ケ・セラ・セラな告白練習 兄ver
登場人物
アスカ
女 高校2年生
キョウコ
女 高校2年生 アスカの友達
ミライ
女 高校2年生 アスカの友達
兄
男 高校3年生 アスカの兄
あらすじ
高校生のアスカには好きな人がいた。ある時、あすかは一大決心する。 告白をしよう ……ただ、その前にほんの少しの練習は必要だよね? 友人を巻き込んだ告白練習。その成果は? #友情 #恋愛 #兄妹
本文
01
舞台上、アスカの部屋とは別の場所に兄が浮かび上がる。
兄の部屋
兄が椅子に座って勉強中。電話がかかってきたのか手に取る。
兄 はい。今? 家だよ。勉強中。アスカの友達? 呼ぶの? 家に? 別にいいけど。試験近いんだから騒ぐなよ。てかそっちは大丈夫なのか? 期末、もうすぐじゃなかったっけ? はいはい。まあ、それはいいけど、なんで電話? ……まあ、確かに(LINEだと)返信遅いけどさ。今日母さん遅くなるんだっけ? あんま遅くならないようにな。俺より絶対うるさいから。はいはい。じゃあ。
と、兄が電話を切る。
兄 高2だってのに気楽だな。ま、妹の人生だ。なるようになるか。ケ・セラ・セラってね。
と、兄が机に向かう。
音楽と共に暗転
明るくなると、そこはアスカの部屋。下手か上手かどちらか側に部屋のドアがあり、反対側は窓がある。
窓にはカーテンが掛かっている、もしくは袖にあり観客席には見えない。
平日の放課後。三人とも私服姿。
アスカは制服のまま。キョウコは中性的。ミライはガーリー風。
三人の女子がいる。
男の子のように立つ少女キョウコ。向かい合うように二人の女の子。アスカとミライ。
まるで外にいるかのように三人は演じる。キョウコが男の子っぽさを意識しつつ声を掛ける。
キョウコ(男役) あの、
アスカ はい!
キョウコ(男役) 用って、なんですか。
アスカ その。
ミライ ほら、勇気を出して。ごめんね。時間取らせちゃって。
キョウコ(男役) 別にいいですけど。
ミライ ほら、アスカ。困ってるよ。早く言ってあげなよ。
アスカ うん。あの、好きです!
キョウコ(男役) え?
アスカ 好きです! 前からずっと好きでした!
キョウコ(男役) ありがとう。僕も君が好きだよ。
アスカ ……本当?
キョウコ(男役) 本当さ。
アスカ 嬉しい。
キョウコ(男役) 僕も!
ミライ 良かったね。アスカ!
アスカ ありがとう! ミライのおかげだよ!(と、抱きつく)
ミライ こら、あたしに抱きついてどうするの。抱きつくなら向こうにしないと。
キョウコ(男役) いや、付き合っていきなりはちょっと照れるっていうか。
アスカ 私だって、流石にそれは恥ずかしいよ~。
と、三人は笑う。
そして唐突に冷め、
アスカ ストップ。
ミライ どうしたの?
アスカ 絶対こんなにうまくいかないと思う。
キョウコ 確かに。
ミライ そうかな?
アスカ だって告白するのあたしだよ? うまくいくはずがない!
ミライ その自虐的自信はどっから来るの?
アスカ 自信がないから告白の練習なんてしてるんだよ。
ミライ まあ、告白なんてあたって砕けろってやつだと思うけど。ね?
キョウコ 少なくても、あたしはそうだった。
ミライ キョウコなんて言って告ったんだっけ?
キョウコ 「先輩、彼女いないんですよね? あたしなんかどう?」
ミライ やだ、オトコらしい。
キョウコ だろう? 正直、練習なんてあんま意味ないと思うよ。
アスカ そうだよね。どうせ砕けるのに練習しても意味ないか。
キョウコ いや、そういう意味ではなく!
ミライ 大丈夫! アスカなら大丈夫だって! ね?
キョウコ そうそう。きっと大丈夫だから! 多分。
アスカ きっと、とか、多分、なんだよね。
ミライ (と、なんで余計なこと言うかなというニュアンスで)キョウコ~?
