屋上に出たい私達 楽静 飛鳥 絵伊那(あすか えいな)高校二年生 恋愛好き。演劇部員。 馬場 実美々(ばば  みみみ)高校二年生 腐女子。 演劇部員。 東雲 詩衣侘(しののめしいた)高校二年生 真面目。 帰宅部。優等生タイプ。 警備員            学校警備員。二十代前半。佐藤太郎。名前は特に出てこない。     どこかの高校の、秋から冬にかけての物語。     放課後。屋上へ続く扉近くのたまり場で、飛鳥、馬場は話をしている。 馬場 ん〜「熱血な男子生徒」 飛鳥 「お前らもっと熱くなれよ!」的な? 馬場 応援団長とか兼ねてて、リレーでアンカーやっちゃう感じ。 飛鳥 いそう! えっと、じゃあ「誰もが振り向く美人キャラ」 馬場 あ〜あれだ、性格がツンデレ。 飛鳥 ヤンデレもありじゃん? 馬場 あとは、クーデレ? ま、うちの高校にはいないんだけど。 飛鳥 だよね〜。 馬場 「眼鏡の生徒会副会長」 飛鳥 いそういそう。「俺様な生徒会長」とか。 馬場 そうそう。いいカップルだし。 飛鳥 そっちに話し持ってかないでよ。ま、うちの高校にはいないんだけどね。 馬場 だよね〜。あ! 「カッコイイ先生」! 飛鳥 いるじゃん、英語の。 馬場 でもあの先生彼氏いるし。 飛鳥 え〜残念。って、彼女じゃなくて?  馬場 彼氏。今お金貯めてて、貯まったらオランダ行って結婚するんだって。愛だよね。 飛鳥 なんか見る目変わっちゃうなぁ。 馬場 飛鳥くん。差別はいかんよ。差別は。 飛鳥 はーい。……遅いねシーちゃん。 馬場 部活よりも遅いってありえないし。 飛鳥 まあ、うちらの部の活動時間が短かっただけって話だけどね。 馬場 「高校入ったらいる、もしくはあると思っていたキャラor出来事」もそろそろネタ切れを感じるし。 飛鳥 あ! あれは? 曲がり角で転校生にぶつかるやつ。 馬場 それ!     と、二人はぶつかるような動作のあと、馬場は倒れ、 飛鳥 (と、男のように)「いってぇ……ちゃんと前向いて歩けよな。」 馬場 (と、女キャラで)「はぁ!? あんたこそ、どこ向いて歩いてるのよ。」 飛鳥 「文句言う前に、見えてるぞ。パンツ」 馬場 「なっ!? このスケベ! エッチ! 変態!」 飛鳥 「はぁ!? 見せたのはお前のほうだろ! この痴女!」 馬場 「変態!」 飛鳥 「痴女!」 馬場 「変態変態!」 飛鳥 「痴女痴女痴女!」 馬場 「三回も言った! あたし二回しか言ってないのに三回言った!」 飛鳥 「ガキか!」 馬場 「ガキって言った方がガキなのよ!」     と、二人が言い合っている途中に東雲がやって来る。 東雲 ごめんね。教室に鍵かけておけとか言われて(遅れた。) なにこれ。 馬場 「ああ! もうこんな時間。あんたに構ってたら遅刻しちゃう! じゃあね変態さん。もう二度と会わないだろうけど、次からはもっと気をつけて歩く事ね!」(と、口で走り声を出す)「ダダダダダダダ!」 飛鳥 「あの制服……ってことは、同じ学校か。はぁ。最悪だ。」 東雲 もう一度聞くけど、何これ。 飛鳥&馬場 「高校入ったらいる、もしくはあると思っていたキャラor出来事」 飛鳥 シーちゃんは、あれ、「やる気無い、首疲れた系教師」(と、期待する目で見る) 馬場 「だるいなぁ〜。お前ら適当にやっておけよ〜」とか言うやつ。 東雲 うん。やらないよ。 飛鳥 え〜。 馬場 (と、チャイムの音を口で)「キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン」「まったく、変な奴のせいで遅刻するかと思ったわ」(と、期待する目で見る) 東雲 やらないから。 飛鳥&馬場 え〜。 飛鳥 遅れてきたのに? 馬場 結構待たされたし? 飛鳥 ちょっとくらい遊びに付き合ってくれてもねぇ? 馬場 それくらい、罰にもならないと思うけど? 東雲 わかったよ。(と、だるい感じを出しつつ)「えー今日からこのクラスに転校生がやっってくることになった。入ってきなさい。」 飛鳥 (と、ドアを開ける音を口で)「ガラガラガラ、ガラガラガラ、ピシャ」「今日からこのクラスにお世話になります飛鳥です」 馬場 「あぁ! 