明日二人だけのロミ&ジュリ(ろみじゅり)

                                    作 楽静


登場人物

三原 ユウコ 18歳 高校三年 常に男役をやる。男っぽい話し方。
伊藤 サヤカ 17歳 高校三年 女役ばかり演じる。ユウコのよき友達。


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     季節は秋。文化祭の三日前。
     舞台の上にはおぼつかない手で作られたセットがある
     出切れば城のバルコニーの部分を。書割は合っても無くても良い。
    
     この学校の演劇部は三年生が二人きり。
     それも女だけである。
     ので、一人が男(ユウコ)を演じている。
    
     サヤカの姿が浮かび上がる。
     サヤカは半分衣装(仮)をつけている。動きの練習の為か長めのスカート。
     彼女の役割はジュリエットである。


サヤカ 「ねぇばあや。あの方は誰? あの、とうとう踊りにならなかったあの方は? え?
   ロミオ? モンタギュー家の? あの難い仇の一人息子? そんな。
   ……たったひとつの私の愛が、たった一つの私の憎しみから生まれるなんて。
   ……ロミオ……あなたもきっと私を知らない。私がジュリエットだと。
   あのキャピュレット家の娘だと知ったらあなたは……私を愛してくれますか?」


     闇の中にサヤカは消える。
     ユウコが現われる。上はスーツのような物を着て、ズボンを履いている。
     しかし寒いからか、何故かスカートはつけたまま。
     髪を撫で上げ固めた姿は中性的。ロミオである。


ユウコ 「ジュリエットがキャピュレッと家の娘だと知ってもなお、僕の熱は冷めなかった。
   熱に浮かされたまま、僕はキャピュレット家の塀を超えた。この熱はなんだ? 
   この胸を焦がすような熱は。これが恋か。ならば僕は今までにあまりにも恋を知らなすぎた。
   この熱もいつか冷めるのだろうか? いや冷めるには僕はいっそう冷たくならなくては。
   そう死という冷たさをもってしか、この熱を冷ますことは出来ない。
   しっ、静かにしろロミオ。見つかってはこの熱を愛する人に伝えることも出来ない。」

 
     と、サヤカが窓(バルコニー)に現われる。
     光がサヤカを照らす。


ユウコ 「なんだろう、あの向こうから差してくる光は。アレは東か。ならばジュリエットは太陽だ。 
   美しい太陽よさあ昇れ。そして嫉妬深い月を殺してくれ。月に使えるはずの処女(おとめ)
   のあなたが主人よりはるかに美しいその為に、月は今や悲しみに病み、色青ざめている。
   月は嫉妬ぶかい女神なのだから。ああ。あれこそは我が姫、我が思い人だ。
   いや、まだそうと僕の心が通じてくれれば良いと思うばかりだけど。」


     サヤカがため息をつく


ユウコ 「何か言っている? いや何も言ってやしない。でもそれがなんだ! 
   あの目が物を言っているんだ。よし、答えてみよう。でも厚かましすぎるかな? 
   僕に話しかけているわけじゃない」

サヤカ 「ああ、ロミオ」

ユウコ 「僕の名か。今僕の名を呼んだのだろうか? ああ光り輝く天の使いよ。
   もう一度口をきいてください。僕の頭上、この闇の中憂うあなたの姿はまさしく天使。
   どんな言葉をも僕には天の言葉。伏してその言葉を聞くでしょう」

サヤカ 「ああロミオ。なぜあなたはロミオなの? あなたの父はあなたにとって父ではない
   と言ってくれたら。そしてあなたの家の名など捨ててくれれば良いのに。それとも、
   それがいやだと言うならせめて、私を。私を愛していると誓ってくれれば良いのに。
   そうすれば私はきっと今日限り、キャピュレッとの名を捨てるのに」

ユウコ 「(独り言)黙ってもっと聞いていようか。それとも声をかけようか。」

サヤカ 「仇はあなたのそのお名前だけ。たとえモンタギュー家の人でなくてもあなたに変わりは
   無いはずだわ。モンタギュー。なんですのそれが。手でもなければ足でもない。
   腕でもなければ顔でもない。人間の身体についたどんな部分でもそれは無い。
   後生だから何とか他の名前になって欲しいの。名前がなんだと言うのだろう? 
   私達がバラと呼んでいるあの花の名前がなんと変わろうとも、香りはちがくはならないはず。
   ロミオだって同じこと。名前はロミオでなくっても、あの恋しい神のお姿は名前とは別に
   ちゃんと残るにきまっているはず。ああロミオ。どうかその名前を捨ててください。
   そして、その名前の変わりにこの私の全てをお取りになってもらいたいのに」


     ユウコがサヤカの前に飛び出す。
     照明が二人を照らすようにつく。


ユウコ 「お言葉通りに致しましょう。ただ一言僕を愛しい人と呼んで下さい。
   すれば新しく洗礼を受けたも同じ。今日からはもう、ロミオでは無くなります」

サヤカ 「まぁだれあなたは? そんな夜の闇に紛れて人の秘密を立ち聞くなんて」

ユウコ 「さぁ、どうも名前と言われてはなんと名乗って良いものか困るのですが、
   ああ尊いあなたに僕の名前が腹立たしい。それというのも、あなたの仇の名前だからです。
   紙にでも書いてあるのなら、そのまま破ってしまいたい」

サヤカ 「そのお言葉の響き、私の耳はまだそのお言葉を百とは味わっていませんが、
   声にはっきり聞き覚えがある」


     と、サヤカはまじまじとユウコと見る。
     スカートを履いたロミオの姿に、笑いを必死で堪える。


サヤカ ロ、ロ、ロミオ様?

ユウコ (小声で)どうしたの?

サヤカ ロミオ。

ユウコ (小声)セリフ、サヤカ。セリフ。

サヤカ ロ……ごめん。だめだ。……くく、無理。


     と、サヤカは笑い出す。
     ユウコは照明室を向き、合図を出す。
     舞台が体育館の舞台に戻る。


1 文化祭三日前 体育館


サヤカ (笑いが収まってから)ご、ごめん。つぼに入った。

ユウコ なにがよ?

サヤカ だって。(と、スカートを見る)

ユウコ これのせいだっての?

サヤカ だって、そんな……

ユウコ 寒かったの!

サヤカ でも、ロミオなんだよ?

ユウコ 悪かったよ。脱げば良いんでしょ。脱げば。


     と、ユウコはスカートを脱ぎ捨てる。


サヤカ なんかスカート脱ぐしぐさってエロイよね。

ユウコ ほら、もういいでしょう? これで。

サヤカ いいけど、ちょっと休まない?

ユウコ 始めたばっか。

サヤカ 笑いすぎて疲れちゃった。

ユウコ もう……本番まであと三日しか無いんだよ?

サヤカ 大丈夫だって。なんとかなるって。

ユウコ ジュリエットがセリフとちったって、ロミオは助けてやんないよ。

サヤカ なんとかなるよ。(自虐的に)どうせ、演劇部の文化祭公演なんて、殆ど客いないんだし。

ユウコ サヤ!

サヤカ なによ。

ユウコ そういうこと言わない約束でしょ。

サヤカ だけどさぁ。

ユウコ だけどもない。私達演劇部の目標は?

サヤカ 目指せ(「全国」と言うつもりがだんだんと声が小さくなっていく)

ユウコ 聞こえない!