キョウコ いやだって。相手のこと知らないから。絶対大丈夫なんて言えないかなって。
ミライ アスカなら大丈夫だって。万が一断られたとしたら、それは相手のほうがおかしいんだよ。
アスカ でも、断られる可能性はあるわけだよね。
ミライ まあ。無いとは言えないけど。
キョウコ ほら、色々相手にも事情はあるだろうし。別にアスカがどうとかってわけじゃなくてさ。
アスカ じゃあ、それも練習しとく。
キョウコ は?
ミライ 練習?
アスカ だから、断られる練習。
キョウコ それいる?
アスカ だって、断られても落ち込まないようにしたいし。だから断ってみてくれる?
キョウコ またあたしが男役?
ミライ 似合ってたよ。
キョウコ 全然嬉しくないんだよなぁ。
と、冒頭の告白と同じようにアスカはもじもじし始める。
キョウコ あ、そこから始めるんだ。……あの、
アスカ はい!
キョウコ(男役) 用って、なんですか。
アスカ その。
ミライ ほら、勇気を出して。ごめんね。時間取らせちゃって。
キョウコ(男役) 別にいいですけど。
ミライ ほら、アスカ。困ってるよ。早く言ってあげなよ。
アスカ うん。あの、好きです!
キョウコ(男役) え?
アスカ 好きです! 前からずっと好きでした!
キョウコ(男役) ごめんなさい。
アスカ く(と、ショックに耐えようとするが)……?
ミライ アスカ?
キョウコ どした?
アスカ 意外とダメージが少ない。
キョウコ そりゃそうだろ。
ミライ 本人じゃないからね。
アスカ そっか。もっと、きつく断って。じゃないと練習にならない。
キョウコ わかった。告白されるところからでいい?
アスカ うん。(と、頷いて)……好きです!
キョウコ(男役) あ、なんか口臭いから、それ以上喋らないでくれる?
アスカ そういう方向のきつさじゃない!
キョウコ そうなの?
アスカ もっと、冷たい感じのやつ。
キョウコ 冷たい? わかった。
アスカ ……臭くないよね?
ミライ 大丈夫。
キョウコ グッドスメル。
アスカ よし。好きです!
キョウコ(男役) 寒っ! おい、誰だよ窓開けたの。開けたらすぐ閉めろって言ったよなぁ。(と、乱暴に窓を閉める動作)
アスカ そういう意味ではなく!
キョウコ 違うか。
ミライ そもそも告白されてる時に窓を気にするような人は嫌だよね。
キョウコ だってアスカが好きな人がどんな人かあたし知らんし。
ミライ 確かに。どんな人なの?
キョウコ 練習に付き合ったんだから、聞く権利はあると思うけど。
アスカ 付き合えるようになったら教えるよ。
キョウコ なんだよ。聞かせろよ~。
アスカ キョウコだって、彼氏の話しないでしょ。
キョウコ あたしはほら、まだ付き合ってそこそこだから? これからどうなるかわからないから?
ミライ あたしの彼の話ならいつでもするよ。
アスカ ミライの彼氏って、二次元でしょ。
ミライ ん? 二次元の何が悪いのかな?
キョウコ ほら、ミライが怖くなる前に聞かせろよ~。
ミライ 聞かせろよ~。
と、二人は両側からアスカに絡む。
アスカ ちょ、近い近い。やめれって。離せ。くすぐるな!
キョウコ 話すか?
アスカ 話すか!! 離せって。
キョウコ 話したら離す。
アスカ 話さんが、離せ!
キョウコ 離したら話す?
アスカ 話さん!!
ミライ 言ってて混乱しない?
キョウコ 強情だな。言わないと、もっとくすぐるぞ。
アスカ ちょ、まじやめれ。
キョウコ ミライ。代わりに体押さえて。(と、両手をワキワキさせる)
ミライ 了解。(と、アスカの体を抑える)
アスカ いや、なにその手! おい! やめて! やめろよまじで!
と、騒がしくしているところへ兄がやって来る。
兄 アスカ~ 友達と遊ぶのはいいけど、あんま騒ぐなって言ったよな(少し静かにしてくれよ)……って。
兄から見るといじめの現場にも見える。
キョウコ いや、えっと。
ミライ これは、その。
兄 (と、静かに怒りを見せ)何やってんだ?
キョウコ 違いますよ!?
ミライ これは別にあれじゃないから。ね?