今朝の失礼な奴!」 飛鳥 「お前はくま柄パンツ!」 馬場 「くまじゃありません! パンダ!」 飛鳥 「どっちでも微妙なんだよ!」 東雲 「なんだ。お前達知り合いなのか。じゃあ、飛鳥は馬場の隣で良いな」 馬場 「嫌です! こんな変態!」 飛鳥 「俺だってお前みたいなパンツ見せびらかす女は嫌だ。」 馬場 「あたしがいつ見せびらかしたって言うのよ!」 飛鳥 「俺が注意するまで見せたままだったろ」 馬場 「はぁ!? あんたが勝手に見たんでしょ!」 飛鳥 「だれがお前みたいなブスのパンツを見たがるんだよ。」 馬場 「誰がブスよこのチビ!」 飛鳥 「これから伸びるんだよ!」 馬場 「チビチビチービ」 飛鳥 「お前なんかビッチじゃねえか」 馬場 「んだとこら!? やんのかチビ!」 飛鳥 「やってやるよ! クソビッチ!」 東雲 高校にあると思っていたって言うより、転校生が出てくる漫画あるある、もしくはベタな恋愛漫画ってとこだよね。それって。 飛鳥&馬場 ……確かに。 飛鳥 でも始め仲悪くて、だんだんと距離が縮まってやがてお互いの気持に気づくって展開はいいと思わない? 馬場 だよね! 東雲 もう高校関係ないでしょ。 飛鳥 そうだ、これを忘れてた。高校といえば、「恋愛!」 素敵な恋があるって思ってなかった? 東雲 興味ない。 飛鳥 え〜。 馬場 あたしは、見ているだけでいい。うちのクラスの男子カップルとか。 東雲 それ、誰と誰のこと言ってる? やっぱりいいや、なにもいわなくて。 馬場 あたしとしてはねウケが、 東雲 だから止めろというに! リアルでそういう想像をするのはダメ。しても、口に出すな。 馬場 わかった。妄想するだけにしておくし。ふふふふ。 東雲 怖いよ。恋愛ね。全く分からないな。 飛鳥 え〜クラスで仲いいカップルいるとさ、いいなぁって思わない? 東雲 全く。 馬場 しぃは枯れすぎだし。 東雲 恋愛は就職してからで良いと思ってるから。 飛鳥 じゃあ、シーちゃんは何が「高校入ったらいる、もしくはあると思っていたキャラor出来事」? 東雲 そうだな、……屋上に出る。とか。 馬場 ああ! 昼休みに屋上に出ると、寝転がって授業をサボっている男子がいて言うのよね!(と、また先ほどの女キャラで)「こら。今日もサボり?」 飛鳥 (と、寝転んで)「うるせえな、関係ないだろう」 馬場 「このままじゃ、もう一度二年生をやることになるよ。」 飛鳥 「余計なお世話だ。ってか、いいのか?」 馬場 「なにが?」 飛鳥 「見えてるぞ。パンツ。」 馬場 「この馬鹿!」(と、顔面を踏もうとする) 飛鳥 (と、起き上がり)「おい! あぶねえだろ!」 馬場 「人が真面目に注意してあげてるのにへんな所見るな!」 飛鳥 「お前が見せてきたんだろ。なんだ今の。キリン?」 馬場 「ふたこぶラクダ!」 飛鳥 「相変わらず微妙な柄のパンツだな」 東雲 あ、さっきの設定続いてるんだ。 馬場 「うるさい! あんたなんか留年しちゃえ!(と、口で走り声を出す)「ダダダダダダダ!」あ、こっから廊下ね「またやっちゃった。何で素直になれないんだろう。もう、時間が無いのに」 飛鳥 「これでいいんだ。俺なんかに構ってるとあいつまで悪く言われるからな」 東雲 途中からもう屋上の意味ないな。 飛鳥 あー屋上出てみたいなぁ。何で行けないんだろう。 馬場 危ないからじゃない? 飛鳥 でも行ってみたいよね。 馬場 ね。 東雲 ダメだから。普通に禁止されているんだし。 飛鳥 鍵が開けばなぁ。 馬場 針金を使って、こう、とかさ? 東雲 出来るの? 馬場 できたら良いなぁって。 飛鳥 中学の時もさ、屋上出られなかったんだよね。 馬場 それうちも。しぃのとこは? 東雲 ま、うちもそうだね。 飛鳥 高校では出てみたかったなぁ。 馬場 ね。鍵はどこにあるのかね。職員室? 飛鳥 校長先生が持ってたりするんじゃない? 東雲 開く鍵がどこにあるかは分かる。 飛鳥 本当に!?  東雲 この間教室に忘れ物しちゃってさ。帰る途中に気づいて、学校に戻ったのよ。7時くらいかな。昇降口は鍵しまってたけど、職員室はまだ明かりついていたし、先生用の玄関から入ってさ、教室まで行ったわけ。