない」
そこへ、かけてくるクミコがいる。
クミコ「レイコさん!」
レイコ「あら? どうしたの? どう? あたった?」
クミコ「あたったあたった! 完璧なくらい」
レイコ「まぁ、当たり前よね」
クミコ「それで、お願いがあるんだけどさ」
レイコ「……恋人が欲しいの?」
クミコ「ピンポン♪ 誰でもいいわけじゃないんだ。あのね」
レイコ「それは、人が不幸になるわよ?」
クミコ「……そっか。レイコさんには、何でもお見通しってわけだね」
レイコ「いいの?」
クミコ「いいよ。前からナツミってちょっと気にくわなかったし」
レイコ「親友、なんでしょう?」
クミコ「そうだよ。……でも」
レイコ「でも?」
クミコ「贅沢だよ、ナツミは……近くにつきあえる人が
いるのにさ。『ただの幼なじみだから』なんて。
ただの幼なじみの写真を枕の下に入れるくらいなら、
つき合っちゃえばいいじゃん。
そのくせ、人の恋愛には一々口出すし。
そういうとこ、偽善だと思う」
レイコ「怖いのかも、しれないわよ?」
クミコ「…………怖い?」
レイコ「その関係が壊れるのが」
クミコ「そんなこと、よくわからないよ。私は、ナツミじゃないんだもん」
レイコ「そうね。あなたはナツミさんじゃないし、ナツミさんはあなたじゃない。
だから人は迷いやすい」
クミコ「レイコさん?」
レイコ「………それで、どうしたいの?」
クミコ「ナツミから、松本君を奪いたい……できる?」
レイコ「もちろん。相手の気持ちが切り替わりそうな時を、
ピンポイントであなたが狙えばいいのよ」
クミコ「? どういうこと?」
レイコ「例えば!」
言った瞬間照明が明るくなる。
そして、場違いなほど明るい音楽。
占い師はハデに動き回る。
レイコ「『今日はコカコーラにしようか、ペプシにしようか』なんて悩んでいるときに」
クミコ「いや、やっぱりドクターペッパーかな」
レイコ「そういう話しじゃないのこれは」
クミコ「ごめんなさい」
レイコ「いい? この、どっちにしようかなって悩んでいるとき、
なんと、目の前をコカコーラを飲んだカッコイイ男の人が通り過ぎたら!」
クミコ「……だったら今日はジンジャーエールにしよう」
レイコ「なんでよ! 前フリが関係ないじゃない!」
クミコ「つまり!」
音響も照明も元に戻る。
クミコ「相手の気が変わる瞬間瞬間を狙って、自分に向くように行動すれば、
そのうち相手は私を好きになるって、そういうことでしょ?」
レイコ「私が言いたいこと全部言っちゃった」
クミコ「……それで? 具体的にはどうすればいい?」
レイコ「それはね?」
レイコは不適に笑いながらクミコを連れて舞台を去る。
寂しげに音楽が鳴り出す。
9
【無声演技】
登下校が繰り返される。
雨と一緒に違う音楽も重ねるように流せたらなおいい。
薄暗く、今にも雨が降り出しそうな天気。
傘を片手に、ツヨシとナツミが現れる。
そのちょっと後ろからやってきたクミコはさりげなく
ツヨシにモーションをかけながら、
三人一緒に登校する。そして退場。
帰り道。雨。
薄暗く、未来が見通せない危うさ。
しかし、ほんの少し見える光は、雨が通り雨だと教えている。
三人でまた歩いてくる。
ツヨシと話そうとするクミコだが、
ふと、ツヨシはナツミに向く。
ツヨシとナツミがいい感じで話しそうになる。
と、わざとクミコがこける。怪我をしたらしいクミコに
ツヨシは肩を貸す。
2人を、ナツミはただ見ていることしかできない。
そして二人が去った後、ナツミも退場。
登校。
晴れ間の中、ツヨシとクミコが歩いてくる。
俯いたナツミが姿を現す。
どうやら、ツヨシとの待ち合わせがうまくいかなかったらしい。
ふと、日が陰る。