キョウコ 違いますから。
ミライ そういうあれじゃないです。
兄 そういうあれって? 俺には嫌がる妹を押さえる子と、襲おうとしている子にしか見えないんだけど。(と、アスカに)警察呼ぶか?
キョウコ&ミライ 違いますから!
兄 違うって?
ミライ あれとかじゃないです。
兄 あれって?
ミライ いや、だから。
アスカ (と、フォローするように)別に本気で嫌がってたわけじゃないから。
兄 本気で嫌がってたわけじゃない?
キョウコ むしろ喜んでました。
兄 え?
アスカ 喜んではいない。いや、喜びもあった。ありました。
兄 え?
ミライ つまり、そういうことなんで。
兄 え?(と、三人の言葉の意味を考える)え? つまり、そういうこと? え? 三人で? そういうのありなの?
アスカ どういうこと?
キョウコ わからん。
ミライ なにか盛大な勘違いが起こっている気がする。
兄 まじか。うーわー。いや、でもあるよなそういうこと。うん。大丈夫。俺、そういう偏見とかないから。
アスカ どういうこと?
キョウコ わからん。
ミライ あの、多分なんですけど、思われていることとちがうというか。あたしたち、
兄 大丈夫。言わなくていい。うん。そうだよな。今の社会ではな。外でってのは難しいもんな。
アスカ 外で?
兄 えっと。まあ、じゃあ、ごゆっくり? は変か。母さんが帰ってくるまでには終わらせなよ。ってのも違うな。まあ、あんまり大きい声出さないようにな。こっちは試験勉強してるんだから。
アスカ あの、兄さん?
兄 いや、そうだよな。部屋違っても男がいるっていう状況じゃ盛り上がりにくいよな。大丈夫。俺、外で勉強してくるから。近所迷惑にならない程度でよろしく。いや、最近の子って進んでんだね本当。にしてもアスカがかぁ。全然気づかなかったなぁ。(と、ボソリと)一応、母さんにも知らせとくか。
と、兄が部屋を出ていく。
アスカ どういうこと!? うちの兄は何に気づかなくて、何をよろしくして言ったの!?
キョウコ わからん。
ミライ 多分なんだけど。
アスカ うん。
ミライ あたしら、いちゃついてるって思われたんじゃない?
キョウコ いちゃついてる?
アスカ それって、つまり?
ミライ 付き合ってる的な?
アスカ (と、言葉の意味を確かめるように)付き合ってる?
キョウコ おばさんにも知らせようとか言ってなかったっけ?
アスカ ちょっと! 兄さん! 違うからね!
と、慌ててアスカが出ていく。
ミライ どうする? すごい面倒くさい展開にな気がするんだけど。
キョウコ 帰るか。
ミライ よし。帰ろう。
音楽。
二人は素早く準備を始める。
と、すぐにアスカは戻ってくる。
アスカ 駄目だ。思い込んじゃって聞く耳持ってくれない。お願い手伝って。
キョウコ&ミライ え~
暗転。
02
制服姿のアスカが浮かび上がる。夕方。誰かを待っているようで落ち着きがない。
やがて待ち人が来たらしく緊張した表情で相手に向き合う。
アスカ あの、こんなところに呼び出したのは。その。なんとなく予想はついているかもしれないですけど。その。(と、慌てそうになる気持ちを抑えて)……好きです。前からずっと好きでした。……え? (と、お礼を言われたらしい)……あ、ううん。別にお礼を言われるようなことじゃないし。それで、あの、付き合ってもらえますか? (と、相手の言葉に無理やり明るい反応をする)……そう、なんだ。うわっ。恥ずかしい。全然気づかなかった。そうなんだ。あの、いつから、ですか? ……そうですか。三ヶ月、ですか。
暗転。
明るくなるととアスカの部屋。夕方。失恋ソングが流れている。
アスカは制服姿のまま部屋の中でうだうだしている。
時折スマホを取り出してなにか打とうとするが、そんな気持ちもすぐに無くなり、音楽を変える。
流れる曲はやっぱり失恋ソング。スマホを放り出す。
と、のんきな兄の声が響く。
兄 アスカ~。いないのか?
アスカ ……いるよ。
兄 入っていい?(と、入ってくる)
アスカ だめ。
兄 制服シワになるから、転がるなら着替えてからにした方がいいんじゃない?