でもね、鍵がかかってて。 飛鳥 「最後の生徒は鍵かけろよ」って先生よく言ってるもんね。 馬場 面倒くさいから、あたしは絶対最後にならないようにしてるし。 飛鳥 あたしも。 東雲 で、職員室で教室の鍵を借りようとしたんだけど、警備員さんがちょうど見回っていたから聞いたの。(と、警備員へ)あの、教室の鍵って開けてもらう事できますか?      と、警備員が現れる。懐中電灯を手にし、腰にマスターキーをつけている。     (ポケットに入っているでも良い) 警備員 忘れ物?  東雲 はい。 警備員 ちょっと待ってね。(と、マスターキーで鍵を開ける)はい。どうぞ。 東雲 ありがとうございます。その鍵って、どこの教室でも開けられるんですか? 警備員 一応マスターキーだから。学校の鍵なら基本どこでも開くよ。ほら、忘れ物取ったらまた閉めるから。急いでね。 東雲 あ、すいません急ぎます。(と、忘れ物を取って教室を出る演技)ありがとうございました。 警備員 (と、教室に鍵をかけて鍵をポケットに入れる)気をつけて帰りなよ。     警備員が去る。 東雲 はい。さようなら! (と、飛鳥と馬場を向き)ってね。どう? 飛鳥 シーちゃんでも忘れ物するんだ。 馬場 意外。 東雲 気づいて欲しかったのはそこじゃない。マスターキー。 飛鳥 マスターキーってなに? 東雲 聞いた事無い? 施設にある鍵を全部開けられる鍵のこと。 馬場 それを警備員が持ってるってこと? 東雲 学校を見回るのには必要だろうからね。施設の鍵を全部開けられるってことは、当然屋上の扉の鍵も開けられるわけだ。だから、その鍵を、 飛鳥 わかった奪うんだね! 東雲 いや、 飛鳥 つまりこういうことだよね!     飛鳥の妄想世界。     と、警備員が懐中電灯を持って現れる。     三人に気づく。 警備員 君達〜。校舎閉めるから下校しなさい。 女子三人 はーい。     女子三人は警備員と交差し、 飛鳥 今だ。フォーメーションA 東雲&馬場 おう! 警備員 え?     警備員の右腕を掴む馬場。左腕を掴む東雲。 警備員 な、なにをする! 飛鳥 いただき〜!     そして飛鳥が腰から鍵を奪う。 飛鳥 とったぞー。 警備員 (と、なぜか怪人が正義の味方にやられるように)ぐわああああああ。とられた〜(と、去る)     妄想世界が終わる。 東雲 怒られるわ!! 馬場 あたし、筋力ないから男の人を抑えるとか無理だし。 東雲 あんたも冷静に考えないで。あのね。力づくなんてダメに決まってるでしょ。 飛鳥 じゃあ、色仕掛け? 東雲 犯罪になっちゃうからだめ! 飛鳥 手を出したら向こうが捕まるだけじゃん。 東雲 鬼か。 馬場 わかった! 気づかれなければいいし! 東雲 どういうこと!? 馬場 つまり、こういうこと!     馬場の妄想世界     警備員が現れる。先ほどと同じ格好。 警備員 君達〜。校舎閉めるから下校しなさい。 女子三人 はーい。 馬場 (と、わざとらしく)あれ、なぜか突然なんでもないところで転んじゃった〜。     と、警備員に向かってぶつかる馬場。     世界はスローモーションに。 馬場 (と、スローで)わ〜、ご〜め〜ん〜な〜さ〜い。     馬場は警備員の腰から鍵を取る。     スローが終わる。     ぶつかった後反転すると、鍵を後ろ手に持つ。 馬場 本当ごめんなさい。 飛鳥 すいません。この子ったらおっちょこちょいで。 警備員 もういいから気をつけて帰りなさい。 女子三人 はーい。     警備員が去る。 馬場 どう? これぞ完全犯罪!     馬場の妄想終わる。 東雲 完全に犯罪! 鍵が無い事なんてすぐ気づかれるでしょ。 馬場 あの警備員、なんか気づかなそうな顔しているから大丈夫。 東雲 何一つ大丈夫じゃない。 飛鳥 てか、スリの技術なんて持ってたんだ? すごいじゃん。 馬場 え? もってるわけ無いし。 飛鳥 じゃあダメじゃん。 馬場 あ、そうか。 東雲 そこは最初に気づこうよ。 飛鳥 あーあ。あたし達が屋上に上がるなんて無理ってことか。 