サヤカ メザセゼンコック〜(なんだか片言でどっかのロボットの名前のようにも聞こえる)

ユウコ ふざけない!

サヤカ 目指せ全国〜。

ユウコ そう。全国大会を目指している私達にとって文化祭など練習のようなもの。
   その練習にお客さんが入るんだから、むしろありがたいと思わなくちゃ。

サヤカ そう?

ユウコ そうよ!

サヤカ そうね。(言い聞かせるように)

ユウコ そうよ!(テンション高くなっている)

サヤカ そうね!(テンション高くなる)

ユウコ そう!(さらに高くなる)

サヤカ そうねぇ!!(なぜかオペラ調)

ユウコ そうよぉぉぉぉ!(同じくオペラ調)

サヤカ (と、いきなり普通に戻り)地区大会も突破できない部活の言う台詞じゃないよね。

ユウコ 何でそういう事言うのよ!

サヤカ だっていくら練習にしてもだよ? 人がまったく見に来ないのはさすがに
   実力不足ってことじゃない?

ユウコ それは……宣伝力が弱かったのよ。

サヤカ 去年の文化祭だって評判は最低だったし。

ユウコ あれは出し物が悪かったの!

サヤカ ハムレット?

ユウコ そう。難しかったからね。

サヤカ 一昨年だって。

ユウコ あれは……寒かったから。

サヤカ いろんな意味でね。

ユウコ うん。もう言うな。

サヤカ 創作だったからね。

ユウコ アレは無いと思ったよ。さすがに私も。

サヤカ いくら、先輩の書いた奴だからってねぇ。

ユウコ まぁ、うちら一年だったし。何か言える立場じゃなかったしね。

サヤカ だからってさぁ。推理ものラブコメファンタジー? だっけ?

ユウコ それとSF。


     と、場違いなほどファンタジックな音楽が流れてくる。


サヤカ 「太陽が見逃しても、このキャプテンコマンダー・ひこまろの目はごまかせないと思え!」

ユウコ 「真実はいつも二段重ねで後からやってくるのね」

サヤカ 「ごらん、パトラッシュ、あれが僕達の目指すアンドロメダだ!」

ユウコ 「あなたの瞳が輝いて見えるのは星のせい? それとも私の目に光る涙のせい?」

サヤカ 「気づかなかったのかい? 魔法はいつでもあなたの傍にあったのに」

ユウコ 「わかってたの初めから。犯人が、あなただって事」

サヤカ 「追いつけるものなら追いついて御覧。魔法の杖で僕が宇宙のかなたに行く前に」

ユウコ 「待てー」

サヤカ 「アハハ〜」

ユウコ 「ウフフ〜」


    サヤカとユウコはしばらく追いかけっこをした後、ばかばかしくなって我に返る。


ユウコ やめよう。

サヤカ うん。

ユウコ 客席、凍り付いてたっけ。

サヤカ まぁ、今もそうだろうけど。

ユウコ 確かに。

サヤカ でも、懐かしいなぁ。

ユウコ もう二度とごめんだけどね。

サヤカ そうじゃなくて、一年。

ユウコ ああ。

サヤカ もう、二年も前なんだ。

ユウコ そうだね。

サヤカ あっという間だねぇ。三年なんて。

ユウコ うん。

サヤカ 入らなかったねぇ。後輩。

ユウコ うん。……って、昔を懐かしがっている場合じゃないから。

サヤカ なによぉ。いいじゃんちょっとなつかしがったって。

ユウコ 大体後輩なら入っただろ。二人も。

サヤカ 一年と二年合わせてだけどね。

ユウコ でも、二人もいる。

サヤカ 二人ともスタッフだけどね。

ユウコ そんな風に言ったら、スタッフに失礼だろ。


     と、ユウコの声に合わせるように照明や音響が不満の音や色を出す。


ユウコ ほら、怒ってる。

サヤカ ごめんなさい。


     照明と音響が戻る。


ユウコ 分かればよろしい。

サヤカ はーい。だけどさぁ。そうやって反省したわけじゃん私達。

ユウコ え? 何の話?

サヤカ だから、二年前。

ユウコ ああ。創作?

サヤカ そう。

ユウコ したよ。反省。したでしょ。たくさん。

サヤカ で、なんでロミ&ジュリ(ろみじゅり)になるの?

ユウコ やりたかったから。

サヤカ それじゃ先輩とおんなじじゃん!

ユウコ いいでしょぉ。三年生なんだから。やりたいことやろうよ。

サヤカ まぁ、そりゃあね。わざわざ二人劇にしてくれたのはユウコ様ですから。
   私は何もいえませんけど〜。

ユウコ 言いたいことがあるならはっきり言えば?

サヤカ なんかさぁ。今ひとつわからなくない?

ユウコ そう?

サヤカ そりゃあ、いつも本読んでいるユウコには難しくないんだけどさ。
   あたしとしては結構違和感あるよ。もっと軽くてもいいんじゃない?って思っちゃう。

ユウコ 軽いって?

サヤカ そうだなぁ「おい、ロミオ。何であんたロミオよ?」

ユウコ どこのヤンキーだお前は。


     が、ユウコの言葉にかまわずサヤカはノっている。


サヤカ 「お前さ、ちょい家出ろや。てか、親と縁切れ? な? 
   まぁ、それが出来ないって言うんなら。そうだな。愛してるって言うだけでも、ええでぇ」


     言いながら、サヤカはユウコにくっつく。


ユウコ どこの人間だお前は。くっつくなって!

サヤカ 「悪いのは全部お前んちの名前。うんそれだけ。でもな名前捨てたって何も変わらんよ? 
   だろ? だったらさっさと、違う名前になれやコラ!?」

ユウコ そんなジュリエットは嫌だ!

サヤカ え〜面白いと思うんだけどね。

ユウコ 面白くすればいいってものじゃないでしょ。ロミ&ジュリは、優雅じゃなくちゃ。

サヤカ 優雅か……じゃあ、こういうのは?

ユウコ どういうの?

サヤカ the日本美風ロミオ&ジュリエット!

ユウコ 日本美?

サヤカ 日本と言って人が想像するのは?

ユウコ え? 富士山とか?

サヤカ それから?

ユウコ 寿司?

サヤカ それからそれから?

ユウコ ……自然?

サヤカ NO! It is GEISYA.

ユウコ はぁ!?

サヤカ That are Japanese beautifhl things!


     と、照明が変わる。それっぽい音楽。
     ユウコとサヤカは、京都風(偽)でロミ&ジュリを演じだす。


サヤカ 「あぁ、ロミオはん」

ユウコ 「わての名か? 今、わての名を呼んだんやろか?」

サヤカ 「あぁ。ロミオはん。ロミオはん。なしてあんたはロミオはんなんやろ? 
   あんさんの父ちゃんはあんたにとって父ちゃんではないと、そう一言言ってくれはったら。
   そしてあんさんの名ぁなど捨ててくれはったらええのに。
   それとも、それが嫌やと言うんやったら。
   せめて、せめてうちを愛していると誓ってくれはったらええのに。
   そうすればうちは、きっと今日を限りでキャピュレットの名を捨てますえ。……およよ。」

ユウコ (冷静に)やめよう


     照明が戻る。音楽消える。


サヤカ やっぱり、「およよ」はまずかった?