と、クミコは何か虫でもいたのか、ツヨシへとわざとらしく抱きつく。
と、顔を上げたナツミは、そんな2人を見てしまう。
2人が退場した後、呆然としながら歩くナツミ。
下校。
突然の雨。急速に広まった雲は空全体を覆い尽くす。
いっぺんの希望さえ見えない。
走って帰るナツミ。
その後を、ツヨシが声をかけながら歩いてくる。
ところが、ナツミが振り返ると同時に、
ツヨシも呼ばれたらしく振り返る。
クミコがそこに立っていた。
どうやら傘を忘れたらしい。
頼まれて、ツヨシは仕方なく、相合傘になる。
勝ち誇るクミコ。ナツミは走って舞台から去っていく。
その足音で、ツヨシはナツミが立ち止まってくれていたことを知る。
ナツミの背を、ツヨシは呆然と見送る。
クミコは嬉しそうに、相合傘でツヨシと歩いていく。
登校。
思い切ったように晴れ渡った空。
雲もなく、不安も吹き飛ばしたように日が降りそそぐ。
ナツミが寒そうに一人登校している。
その後ろから、心配げなツヨシと、
嬉しそうなクミコが続いて歩いてくる。
ナツミは二人の会話にふと振り返る。
ツヨシとナツミの目が合う。
かけ去るナツミ。
呆然としたままのツヨシ。
そんなツヨシに話しかけ、ツヨシとクミコは結局一緒に登校を続ける。
10 そして、ある日の下校の時間。
下校。夕日が赤々と燃えている。
とぼとぼと歩いてくるナツミ。
そのナツミを追いかけてきたのか、
ツヨシが走ってくる。
ツヨシの言葉にナツミの足は止まる。
ツヨシ「おい! 待てよ! なぁ!」
ナツミ「…………」
ツヨシ「………どうしたんだよ。ここんとこだんまりでさぁ……
俺、なんか怒るようなことしたか?」
ナツミ「別に」
ツヨシ「別にって」
ナツミ「クミコのこと置いてきたわけ?」
ツヨシ「いや、だって、その、お前のことが」
ナツミ「私が何よ」
ツヨシ「その……俺は……」
ナツミ「なにもないんなら帰るから」
ツヨシ「いや、待てよ!」
ツヨシは歩きそうになるナツミを引き戻す。
ナツミは振り返りそうになるが、振り返られない。
ツヨシは言葉で言えずに、カバンから手紙を取り出す。
ツヨシ「……なぁ、これ」
ナツミ「(前を向いたまま)なによ」
ツヨシ「だからこれ!(言いながら、ナツミに手紙を渡そうとする)」
ナツミ「止めてよ!(言いながら振り返る)」
ナツミの手があたったのか、手紙が地面に落ちる。
ナツミ&ツヨシ「あ――」
地面に落ちた手紙を見る二人。
そして、
ツヨシとナツミは初めて顔をまともに見る。
ツヨシ「ナツミ……」
ナツミ「……どうしたのかなんて、私にも分からないわよ」
ナツミは走って舞台から去っていってしまう。
ツヨシはどうしていいか分からず立ちつくす。
ツヨシ「俺、最悪だ……」
言いながら、ツヨシは手紙を客席に投げ棄てる。
そして、すぐ思い直す。
ツヨシ「……ごめんなさい。それ、取ってもらえますか」
と、手紙を客席から取ってきて、
ナツミを追いかけようとする。
と、そこへクミコが登場する。
クミコ「ねぇ、松本君。話しがあるの」
ツヨシ「え?」
クミコ「ちょっと、いい?」
ツヨシ「べつに、いいけど」
ツヨシはクミコについていく
11
夕方よりさらに時間は経つ。
太陽が地に沈みかけている。一日を終わらせる赤の光。
占い師がいつもの場所へと腰を下ろして、
道具の用意を始める。
ゆっくりとすべてを整えたレイコは、そして、一言。
レイコ「やっぱり来たわね?」
ナツミは無言で舞台に現れる。
走り疲れた少女。
レイコ「なんの用? もしかしてあなたも
未来を占って欲しいとか?」
ナツミ「……分かっているんでしょう? 私の目的くらい。未来が読めるんだから」