アスカ 駄目だって言ったよね?
兄 そうだっけ? (と、部屋の中を見渡す)
アスカ なに? なんなの。
兄 いや、始めはモホロビチッチ調べてたんだけどさ。
アスカ は?
兄 モホロビチッチ。知らない? モホロビチッチ不連続面。
アスカ は?
兄 略してモホ面。まあ、それはいいんだよどうでも。辞書借りていい? 国語辞書。なんか俺の辞書に変なの載っててさ。
アスカ そこにあるから適当に持っていって。
兄 いや、すぐ済むから(と、落ちている辞書を拾って)お前、何でもかんでもそこら変に投げ置くのいい加減辞めろよ。ちょっとだらしないぞ。
アスカ 使いやすいように置いてるだけだから。
兄 さようでございますか。(と、辞書を拾って、項目を探す)うわ、こっちにも載ってた。まじか。マジである言葉だったか。日本語ってすごいわ。(と、アスカの反応がないので)……すごくない?
アスカ ……(と、兄の反応をうざったく思いながら)なにが?
兄 ちんちんかもかも。
アスカ は?
兄 だから、ちんちんかもかも。
アスカ は?
兄 (一文字ずつはっきりと)ちんちんかもかも。
アスカ 聞こえてないわけじゃなくて。は? 何急に。
兄 だから、ちんちんかもかもだって。
アスカ いや、言葉じゃなくて。なに?
兄 意味は「男女の仲良い様」だって。一体どんな状況で使うのか謎すぎだよな?
アスカ 確かに。
兄 (と、囃し立てるように)「あいつらさぁ、本当ちんちんかもかもだよなぁ」「まじちんかも」的な使い方をするのかね。
アスカ いや、知らんし。
兄 それとも(と、カップルになって)「あたしたちって周りから、どう見られてるのかなぁ」「そりゃ、ちんちんかもかもって感じじゃない?」「やだ。照れちゃう~」的な?
アスカ いや、本当知らんし。
兄 日本語って不思議だよな。
アスカ そうですね。用済んだら出てってよ。
兄 はいはい。……(と、出ていく途中で立ち止まり)うまくいかなかったのか?
アスカ なにが。
兄 告白。
アスカ それ今言う!?
兄 いや、そんな影背負った感じでいたらさ。そうかなぁって思うだろ。昨日、友達呼んで練習だっけ? してたんだよな? 誤解しそうになったけど。アスカのことだから、勢いついたらすぐ突進しそうだし。で、ただいまも言わず部屋に閉じこもったらさ。「あ、駄目だったんだな」って思うでしょ。なに? 「悪いけど、君のことは人間としか思えない」とか言われたのか?
アスカ それなんとも思われてないやつだよね?
兄 「ごめん。僕、サツマイモのほうが好きなんだ」
アスカ なんで食べ物と比べた?
兄 「君のことは愛してる。だけど、僕には妻がいるんだ!」
アスカ 最低だな! タクヤ先輩、妻子持ちじゃないから。そんな人に惚れないし。
兄 タクヤっていうんだ。苗字は?
アスカ ……シムラ。
兄 シムタクか。おしい。
アスカ 何が惜しいのか意味わからない。
兄 カッコいいの? シムタクさんは。
アスカ そういうんじゃなくて。真面目で。委員会一緒なんだけど、面倒見が良くて。話してるとなんか落ち着いて。
兄 なんでフラれたんだ?
アスカ ……彼女がいたから。(と、言って余計に落ち込む)
兄 ……(と、側に寄って)彼女さんとは長いんだって?
アスカ 三ヶ月だって。
兄 そっか。
アスカ 一個下なんだって。あたしと同い年。なんだ年下に興味ないわけじゃないんだ、って思って。もっと早く話しかけてたらもしかしたらって思ったら、なんか。
兄 そっか。
アスカ だから、まあ、もう少ししたら普通になるから。だから、今は、一人にしてよ。
兄 嫌だね。
アスカ え?
兄 だから、嫌だ。
アスカ あのさ、冗談言う気分じゃないんだけど。
兄 本気で言ってるんだけど?
アスカ なおさらタチが悪いし。
兄 というより(と、ちょっと格好つけて)あれを見ても、一人になれると思うかな?