ユウコ その前にしゃべり方がおかしいから。

サヤカ いい感じに京都風じゃなかった?

ユウコ 京都の人が聞いたら怒るよ。

サヤカ あ、そうか。忘れてた!

ユウコ 何?

サヤカ どす。

ユウコ どす?

サヤカ 「ロミオはん。あんさんはなんでロミオはんどすえ」

ユウコ そんなジュリエットはいない。

サヤカ どすどす(と、相撲の真似)

ユウコ もう! まじめにやらないと怒るぞ!

サヤカ もう怒ってるって。じゃあ、分かった。真剣にやろう。

ユウコ やる気になった?

サヤカ THE 外国風ロミオ&ジュリエット。

ユウコ はぁ?


     照明変わる。音楽がかかる。


サヤカ 「Oh ロミーオ。アナタ ハ ドウシテ ロミーオ デスカー?(片言)」

ユウコ 頭痛くなってきた。

サヤカ 「あなたのダディは、アナタのダディではナイと言ってクダサーイ。
   アンド、アナタの家の名前ナド捨ててクダサーイ。ソレトモ? それが嫌とイウナラ、
   ソウデスネ。私を、loveしていると誓ってクダサーイ。
   ソウスレバ、私、今日限りでキャピュレットのNAMEナンテthrow awayシマース。
   ポイポイデース。腹きりサムラーイ、スシ食いねぇ〜」

ユウコ やめええい!!


     照明もどる。音楽も止まる。


サヤカ 駄目?

ユウコ そういう外国の人を馬鹿にするようなことは駄目!

サヤカ はい。

ユウコ 見ている人を不快にさせない劇作り。それが、我が演劇部のモットーでしょ。

サヤカ まず見に来る人がいないけどね。


     ユウコは本気でへこむ。


サヤカ あ、あ、でも、今回こそ来てくれるかも知れないじゃん? ね?

ユウコ どーせ、来るのは暇つぶしに覗くだけの先生か友達だけだよ。

サヤカ わかんないよ。ロミ&ジュリだし。今年はもっと来るかもしれないじゃん。

ユウコ さっき、どーせ来ないって言ったのは誰だっけ?

サヤカ それは魔が差したというか。……ほら、そんなへこまないの。
   部長がそんなんなっちゃったら成功する劇もうまくいかないよ?

ユウコ こういうときばっかり部長を持ち出すなよなぁ。

サヤカ え? そう?

ユウコ もう! いいよ、わかったよ。とにかくがんばらないといいものは出来ないんだしね。

サヤカ そうそう。てわけで、次は中国人バージョンいってみようっか〜。

ユウコ いや、もうそれはいいから。

サヤカ 「ロミオ どしてお前はロミオあるか。」

ユウコ それ、中国人違うし。

サヤカ だって、こうでもしないと笑い取れないよ。

ユウコ いいんだよ無理やり笑いを取らなくても。ストーリーで見せる劇なんだから。

サヤカ ストーリーって言ってもさ……そんな感動的かな?

ユウコ 感動するでしょ! 争う両家の息子と娘が恋に落ち、ひそかに行われる結婚の誓い。
   ところがあわれ恋人はしたくもない殺人を犯し離れ離れに。
   悲しみの中、追い討ちのように決まる縁談。焦るジュリエットは最後の望みを薬に頼る。
   ああ、しかしなんとしたことか。ロミオは彼女が死んだのだと思い、毒を飲むのだった。
   (と、個々からはロミオになりきって)「さぁ、いとしの人のために(と、毒を飲む)
   おお、正直だな薬屋。貴様の薬は良く聞くぞ。さぁ、こう接吻し、俺は死ぬ。」


     ユウコがばたりと倒れる。


サヤカ つまり、あれでしょ? 婚期を焦ると、ろくなことにならないって劇でしょ?

ユウコ (起き上がりつつ)なんでよ!

サヤカ だってさ。ジュリエットももう少しロミオと結婚しないでいれば、死ななかったと思うよ。

ユウコ それが若さゆえの過ちって奴よ。

サヤカ え? 若いのジュリエットって?

ユウコ そりゃ若いでしょ。13歳か、そこらへんって話をどっかで読んだことあるよ。

サヤカ 13!?(と、自分達を指し)年下?

ユウコ だねぇ。貴族が結婚する年齢って言うのが14歳〜16歳だったらしいから。

サヤカ じゃあ、なに?(と、ユウコを指し)ロリコン!?

ユウコ だれがロリコンだ。

サヤカ だって駄目でしょ、さすがに。中学生に手を出しちゃさぁ。しかも結婚だよ! 犯罪だ!

ユウコ だからこっちを指すな。

サヤカ 世が世なら警察行きだよ。

ユウコ あんたね。なんか本気で言っているみたいだから一応言っておくけど、
   そう変わんないよロミオも。

サヤカ もともと人を殺した犯罪者だから?

ユウコ 年! ジュリエットと大して違いないらしいよ。

サヤカ うそぉ。

ユウコ 本当だって。

サヤカ とてもディカプリオは14には見えなかったよ。

ユウコ そりゃ映画だからでしょ。

サヤカ じゃあ、中学生同士の恋愛だったんだ。

ユウコ そうらしいよ。

サヤカ 中学生のくせに結婚しちゃったりしていたのか。

ユウコ まぁ、今とは時代が違うからね。

サヤカ 負けた。

ユウコ え? 何が?

サヤカ だって、あたしまだ、チュウだってしたことないのに。

ユウコ 物語と張り合うなよ。

サヤカ こいつらは中学生のくせにやることやっちゃってたんだよ?

ユウコ なんかエロイなその言い方。

サヤカ 女としては敗北感味わうよね。

ユウコ サヤ……そんな落ち込むな。一人じゃないから。

サヤカ ユウ……ユウじゃ慰めにならないよ。

ユウコ なんでよ。

サヤカ だって、男に興味ないじゃん。

ユウコ まぁね。女の子の方が好きだけどね。可愛いし。

サヤカ それ誤解されるよ。

ユウコ 何と?

サヤカ レズかって。


     と、ユウコはサヤカにしなだれかかり。


ユウコ レズじゃないよ。女の子の方が好きなだけだよ。ちょっとね。

サヤカ ぎゃーー。やめれ! 変なとこ触るな!


     と、照明が変わる。
     音楽まで怪しげになったり。


サヤカ って、照明! なんて色にしてるのよ。

ユウコ いいね。いい演出だ。さて。

サヤカ 「さて」じゃない!  言っておくけどあたしは思いっきりノーマルだからね!

ユウコ 大丈夫。僕もどっちかって言うとSMは好きじゃない。

サヤカ そういう意味じゃない!

ユウコ いいじゃないか。サヤ。いい夢見させて上げるよ?

サヤカ 遠慮します。

ユウコ ほら、気持ちよくなろう?

サヤカ やめて! 触らないで! あああああ。


     と、照明が暗くなる。
     音だけ。


ユウコ ほら、ここ?

サヤカ あ、そこは。

ユウコ ここがいいの?

サヤカ ちがっ……

ユウコ じゃあ、こっちは?

サヤカ あ、……気持ちいい。

ユウコ だろう? ほら、じゃあここは?


