死 に 続 け る 男


「くく。ははは。ふははは」

笑いが口から漏れる。
自分で自分を殺す事の愚かしさ。そんな幻想を抱く事自体が、自身が堕落した証拠だろう。

もうすぐ時計が2:00を指す。

そうすれば僕は、この世界から永久に消える。

「最後に、言い残す事は無いか」

冷たい視線の男がじっと僕を見つめる。
僕の頭はかみそりでそられ、いまや濡らされたスポンジが載せられている。
何も口を開かぬうちに、スポンジが固定される。
真っ黒の布がかけられる。目も、口も、花すら覆う黒い布。

暗闇だ。

周りでざわめきが聞こえる。
僕が傷つけた者と同じ血を持つ人々。
憎しみ。憎しみ。憎しみ。

同じような感情の群れに、反吐さえ覚える。

僕が悪いというのだろうか?
僕はただ僕でいたくなかっただけだ。
僕自身をこの世から消したかっただけなのだ。

男の声が遠くで響く。

祈りを捧げる声。あの男には罪は無いのだろうか。
そんな他人の事を考えながら、きっと僕は死へと赴く。
僕の世界から離れ、死の場所へ。