レイコ「もちろん。ただ、私はあなたの口から聞きたいの」
ナツミ「………クミコに未来を教えるのはもう止めて」
レイコ「どうして? あの子は喜んでいるのに?」
ナツミ「今だけよ。きっと後悔するようになる」
レイコ「そんなことわからないわよ……まぁ、でも今のところ
後悔するのはあなたのほうかもしれないわね」
ナツミ「私?」
レイコ「だって、このままじゃクミコちゃんに松本君をとられちゃうものね」
ナツミ「そんなの関係ない!」
レイコ「ふーん。そうなの? じゃあ、なんでそんなにクミコちゃんのことを気にするの?」
ナツミ「友達、だから」
レイコ「………大丈夫よ。クミコちゃんは幸せになれるわ」
ナツミ「無理よ」
レイコ「大丈夫。私が、うまくいく人生を教えて上げるから」
ナツミ「だけど、そんなの、本当の幸せなんて言えないし……それじゃクミコが」
レイコ「いい加減、本音で話したら?」
ナツミ「え――?」
レイコ「嫌なんでしょう? クミコちゃんがうまくいったり、幸せになるのが」
ナツミ「何言ってるの? そんなわけないでしょ。ただ私は」
レイコ「いらいらするんでしょう? クミコちゃんが嬉しそうだと…………むかむかして、
何でもいいから反対したい気持ちになって、落ち着かないんでしょう?」
ナツミ「そんなこと……ない……」
レイコ「クミコちゃんが失敗するとほっとするんでしょう?」
ナツミ「違う……」
レイコ「自分の方が頭がいいって確かめるたびに嬉しくなるんでしょう?」
ナツミ「違うわよ、そんな」
レイコ「クミコちゃんが振られるたびに、優越感に浸るんでしょう?」
ナツミ「違う」
レイコ「だって、あなたにはいるんだものね。
幼なじみの彼が」
ナツミ「……」
レイコ「だけど不安で、毎晩写真なんか見つめちゃって」
ナツミ「(首を振っている)」
レイコ「つまり、あなたにとってクミコちゃんってのは結局」
ナツミ「もう止めて! ……もう止めて……そうよ……
あなたの言うとおりよ。私は、クミコに優越感を感じてた」
レイコ「だけど、今は劣等感を感じている。だってクミコちゃんと違って……」
同時に
ナツミ「私には何もないから」
レイコ「私には何もないから?」
ナツミ「……そう、私には何もない。クミコみたいな明るさも。人見知りしない勇気も。
だけど、クミコよりもましだってずっと思ってた。頭も悪くないし、失敗もしないし。
だから、私は、私を好きでいられた」
レイコ「だけど、今は?」
ナツミ「今は……嫌い」
ナツミ、レイコを見る。
レイコは微笑む
ナツミとレイコを暗やみが包む。
2人のいる場所を暗くしたまま、舞台のもう半分が明るくなる。
ナツミとレイコはストップモーション。
そこへ、クミコが歩いていてくる。後を続くようにツヨシも続いてくる。
12 告白の憧憬
そこは公園。夕焼けの中、
一瞬、見知らぬ場所のような気がする場所。
クミコ「ここまでは、レイコさんの言うとおり、か……あとは
レイコさんの書いてくれたメモを読むだけ……」
ツヨシ「なぁ、いい加減何の用なのか教えてくれない? 俺さ(ナツミを追いかけなきゃ)」
クミコ「ちょっと待ってね。すぐ、終わるから」
いいながら、クミコはメモのような物を持つ。
クミコ「(ツヨシに背を向けて、字を読む)この場所ね。
私が、中学の時に初めて告白して、
そして振られた場所なんだ……あ、本当だ」
ツヨシ「え……」
クミコ「ううん。何でもない。……その人すごくかっこよくて、クラスでも人気者だった。
ずっと憧れてて、(もうメモを読まずに)
だから中学の卒業式の日、告白したんだ。好きですって……結果は、散々だったけどね」
ツヨシ「……わかる。辛いよな、振られるのって」