     と、照明がつく。
     ユウコがサヤカの肩を揉んでいる。音も止まる。


サヤカ あーいいねー。効くー。

ユウコ でしょう? これでもね。なかなかのもんよ。僕のマッサージ。

サヤカ 本当だねぇって、おい! コントか!

ユウコ ノリ気だったくせに。

サヤカ そりゃあこってたから……って、そうじゃない!

ユウコ つまり僕にとっては女の子は愛でるものであって恋愛対象ではないと、そう言いたかったの。

サヤカ じゃあ、男は。

ユウコ まぁいつかは好きになるのかもね。分からないけど。

サヤカ いつかか〜。私もいつかいい人が現れたりするのかな。

ユウコ するんじゃない? 多分。

サヤカ もう少し真剣に答えてくれてもいいじゃんよ。

ユウコ だって、分からないし。

サヤカ それが青春を演劇部に費やした友人への言葉!?

ユウコ いいじゃないの。楽しかったんだから。

サヤカ 楽しかったよ。そりゃ楽しかったけどね。けどよ。

ユウコ だからいいでしょ。楽しかったんだから。

サヤカ 聞け。

ユウコ はい。

サヤカ 三年間の高校生活。それは甘い思い出やつらい思い出がたくさん出来るものになったはず。
   ……好きな人が出来てドキドキしたり。失恋したり。ところが待っていたのは部活。部活。
   そりゃ楽しかったけどさ。やっぱりもっと遊んだりしたかったし。恋とかさ。
   してみたかったじゃん。

ユウコ すりゃよかったでしょ。

サヤカ どこですんのよ〜。

ユウコ クラスとか。

サヤカ だって、せっかくの機会があってもさあ。

ユウコ あっても?

サヤカ これあるじゃん。

ユウコ これ?

サヤカ 部活。文化祭なんて絶好のチャンスなのに。あたし、クラスの手伝い何も出来てないんだよ。

ユウコ 三年は有志だけでしょ。

サヤカ そうだけど。でも去年とか、一昨年はあったわけじゃん。でも手伝えなかった。

ユウコ そんな手伝いなんかがチャンスになるの?

サヤカ なるよ! 例えば文化祭の看板なんか作っててさぁ……


     と、サヤカは文化最中ハプニングの世界に入る。
     照明と音楽が変わる。
     いつものサヤカとは違うキャラ。


サヤカ じゃあ、コータ君はそっちの絵、端っこ赤で塗ってくれる? あ、ケンイチ君、そこは青ね。

ユウコ なんだこのキャラ(と言いつつ傍観)

サヤカ さぁ、じゃあ私はどこを塗ろうかな?(と、絵筆を取ろうとしたらしい)
   あっ(と、その手が誰かに触れたらしい)……タカシ君。これ、タカシ君のフデ? 
   やだ、ごめん。え? じゃああたしのは? ねぇ、あたしの絵筆は?

ユウコ 知らん知らん。

サヤカ なに? いじめ? これっていじめ? もう! ひどいよみんな!

ユウコ 誰だお前。

サヤカ え? なに? タカシ君。これ、使っていいの? 私が? でも、これタカシ君のでしょ?
   タカシ君はどうするの? なによ「俺はいい」って。だめだよ。
   タカシ君もちゃんと参加しなきゃ。面倒くさがっていたらいいものも出来ないぞ!

ユウコ ねぇ、帰っていい? 恥ずかしくなってきた。

サヤカ (聞こえてない)あ、まって。じゃあさ。……よかったら一緒に描こう? 
  (と、ユウコの手を取る)タカシ君の手って冷たいね……って、きゃーー。


     照明と音楽戻る。
     サヤカは突然戻るとユウコを叩く。


ユウコ 痛い。いろんな意味で痛い。

サヤカ だって、もうやっだぁ。恥ずかしいじゃん。

ユウコ ならやるな!

サヤカ でも、いいよね。文化祭で生まれる恋愛。

ユウコ サヤ、クラスに好きな人いたの?

サヤカ ……いきなり夢を覚ますようなこと言わないでよ。

ユウコ だってそれ、気になる男がいないと成り立たないでしょ。

サヤカ 違うんだよ。これは。なんていうかなぁ。青春ゆえの錯覚? そう! 
   まるでジュリエットがロミオに恋したような!

ユウコ ロミジュリは明らかに純愛でしょうが。

サヤカ 分からないよ〜一目ぼれでしょ? しかも、
   だれだったか親に決められそうな恋人候補もいたし。

ユウコ パリスね。

サヤカ そう、そのパリ。

ユウコ 略すな。

サヤカ とにかく、「自由恋愛万歳!」ってパッと見カッコいい男に飛び込んだのかもしれない。

ユウコ そんなサヤじゃあるまいし。

サヤカ わからないよぉ。13の小娘じゃ。

ユウコ あんたに小娘扱いされちゃジュリエットも可哀想だけどね。

サヤカ 一体私の何がジュリエットに足りてないって言うの?

ユウコ 顔と体。あと、心。

サヤカ 全部じゃん……。

ユウコ 事実でしょ。

サヤカ 分かってるけどさ。でも、そんな子が自覚しながらもジュリエットやってるのよ? 
   もうちょっとやさしくフォローしてくれてもいいんじゃない?

ユウコ そりゃあ演劇はね。いいのよ。そういうのが許されるんだから。

サヤカ でもさ、絶対見ている人は思うよ。「なんだ。アレがジュリエットかよ。うそつけー」って。

ユウコ 思いたい奴には思わせておけばいいじゃない。

サヤカ みんな思ってたらどーするのよ。

ユウコ だったらロミジュリやろうって言ったとき反対すればよかったでしょ?

サヤカ だって、ユウがやりたそうだったし。

ユウコ ……僕のせい?

サヤカ そういうわけじゃないけど。

ユウコ そう。僕のせいなんだ?

サヤカ だから、誰かのせいとかそういうこと言ってないじゃん。

ユウコ つまりさ。やりたくないわけでしょ。サヤは。
   だったら回りくどいこと言ってないではっきり言ってよ。

サヤカ やりたくないわけじゃないよ。ただね。

ユウコ だからそれが回りくどいって言ってるの!

サヤカ 怒ることないじゃん!

ユウコ 怒ってない。

サヤカ 怒ったでしょ。

ユウコ 怒ってない! もういい。今日は止めよ。

サヤカ でも、文化祭まで後三日だよ。

ユウコ こんな気持ちで劇なんて出来ない。(と、帰る準備を始める)

サヤカ ユウ。あたしね、別に嫌なわけじゃないんだよ。ロミジュリ好きだし。
   ユウが直してくれた台本読んでやってみたいって思ったのは本当だし。
   ……たださ、あたしなんかがさ。ジュリエットをやっても、
   コメディになっちゃうかなぁって思って。
   いや、そのつもりでやればいいんだけどねぇ〜。なんて。

ユウコ お疲れ様。

サヤカ ……おつかれ。

ユウコ ……似合わないのはあんただけじゃないじゃん。

サヤカ え?

ユウコ 僕なんて、男ですらないんだから。

サヤカ ユウ!?
 