馬場 ってか、高校ってあれもないこれもないばっかりだし。 飛鳥 なんか、一つくらいは叶って欲しかったなぁ。「カッコいい生徒会長」とか、「誰もが振り向く美人キャラ」とか、 馬場 しかもツンデレ。 飛鳥 ヤンデレでも可。 東雲 そんなの現実にいるわけないでしょ。 飛鳥 ……いや、そりゃキャラはね、無理だって分かってるけどさ。ドラマみたいなこと、起こらないってわかってるけど。なんか、起こら無すぎるっていうか。何にもないというか。屋上くらい出られてもいいじゃんね。そりゃドラマみたいなこと、起こらないって分かってるけどさ。 東雲 現実はドラマとは違うからね。 飛鳥 このまま何事も無く高校生活が終わるのかな。なんか、思ってたより体育祭とか、文化祭も楽しくなかったし。 馬場 盛り上がってたのは一部だけだったし。 飛鳥 あたしは、その一部に入りたかったよ。 馬場 無理だし。あいつら、あたしたちとは多分、生物としての種が違うし。 飛鳥 だよね。     なんだか落ち込む馬場と飛鳥。 東雲 まだ二年でしょ。これからよ。 馬場 もう二年生だし。 飛鳥 今だけじゃん。のんびり過ごせるのなんて。 馬場 来年は受験生だし。ま、叶わないからこそ「夢」だし。 飛鳥 夢は夢のままか。 東雲 ……ああ、もう! 方法は、無いわけじゃない。 馬場 え? 飛鳥 シーちゃん? 東雲 若干犯罪ちっくだけど。いや、間違いなく犯罪かも知れないけど。バレ無ければ何とかなる。かも知れない。 馬場 ……いいの? 飛鳥 乗り気じゃなかったよね? 東雲 乗り気じゃなかったけど。今だって、別にそれほど乗り気ってわけじゃないけど。でも! だって、悔しいでしょ。「自分たちには無理だ」、「夢は叶わないんだ」、なんて思ったまま過ごすのは。それに、 馬場 それに? 東雲 言ったのはあたしだよ! 「高校入ったら、屋上に出られると思ってた」って。     暗転     次の日の放課後。学校が閉まる時間。     懐中電灯で照らしながら警備員がやってくる。 警備員 いますか〜? いませんねっと。閉めますよ〜。     教室の鍵を閉める動作。     そこへ、三人の女子がやって来る。 警備員 まだ残ってたのか。君達〜。校舎閉めるから下校しなさい。 女子三人 はーい。 馬場 (と、わざとらしく)あれ、なぜか突然なんでもないところで転んじゃった〜。     と、警備員に転ぶようにぶつかる馬場。     その衝撃で警備員の手に持っていた鍵が落ちる。     馬場は警備員へ。     東雲は鍵を拾う(そして、すかさずすりかえる) 馬場 本当ごめんなさい。 飛鳥 すいません。この子ったらおっちょこちょいで。 警備員 もういいから気をつけて帰りなさい。あれ? 鍵は? 東雲 (と、すりかえた鍵を)はい。 警備員 ああ、ありがとう。じゃ、早く帰りなよ。 女子三人 はーい。     警備員が去る。 飛鳥 シーちゃん! 鍵は? 東雲 ここに。 馬場 おお! 飛鳥 やった! 東雲 教室閉めるときには気づかれるから喜んでいる暇は無いよ。急ぐよ。 飛鳥&馬場 うん!     走って屋上の扉に向かう三人。     走りながらの会話、 飛鳥 でも、よく、そっくりな、鍵、あったね! 東雲 うちのクラスの鍵。忘れ物したって言って職員室で借りたの。 馬場 ぱっと見じゃ、見分けつかない。 東雲 でも、鍵がかからなきゃ気づくだろうから時間との戦い。 馬場 だね。 飛鳥 ちょっと、二人とも走るの早い。 東雲 階段駆け上がる程度でへたばらないの! 馬場 ほら、もう少し! 東雲 ついた!     屋上への扉がある。     息を切らした三人は、呼吸を整える。     扉の前で、東雲が振り返る。 東雲 開けるよ?(と、扉に向かう) 飛鳥 うん。なんかさ、 馬場 なに? 飛鳥 あたしたち、今ドラマみたいだよね。 馬場 案外あるもんね。ドラマみたいな事って。 東雲 「ある」じゃない。あたし達で作ったのよ。やってやれないことなんて、この世にいくつも無いんだから!     扉が開かれる。     星空が広がっている。     三人が笑う。     暗くなり、星空だけが照らす。 完