クミコ「……松本君も、告白したこと、あるの?」
ツヨシ「えっと、まぁね」
クミコ「……ナツミに?」
ツヨシ「何で分かったんだ!?」
クミコ「え? だって、松本君ってナツミのこと……」
ツヨシ「……ばればれだったのか」
クミコ「でも、ナツミ、告白されたことないって」
ツヨシ「忘れているんだろう? 告白の言葉も、今思い返すとちょっと
よくわからない奴だったし」
クミコ「なんて言って告ったの?」
ツヨシ「……『僕に、死ぬまでついてこい!』」
クミコ「(思わず固まる)」
ツヨシ「……そしたら、ナツミの奴『疲れるからヤダ』ってさ」
クミコ「……よく、それだけで済んだね」
ツヨシ「ああ、今思うと怖くなるよ」
クミコ「……振られて、ナツミのこと、嫌いにならなかった?」
ツヨシ「そんな簡単に嫌いになれるなら、告ったりしないって」
クミコ「だよね…………あたしも、そう。……高校入ってからも、ずっと忘れられなくて……」
ツヨシ「……だから、色々な人を好きになろうとしてみた、のか?」
クミコ「(頷いて)……でも、なんだか余計辛くなる……
だんだん誰でもよくなって、でも、振られて、辛くって」
ツヨシ「いいんじゃないかな。忘れられなくても」
クミコ「………」
ツヨシ「無理して別の人を好きになろうとしなくたっていいんじゃないかな。
……上手く言えないけど、なんかそれって哀しい気がする」
クミコ「…………わかってる。でも、私だって、好きになってもらいたいよ。
私が誰かを好きになるみたいに、その人に好きになってもらいたいよ。だって……」
ツヨシ「……そうすれば、自分を好きになれるから」
クミコ「え?」
ツヨシ「振られた自分を誰かが好きになってくれれば、
自分のこと好きになれるもんな。いい所なんてない駄目な自分だって
ほんの少しでも、好きになれるかもしれないから」
クミコ「……松本君も、そうだったんだ……」
間
同時に
ツヨシ「そんなに難しいことかな?」
レイコ「そんなに難しいことかしら」
クミコ&ナツミ「え――?」
ツヨシ「自分を好きになるのってそんなに難しい事じゃないと思うよ」
レイコ「自分のことを一番よく分かっているのは自分なんだし」
ツヨシ「そりゃ失敗もするさ」
レイコ「親友と喧嘩したり」
ツヨシ「振られたり」
レイコ「迷子になったり」
ツヨシ「落ち込んだり」
レイコ「だけど」
ツヨシ「だけど、さ」
ツヨシ&レイコ「人は、一人じゃないから」
ツヨシ「………鈴木さんを好きな人はいるよ」
クミコ「………?」
ツヨシ「えっと、ほら、ナツミだって、俺だって。鈴木さんのことは好きだよ。だから、
自分を好きでいいんじゃないかな?」
クミコ「だって、それは友達としてでしょ? そんなの」
ツヨシ「それでいいんじゃないかな?俺達まだ高校一年だし、
まだまだこれからじゃん?」
クミコ「これから、かな」
ツヨシ「まずは自分を好きにならなきゃ。そうしたら、きっと逆に告られるようになる。
……ってちょっとこれは調子よすぎるかな」
クミコ「ううん…………ありがとう」
ツヨシ「(照れて)いや、俺は別にお礼を言われる事なんて一つも」
クミコ「松本君ってやっぱり優しいね」
ツヨシ「その言葉ナツミにも聞かせてやりたいよ」
2人、少し笑いあう。
と、クミコは急に真剣な顔になって。
クミコ「松本君、私ね」
ツヨシ「うん?」
クミコ「松本君のこと…………………」
間
言おうかどうしようか悩むクミコ。
ツヨシは一体何が始まるのか分からない
クミコは長いとまどいの後仕方なさそうに微笑む。
クミコ「……もっと頼りにならない奴なんだって思ってた」
ツヨシ「うわっ、酷いなぁ」
クミコ「(笑って)松本君、ナツミに用があるんでしょ?