     ユウコが走り去る。
     サヤカはやっちゃったと言いたげに少し落ち込む。
     そして呟くのはジュリエットの台詞。


サヤカ 「ああ、ロミオ。ロミオ。あなたはどうしてロミオなの? 
   あなたの父はあなたにとって父ではないと言ってくれたら。
   そして、あなたの家など捨ててくれればいいのに。」


     さびしそうにサヤカは辺りを見て。


サヤカ それでも、ロミオはロミオのまんまか……なれたらよかったのに。あたしも別のものに。
   そうしたら、楽だったのにね。……ああ、ロミオ。ロミオ。あなたはどうして――


     舞台が暗くなる。
     音楽と共に一日が終わり次の日。


2 文化祭二日前 体育館


     暗いうちからユウコの声が聞こえる。
     ロミジュリ上の舞台は第三幕。すでにロミオとジュリエットの結婚の誓いは済み、
     ロミオがティボルトを殺す事件を起こすくだりである。
     ユウコの姿は昨日よりも少しロミオっぽい。


ユウコ 「(ロミオ。やけに明るく)僕が悪党だって? ティボルト君。
   ところが僕のほうじゃどうも君を愛さなくちゃいけないわけがあるんだ。
  (と、客席を向き)なんせジュリエットが僕の妻なら、彼は僕の親戚だからね。
  (またティボルトに向き)だから本当ならカッと来なくちゃならない今の挨拶にも、
   僕はもう何も言わない。ただね、僕は決して悪党じゃない。だから今日は失敬しよう。
   おい! マキューシオ、剣を収めろ! おい、二人ともみっともない乱暴はよせったら。
   ティボルト! よせ! ティボルト! おい! マキューシオも! あっ……」


     マキューシオがティボルトに刺されたらしい。


ユウコ 「マキューシオ! おい、元気を出せ。マキューシオ! マキューシオ! 
   ……ああ、ジュリエット。君の美しさが僕を弱虫にしてしまい、
   僕の中の勇気の鋼を弱らせたのだ。友であるマキューシオは死んだ。
   しかし、今日のこの災いは決してこのままでは済まないぞ。もう寛大な心などいらない。
   さあ、ティボルト。さっき貴様のくれた悪党呼ばわりは今こそ貴様に返してやる。
   マキューシオの魂はほんの僕たちの頭の上、まだそこらにいるだろう。
   道連れは貴様の魂。それを待っているはずだ!」


     ロミオが剣を抜く仕草。
     ロミオが剣を振るう。
     そして、いつかロミオの剣がマキューシオを突いた。
     ティボルトが倒れたのか、ロミオは死体を見下ろす。
     次第に舞台は暗くなる。
     舞台はロミオだけを浮かび上がらせる。


ユウコ 「ああ、馬鹿め。運命にもてあそばれる馬鹿だったな俺は。」


     舞台が明るくなるとサヤカが立っている。
     すこしジュリエットぽくなっている。


サヤカ おはよ。

ユウコ (照明に)照明さ、もうちょっと最後落とせる? あと、色きつくなかった? 
   大丈夫? ありがと。

サヤカ ユウ。

ユウコ (音響に)音響、ここで、もう少し絞れる? OK。

サヤカ ……

ユウコ 遅くない? もう始まってるんだけど。

サヤカ 部室行ったらもう誰もいなくて。まだ来てないのかと思っちゃってさ。

ユウコ あと二日だよ? 部室にいつまでもいるわけないじゃん。

サヤカ 昨日は待っていてくれたから。

ユウコ 次、ジュリエットのシーンだから。

サヤカ 昨日のこと、まだ怒ってるの?

ユウコ 何に怒るわけ?

サヤカ なににって

ユウコ 台詞、覚えてるの?

サヤカ 覚えてるよ。

ユウコ じゃあ、はじめるよ。


     ユウコが合図を出すと、サヤカとユウコだけが闇の中に浮かび上がる。
     第三幕第二場。ジュリエットはロミオが殺人を犯したと知らされる。
     ユウコはこの間、ひたすら逃げている(見えなくても良い)


サヤカ 「さあ夜よ。早く来い。そしてあなた、夜の闇の中昼とも見紛うロミオも! 
   夜の翼に運ばれてやってくるあなたはきっと、あのカラスの背に降りかかる雪の白さよりも
   もっと鮮やかでしょう。心優しい愛の夜。さぁ、早く来て。ロミオをこの私の腕に。
   そう、そしてもしロミオがお亡くなりになるのなら、ロミオはお前に上げる。
   小さな星屑にすればいい。そうすれば大空はどんなにか美しく輝きわたることだろう。
   人という人はみな夜の闇に恋焦がれ、二度と昼間の神などあがめたりしなくなるでしょう。
   ああ、今日という日のこの長さ。まるで新しい晴れ着はもらったものの、着せてはもらえぬ、
   祭りの前の夜の子供のようね。あら? ばあやどうしたの? 何かいい話? 
   まぁ、どうしたって言うの? ……死んだ? ティボルトが? ロミオの手にかかって? 
   そんな……」


     サヤカが否定するように慄く。
     ユウコは手についた血を落とそうとしている。
     血は落ちない。どうやっても落ちることはない。


サヤカ 「この世の楽園とも見紛うあの体の中に、そんな悪魔が住んでいたとは。
   あの美しい宮殿の中にこんな偽りが住んでいたなんて。(はっとして)
   では、ロミオはどうなるの? 追放? せっかく私のところへと約束をしたのに。
   私もこのまま処女でいながらやもめで死んでいかなければならないのかしら。」


     うずくまるユウコ。
     サヤカは何かを決心したように。


サヤカ 「……ねぇ、ばあや? ロミオの居場所が分かったら、この指輪を。
   そして、あの人に私は待っていると伝えて頂戴。追放になるその前に、
   一目お会いしたいと。……最後のお別れですもの。きっとお出でになってとそう言って……」


     サヤカが指輪を差し出すしぐさ。
     その手の先は闇に消える。
     ユウコは誰かに肩を叩かれる。
     顔を上げたその先で何かを受け取る。
     指輪のようだ。


ユウコ そして、ロミオは受け取る約束を。

サヤカ 助言を与えるは僧侶。

ユウコ 小さき希望を植えつけられ

サヤカ 闇の中へ

ユウコ 身を隠して突き進む

サヤカ 少女の下へ

ユウコ 幼い妻の住む窓へ

サヤカ つかまる恐れは胸の中へ

ユウコ 恋人の笑顔ばかりを頭に浮かべ

サヤカ たった一夜結ばれるため

ユウコ たった一夜の愛のため

サヤカ ロミオは走る。

ユウコ 走る。

サヤカ ロミオは走る

ユウコ ロミオは走る

サヤカ そして――。


     サヤカとユウコは向き合う。
     照明が元に戻る。


ユウコ ……覚えてるじゃん。

サヤカ そりゃあ二日前だから。

ユウコ やりたくないんじゃなかったの?

サヤカ だから違うって言ったでしょ。

ユウコ もう来ないかと思った。

サヤカ なんで?

ユウコ 僕、怒って帰ったし。メールも来ないし。

サヤカ なんて謝っていいか分からなかったから。

ユウコ 別にサヤが悪いわけじゃないじゃん。

サヤカ そんなことないよ。

ユウコ そんなことないことないって。

サヤカ そんなことないことないってことないよ。

ユウコ そんなことないことないってことないよってことないじゃん。

サヤカ そんなことないことないってことないよってことないじゃんってことないべさ。

ユウコ そんなことないことないってことないよってこと

サヤカ やめない?