アスカ え?
兄 気にかけてるのは俺だけじゃないってことだよ。(と、入ってきた方向を見ないで指さす)
アスカ え? うそ(と、少し期待して兄の指さす方向を見て)……どれ?
兄 (と、まだ格好つけて)見えないのか? アスカを心配して来てくれた友達が、さ。
アスカ (と、ちゃんと確認して)普通に見えないけど。
兄 何言ってんの。ちゃんと二人も(と、自分の指さした方向を確認して)あれ? チョット待ってね。(と、部屋の外を見渡すように)……え? (と、部屋から去り声だけで)おやおやおや~? (と、戻ってきて)あれちょっとまって。いや、いたから普通に。だって。二人に頼まれて来たんだから俺。さり気なくちょっと元気づけてやってとどめに二人がって、そういう話だったんですよ? 本当に。
アスカ 嘘つくなら笑える嘘ついてよ。
兄 いや待って待って。嘘じゃないって。(と、スマフォを取り出しながら)昨日line登録して、そんで今日元気ないみたいだからお願いしますって……あ、line来てる。ほらね!
アスカ (と、スマフォを見せられ)窓を見ろ? (と、部屋の反対側を見る)何やってんの!? (と、袖に行く)
と、窓の開く音。
キョウコとミライがやってくる。
キョウコ 暑い。まじ暑い。
アスカ 大丈夫?
キョウコ ベランダ西日強すぎなんだけど。飲み物持ってくればよかった。
ミライ お兄さん、あたしlineするから確認してくださいって言いましたよね。
兄 いやだって、人と話している時はスマフォ見ないよね?
ミライ じゃあなんで「わかった」って言ったんですか。
兄 ごめんなさい。
アスカ 二人共、ずっと、ベランダにいたの?
キョウコ まあ結構長い時間?
ミライ 暑かったよねぇ。
アスカ なんで?
ミライ せーの、
キョウコ&ミライ 「あんたに笑顔を持ってきた!」
アスカ は?
キョウコ あ、これはあたしの好きなバンドの歌の歌詞。その歌に、窓から入ってくるシーンがあったから。本当は鉄パイプで窓割るんだけど、それやると本気で通報されるから。形だけね。
ミライ って、キョウコが言うからやってみた。
アスカ ……なんで?
キョウコ え? バンドが好きな理由? 幼稚園くらいまで遡るけど聞きたい? パパがダイヤモンドって曲が大好きでね? 大声で歌ってままに怒られて、
アスカ じゃなくて。なんで、来て、くれたの?
キョウコ 電車でだけど。
ミライ あたし自転車。
アスカ じゃなくて! 理由!
キョウコ は?
ミライ 理由?
と、キョウコとミライは不思議そうに顔を見合わせる。
アスカ そう! なんで、来たの!?
キョウコ そりゃあ、ね?
ミライ うん。
キョウコ 友達だから?
ミライ だから。
アスカ ……。(と、思わず言葉をなくす)
ミライ 凹んでたら、来るよ。友達だから。
キョウコ あんだけ馬鹿な練習に付き合ったんだし。愚痴りにも付き合うって。
ミライ そうそう。
キョウコ なんだったら、マックでも行く?
ミライ あ、とりあえず食べれば落ち着く的な?
キョウコ いや、あたしが今ポテト食べたい気分なだけだけど。
ミライ それアスカ関係ないね。
キョウコ まあ、部屋にこもっているよりはマシじゃない?
ミライ て言ってるけどどうする?
アスカ ミライ。
ミライ ん?
アスカ キョウコも。
キョウコ なに?
アスカ ……ありがとう。
と、キョウコとミライは再び顔を見合わせアスカを向き、
キョウコ&ミライ どういたしまして。
キョウコとミライとアスカが笑い合う。
そんな三人を微笑ましく見て、兄はここでこそ使うべきかと思い至る。
兄 本当、君たちはちんちんかもかもだねぇ。
とたん微妙な空気が漂う。
キョウコ いきなり何言い出すんだこの人。
ミライ ちょっと引きますよ。
兄 いや、あのね。ちんちんかもかもってのはそういうあれじゃなくて。ちゃんと辞書にも載っててね。
キョウコ 載ってるとか載ってないとか関係ないから。ね?