なにか、さっき渡そうとしてなかった?」
ツヨシ「そうだ、俺。あ、でも、鈴木さん、結局話しって」
クミコ「ううん。いいんだ、もう。ただ、聞いて欲しかっただけだから」
ツヨシ「あ、じゃあ、ごめんね。また明日」
ツヨシはそういいながら、ポケットから手紙を出し、
大事そうに確かめながら舞台から去る。
クミコは少し寂しそうに笑って
クミコ「何の手紙か、あれじゃバレバレじゃん…………………
仕方ないよね。ナツミは、友達なんだしさ」
言いながらクミコはレイコのメモを見て
クミコ「レイコさんからもらったメモも
無駄になっちゃったな………あれ?
…………これ…………あたしが言ったこと………
全部、書いてある…………そんな、なんで?」
クミコはメモを持ったまま舞台から去る。
13
照明が切り替わり、全体を照らすようになる。
ナツミとレイコはストップモーションから解ける。
ナツミ「……私、まだ一人じゃないかな?」
レイコ「大丈夫。クミコちゃんも、あの男の子も、あなたのことが好きだから。」
ナツミ「ありがとう……」
レイコ「別に、お礼なんて言われること何もしていないわよ。元はといえば私のせいだし」
ナツミ「それもそうか……じゃあ、止めておこうっと」
レイコ「(微笑んで)さてと……ちゃんとクミコちゃんと仲直りしなさいよ」
ナツミ「どこへ行くの?」
レイコ「違う場所へ行くのよ。この街には、ちょっと長くいすぎたから」
ナツミ「ねぇ」
レイコ「?」
ナツミ「なんで、私たちに話しかけて……未来を教えたの?」
レイコ「………私は、ドラマが見たかっただけ」
ナツミ「ドラマ?」
レイコ「そう。あなた達、生きた人間が作る本当のドラマ。
私たちを見下ろして、支配したつもりになっている
運命って奴にちょっと思い知らせたかっただけ。
『思うようにはいかないぞ』って」
ナツミ「成功、した?」
レイコ「さあ?これすらも、運命にとっては把握済みかもね」
と、クミコが舞台に走ってくる
クミコはナツミにまだ気づいていない
クミコ「あ! レイコさーん!このメモに書いてあったこと、
言ってたら、絶対つきあえる分けないじゃん!」
レイコ「でも、メモを読まなかったんでしょう?」
クミコ「そ、そうだけど……」
レイコ「成功した?」
クミコ「ううん……でも、もういいんだ。どこかへ行くの?」
レイコ「ええ。違う、街へね」
クミコ「そんなぁ!? 明日も、小テストあるんだよ?
……せめて、テストまでいてくれない?」
レイコ「そんなことより、見るべきところがあるんじゃない?」
レイコはクミコの顔をナツミへ向ける
クミコも、ナツミも何と言っていいか分からない。
クミコ「ナツミ……」
ナツミ「クミコ……」
クミコ「……なに?」
ナツミ「あの、その……」
レイコ「私ね」
ナツミとクミコがレイコを見る
レイコ「私、未来を見ることで、あなた達の人生、
それぞれを生きられるの。 誰かと結婚する人生、
仕事で成功する人生。……あなたたち、
みんな私みたい。不器用で、いつだって平凡な人生に
愚痴りながら平凡が好きで……
みんな私、だったら、私は私を好きにならなくちゃ。
みんな嫌いじゃ、独りぼっちだもんね。そんなの嫌だもん。
……単純でしょ?」
レイコが微笑む。
やがて、ナツミが口を開く。
二人の会話に微笑んで、レイコはいつの間にか去っていく。
ナツミ「……クミコ」
クミコ「……何?」
ナツミ「ごめんね」
クミコ「ううん。……あたしも、ごめん」
ナツミ「ううん。もういいの」
クミコ「わたしも、もういい」
ナツミ「…………私ね」
クミコ「うん」