ユウコ うん。だからさ。

サヤカ だから?

ユウコ サヤ、別に悪くないでしょ。

サヤカ ううん。あと少ししかないのに変なこと言っちゃって。

ユウコ それ、僕も同じ。

サヤカ うん。

ユウコ ……って、暗くなってどーするの! あと二日しかないんだよ!

サヤカ (お前が言うか? というニュアンスで)そうだった。

ユウコ 練習しよ。練習。

サヤカ うん。

ユウコ 練習すればさ、伝わるかもしれないし。

サヤカ なにが?

ユウコ 面白さが。

サヤカ 伝わるかな?

ユウコ がんばればね。どんなあってないロミオとジュリエットでもさ。
   がんばれば面白さは伝わるはずだよ。

サヤカ うん。

ユウコ がんばろう。

サヤカ おう。で、どこやる?

ユウコ ずばり、ぬれ場。

サヤカ 朝のシーンね!

ユウコ 朝じゃないでしょ。夜よ夜。

サヤカ だって朝でしょ? やった次の日。

ユウコ 身も蓋もない言い方するな。

サヤカ なんて言えばいいのよぉ。

ユウコ ……交わした次の日?

サヤカ なんかいやらしい。

ユウコ そうかな?

サヤカ すんごい濃密な感じしない?

ユウコ 確かに。

サヤカ 素直に「やっちゃったその朝」の方が、軽い感じがしていいと思う。

ユウコ なるほど……って、あんたジュリエットなんだからね? 
   もうちょっとおしとやかな表現でまとめようと努力しなさいよ。

サヤカ 努力します。

ユウコ 第一、朝じゃないでしょ。ジュリエットにとっては。

サヤカ ああ、そうだった。(と、ここからなりきって)「まだ朝には間があるわ、ロミオ。」

ユウコ 「でも、ほら、うっすらと空が。それにヒバリが……」


     ユウコの言葉に合わせるように朝がかった色へと代わる。


サヤカ 「いいえ。おびえているあなたの耳に、今聞こえたのはナイチンゲール。
   ヒバリじゃないわ。毎晩あの向こうのざくろの木で鳴くのよ。ねぇ、ロミオ。
   本当よ。ナイチンゲールなのよ。」

ユウコ 「いいや。朝を知らせるヒバリだった。ナイチンゲールじゃない。ほら、ごらん。
   あの向こうの東の空。別れていく雲の裂け間を縁取って見える意地悪な朝の光を。
   夜の衣は燃え落ちて、楽しげな朝が切り深い山の頂につま先立ちして立っているだろう。
   今こそ行くとき。行って命を助かるか。ぐずぐずすれば死があるだけだ。」

サヤカ 「いいえ。あの光。あれは朝の光じゃないわ。ええ、そうよ。だからまだいいの。
   行かなくてもいいのよロミオ。」

ユウコ 「そうか。じゃあ、僕はもうつかまってもいい。殺されてもいい。
   あなたがその心なら、僕はそれで満足です。」

サヤカ 「え?」

ユウコ 「あの仄かな明りも朝の瞳ではない。月の女神の輝きからのただ青白い照り返し
   だとしておこう。それからあの僕たちの頭上はるか、大空かけてさえわたる調べも、
   ヒバリじゃないとしておこう。僕だってどんなにかこのままでいたいことか。
   さあ死よ。来るなら来い。喜んで迎えよう。姫の望みだ。……どうしたジュリエット? 
   話そうもっと。朝じゃないんだ。」


     サヤカはふと、ジュリエットを演じるのをやめる。


サヤカ 嫌味だよねぇ。ロミオって。

ユウコ 純粋なだけでしょ。

サヤカ 「姫の望みだ」なんて。引き止めたい乙女心がわからないのかね。

ユウコ いいから、次の台詞。

サヤカ はいはい。(と、ジュリエットに戻り)「いいえ、朝だわ。朝なのよ。
   さぁ、行って頂戴。早く。早く! ヒバリだわ。あの調子はずれの歌声は。
   耳障りな金切り声で鳴きたてて。」


     ユウコはふと、ロミオを演じるのをやめる。


ユウコ 自分勝手。

サヤカ 素直なだけじゃん。

ユウコ さっきまで引きとめようとしていたくせに。

サヤカ 断られると分かっていて、引き止めるのが女でしょう? うなずかれたって面白くもない。

ユウコ うっわ自己中〜。

サヤカ いいの! 死に急ぐなって言ってるだけでしょ。(と、ジュリエットに戻り)
  「さぁ、ほら、いらして頂戴。言っている間にもほら、明るさが増す。」

ユウコ 「明るさが増せば増すほど、暗くなるのが僕達二人の悲しみだ。さようならジュリエット。」

サヤカ 「私達、もう一度会える時があるかしら?」

ユウコ 「あるとも。そしてその時は今のこの苦しみは、みんな楽しい語り種になる。」

サヤカ 「でもなぜだろう? そこに立っているあなたの姿が、
   なんだか墓の底に横たわる死人のよう。私の目が悪いせいか。
   それともあなたの顔色が悪いせいか。」

ユウコ 「そういえばジュリエット。あなたの顔も同じようだ。
   きっと悲しみのため息が僕らの血を吸い取るのだ。さようなら!」

サヤカ 「さようならロミオ。どうかこれが今生の別れになりませんように。」
   ……せめてメールがあればねぇ。


     照明が戻る。


ユウコ いいシーンが台無し。

サヤカ だってさ、もしもだよ? 携帯があったら、この話成り立たないでしょ。

ユウコ そんなことないでしょ。

サヤカ だって、現代だったらメールで連絡取り合えばいいってもんでしょ。

ユウコ 携帯があっても、使えるか分からないじゃん。

サヤカ なんでよ?

ユウコ だって犯罪者なんだからロミオは。警察が犯人の居場所を探知するのに
   メールの受信記録見るとかよくあるでしょ。

サヤカ そっか。でもさぁ。

ユウコ なによ。

サヤカ ジュリエットも初めから駆け落ち覚悟で家出ればよかったんじゃない?

ユウコ 13の娘にそんなことできるわけないでしょ。

サヤカ 同じくらいの年のロミオはやってるじゃん。

ユウコ 男と女は別。それに、ロミオだって追放って言っても町の外で
   ちゃんと世話を受けているんだよ。

サヤカ だから?

ユウコ だから、かけおちじゃあ二人とも世話してくれる人がいなくなっちゃうでしょ。

サヤカ だからってさぁ。

ユウコ ちょっと。

サヤカ え?

ユウコ 絡みすぎじゃない?

サヤカ だって分からないから。

ユウコ なにが?

サヤカ 何がって言われても。

ユウコ なによ。言ってよ。

サヤカ いや、これ結構根本的なものかもしれないからさ。

ユウコ じゃあ、なおさら言ってよ。

サヤカ いや、でもね。

ユウコ 言え。

サヤカ はい。……死ねる?

ユウコ は?

サヤカ だから、死ねる? 好きな人のために。

ユウコ 知らないよそんなの。

サヤカ 死んだんだよ。二人は。

ユウコ そういうお話だからね。

サヤカ なんでよ?

ユウコ なんでって、そりゃあ。

サヤカ そりゃあ?