ミライ まず、そのドヤ顔がなんか引きます。
兄 そこまで言う!?
と、そんなミライとキョウコと兄を見て、アスカは笑顔で手をたたく。
アスカ はい。そこまで。
ミライ あ、これで終わり?
アスカ うん。終わり。
キョウコ てか、窓の外はない。本当無いから。
ミライ 待ってる間、近所の人に通報されるんじゃないかってビクビクしたしね。
兄 まあそのへんはね? ちょっと考えるにしても。どうよ? 見事に元気出ただろう?
アスカ うん。
ミライ でも最後のは蛇足すぎじゃないですか?
キョウコ あのオチはない。
兄 思いついたら言ってみたくなっちゃって。でも、最後以外はいい感じだったよね?
アスカ 兄さんがまず慰めにならない慰めをして、
ミライ あたしたちがそのうちにベランダに回り込んで。
キョウコ ドアをお兄さんが指し示して、実はベランダ側にいました、と。
兄 意外性あるだろう。
アスカ うん。
ミライ でも、外はちょっと視線が気になりますよ。
兄 クローゼットから出てくる?
ミライ 普通に入り口でいいじゃないですか。
キョウコ クローゼットから出てくるって、意外よりも先に恐怖だと思う。
兄 まあ、ドアからでもいいけどさ。これで、もし断られたとしても、慰める体制はバッチリだな。
アスカ うん。
キョウコ まあ、本当駄目だった時はいつでも話聞くからさ。
アスカ うん。
ミライ 頑張ってね。
アスカ うん! よし。行ってきます!
兄 行ってらっしゃい!
と、勢いよくアスカは走り去る。
キョウコ って、今から行くのか。
兄 思い立ったらすぐだからな。ごめんね。二人共。あんな妹で。
ミライ いえ。慣れてますし。結構楽しかったですから。
兄 そっか。
キョウコ あ!
ミライ どうしたの?
キョウコ 結局、告る相手がどんなのか聞き忘れたと思って。
ミライ たしかに。
兄 一個上らしいよ。
キョウコ へぇ。
ミライ よく聞き出せましたね。
兄 自分で言ってたから。タクヤ先輩だって。
ミライ 名前まで。
キョウコ さすが兄ですね。てか、あたしの彼氏と名前一緒だ。うける。
ミライ 苗字はなんなんですか?
兄 シムラだってよ。
ミライ へー。
兄 略すとシムタク。なんかおしいよね。
ミライ おしいってのはちょっとよくわからないです。
キョウコ 待って。つまり、一個上のシムラタクヤってこと?
兄 そう。あと、委員会が一緒とか言ってたな。
ミライ へー。
キョウコ うそやん(と、頭を抱える)
兄 んん?
ミライ どうしたの?
キョウコ それ、あたしの彼氏だ。
兄&ミライ え?
キョウコ 付き合って2ヶ月。彼、アスカとは委員会一緒だし、恥ずかしいから黙っておくようお願いしてて。だから、アスカは知らない。
と、理解するまでの間。
兄 え? つまり? え?
ミライ 止めよう! 今ならまだ間に合う!
キョウコ いやだって、アスカ走って行っちゃったし。
ミライ 自転車があるよ!
キョウコ あたしは!?
ミライ 走れ!
キョウコ わかった!
ミライ じゃ、お兄さんお邪魔しました!
キョウコ お邪魔しました!
と、二人は慌てて去っていく。
兄 えっと。うん。まあ、それも含めてね。妹の人生だ。なるようになるか。ケ・セラ・セラってね。
音楽。
音楽に合わせて鼻歌を歌いながら部屋を片付ける兄。
どこかの道をアスカ、キョウコ、ミライが歩いている。
なんで言ってくれなかったのかと怒っているアスカにキョウコが謝っている。
だが、そのうちキョウコも怒るアスカに苛つき始める。
そんな二人をなだめるミライ。
三人の喧嘩が激しくなりそうな予感とともに溶暗。
完
あとがき
呼び出して面と向かって告白って、勇気が入りますよね
学生のうちはそれだけで一大イベントで、
それこそ失敗したら世界が終わるかもしれないなんて気持ちになるものです
たとえ失敗だとしても、勇気を持って一歩踏み出せたその行動力こそ尊いと思います
最後まで読んでいただきありがとうございました