ナツミ「私のこと、好きになりたいなぁ」
クミコ「………あたしも」
ナツミとクミコ、照れたように笑いあう。
「行こう」とでもクミコが言ったのか、
二人して歩いていく。
14
少女の姿が浮かび上がる。
そして、ナツミだけを照らし出す。
ナツミ「こうして、レイコさんはいなくなった。……私たちはまただんだんと、
元の生活に戻って行くんだろう。『平凡な人生に愚痴りながら
平凡が好き』な私たちは。
だけど、少しずつでいい。私は、
私を好きになろう。少しずつ、少しずつでも。みんなを好きでいたいから……」
照明がつく。
次の日、というわけだ。
あまりにも典型的な朝。
ありふれた一日。何ら新しい発見のない朝。
ナツミはレイコがいた場所を見ている。
何故かその場から動けないまま。
ツヨシが現れる。
立っているナツミに気づき、声をかけるため、勇気を振り絞る。
ツヨシ「……おい、ナツミ」
声をかけられて、ナツミは何故自分がその場に留まっていたのかを知る。
待っていたのだろう。彼を。
ナツミ「……神宮寺さん、でしょ? 松本君」
ナツミが案外いつもと変わらないことに、
ツヨシはほっとする。
ツヨシ「…………神宮寺さん、いつまで見てるんだよ 遅刻するぞ」
ナツミ「分かっているわよ。……元はといえばあんたが……
松本君が寝坊するのが悪いんでしょ」
ツヨシ「そりゃ、そうだけど……って……え? それってどういう?」
と、クミコが舞台に現れる
クミコ「ナツミ〜 おはよう♪」
ナツミ「おはようって。あんた余裕ね」
クミコ「へへ〜。じゃじゃーん。これを見てよ!」
クミコはポケットから手紙を出す。
手紙には大きく「Dear 佐竹」とか書いてある
ナツミ「ラブレター!? もらったの!?」
ツヨシ「おお! すごいじゃん!」
クミコ「ううん。出すの」
ナツミ「なぁんだ」
ツヨシ「……こりないやつ……」
クミコ「なにかおっしゃいました?」
ツヨシ「いえ、何でもございません」
ナツミ「でも、なんでわざわざラブレター?」
クミコ「違うの、これ、ファンレター」
ナツミ「なにそれ?」
クミコ「あなたのことを応援している人がいますって、証拠。
だって、そうすればもっとがんばれるでしょう?」
ナツミ「クミコ……
でも、手紙でなんて、今時止めた方がいいわよ。
古くさいし。なんか重たい感じするし。
渡されても処理に困るし」
ナツミの言葉に、一々ショックを受けるツヨシがいたり。
クミコ「ええ〜 そうかなぁ……(ツヨシに)もしかして、まだ渡してないの?」
ツヨシ「(ポケットから手紙を取りつつ)実は……」
クミコ「もぉ! なにやってるのよ! ちょっと貸して!
(いいながら、ツヨシの手紙を奪い取る)」
ツヨシ「な! ちょっと、待てよ」
クミコ「なんてね。返す
(と、見せかけて自分の手紙を渡す)」
ツヨシ「脅かすなよ………って、これ違う!」
クミコはツヨシの手紙をナツミに渡してしまう。
クミコ「はい。ナツミにはこれ」
ナツミ「あたしに渡してどうするのよ……って……これ?」
ナツミ、ツヨシを見る。
ツヨシも、ナツミを見つめて。
クミコは笑いながら
クミコ「う〜ん。私には未来が見える!
2人とも、いい関係になれると思うよ。
あ、松本君、その手紙は三年の佐竹先輩の
下駄箱に入れといてね♪」
いいながら、クミコはツヨシをナツミの方へと押す
そして、クミコは退場。
ツヨシは思わず苦笑
ナツミ「何よ」
ツヨシ「い、いや、なんでもありません」
ナツミ「行くわよ………ツヨシ」
ツヨシ「え? ……あ、おう!」
ナツミの後を追いかけるようにツヨシも去っていく
音響が上がる。
完