ユウコ ……愛よ。

サヤカ ぷ。

ユウコ だから言いたくなかったのに……

サヤカ ごめん。だって急に変なこと言うから。

ユウコ 僕が愛とか言うとおかしい!?

サヤカ ごめん。だって、すごくまじめな顔で言うから。

ユウコ 僕がまじめに愛とか言うとおかしい?

サヤカ おかしくはないけど。

ユウコ けど?

サヤカ 意外だなって。

ユウコ もういい。言いませんよ!

サヤカ ごめん。

ユウコ はいはい。

サヤカ ごめん。

ユウコ もういいよ。キャラの問題だし。

サヤカ ごめんね。

ユウコ もういいって。

サヤカ 昨日はごめん。

ユウコ サヤ……

サヤカ ずっと、謝らなきゃって思ってて。でも、タイミングつかめなくて。だから、ごめん。

ユウコ いいよ。僕も悪かった。

サヤカ ユウは悪くなんてないじゃん。あたしが変なこと言って。

ユウコ 変なことじゃないよ。当然のことじゃん。……ただ、僕は悔しかったんだ。

サヤカ 何が?

ユウコ ……サヤカが文化祭の話をしたとき、自分にジュリエットは似合わないって話をしたとき、
   ただ悔しかったんだ。僕の身勝手さに腹が立って。悔しかったんだ。

サヤカ 身勝手なんかじゃないよ。ユウは頑張ってるよ。

ユウコ それは僕がロミ&ジュリをやりたかったから。僕はただ僕のためだけに頑張ってた。

サヤカ それでいいんじゃないの? だって役者がやりたい役を舞台で演じられるのが一番なんだから。

ユウコ 違う。

サヤカ 何が違うの?

ユウコ 僕が演じたかったのはロミオじゃない。

サヤカ じゃあ、ジュリエット!?

ユウコ そういうことじゃない。僕が演じたかったのは、ロミオを演じる男だから。

サヤカ どういうこと?

ユウコ 覚えてる? 一年生のときに演じた劇。

サヤカ 推理ものラブコメファンタジー?

ユウコ それとSF。あれが演劇部に入って初めての劇。初めての男役。

サヤカ 台本自体はひどかったけどね。

ユウコ でも、嬉しかった。

サヤカ なんで?

ユウコ ずっと、男になりたかったんだ。僕は別に女の自分に疑問を持っているってわけじゃない。
   わけじゃないけど、でもずっとあこがれてた。僕は男になった僕を夢見てた。
   それは逃避に過ぎないのだけど、でも僕は気づかずに男のように振舞って。
   僕って言う一人称を楽しんでいた。僕が演劇部に入ったのはね、
   ただココでは誰にも何も言われることなく男でいられる。そう思ったからなんだ。
   ばかだよね。女であることは隠せやしないのに。
   男の格好と言葉使いだけでそんなもの覆えると思ってた。
   それだけ僕にとっての男って存在は大きかったんだ。

サヤカ だから二年生ではハムレットをやりたいっていったの?

ユウコ せっかく演劇部なんだし、カッコいい言葉も言ってみたかった。
  「生きるべきか、死ぬべきか。それが問題だ」なんてね。
   でも、僕にとって本当の問題はいつもここにあった。(と、胸に触れる)
   いやでも女であることを思い知らされて、押さえつけられるたびに苦しくって。
   まるで心に体が怒っているような気がした。だけど、男でいたかった。
   僕には無いものを全て持った男に。そうやって僕は演劇の中で理想の僕を演じていたんだ。

サヤカ 何で言ってくれなかったの?

ユウコ 言ってどうするの? 自分の身勝手で台本選んで。勿体つけたように理由つけて。
   何がストーリーだって? そんなものは関係なかった。
   僕は……わたしはただカッコいい男を演じたかっただけ。
   だからサヤカがコメディにしようとしたから腹が立った。それだけ。最低でしょ?

サヤカ そんなことないよ。

ユウコ 最低なんだよ。自分で言いながらまだ私は救われたいと思っているんだから。
   「ああ、そしてそのときには今のこの苦しみは、みんな楽しい語り種になる。きっと」
   そう信じてみても何の力にもなりはしないのにね。

サヤカ ユウ……

ユウコ ごめんね。私のせいで、あんたまで巻き込んで。でも、私、本当に……
  (そんな自分が自分で許せない)ごめん。帰る。明日は、ちゃんとやるから。

サヤカ ユウ!


      ユウコは言葉に出来ず舞台を去る。
      サヤカは追えない。
      薄暗い会場。


サヤカ ユウ……おおロミオ。あなたはどうしてロミオなの?せめてロミオを望まずに済んだなら。   
   それならば私も、あたしだってジュリエットを望まずに済んだのに。
   呟いた声は小さくて、しゃがれてた。鏡を見るまでも無く、
   ジュリエットには程遠いあたしが舞台に一人立っていた。


      長い間。
      と、照明がサヤカに当たる。


サヤカ (照明に)どうしたの? ううん。練習してたんじゃないんだ。ユウ、帰っちゃったし。


      ゆっくりと照明が消える。

 
サヤカ (照明に)あ、待って。付けてくれる? 明り。うん。少しだけでいいから。


      照明がサヤカに当たる。
      サヤカだけを浮かび上がらせる光。
      光の暖かさをサヤカは感じる。

      手で光を救うようにしてみる。
      そして、その光の先を見る。
      光を浴びる気持ちよさをサヤカは喜びと共に感じる。


サヤカ うん。そうだよね。


      光の中で、サヤカは自分を抱きしめる。
      光の中にいることそれ自体を楽しむ。
      光はサヤカの動きに合わせて移動する。


サヤカ ねぇ、ロミオ。あんた、忘れていることがあるんじゃない? 
   私たちは二人だけのロミ&ジュリ。なら、ロミオがロミオだと決めるのは誰? 
   ジュリエットをジュリエットだと決めるのは誰? 私達がライトを浴びる意味は何? 
   忘れているなら、教えてあげないと。だって、あんたは私のロミオなんだし。
   私はあんたのためのジュリエットなんだから。
   (と、いきなり前を向く)
   そして、時は瞬く間に流れ、いよいよ本番一日前。ジュリエットは、あわれ毒で意識をなくす。

 
     サヤカは懐から毒のビンを取り出す。
     そして、何かに挑戦するように煽る。
     倒れる。
     照明は一度落ちる。
     音楽。
     そして、薄暗い中、ロミオが現れる。


3 文化祭一日前 体育館
 

     舞台は第五幕・第三場 ジュリエットの眠る墓場にやってくるのはロミオ。
     ロミオの服は、明日の舞台の服になっている。


ユウコ 「ここか。ここが姫の眠る場所か。僕と一緒になれないことを悲観し、毒を飲んだ君。
   この死人ばかりの暗闇で、どうやって君を探そうか。いや、いた。見ろ。
   ジュリエット姫が眠っている。そしてその美しさが、この奥城をまるで光り輝く
   宴の広間にしているのだ。ああ、愛する恋人。愛する妻。蜜と甘いお前の呼吸を
   吸い取ってしまった死神も、まだお前の美に対しては力を表していない。ああジュリエット。
   アナタは何故まだそんなに美しいのです? もしかしてあの死神までが
   あなたに思いをかけているからなのですか。ならばあなたを守るためにも
   俺はいつまでもあなたと一緒にいる。この暗い夜の宮殿からどんなことがあっても
   俺は離れまい。ここにこうして俺はいる。ココこそは、俺にとって永遠の憩いの場所だ。
   さぁ、今こそこの呪われた運命の魂を肉体から振り捨ててくれる。目よ、最後の景色を見よ。
   腕よ。最後の抱擁だ。そして、命の門なる唇よ。今こそ最後の口付けで死神と契約するのだ。
   さぁ、全ては済んだ(と、毒薬を取り出す)さぁ、我が愛しの人のため!


