死 に 続 け る 男

木に張ったロープを引っ張る。

この森の中には、僕の他に人が入って来ることは無いだろう。
達成感がほんの少しのまどろみへ変わり、僕に幻想を見せていた気がする。
薬という安易な物に頼る自分。僕は、僕自身を消すのにしても、僕自身で死を決められず、作られたものに頼るしか力の無い者なのだろうか。

僕は、僕の人生を僕自身で終らせる。

それがこの世界のためだから。
僕がいても、この世の中は何の意味も無いのだから。
僕は、いらない存在だ。何の、価値も無い存在。いや、存在という事すらおこがましい、ただの断片に過ぎないのかも知れない。

台の上に足を載せる。
自然と鼓動が早くなる。

もうすでに何も感じなくなっていた気がしたのに、何故こうまでも僕は死という世界に憧れるのだろうか。まるで幾重にもかけて憧れながら決して辿り着けない聖地のように。
両手でロープを握り締め、まるで表彰されたかのようにうやゆやしく僕は自身へロープをかける。

何の感慨も生む事は無い。
目の前に広がる森を一瞬見渡して、ただ台を蹴った。