      会話の途中に明りはジュリエットを浮かび上がらせる。
      ジュリエットも明日の舞台の格好をしている。
      と、ユウコは毒薬を取り出しじっと見る。
      そして飲み干す。


ユウコ 「ああ、正直だな薬屋。貴様の薬はよく効くぞ。さあ、こう接吻して俺は死ぬ」


      ユウコが倒れる。
      そして、サヤカが起き上がる。


サヤカ 「ここは? そう、ここは死ぬふち。私のあの人は? あの人は……ロミオ? 
   なんだろう、これは。薬? ああ、毒を飲み思わぬ最後とおとげになったのだわ。
   それにしてもひどい。スッカリ飲み干しておしまいになって。
   私にはただの一滴も残しておいて下さらなかった。
   あなたの唇に接吻すればあなたを殺したその毒が、私の体を回るかしら。
   まだ暖かい。……人の声がする。誰かがまた私たちの平安を乱そうとしているのだわ。
   おお、うれしいこの短剣。 この胸、これがお前の鞘なのよ……」


      と、サヤカの動きが止まる。


ユウコ サヤ、台詞。……サヤ?

サヤカ ロミオ。これがお望みでしたの? こうしてロミオを殺すことが。

ユウコ え? そんな台詞は……

サヤカ ねぇ、ロミオ。二人だけのロミ&ジュリならば、
   あなたがロミオでいるから私はジュリエット。あなたが死んだら、私は何になればいいの? 
   でも、私がジュリエットでいるのなら、あなたはずっとロミオのはずよ。

ユウコ 何を言ってる(んだ)

サヤカ ねぇ、ロミオ。あなたがロミオでいるために演じるのなら、
   私がジュリエットでいるために演じて悪いことは無いわよね。

ユウコ 何言ってるんだよ。サヤカ、

サヤカ 私はジュリエットよ。少なくても今は。私がジュリエットでいるのは、
   あなたがロミオだから。だったら、私がジュリエットでいる限り、
   アナタはロミオでいなければいけないんじゃない?

ユウコ ロミオは今死んだよ。

サヤカ ロミオは死なない。ジュリエットが生きている限りは。
   だって、これはシェイクスピアのロミオ&ジュリエットじゃない。
   私たちのロミ&ジュリでしょう? さぁ、起きてロミオ。
   いつまで死んだフリで私を驚かそうとしているの?

ユウコ ……ジュリエット姫


      ユウコが起きる。


サヤカ ねぇ、ロミオ。あなたは運命を責めるけど、それほど悪い運命じゃなかったと思わない? 
   楽しかったし。よく笑ったわ。私。

ユウコ だけど、君には僕のせいで劇を押し付けてしまって……

サヤカ それも悪くなかった。だって、いつも舞台の上で私たちは生きられたんだから。
   いつも、この光を全身に浴びていられたんだから。そう悲しむことでもないんじゃない?

ユウコ 本当?

サヤカ うん。だって、ジュリエットはロミオがいなければジュリエットでじゃいられなかったから。   
    ねぇ、ロミオ。あなたがいなければ、今の私はいないのよ。

ユウコ なんだか、それじゃあ愛の告白みたいだよ。

サヤカ 仕方ないでしょ。女同士で言い合っているんだから。似たようなものになっちゃうわよ。

ユウコ そうかな。ねぇ、ジュリエット。

サヤカ 何?

ユウコ 僕……わたし、結構楽しかったよ。一緒にやれて。

サヤカ あたしも、結構楽しかったよ。あんたと一緒で。

ユウコ 明日、失笑されるかもよ。

サヤカ いいよ。一人じゃないもん。

ユウコ だれも、感動しないかもよ。

サヤカ 承知の上よ。

ユウコ むしろ、お客さん来なかったりして。

サヤカ だったら、私たちのためにやればいいんじゃん。ロミオはジュリエットのために。

ユウコ ジュリエットはロミオのために?

サヤカ YES!

ユウコ ま、いっかそれで。

サヤカ いいんじゃない? それで。

ユウコ 後悔するなよ。

サヤカ あんたこそね。


      二人は笑いあう。
      その笑みはいろんなものを吹っ切った笑みだ。


ユウコ よーし、じゃあ練習するよ。

サヤカ おー。

ユウコ でも、やっぱりラストは感動的に二人の死といきたいなぁ。

サヤカ でも、ありきたりじゃない?

ユウコ そうかなぁ。

サヤカ いいじゃん。私たちの劇なんだからさ。たまにはハッピーエンドでも。

ユウコ お客さんがびっくりするよ。

サヤカ させればいいじゃん。びっくりさせようよ。

ユウコ 出来るかな?

サヤカ やってみようよ。

ユウコ あ、出来るとは言わないんだ?

サヤカ だって、分からないじゃんそんなの。

ユウコ そりゃそうだ。

サヤカ いいんじゃない? それで。

ユウコ ま、いいか。それで。

サヤカ うん。いいよ。

ユウコ それでは、姫。バルコニーにおあがりください。


      と、ユウコはキザに手を差し伸べる。
      サヤカは気取ってその手を取る。


サヤカ では、ロミオ。参りましょうか。我らのために。

ユウコ はい。


      二人は再び笑いあう。
      背中を向けた少女達の視線の先からは、
      明日の喜びを知らせるように光がわく。
      彼女達は二人だけれど、一人ではない。
      単純な事実が二人に力をくれる。


ユウコ ファイト!

サヤカ オー!


      拳があがる。
      光の中に。


      幕。

参考文献 
「ロミオとジュリエット」(シェイクスピア 中野好夫訳 新潮文庫)

※ 同性愛的な表現がありますが、差別的意識は作者にはありません。
   これは女性だけで色々な役を演じる現実がある高校演劇の世界を作者なりに書きたかったにすぎません。

ロミオ&ジュリエットが大好きです。
一度、この物語を使って男二人の台本を書きました。
で、今度は女二人バージョン

……正直難産で書き上げるのに半年近くかかってしまいました。
どっちかっていうと、こっちが先に構想が出来上がって、
それから男二人バージョンが浮かんだんですが。
まさか出来上がるまでにこれほど時間がかかるとは。

贋作ロミ&ジュリなんてタイトルにしようかとも思ったんですけど、
贋作って付けられるほど、似せてもいないので(汗)
どっちかっていうと、ロミ&ジュリ好きに喧嘩売っている作品だとは思いますが、
最後まで読んでいただければ幸いです。

高校演劇と言うのは特殊な趣味を持った方が集まります。
三年間いえなかったけど、実は……なんてのもよくある話です。
相手を受け入れあった二人はきっとこれからも友人同士を続けられるでしょう。
そうやって、友情ってのは消えないでいればいいなぁと、
私は願って止みません。

ごらんいただきありがとうございました。